陶芸の町・益子から「スターネット」が発信する、土地に根ざした衣・食・住のかたちとは?

2015.11.08 更新

1998年に陶芸の町・益子に誕生した「スターネット」は、自然と調和した暮らしのあり方をいちはやく提案してきたショップ&カフェ。ていねいな手仕事でつくられた商品やオーガニック食材を使った料理は「スターネット」でしか出会えないものばかりです。「スターネット」には、心豊かに暮らす知恵がたくさんつまっていました。

▲スターネット正面

益子のメインストリート「城内坂通り」からつづく「里山通り」を抜けると、緑豊かな風景があらわれます。そんな穏やかな景色と共存するように佇むモダンな建物が「スターネット」です。

ここには、「スターネット」が注目する若手クリエイターたちがつくるテーブルウェアやアパレルアイテム、オリジナルサウンドレーベルのCDなどがそろうショップと、オーガニック食材でつくられるフードやドリンクを楽しめるカフェがあります。
▲器やポット、カトラリーは、どれもシンプルなデザイン

“本当に豊かなもの”を求めて「スターネット」をオープン

「スターネット」の創業者・馬場浩史(こうし)さんは、もともと東京でファッションブランドを営み、忙しい毎日を送っていました。

馬場さんは、忙殺される流通社会の中心にいる自分の仕事に精神的限界を感じ、「本当に豊かなものはなにか」「もっと人間らしい地に足のついた暮らしをしたい」と思ううちに東京を離れることを決意。自分の居場所を探すため、各地を訪れるようになりました。

そして、たまたま仕事で焼物をつくるために訪れた益子で、その地形、土地の恵み、そこで暮らす人々に感銘を受け、1998年38歳のときに益子へ移り住み、ギャラリー&カフェとして「スターネット」をオープンしました。

「スターネット」を拠点に、サウンドアートや写真、ペインティングなど、それまで益子になかった文化を紹介するほか、オーガニックや手づくりにこだわり、益子の土地に根ざした衣食住のかたちを追求してきました。

それから17年。「スターネット」が発信するライフスタイルの提案は、全国から注目され、多くの若手クリエイターたちにとって益子を訪れるきっかけとなる中心的な存在となりました。
▲「starnet」とは、「地上に降りた星」の意味

有機栽培の食材を使った料理をゆっくり味わう

店内に一歩足を踏み入れると、洗練された空間が広がり澄んだ空気にやさしく包まれます。まずは、入口を入って右手にあるカフェスペースで、日替わりのキッシュプレートとシフォンケーキをいただきました。

料理を待つあいだ窓の外に目を向けると、木々が風に吹かれてゆらゆら……。時間を忘れて、心身ともにほっとリラックスできました。
本棚には自然や暮らしにまつわる本が並んでいるので、思い思いに開いてみるのもいいでしょう。
▲日替わりのキッシュプレート。スープ付き(税込1,100円)
▲どっしりとした厚みがうれしい!

キッシュは、濃厚なのに口あたり軽やか。生クリームは使用せず、群馬東毛(とうもう)酪農の「みんなの牛乳」と、隣町・市貝町のひのきやま農場の平飼鶏の有精卵を使うことで、コクのある味わいに仕上げています。

色鮮やかな付け合せの野菜は、「山崎農園」のもの。
「食材は、〈どこで、誰が、どのように〉つくったものかきちんと分かるものだけを使っています。それが説明できないものをお客様にお出しすることはしていません」と、キッチンスタッフの小曽戸さん。
▲シフォンケーキ(税込400円)と、オーガニックコーヒー(税込400円)。コーヒー豆は、化学薬品や・化学肥料などを一切使わずに昔ながらの栽培方法で育った生豆からつくられている。


シフォンケーキは、しっとりふわふわ。青柚子と菜の花のハチミツソースがかかっていて、いちじくが添えてありました。
なんと、このいちじくは、「スターネット」の敷地で育てたもの。実がぎゅっとつまって、みずみずしい!フレッシュな香りとともにいただきました。梅やりんごなども育てているそうで、季節ごとに旬の素材に出会えるのも楽しみですね。


食後にフードショップで買いものをしていると、有機栽培の野菜の価格に驚きました。都心であれば倍の値段では?と思うほど手頃な価格です。
「有機栽培の野菜は特別なものではなく、基本の食材であるべき」という思いが、価格へも反映されているのです。
▲フードショップには、無農薬の野菜やパン、調味料、オーガニックスキンケアアイテムなどが並ぶ
▲有機栽培の野菜がうれしい価格で手に入る。人参、茄子、ピーマンなどが袋に5~8個入ってどれも100円台!
▲体調に合わせて選ぶ人気の薬草茶「山野草茶(さんやそうちゃ)」(山野草茶/税込1,868円、かきねごし茶/税込1,647円)
▲珍しい野菜を買ってみるのも楽しい。この日は、「花びら茸」「たもぎ茸」「あわび茸」など珍しいきのこが売られていた

手づくりのものを大切にし、オリジナル商品をそろえる

ショップには、「スターネット」を通じて馬場さん夫婦が出会った作家さんの作品のほかに、浩史さんがデザインした陶器や「スターネット」のなかでつくられた洋服も並びます。
自ら手を動かしてつくることで、暮らしのなかに本当にフィットする素材やかたちが自然と見えてくるそうです。

商品はどれも長く愛用したいと思うものばかり。そして、暮らしのなかで、本当に必要なものをきちんと選ぶことの大切さを、そっと教えてくれるようでした。
▲益子の陶芸作家さんの作品。訪れるたびにお気に入りが見つかりそう
▲浩史さんがデザインしたテーブルウェア
▲肌触りのよいニットやマフラーのほかに、靴下や鞄などの小物もある
▲「スターネット」で使用されている足踏みミシン
▲建物は自分たちの手でつくり上げた。釘を使わない伝統工法の柱を再利用。木組み部分に、真っ白な漆喰を埋めているのがなんだかチャーミング
▲屋根にはソーラーパネルが設置されていて、電力も自給している
▲この場所でレコーディングされた「スターネット」オリジナルレーベルのCDもある
2011年にはヘアサロンもオープンしました。カット席はひとつだけ。落ち着いた空間の中でリラックスしながらカットしてもらえます。天然成分のハーブシャンプーを使用し、土地を汚さないようにパーマはせずカットのみ。
▲ヘアサロンの美容師・野口かつやさん(右)ご家族。東京から益子に移住し、このヘアサロンを開いた

オープン以来、サステナブル(持続可能な)カルチャーの発信地として、全国からも注目されてきた「スターネット」。

「からだをアンテナにして何を感じるか。そして、感じたものに手入れをする。そうすれば、自分たちに本当に必要な食べものも暮らしも、おのずと決まってくるのではないでしょうか」(スタッフ談)

ゆったりと流れる時間の中で、「スターネット」の中にあるものをひとつひとつ見ていると、益子の豊かな自然や、つくり手たちのスピリットが伝わってくるようでした。そしていま一度、自分の暮らしに本当に必要なものは何かを改めて考えることができました。

益子を訪れたら、ぜひ「スターネット」に立ち寄ってみてください。まるでパワースポットのような、エネルギーに満ちた空間を体験することができるでしょう。


写真・阪本勇
齋藤春菜

齋藤春菜

編集者、ライター。出版・編集プロダクションデコ所属。女性の美容・健康・ライフスタイルに関する書籍、雑誌を多数編集・執筆。文芸、料理、アート本の編集も行う。全国各地へと取材に訪れたさいには地元のおいしいお店を必ずチェックする。編集を担当した本に『お灸のすすめ』『瞑想のすすめ』(ともに池田書店)、『足もとのおしゃれとケア』『わたしらしさのメイク』(ともに技術評論社)、『はじめてのレコード』(DUBOOKS)、『顔望診をはじめよう』、『月の名前』、『健康半分』などがある。

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