まさに隠れ家!富山県の住宅地に本格インド料理店があった

2017.10.30

富山県の住宅地に完全予約制のインド料理店がある。女性店主は、ガンジス川上流にある北インドのリシケーシュに6年間住んでいたこともあり、そこで学んだインドの“家庭料理”をベースにしたカレーを提供する。本格的な味わいにファンも多く、他県からも多くの人々がこのカレーを求めて来店するという。この店のカレーを食べずに、真のインドの家庭料理は語れない!(by カレー調査隊隊長・井上岳久)

どうも、こんにちは!
カレーの第一人者である井上岳久先生と、一番弟子りかです。私たち2人は「カレー調査隊」として、ぐるたび編集部に届いた耳寄りカレー情報をもとに全国津々浦々を旅しています。

今回は、富山県の住宅地にある完全予約制のインド料理店のうわさを調査してきました。

実家の土地で開業!インド料理店「ニーラジュ」

りか「ぐるたび編集部宛てに、こんな調査依頼のメールが届きました」

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富山県魚津市の住宅地に、完全予約制のインド家庭料理店「NEERAJ(ニーラジュ)」というお店があるそうです。車がないと行きにくい場所なため、また1名での予約はできないそうなので、代わりにどんなお店でどんなカレーを提供しているのか調査してきてくれないでしょうか?
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井上先生「お、このお店か!実は以前、富山に行ったときに行こうと思ったら、2日前までに予約しないとならなくて、行きそびれていたんだよ」

りか「富山県のカレー店情報も知っているとは、さすが先生ですね!私も車の運転が苦手なので、取材経費でタクシーが使える(笑)、この機会に行ってみたいです」
ということで、やってきたのは富山地方鉄道本線・魚津駅から車で15分ほどの「ニーラジュ」。住宅地の中にある一軒家です。しかも敷地内の奥に建物があるため、まさに隠れ家のようなお店。ランチは2名から、ディナーは4名から予約可能です。
「いらっしゃいませ~!」
出迎えてくれたのは元気ハツラツな店主・川村寿子(ひさこ)さん。インドの民族衣装であるサルワール・カミーズを着ています。
▲14人までしか入れないアットホームな雰囲気のお店では、インドのアクセサリーや民族衣装の販売も行っています
「ニーラジュ」では、民族衣装のサリー着付けサービス(1名・税込500円)や料理教室(1名・税込2,500円~)も行っています(ともに5名以上~受付)。
というわけで、今回特別に私もサリーにお着替えすることに!
▲サリーを着用する際は、胸元の開いたピタッとした半袖Tシャツを中に着るのがいいそう

りか「自分で言うのもなんですが、サリー似合っていませんか?なんだかインドに行った気分になれて、ここが富山県であることを忘れてしまいそうです!」

井上先生「りかさんのテンションがいつもより高いな(笑)。準備も整ったし、早速お目当てのカレーを食べてみよう」

お客さんの要望に合わせてメニューが変わる!インドの定食「ターリー」

「ニーラジュ」は2日前までの完全予約制で、ランチでは「ワンプレートのランチセット」または「ターリー(※)」を、ディナーでは「ターリー」のみを提供しています。基本は、東西南北かかわらずインド各地の家庭料理をドッキングして作りますが、料理の内容はお客さんの要望に合わせて変えているといいます。予約をする際に、どんなメニューにしてほしいか要望と予算額を伝えましょう。

※ターリー…インド料理の定食のこと。インドではよく見られる料理の提供形態
たとえば「お肉とお魚を使った料理にしてほしい」「〇〇地方の料理にしてほしい」などです。使う食材によって料金が変わり、「ワンプレートのランチセット」がだいたい1食1,500~2,500円程度、「ターリー」が1食2,500~3,500円程度(ともに税込)。来店する人数によって、サブジ(インド料理でいう野菜炒めなどのおかず)の量も変わると言います。

今回は、メニューをおまかせにし、3,000円(税込)の予算で「ターリー」を作ってもらいました。
▲川村さん「お待たせしました~!」

運ばれてきたのは、カレー、アチャール(インドの漬物)、ライス、チャパティ(パンの一種)、サラダがセットになったターリー。
▲左下から「ダルカレー(豆カレー)」「トマトベースのパニール(チーズ)とナスのカレー」「チキンカレー」
▲右下から、「アルチャット(インドのサラダ)」「ヨーグルトベースのパニール」「春キャベツのコフタ(団子)」
▲サブジは、左端から「ゴーヤ」「かぼちゃの炒め物」「玉ねぎをゴマで和えたもの」「ジャガイモのスパイス炒め」など

りか「一皿にたくさんの料理がのっていて豪華ですね!」

井上先生「それにプレート全体の彩りだけでなく、カレー一皿ごとの彩りも考えられている。完全予約制というのにも納得だね。こんなに多くの食材を調達するのもひと苦労だし、このハイクオリティな盛り付け方には時間が必要だよ!」
井上先生&りか「いっただきまーす!」

りか「どれから食べようか迷いますね…。食べる順番ってあるんですか?」
川村さん「苦いものから食べて最後に酸っぱいものでシメる地域もあれば、最初チャパティなどのパン類を食べて、最後にごはんでシメる地域もあるけど、正式な食べ方ってものはないのよ。『ニーラジュ』では、そんな細かいこと気にしないから!」
りか「なるほど。じゃあ、まずは一番気になった『春キャベツのコフタ』から食べてみますね」
▲パクっ

りか「う~ん!おいしい~~!トマトソースで煮込んだ肉団子のようですね」

川村さん「これはインドの北西部にあるパンジャーブ地方の料理で、春キャベツと乾燥させたひよこ豆で作ったお団子を、トマトや玉ねぎ、ニンニク、ショウガをベースにしたカレーソースに混ぜ合わせたもの。本当なら春キャベツではなく冬瓜で作るんだけどね」
井上先生「このチキンカレーもなかなかおいしいよ。優しそうな顔をして、意外にもスパイスが効いている」

川村さん「それは北インドでよく食べられるカシューナッツとヨーグルトを使ったカレー。北インドではナッツ類をよく使うんです。ちなみに安いレストランに行くと、カシューナッツが高いから代わりにスイカやメロンの種を使うんですよ」

井上先生「なるほど。実は以前インドのデリーにある料理学校に勉強しに行ったときに、スイカの種を使うと教わったのですが、その理由を聞き忘れていて。カシューナッツより安く済ませるためのインドのお母さんたちによる節約テクニックだったのか!」
りか「ところで、インドでは毎日こんな豪華な料理を作っているのでしょうか?」

川村さん「ターリーを食べるのはレストランだけ。家庭だったら、ダルカレーと汁気のあるもの、それと漬物くらい。こんなにいっぱい食べないわよ」
りか「食べながら川村さんからインドの家庭料理に関する知識を教われるからいいですね。勉強もできて、カレー好きなら一石二鳥ですよ」

井上先生「ああ、なんならカレー大學でインドの家庭料理講座をひらいてほしいくらいだよ」
▲手作りのチャパティもふっくらしていておいしい!

ちなみに、インドカレーといえば、ナンを想像する人は多いと思いますが、ナンは北インドのレストランで食べられる料理で、家庭ではチャパティという平焼きのパンを食べます。しかも、横長の大きいナンは日本独自のスタイルで、インドでは丸型など小ぶりのナンが主流なのだそう。

川村さん「日本のようなでかいナンをインドで出したら、インド人にビックリされるわよ(笑)」

なぜ富山県の住宅地にインドの家庭料理店をオープン?

チャーミングな川村さんに釘付けになってしまった私たち。どうしてインドの本格的な家庭料理のお店をやるようになったのでしょうか?
川村さん「そもそもは腰を悪くして好きだったスポーツができなくなって、25年ほど前にヨガを習い始めたことがきっかけかな」

その後ヨガにのめり込んだ川村さんは、1998(平成10)年に「ヨガの聖地」といわれる北インドのリシケーシュという地域にヨガ留学することに。しかし、いざ留学してみると、ヨガよりも日本では食べたことのないインド各地の家庭料理に興味を持ちだし、次第に地元のお母さんたちと交流するようになっていったのだとか。そして6年間ほどリシケーシュで生活することに。
▲キッチンに並べられたスパイス。すべてインドから送ってもらっているものだそう

川村さん「地元のおばちゃんたちが本当の家族のように接してくれたから居心地がよくて。だから今でも毎年インドに行っているし、メールでも毎日やりとりしているのよ」
川村さんは、インドのお母さんたちからパンジャーブやラジャスタン、ガルワールなど10の地域の家庭料理を教わったと言います。そして帰国後の2004年頃に「ニーラジュ」をオープン。しかし、なぜこんな富山県の住宅地に作ったのでしょうか?

川村さん「いつか地元富山県でインド料理店をやりたいなと思っていたら、祖父に『いつかやろうじゃ、いつまで経ってもできないからまずは建物を作りなさい』って言われて。実家の余っている土地に、とりあえず店を建ててしまったの(笑)」
なんとも大胆な行動!しかし、今では他県からもインド料理好きが食べに来る、知る人ぞ知る人気店に。隠れ家のようなお店がファン心理に響いたのかもしれません。

では井上先生、カレーの評価をお願いします。
井上先生「『ニーラジュ』のカレーチャートはこちら!」

井上先生「お店の存在自体が個性的だからオリジナリティは5!インドから仕入れているスパイスの使い方にもこだわりが感じられたのでスパイステクニックも5。東京には本格インド料理店は多数あるけれども、やはりインドの家庭料理を提供しているだけあって、他店とは違う味わいだったね。インドに数カ月滞在したことのある料理人はたくさんいるけれども、6年も住んで、地元のお母さんにみっちり教わった人は意外と少ないよ」
りか「はい!さすが住んでいただけあって、インドの食文化についての知識も豊富ですし、何より川村さんの人柄も魅力的でした。インドカレー好きの方にはぜひ来てもらいたいお店です」
▲最後は店主の川村さんとパシャリ!

インドの家庭料理に興味がある人は、ぜひ「ニーラジュ」へ。2日前までに予約することを忘れないでくださいね。
ご協力ありがとうございました!

井上岳久(カレー大學学長/株式会社カレー総合研究所代表)

カレー業界を牽引する、業界の第一人者。横濱カレーミュージアム責任者を経て現職に至る。カレーの文化や歴史、栄養学、地域的特色、レトルトカレーなど、カレー全般に精通。レトルトカレーは全国から2,000種類を収集し試食している。著書に『一億人の大好物 カレーの作り方』『国民食カレーに学ぶもっともわかりやすいマーケティング入門』など多数。

名久井梨香

名久井梨香

フリーライター。毎日カレーを食べるカレー愛好家で、現在はカレーパンも研究している。カレー大學、カレー大学院卒。趣味はカレーとJリーグ。

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