愛知県岡崎・八丁味噌のルーツとそのおいしさを知る旅

2015.10.05

「愛知の食文化」と聞いて多くの人が連想するのは、やはり「味噌」ではないだろうか。徳川家康公生誕の城としても知られる岡崎城から、八丁(約870m)の距離に位置する旧八丁村(現岡崎市八帖町)で製造されているのが全国的にも知られる「八丁味噌」。今日はこの地を訪ね、そのルーツやおいしさの秘密に迫ろうと思う。

▲旧東海道とT字型に交差する「八丁蔵通り」

伝統産業を気軽に学べる工場見学

江戸時代から「八丁味噌」を造り続けているのは二社。
今日はそのうちの一社である「合資会社 八丁味噌」さんを訪ねた。「カクキュー」という屋号のほうに馴染みを感じる方が多いかもしれない。

「カクキュー 八丁味噌の郷」は原則として予約不要。無料で蔵などを見学でき、観光客にも大変な人気。今日は特別に総務部企画室の早川昌吾さんに案内していただいた。
▲合資会社 八丁味噌の早川昌吾さん。国の登録文化財になっている本社事務所の前で
資料によると、1645年(寛永と正保の境目の年)創業で、初代・早川久右衛門が味噌造りをはじめたのが起源。現在は19代目の早川久右衛門さんが代表を務め、伝統の味噌造りを今日に受け継いでいるという。同社が紡いだ悠久の歴史に感嘆させられるばかりだ。

「高温多湿なこの地が豆味噌の製造に適しており、地場の大豆や、吉良(現・愛知県西尾市)の饗庭塩(あいばじお)が入手できる環境であったことも大きな理由です」と早川さん。なるほど、西側を流れる矢作川(やはぎがわ)を使った輸送の便も考えれば、この地が味噌の一大産地となった理由にも頷ける。
▲貴重な資料を展示する資料館。味噌造りの行程もわかりやすく解説している
ところで、「赤味噌は辛い」というイメージはどこから来るのだろうか。
たしかに米や麦を原料とした味噌は、寝かせれば甘みが増す。しかしこちらで造られる味噌は蒸した大豆を丸め、直接麹菌を繁殖させて塩と水のみを加えて仕込む。それで糖度が少ないというわけだ。
ぼんやりとしたイメージも、実際に製造元を訪れて丁寧な説明を聞けば心から納得できる。これぞ工場見学の醍醐味である。
▲熟成を重ねる八丁味噌。仕込み桶が立ち並ぶ風景は圧巻
いよいよメインとも言える味噌の仕込蔵へ。仕込み桶の大きさに圧倒されると同時に、円錐状に積み上げられた重石に芸術性すら感じる。二夏二冬以上の間熟成を行い、八丁味噌はでき上がるのである。
▲1杯目に試飲できる純粋な八丁味噌の味噌汁。濃厚で風味豊か
見学後は試飲もできる。1杯目は八丁味噌、2杯目は八丁味噌と米麹味噌をブレンドした合わせ味噌が供される。
味の違いを確かめながらの試飲はなんとも楽しく、生まれ育った地域などによって好みが大きく分かれるので、複数人で訪れれば盛り上がるはず。
また、こんにゃくに甘味噌をかけた田楽の試食も楽しみだ。
▲訪れた記念におみやげを。お薦めは「北海道産大豆使用 八丁味噌」1,940円(税込)
産業が盛んな愛知県において、工場見学は観光の目玉のひとつ。オートメーション化された工場の見学も眼を見張るものがあるが、伝統の製法を貫き一途にものづくりを行う現場を訪れるのも楽しい。

八丁味噌料理を求め岡崎公園へ

製造の様子を見学した後は、実際に味噌料理が食べたくなった。まずは岡崎観光の中心である岡崎公園(岡崎城)へと足を運ぶことにしよう。

先述の通り、岡崎城までの距離は八丁(約870m)である。
岡崎城下を通る東海道は「二十七曲り」と言われるように、防衛上の理由から曲がり角が複雑に作られている。時間に余裕があれば、この道を辿るのも一興だ。
▲二十七曲りの折れ目には「金のわらじ」の目印が。
▲美しい緑の中から姿を現す岡崎城の天守閣
お目当ては岡崎公園内に店を構える「八千代本店」。100年以上この地で和食店を営み、地元民からも、観光で岡崎を訪れる人からも愛され続ける老舗である。
▲緑深い岡崎公園の中に佇む「八千代本店」
こちらでまず味わいたいのは先ほど訪れたカクキューの八丁味噌を使った「木の芽田楽」。八丁味噌に使われている大豆は三河産であり、地産地消という言葉がふさわしい。
▲なめし田楽定食1,620円(税込)。豆腐は串からするっと抜けるほど柔らかい
田楽と聞いて、表面が焼き上げられた“カリッ”とした食感を想像する方も多いと思う。しかし、こちらの田楽は備長炭を使い、高い火力で豆腐の中を沸騰させるため、豆腐の瑞々しさを残している。
この瑞々しさが濃厚な味噌の味を程よくやわらげていて、調和がすばらしい。

菜飯の塩気も程よく中和して最後までおいしく味わえる。菜飯の大根の葉は近隣の安城市で生産されたものを主に使用しているのだそう。
▲窓際の座敷席からの眺めは特に素晴らしい
そして、岡崎公園の美しい緑を眺めながらの食事は至福。岡崎を訪れたよろこびを増してくれる名店のひとつである。
安田淳

安田淳

主に東海地方の旅行やグルメ、プロ野球などの記事を執筆する。名古屋生まれ名古屋育ちゆえ名古屋めしには目がなく、仕事プライベート問わず「名店」と呼ばれる店を食べ歩いている。よく出没する場所はナゴヤドームとスーパー銭湯。

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