カラフルでかわいすぎ!金沢の「加賀ゆびぬき」を作ってみた
加賀友禅のお針子さんたちが、余った絹糸や布、真綿などで作ったことが始まりと言われる小さな「加賀ゆびぬき」。1本1本の絹糸が隙間なく縫い詰められているので、光の当たり具合で見られる陰影もとてもキレイ!その「加賀ゆびぬき」作りを気軽に体験できると聞き、「加賀てまり 毬屋」へ行ってきました!

先人の知恵が詰まっている加賀ゆびぬき
加賀友禅の街・金沢では、かつて裁縫用のゆびぬきを自分で作るお針子が多くいました。当時のお針子たちは、加賀友禅などの仕事で用いた色とりどりの絹糸の残り糸や布、真綿を1年かけてためておき、それを用いて正月休みにゆびぬきを作ったそうです。それが「加賀ゆびぬき」の始まりです。

加賀ゆびぬきは次第に一般家庭にも広まり、実用性を保ちつつもかわいい模様が作られるようになりました。母親が娘の裁縫の上達を願って作ったり、おひな様の飾りに作ったりもされたそうです。金沢市内の旧家には、明治や大正時代に作られた古いゆびぬきが今も残り、伝わっているとか。
そんなお針子たちの楽しみと、女性のやさしさが込められた伝統ある「加賀ゆびぬき」作りが、金沢の「加賀てまり 毬屋」で体験できるのです!

お店は金沢駅から香林坊方面行のバスに乗って約13分、尾山神社前のバス停で降りて徒歩約1分の場所にあります。尾山神社前の大通りに面しているので、スムーズにたどり着けます。

「加賀てまり 毬屋」は加賀てまりと加賀ゆびぬきの専門店。
江戸時代、徳川家から嫁いできた珠姫より伝わったてまりは、古くは子供たちのおもちゃとして親しまれ、現在は玄関や部屋などを華やかに演出する工芸品「加賀てまり」として人気があります。

糸の種類は違いますが、加賀てまりと加賀ゆびぬきは、どちらも立体の土台に糸を1本1本丁寧に縫って美しい模様を織りなす作成工程がとても似ているのです。

1本1本の糸が織りなす模様は、光の当たり具合によって色合いが変わり、ずっと見ていたいほどの美しさ。ミシン作業が主流となった現代だからこそ、針仕事による精緻な美を人の手で生み出している事に感動します。
自分の好きな色を選んで作る、「加賀ゆびぬき」を体験!
店内の奥にある小さなテーブルで、加賀ゆびぬき作家の先生5~6名のうち1人の先生から直接教えてもらえます。今回は、大西先生に教えてもらいました。

ゆびぬきは小さいから、すぐできるかな…と考えていたら、体験時間内では仕上がりまではできないと聞いてびっくり。「1個の加賀ゆびぬきを仕上げるのに、約5時間か、それ以上かかりますよ」と大西先生。家に帰ってから1人で仕上げることも考慮して、大西先生が丁寧に指導してくれるそうなので安心です。
なお、体験では「2色うろこ」(2,800円・税込)か「やたら縞」(3,000円・税込)のどちらかのデザインを選んで作ります。筆者は「2色うろこ」にすることに!

絹糸を選んだら、ゆびぬきの内面の色となるバイアス布も選びます。箱の中にたくさん揃えられた色とりどりのバイアス布の中から選ぶのは1色だけ。鮮やかな赤にしようか、柔らかな色にしようか…と本当に迷いました。

次に土台作りです。加賀ゆびぬきは実用と美を兼ね備えているので、裁縫用の指ぬきとして作るなら中指の第一関節に、指輪として使うなら付けたい指のサイズに合わせます。
他にもネックレスやスカーフリングなどにも使えるので、用途に合わせてサイズを調整します。筆者は着物や浴衣に合わせてみたくて、指輪用に作ることにしました。

最初に和紙を使って自分の指のサイズを図り、それを用いて厚めの紙で自分の指のサイズの筒をつくります。この時のコツはゆとりを持たせず、ぴったりサイズの筒を作ることだそう。

次に、選んでおいたバイアス布を筒に巻き付けます。

そしてその厚紙を覆うように、バイアス布を折り返して、きっちりくるんでいきます。


これで土台の半分ができました。この時、ゆびぬきのふち部分のバイアス布の張りに少しゆとりがあると、縫いやすくなるそうです。
筒から土台を外し、続いて土台に真綿を巻いていきます。この段階ではまだ厚みも固さもさほど感じられないので、これがゆびぬきへとどう変わっていくのか…そう思うとわくわくします。

「1cm程度の幅になるように真綿を長く引き出しながら、キツめに巻いてくださいね。ピンクのバイアス布の上下がそれぞれ1mmほど見えるようにするのがポイントです」と、大西先生が真綿を土台に巻いてみせてくれます。

絹の真綿は強く引っ張ってもなかなかちぎれることはなく、むしろ引っ張りながら巻くことでツヤが出てきます。このツヤが出ることがうまく巻けた目安になるそう。最後は真綿をちぎって、撫でつけます。
土台作りも大詰め。次は、土台に等分印を付けます。真綿を巻いた土台1周分の長さの和紙に、ボールペンで上下に等分印を、中央には進行方向の矢印を書きます。この矢印が作業中とても大切な目印となってくるので、細かく多く書くのがおすすめだそう。2色うろこを作るので、8等分の印を付けました。糸のスタート位置は色ペンで大きめに印を付けておきます。

いよいよここから、かがりの作業です!糸巻きから1mほど糸を取り、玉結びをせずに2度ほど真綿の中をくぐらせ、スタート位置に糸を出します。後は等分印を拾うようにして、大きなジグザグを描くように縫っていきます。

初めの青い色糸が1周したら、青糸が通った針は針刺しに刺し、もうひとつの薄紫の色糸を用意して、スタート位置の右隣にある等分印から1周かがっていきます。これを和紙が隠れるまで交互に繰り返していきます。
1周ごとに色を変え色糸をかがっていくのですが、隙間ができないように糸を並べて縫う作業はかなり集中するもの。あっというまに時間が経っていきます。

お店での体験時間内では、3~4周かがったところまでで終了。見本と見比べると完成までまだまだですが、周を重ねるごとに集中力が上がり、もっと縫いたかった…と名残惜しさを感じました。
家でこの続きができるようにと、使用していた針2本と色糸2本、そして和紙と厚紙、真綿の残りをセットにして渡してもらえます。
「体験分を仕上げるのはもちろん、加賀ゆびぬきをあと数個作れる材料の量なので、ぜひご家庭でも作ってみてくださいね」と大西先生。
一度はなくなりかけた伝統を一人でも多くの人が知り、実践してくれれば…というやさしい思いが感じられます。
絶対に仕上げるぞ!

直線のみの組み合わせで生まれる加賀ゆびぬきの幾何学模様は、「2色うろこ」のような簡単なものから先生が作る複雑な模様までいろいろ。基本は同じとのことで、経験を重ねていろいろな模様にチャレンジしてみるのも面白いかもしれません。
加賀てまりと加賀ゆびぬき作品は購入可能






体験後だからこそ、精緻な模様が鮮やかに描き出される作品の数々に感心しきりです。
家で加賀ゆびぬきづくりの続きにトライ!


色糸がうろこの形をはっきりと成し始めると、モチベーションも上がります!隙間なくぎっしりと色糸をかがり縫いする緊張感と集中は、ものづくりならではの楽しさでもあります。

家で縫うこと合計約6時間。ようやく自分の手で作った加賀ゆびぬきができあがりました!初めて作ったため、ところどころ不格好な箇所が見られますが、達成感と愛着はなお一層深いものに。しかもとても軽いんです!もちろんゆびぬきとして使える固さもありましたが、やっぱり初志貫徹で筆者は指輪にしました。
今回の加賀ゆびぬき作り体験では、工芸品を自分で作る楽しさと奥深さに夢中になりました。手芸好きな人なら「次に作る時はこの色と模様で…」と、もっとハマりそうです。
古都・金沢で本場の加賀ゆびぬきを作ってみたい人も、大切な人へプレゼントとして作品を選びたい人も、ぜひ実際に訪れてみてくださいね。


SARYO
石川県の温泉地として名高い南加賀在住のライター・エディター、時々シナリオライター。北陸の地域情報誌に10年勤めていた経験と、国内も国外も興味津々な好奇心をフル活用し、さまざまな情報をお届けします。歴史、神社仏閣、旅、温泉に強く、利用者と同じ目線を重視するスタイル。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
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