【期間限定】日本最大・最古の東福寺禅堂で夜の座禅体験

2017.09.29

京都にある有名な禅寺のひとつ「東福寺」。この秋、期間限定の坐禅(座禅)体験プランが登場するということで、ひと足先に体験してきました。坐禅を組める場所は、日本で最も古く、最も大きな禅堂。しかも、観光客が帰った夕方~夜に「夜坐(やざ)」ができるという、他にはないすごく貴重な体験なんです。

ドキドキしながら禅堂へ

京都駅からJRでひと駅。東福寺といえば「通天橋の紅葉」が有名で、秋のピーク時には一日約3万5千人が訪れるほど。庭好きの間では、重森三玲(しげもりみれい)が手がけた枯山水の代表作を見られることでも人気です。
▲紅葉のベストスポットとして有名な通天橋(写真提供:東福寺)

そんな東福寺は、実は鎌倉~室町時代の建造物や絵画、文書などが多数現存する文化財の宝庫だということは意外と知られていないのではないでしょうか。今回の体験場所となる禅堂もそのひとつ。
▲1347(正平2)年から残る、わが国最古にして最大の坐禅道場「禅堂」(写真提供:東福寺)

禅寺にとって最も大切なお堂である禅堂は、普段は非公開。毎週日曜日の早朝坐禅会の時しか開放していないので、なかなか入れる機会はありません。そんな場所で夜に坐禅ができるなんて、それだけでもテンションがあがってしまいますよね。

今回、一緒に体験してくれたのは、ひとみさん(写真左)とまゆさん(写真右)のお2人。
▲坐禅は初めてという2人、気合い入ってます!

「最近、仕事もプライベートも忙しかったので、心を落ち着かせて自分と向き合う時間にしたいです」と、ひとみさん。

まゆさんは、「海外の有名人やセレブが注目していると知って、やってみたいと思ってました!」と意欲的。

筆者も、坐禅をすると仕事のパフォーマンスが上がるとか、感情がコントロールできるようになると聞いたことがあり、興味津々です。

坐禅体験は閉門後におこなわれるので、観光客はおらず境内はとても静か。
それではいざ、禅堂へ入ってみましょう。
▲最大収容200人の広さを誇る。(写真は半面)

高い天井へとそびえたつ木の柱や、歴史を感じさせる華頭窓(かとうまど)。簡素であるがゆえの心地良い緊張感が漂います。

空間を囲むように、単(たん)と呼ばれる床高のスペースがあり、雲水(禅宗の修行僧)にとっては1人1畳が生活の場です。室町時代(1347年再建)以来、ここでどれほどの雲水が修行してきたのかと考えると、身が引き締まるような思いがします。
今回は、東福寺広報主事の明石さんにご指導いただきました。
「今日はよろしくお願いします」
優しそうな方でよかった!

いよいよスタート。坐禅とは?という解説と、座り方や呼吸法をレクチャー

今回の坐禅体験は、説明を聞きながら坐禅を2回、最後に茶礼(されい)をおこなって2,800円で体験できます。(所要約1時間30分)
ただ坐禅をするだけではなく、禅や坐禅について、わかりやすく教えてもらいながら体験できるので、全く知識がなくてもOKなんです。
▲坐禅とは何か?何のためにするのか?そんなお話に、真剣に聞き入る2人

「生きていると、悲しみや怒りといった感情が出てきます。それをいかにして取り除いたらいいのか。このひとつの方法として、坐禅というものがあるんです」と明石さん。

「人間は、自分自身で自分というものを作り上げてしまい、それにしがみつくことで苦しみが生まれます。赤ん坊の時、どうでしたか?知識や経験を手放し、生まれたてのような、本来の自分に立ち返るために坐禅をするんですね」

初めてなので、うまくできるか不安ではありますが…実践に移るとしましょう。
まずは足の組み方を教わります。右足を左の太ももの上に乗せ、さらに左足を右太ももに乗せる「結跏趺坐(けっかふざ)」という正式な座り方から。

「難しい~!」とひとみさん。
できない場合は片方の足だけ太ももに乗せる「半跏趺坐(はんかふざ)」でもOK。正座など座りやすい方法でもいいので安心してくださいね。
次に、手の組み方です。
右手のひらを上に向け、その上に左手のひらをのせ、親指同士を軽く付け丸い形を作ります。「法界定印(ほっかいじょういん)」という組み方で、お釈迦さまの姿に倣っているのだそう。

そして、組んだ手のひらをおへその下あたりに置き、背筋を伸ばし、顔はまっすぐ前を向いて、目線だけ1~1.5m先に落とします。
その時、まぶたの力をスッと抜き、半分だけ閉じた半眼の状態を保ちます。

それができたら呼吸です。
まず、7~10秒ほどかけてゆっくり息を吐き切ったら、吸う息は吐く息よりも少しだけ短く。そしてまたゆっくりと吐いて…を繰り返していきます。

「よく無になれと言いますが、今自分が抱えている思いや悩みを取り除く必要はありません。むしろ、ひたすら考えてください」と明石さん。

えっ!そうなんですか?いいんですか、考えて。

「考えないようにする、ということ自体が邪念ですから。自分自身をじっくり見つめるんです」
「安定して座ると自然と背筋が伸びますね」とまゆさん。
「ゆっくり呼吸すると、すごく心が落ち着いてきました」とひとみさん。
2人とも座り方のコツをつかんだようです。

姿勢と息を整えて…1回目の坐禅にトライ

灯りを消して、坐禅スタート。
シーンと静まり返った中、耳に入ってくるのは、鳥の声や木々がざわめく音。
呼吸はゆっくり、平常心、自由な心を取り戻す…。
明石さんの言葉を思い出して色々心がけてみるのですが、逆に力が入ってしまい、なかなか集中できません。

そうこうしている間に、筆者は終わったら何食べようとか、仕事のメールしなきゃとか、雑念まで出てくる始末…。
カーンと拍子木の音が鳴り、約15分の1回目の坐禅が終了です。
ちなみに、本来、修行道場は一切私語禁止なため、入場した後は小さな鐘や拍子木のような鳴りものに従って行動を取るのだそうです。

ちょっとブレイク

ここで少し休憩をしながら、実際にやってみた感想をふまえ、坐禅のコツや効果などについてお話を聞きます。

「禅の言葉に、調身、調息、調心というものがあります。姿勢を整え、息を整えることで心が整う。最近、スポーツ選手や著名人が坐禅を取り入れているのは、何かものごとをする前に坐禅するとよい結果を生みやすいからのようです。雲水が修行として古くからやっていたことが、理にかなっていたということでしょうか」と明石さん。

そんな話を聞いて、「最初はゆっくり呼吸できていたのですが、今日あった嫌な出来事を思い出して、ついつい息が乱れてしまいました」とひとみさん。
急に集中するのは難しいですよね。

気を取り直して2回目の坐禅…と、その前に登場したのが気になるあの棒。
正式名称を「警策(けいさく)」といいます。

「坐禅と言えば、棒で喝を入れられる、そんなイメージがあるかもしれません。でもこれは、集中が切れたり疲れたりした時に励ますものなんです。今回の体験では、希望者だけにおこなうことになっています」

受けたいと思ったら、合掌をして合図をします。両肘を抱えて上半身を前に倒し、左右の背中を2回ずつ打っていただきます。

「何となくコツがつかめたかも」2回目の坐禅

さあ、約15分間の2回目の坐禅です。
長く深く呼吸をするように意識を向けていると、余計な力も抜けてリラックスしてきました。そうすると、ざわざわしていた心の中が、自然と落ち着いてくるから不思議です。
「体が変わると心も変わる」そんな感覚が少しわかったような気がします。
場の力というものも、やはり大きく影響しているのでしょう。坐禅をするためだけに建てられた禅堂。その空気感を作り出すのは、670年以上もの歴史の重み。ここに身を置き、日々のルーティンから一旦離れたことで、散漫になっていた心がリセットできたように感じました。

最後の茶礼で締めくくり

2回目の坐禅が終わると、お茶をいただきながら、坐禅の振り返りやアドバイス、質疑応答の時間です。
さっきまでの凛とした雰囲気とは一転して、なごやかなムード。
▲東福寺の初代住職・聖一国師(しょういちこくし)が中国から持ち帰りルーツを作ったことにちなみ、一杯の静岡茶を

このお茶も、「茶礼(されい)」と呼ばれる禅の儀式です。禅寺では、1日に数回、一堂に会して同じお茶をいただきますが、共に修行をする者同士、皆の心をひとつにするという意味があるそうです。
今回の体験でも、知らない者同士が集まって同じ時間を過ごしますが、そのご縁に感謝しながら、揃って一斉にいただきます。
ただお茶を飲むのではなく、きちんと意識を向ける。日常の小さな行為にも集中し、今を生きるという、禅のエッセンスを感じられます。

ここで、まゆさんから質問が。
「家でも坐禅はできますか?」

「もちろん、ここでできたことは自宅でもできますよ。修行という意味合いがなくても、心身にいい影響を与えますし、まずはやってみるということが大切です」と明石さん。疑問に思ったことは、何でも質問してみてくださいね。
「ありがとうございました!」
充実感を覚えながら、お別れです。

明石さん曰く、「坐禅は難しく考えなくてもいい」とのこと。
「人に強制されてやるものではないし、それぞれ何かしらの志を持って来られるでしょうから、自由な心持ちで体験していただければ充分です」と話されていました。
▲初めての坐禅を終えた2人も、スッキリした表情です

「実は少しこわいイメージもあったのですが、全然こわくなかったです!心が広く、穏やかになれた気がします。やっぱり自分と向き合う時間は大切ですね。明石さんの最初のお話で、無にならなくてもいいと知り、緊張が解けてリラックスできました」とひとみさん。足もつらくなかったそうです。

「明石さんの話を聞いて、考えの整理をしたりポーズの意味を知ってから坐禅をできたのがよかったです。心のデトックスって感じなので、日常に取り入れている人が多いんだなあと思いました。気持ちの浮き沈みがある女性にすごく向いていると思います!」とまゆさん。
▲坐禅の前に美しい紅葉や庭を拝観するのもオススメ(体験料金に拝観料金は含みません。写真提供:東福寺)

せっかちで落ち着きがない筆者にとっては、短い時間でもじっと立ち止まって考えるという体験が新鮮でした。仕事でもプライベートでも、忙しい時ほど一息ついて、呼吸を整えるようにしよう、そう思わせてもらいました。

普段の生活でストレスを溜め込んでいる方、自分と向き合いたい方、気になっていたけど一歩を踏み出せなかった方などなど、坐禅が新しい世界を開いてくれるかもしれません。ぜひこの機会に体験してみてくださいね。
宮本貴美

宮本貴美

京都在住のフリーディレクター/ライター。旅にまつわる取材、執筆、編集をおこなう。 最近はスポーツトラベルに注目中。

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