インドカレーとの違いって?富山パキスタン街のカレー店を大調査!

2017.11.15

富山新港の近くにパキスタン人が集まる地域がある。これはバブルの頃、日本車をロシアに卸す貿易業をパキスタン人が富山で行っていたという歴史に由来する。そんなパキスタン人街に、「ビーフシチュー」という名のカレーがある。大胆にカットされた牛肉を炒めるようにして作る汁気の少ないカレーで、インドカレーと似て非なるパキスタンカレーの特徴が明確になる一皿だろう。(by カレー調査隊隊長・井上岳久)

どうも、こんにちは!
カレーの第一人者である井上岳久先生と、一番弟子りかです。私たち2人は「カレー調査隊」として、ぐるたび編集部に届いた耳寄りカレー情報をもとに全国津々浦々を旅しています。

今回は、富山県富山市にあるパキスタンカレーのうわさを調査してきました。

富山のパキスタンカレー店「ハムザレストラン」

りか「ぐるたび編集部宛てに、こんな調査依頼のメールが届きました」

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「富山新港」という、富山県の港の近辺にパキスタン人が集まる地域があり、周辺にはパキスタンカレー店が多いそうです。どうしてパキスタン人が多いのか、またパキスタンカレーとはどんなものか調べてきてもらえないでしょうか?
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井上先生「富山にパキスタン人街があると聞いたことはあったが、その理由までは知らないなぁ」

りか「そんなエリアがあるんですね!私も恥ずかしながら、パキスタンカレーの定義をいまいち理解していません。例えば、インドカレーとの違いは何なのでしょうか?せっかくなので、港の付近にあるパキスタンカレー店を調査しに行ってみましょう!」
ということで、やってきたのは富山地方鉄道本線・越中三郷駅から車で約7分の「ハムザレストラン」。2015年2月にオープンしたパキスタンカレー店です。
「イラッシャイマセ!」
片言の日本語で迎えてくれたのは、料理長のアリさん。なんと、かつてムシャラフ元大統領のもとで料理人をやっていたといいます!日本に来てまだ数年だそうで、ほとんど日本語は話せません。なので、お互いに片言の英語でやりとりをすることに。
▲店内は、カウンター席とテーブル席あわせて35席。入店したときは、パキスタン人と思われる外国人のお客さんが多くいらっしゃいました

まるで肉料理!ボリューム満点のパキスタンカレー

さっそくカレーを注文しましょう!今回は、お店のおすすめメニューをオーダーすることに。すると運ばれてきたのは、なんと…「ビーフシチュー」!
▲「ビーフシチューセット」(税込1,620円)。2枚まで食べられるナンorロティorパラタor食べ放題のライス(写真はナン)、サラダ、ドリンクがついてくる

井上先生「え?ビーフシチューですか?我々はパキスタンカレーを調査に来たので、カレーを食べたいのですが…」

アリさん「パキスタンでは、ビーフシチューもカレーの一種類と捉えられているんだ。お祝いの時など特別な日に食べる料理だよ」
りか「たしかに『カレー』って、どこからどこまでがカレーと定義するのか難しいですよね。欧風カレーやインドカレーだけでなく、日本独自に進化したカレーパンやカレーうどんなどの食べ物もありますし」

井上先生「身近な『カレー』について改めて考えてみると、“カレーって何なのだろう?”と思ってしまうよね。カレー大學では、カレーの定義を『混合香辛料、またはそれを調味料として使った料理』としている。つまり複数のスパイスを使っていればカレーと言えるんじゃないかな。そういう意味では、この『ビーフシチュー』もカレーに分類されるな。まぁ、アリさんがカレーと言うんだから、まずは食べてみましょう」
井上先生&りか「いっただきまーす!」
▲パクっ

りか「う~ん!おいしい~!でもカレーでもビーフシチューでもなく、肉料理って感じです。ピリっとした辛味の効いた牛肉は噛み応えもあって、ボリュームも満点だし、お腹空いているときに持ってこいのメニューですね」
井上先生「たしかに、ビーフをメインに味わうカレーだね。これだけお肉がゴロゴロ入っていれば、男性の私でもお腹いっぱいになりそうだよ」

インドカレーとパキスタンカレーの違いはどこにある?

▲牛肉が大きくスライスされている

りか「あれ?でもよく考えれば、インドでは牛肉を食べませんが、パキスタンでは牛肉が食べられているんですか?」

井上先生「ざっくり分ければ、インドがヒンドゥー教徒、パキスタンはイスラム教徒が多い国だから、パキスタンでは牛肉を食べるんだよ。この辺はカレーの知識というよりも、大人の常識として知っておいてもらいたいな」

りか「す、すみません~!私、大学受験は日本史だったからなぁ(汗)」

井上先生「…やれやれ」
井上先生「アリさん、この香りはなんでしょう?」
アリさん「ブラウンカルダモンの香りのことかな?インドでは清涼感のあるグリーンカルダモンをよく使うのに対して、パキスタンではやや薬のような芳香のブラウンカルダモンを使うんだよ。このブラウンカルダモンは、ビッグカルダモンとも呼ばれているね」
▲「ビーフシチュー」に使うホールスパイス。ビッグカルダモンは、写真左上にある茶色い楕円形のもの

りか「あ!以前、調査した神奈川県にあるパキスタンカレー店の『サリサリカリー』でも、ビッグカルダモンを使っていました。パキスタンでよく使われるスパイスだったんですね」
井上先生「他にもインドカレーとパキスタンカレーの違いはあるんですか?」

アリさんによれば、パキスタンカレーの特徴は肉や豆をがっつり使うことだと言います。また、玉ねぎとトマト、ニンニク、ショウガ、ホールスパイスをベースにした汁気が少なめのカレーソースが多いそうです。一方でインドカレーだと、汁気のあるカレーソースが一般的で、カシューナッツなどのナッツ類やパウダー状のスパイスをよく使うとのこと。
アリさん「パキスタンのカレーは、煮るというよりも炒めるって感じかな。『ビーフシチュー』を作るときも、牛肉はやわらかくするために煮るけれど、そのあとは玉ねぎやスパイスなどと合わせて、さっとフライパンで炒めるんだよ」
りか「なるほど!そういう違いがあったんですね。『インド・パキスタンカレー店』とセットになっているパターンが多いから、大体一緒なのかと思ってました」

井上先生「ああ。そういうお店が多いけれども、きっと日本でたとえるなら日本料理と中華料理くらい違うんじゃないのかな?」
井上先生「ちなみにりかさん、ナンとロティの違いは知ってる?」

りか「なんだろう?焼き方の違いですか?」

井上先生「正解は、ナンは小麦粉や卵、牛乳、砂糖、塩、油を使って発酵させるのに対して、ロティは全粒粉と水、塩だけで発酵させないんだ!この違いも覚えておくといいよ。それから、パキスタンといえば『カラヒ』という鉄鍋が有名だね。カラヒで炒めたり煮たりして作ったカレーソースのことを、『チキンカラヒ』『マトンカラヒ』と言ったりするんだ」
▲左右に取手がついた鉄鍋のことを「カラヒ」という。写真はカラヒを模した器

りか「これ、『カラヒ』という名前だったんですね。また一つ、賢くなりました!」
▲最後は、チャイを飲んでお口直し

なぜ富山にパキスタン人が集まっているの!?

ところで、なぜ富山にはパキスタン人街があるのでしょうか?
アリさん「聞いた話によると、1990(平成2)年頃にパキスタン人がロシアに日本車を卸す貿易をしていたらしいんだ。富山新港がロシアに近いから、それで富山に集まったそうだよ」

パキスタン人のビジネスの場に日本が選ばれた理由は、日本だとビザが取りやすかったからだとか。しかしロシアの関税が変わったことを機に儲からなくなり、母国に帰ったり、富山を離れたりしたパキスタン人も多いそうです。それでもなお富山新港付近には、現在も多くのパキスタン人が住んでいます。

では井上先生、カレーの評価をお願いします。
井上先生「『ハムザレストラン』のカレーチャートはこちら!」
井上先生「『ビーフシチュー』というメニュー名だけど、日本で食べるビーフシチューとは異なっていたので、オリジナリティ度は4。富山のパキスタン人街で食べるカレーだけに、ご当地グルメ度も4。パキスタンカレーとインドカレーの違いについてもしっかり勉強できたね」

りか「はい!今日はカレーだけでなく、社会の勉強もできました」
▲最後はシェフのアリさんとパシャリ!

富山でパキスタンカレーを食べるなら「ハムザレストラン」へ。
ご協力ありがとうございました!

井上岳久(カレー大學学長/株式会社カレー総合研究所代表)

カレー業界を牽引する、業界の第一人者。横濱カレーミュージアム責任者を経て現職に至る。カレーの文化や歴史、栄養学、地域的特色、レトルトカレーなど、カレー全般に精通。レトルトカレーは全国から2,000種類を収集し試食している。著書に『一億人の大好物 カレーの作り方』『国民食カレーに学ぶもっともわかりやすいマーケティング入門』など多数。

名久井梨香

名久井梨香

フリーライター。毎日カレーを食べるカレー愛好家で、現在はカレーパンも研究している。カレー大學、カレー大学院卒。趣味はカレーとJリーグ。

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