柳川名物グルメ「うなぎのせいろ蒸し」。発祥の店でアツアツふわふわを堪能

2018.03.02

福岡在住なら、うなぎ料理と言えば「せいろ蒸し」を挙げる方が多いと思います。せいろ蒸しとは、その名の通りうなぎとご飯が入ったせいろを蒸し上げた料理。福岡県・柳川市の「川下り」と並ぶ名物で、市内には約30もの店舗があります。近年減少しているうなぎですが、そんななかでもせいろ蒸し発祥の店として伝統を守り続けている「元祖本吉屋(もとよしや)」に行ってきました。

九州自動車道みやま柳川ICから約10分。江戸時代に創業した「元祖本吉屋」にたどり着きます。「川下り」と「うなぎのせいろ蒸し」、柳川の2大名物の一翼を担う郷土グルメはこちらで誕生しました。

まるで旅館のような趣き。老舗の重厚さ漂う「元祖本吉屋」

柳川市内の小道を入ると、料亭か旅館のような建物が目に入ります。ココが「元祖本吉屋」。
▲葦葺(よしぶき)屋根の部分が調理場。外までうなぎの良い香りが…
▲玄関を開けた入口。磨き込まれた飴色の木が歴史を感じさせます

客席は衝立てで仕切られた大広間と個室があります。ゆっくり食事をしたい時は平日なら個室を予約可能ですよ。土日祝日は予約できないのでご注意を。
▲中庭を見渡せる大広間。1つのテーブルに広めのスペースを設けているのでゆったり

全140席のこんなに広い店舗でも昼時は平日でも列を作るほどの、地元では有名な人気店です。

基本的にメニューは8つ。せいろ蒸し中心のメニュー

メニューは、名物であるせいろ蒸しを中心とした内容。「せいろ蒸し」(3,700円)と、さらにご飯の間にもうなぎが一切れ入った「特せいろ蒸し」(4,100円)には、きも吸と香物付き。それぞれ定食になると、「白焼きの酢の物」も付いてきます。
▲一番人気は、やはり「せいろ蒸し」だそう ※写真の価格は2018年2月までの価格です

その他福岡以外でも馴染み深い「蒲焼」(3,800円)や「うなぎ丼」(3,100円)、全部味わいたい!という方は特せいろ蒸しに白焼き(おろし)、白焼きの酢の物、きも吸、香物、果物付きの豪華な「南風(はえ)定食」(6,700円)もあります。うなぎ料理は、単品を除いて8種類。
単品で味わえる、タレをつけずに焼いた白焼きは、おろし(1,500円)とわさび(2,600円)、酢の物(1,000円)の3種類がありますよ。

白焼きの酢の物も味わいたい私は、「せいろ蒸し定食」を注文。
そわそわしながら約15分待ちます。

そして、やってきました!
▲「せいろ蒸し定食」4,400円

待ってましたー!!せいろ蒸し!

朱塗りの蒸し箱の蓋をあけると、一気に蒸気と香りがぶわわ~っと!
このてりってりのタレが、何とも香ばしい…。うなぎの匂いだけでご飯が食べられる、という小噺を思い出します。今ならわかりますよ!その気持ち!

ふわっふわのうなぎとご飯!この柔らかさに悶絶必至

さぁ、早速いただきます!!

うなぎに箸を入れた瞬間にわかる、この柔らかさ。熱々のまま口にほおばります!
▲この瞬間からもう幸せ…!

ん~~!!
もう言葉にならない幸福!甘辛いタレがうなぎにもご飯にもまんべんなく絡んでいて、口の中が旨みでいっぱいです。そして、何といってもこの柔らかさ!これがせいろ蒸しの醍醐味!アツアツのふわっふわ。噛まなくてもほろりとほどける、柔らかさを例えるならパンケーキやスフレと言った感じなんです。

うなぎもご飯もふわふわだから、まったく重く感じることもなくアクセントの錦糸卵も絡めて最後までアツアツのまま食べられます。

白焼きにしたうなぎにサッと酢を絡めた「白焼の酢の物」も、濃厚なせいろ蒸しの合間にいただくのにぴったり。
▲「白焼の酢の物」は単品でも注文可。さっぱりとしていて、お酒の肴にもいいですね

「せいろ蒸し」って、「蒲焼」とどこが違う?

幸福感に包まれた食事の後、このふわふわ食感のヒミツについて「元祖本吉屋」の専務取締役、一安(いちやす)さんにお話を伺うことができました。
▲一安健太郎さん。現在10代目に当たられる本吉勉(つとむ)さんの義弟になられます

「一般的に蒲焼はうなぎを炭火で地焼きし、さらにタレを付けて香ばしく焼き上げた料理ですが、せいろ蒸しは、まずご飯にタレをかけて馴染ませるために蒸し、さらに蒲焼にしたうなぎをご飯の上に乗せて蒸す料理です。2度蒸す工程がありますね」。※関東の蒲焼は一度蒸す工程が入ります。
▲このせいろで、タレをまぶしたご飯を蒸します。ご飯はほぐして空気を入れることでより柔らかさが出るのだとか

福岡生まれ福岡育ちの私、実は「せいろ蒸し」が関東や関西では馴染みがないことを知りませんでした…。それだけ、地元にとってはうなぎ料理=せいろ蒸しというポピュラーな料理。この調理法を考案されたのはどういったきっかけだったのでしょう。

「初代が江戸で刀鍛冶をしていた際に関東の蒲焼を知り、地元柳川に戻って考案したと言われています。当時の柳川はうなぎの名産地でしたから。皮が堅かったうなぎを柔らかく、そしてアツアツのまま提供できないだろうか、と考えた末にできたのではないかと聞いています。せいろ蒸しには“柔らかくする”ことと“アツアツのまま食べていただける”という2つの利点があるのです」。
▲最後までアツアツのままいただけるせいろ蒸し。ご飯も全体にタレが馴染んでいるから、どこを食べても美味しい!!

旨みが蓄積された秘伝のタレ。受け継がれる330余年の味の深み

そして柔らかさに加え、この濃厚なタレ!ご飯までしっかり染み込んでいるので、ご飯でもうなぎでも堪能できます。このタレだけでご飯何杯もいけちゃいそうです。
▲秘伝のタレ。製法を知っているのは、支店を含む3店舗のうち数人なのだとか

「この秘伝のタレは、創業当時から受け継いでいるものに継ぎ足しながら使っています。炭火でうなぎを焼いた後にタレにくぐらせているので、うなぎの旨みや脂が染み込んでいます。本吉屋では焼き場のとなりに秘伝のタレを置いているので、香ばしく焼いたうなぎをそのままタレに“ジュッ”と滑らせるんですよ」。

うなぎも串打ちしたものを焼くのかと思っていたら、開いたうなぎを丸々1本そのまま!数回タレにくぐらせ焼きあがったうなぎをカットし、ご飯に並べます。この調理法も創業当時から変わらないそう。
▲丸っと1本のうなぎを香ばしく炭火で。炭火は備長炭と、火力を微調整できる樫炭をミックス

江戸時代から変わらない製法、変わらない味。だからこそ難しい

大変な点はありますか?の問いに一安さんは少し考えこう答えてくれました。
「味を変えない、ということですかね。」

うなぎの状態、天候、炭の具合…それぞれの状況に応じ微調整して、330余年の味を提供し続けていく、その難しさ。タレや製法などは変えずとも、時代の流れに沿って変化する点もあります。うなぎも然り。江戸時代は上方に卸すほど豊富だったうなぎも現在は捕れなくなり、宮崎・鹿児島の養殖産に変わっています。
しかしながら、それは現在一番美味しい味を提供するため。綺麗な水と環境で育った養殖は脂が乗って美味しい。それを分かっているからこそ。
▲1階には4部屋、2階には3部屋の個室があります。結納や還暦祝いなどの席にも対応

「元祖本吉屋」には多くのファンがいます。3世代に渡って通っている方、定期的に関東や関西などからせいろ蒸しを食べに見える方、還暦や婚約などお祝いの席で利用する方…。環境の変化に応じながらも変わらぬ味を提供し続けることがいかに難しいことか。
さらに、この重厚な店舗そのものを維持することも難しいんですよ、と一安さんは話します。
▲花を活けるのは、女将と若女将。楚々とした生け花の佇まいにホッとします

ふと見れば、さりげなく床の間や棚の上には草花が活けられています。また、どの席からも見えるように配されているという庭は、きれいに手入れされています。

「スタッフの努力の賜物です。みんな掃除や庭の手入れも楽しんでやってくれます。有難いですね。食事だけじゃない、“本吉屋”そのものが変わらず、お客さまを楽しませ続けるような存在でいたいですね」。
アツアツ、ふわふわのせいろ蒸し、そして昔も今もこれからも変わらない「本吉屋」という大きな場所を楽しみに。ぜひ柳川まで訪れてみてはいかがでしょう。
※価格はすべて税込です。
桑野智恵

桑野智恵

フリーの雑誌ディレクター/ライター。福岡生まれ、福岡育ちの博多女。3つの出版社を渡り歩き、雑誌編集歴はや18年。3歳娘の子育てをしながら、旅行情報誌を中心に活動中です。

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