富山の新スポット「富山県美術館」は、アートや立山連峰の絶景が無料でも楽しめた!

2018.02.12 更新

立山連峰を望む「富岩(ふがん)運河環水公園」のすぐそばに、2017年8月に移転オープンした「富山県美術館」。前身の「富山県立近代美術館」で有していた国内屈指の20世紀美術作品の展示はそのままに、「アートとデザインをつなぐ場」を目指して、楽しくてわくわくできるみんなの美術館へと生まれ変わりました。その魅力をご紹介します!

アートを体感できる仕掛けがいっぱい!

1981(昭和56)年から親しまれてきた「富山県立近代美術館」を閉館し、2017年にすべてが新しく生まれ変わった「富山県美術館」。富山駅北口から徒歩約15分で行けて、しかも「世界一美しいスタバ」があることでも話題になった「富岩運河環水公園」(以下、環水公園)のすぐ隣というすてきな立地です。
▲環水公園から見た富山県美術館

ピカソやミロ、ベーコン、ロートレックなど、地方美術館のコレクションとしては著名なアーティストの作品を有し、約3ヵ月ごとにテーマと作品を変えて常設展示しています。そのほか、無料エリアでは体験型のアートなどもあり、大人も子どもも楽しめるようなアートとデザインが集まっています。
▲雄大な富山県美術館外観

富山県美術館は富山のTとアートのA、デザインのDをとりTAD(タッド)の略称を持っています(以下TAD)。
「安曇野ちひろ美術館」などをてがけた高名な建築家・内藤廣(ひろし)さんが建築設計を担当したTADは、ガラスを多く配したホワイトキューブの外観が印象的で、東西南3方向それぞれに大きなガラス面が多く配されています。中でも東側は環水公園に面し、好天時には立山連峰が望める景色の良さが人気です。
▲正面入口のつぶつぶのアルミの扉

まず最初にふれる富山のアートがこちら。一見ふつうの入口扉に感じるのですが、実はこれ、アルミに細かなつぶつぶを施し、さらに鏡面磨きで艶も出しているのです。扉なのでつぶつぶにふれることができ、楽しい触感です。

アルミは富山の代表的な県産材のひとつ。施設にはいくつかアルミ素材のものがありますが、そのうちの外壁と内壁、天井には富山のアルミが使用されています。形と光の当たり具合によっては、一瞬アルミだと気づかないほどさまざまな表情を見せています。

さて、入口を入ってすぐ、右を見ると目に入るのがこちら。
▲真っ赤な壁が印象的な、1Fのチケット売り場横にあるTADギャラリー

鮮やかな赤色の大壁に圧倒されます!TADギャラリーは、県民の創作体験の発表や、アトリエの公開制作などを紹介する場などに活用され、展示はわりと短いスパンで変わるそうです。広い館内での待ち合わせにもおすすめかもしれません。

階段をのぼり、2階に進むと高さ11mの吹き抜け空間が広がっています。
▲2階のホワイエ。窓から見える景色がすばらしい!

TADは道路に面しているため、本来なら道路の曲線に沿ってガラスもゆるやかにカーブするところですが、ここでは直線のラインで設計されています。その理由は「立山連峰と平行に面するため」とのことで、この大きな窓ガラスから見る景色も大きなポイント。環水公園も見渡せる方角なので、桜や新緑、雪など四季折々の自然の彩りも楽しめます。
吹き抜けで広いため、ここでコンサートやトークショーなどのイベントが開催されることもあるそうです。

ホワイエからすぐ左には展示室が4室あり、それぞれの展示室は1つの中央廊下によってつながっています。
▲すっきりと長くのびる2階の中央廊下。まるで洞窟みたい

各展示室をつなぐ廊下は、美術館としてはかなり長く距離がとられた珍しい設計。ホワイエ側から入ってふと後ろを振り返ると、まるで洞窟に入っているかのような感覚がします。

この中央廊下は2階と3階のほぼ同じ位置に、TADの真ん中を貫くように配されています。見た目が同じなので、今2階にいるのか3階にいるのかちょっと迷います。でも、木の組み方や空間の空き具合など、細かな部分が異なるので、比べてみるのも楽しいかもしれませんね。
▲3階の中央廊下もまっすぐ伸びていますが、こちらは光がたっぷりで明るい!

展示室では企画によって和・洋どちらの展示も行うため、展示室へと導くアプローチである中央廊下にもこだわりが。天井と壁には絶妙な丸みを帯びたカットが施された氷見(ひみ)の里山杉を使い、和洋に合うデザインになっています。
▲細長い棒状に何千本もカットされた里山杉。ぜひ触れてみて

あえてフラットに仕上げず、細かな木組みで立体的にしてヌケ感のある美しさを演出。また、声や足音を吸収する吸音材も天井や壁の奥に入れ込み、静寂な空間も作り出しています。長い廊下を歩くうちにアートに向き合う気持ちが整えられていくようです。

2階からは屋外広場に出ることもできます。屋外広場には「ANIMALS」で知られる彫刻家・三沢厚彦さん作の大中小のクマの彫刻が3体展示されています。クマの姿を借りた阿弥陀如来が佐伯有頼(さえきありより)を導き、開山させたという立山の開山伝説にちなんで、クマを展示しているそうです。
▲左が大、右が中。広間隔で展示されているため写真には大・中の2体しか収まっていませんが、向かって左のほうにも小さいクマが1体いるんですよ
▲早くもTAD屈指の人気者になっているクマ(大)。見晴らしがいいので撮影スポットとしても人気です

下から見るか上から見るかでクマが雄々しく見えたり、笑っているように見えたりします。
このクマの作品、実は2階の屋内にもう1体あるんです。ぜひ実際に行って探してみてくださいね。屋内と屋外での展示なのでそれぞれ素材も異なりますよ。
なお撮影は自由ですが、アート作品なのでくれぐれも手を触れないようにして楽しみましょう。

続いては館内に戻って3階中央廊下へ。3階には展示室5と6の2室あり、展示室5ではポスターと椅子を中心としたデザインコレクションが常設で展示されています。展示室5の入口そばにある壁には、大きなポスタータッチパネルがあります。
▲3階中央廊下にある80インチの大型ポスタータッチパネル

こちらも展示室5の展示物のひとつ。TADには約13,000点ものポスターコレクションが収蔵されていて、そのうち3,000点をデジタル作品に特化したウルトラテクノロジスト集団「チームラボ」と凸版印刷との共同開発による「ポスタータッチパネル」で展示しています。

タッチパネルに次々と浮かぶポスター画像の中から気になるものをタッチし、拡大して鑑賞すると、そのポスターの作家や年代などの詳細や関連するポスターも表示される仕掛け。閲覧していくうちに自分の好きなデザインの傾向がわかってくるのも楽しい!

展示室内は印刷されたポスターがいくつか展示されているほか、世界中から選び抜かれた名作椅子がずらりと展示。実際に座ることができる椅子もあります。
▲年代を問わず、秀逸で美しいデザインの椅子が集められています

収蔵している椅子はなんと約240脚!約3ヶ月の展示替えで常に約50脚程度展示しているそうです。貴重なヴィンテージものだけでなく、デザインが優れた量産品も収集。
棚に参列されている椅子はもちろんですが、白い台座の上に展示された椅子は鑑賞のみ。直置きで展示されている椅子は実際に座って体験できる椅子だそうです。

「椅子は身近なアート作品。座ることでデザインの楽しさ、自分の好みを再発見してもらえれば」とTADの広報担当の北澤さんが話してくれました。

そして、この展示室の奥にはTADにとって心臓部ともいえる、大切で特別な展示室6があります。
▲オレンジ色に錆びさせた鉄板壁を入口に持つ展示室6は、ほかの展示室と違ってシックな雰囲気

こちらは、富山県出身の詩人であり美術評論家、瀧口修造氏のコレクションを集めた展示室。瀧口氏の書斎をイメージして作られ、彼が使っていたインクの色にちなみブルーブラックで統一。中には瀧口氏と交流のあった著名人からの贈り物や交わした書簡など、さまざまなコレクションが所狭しと並びます。

奥へ進むと世界的な音楽家シモン・ゴールドベルクと山根美代子夫人が生前に愛蔵していた絵画、版画、彫刻などの美術品が展示されています。

アートの図書を眺めたり、創作体験も楽しんで

3階の展示室5の隣には図書コーナーがあります。かわいい椅子が配されていて、ゆったり過ごせるスペースにもなっています。
▲アルヴァ・アアルトやイサムノグチの椅子が配されています

図書コーナーには国内外の美術史や専門書をはじめ、ファッションや建築、アート系の雑誌などもあり、それらがコーナー内で自由に閲覧できます。

図書コーナーとは反対側の展示室5の隣には広いアトリエがあり、ガラス戸で仕切られたアトリエ部分と、扉が無く広々としたオープンなラボ部分に分けられています。
▲写真奥のガラス戸で仕切られたスペースがアトリエ部分、手前がラボ部分

アトリエでは実際に作ってみることで、よりアートへの親しみと理解を深めてほしいと、大人も子ども楽しめるさまざまなワークショップも開催しています。富山県内外のアーティストやデザイナーが企画する内容は、簡単なのに奥深いものが多いそうです。
▲過去にラボで開催されたワークショップで作ったという、色紙を用いたオーナメント。写真はステッキにしたもの

アトリエ部分では、作家による公開制作やワークショップが開催されます。基本的に無料で参加できますが、内容によっては大人向けと子ども向けがあり、材料費のみかかる場合もあるそうです。

ラボ部分では、平日と土・日・祝で異なるプログラムのワークショップが開催され、こちらはいつでも無料で体験可能です。
▲取材時にラボで開催されていた、トイレットペーパーの芯を使うワークショップの様子

今回取材したものは一例ですが、作家の公開制作やラボでのワークショップで作りだした作品は、後日、1階のTADギャラリーにて展示されることもあるそうです。これは作り甲斐がありますね!

アトリエでのプログラムやイベントワークショップの情報は、TADのホームページや館内で配布されるパンフレットなどで公開されますので、ぜひチェックを。

オノマトペの屋上は、春から秋限定のお楽しみ!

屋上には広い庭園「オノマトペの屋上」(3月16日~11月30日までオープン)があります。オノマトペとは、ふわふわ、わくわく、うきうきなどモノの動きや心の感情を表現した擬声語や擬態語のこと。まるで公園のように遊べる無料エリアとあって、晴れた日には親子で楽しむ姿が多くみられます。
▲青空に包まれる錯覚すら覚えるほどの大パノラマ。思わずため息が出るほどの眺めの良さと開放感です

もともとはTADが建つ前の土地に「見晴らしの丘」と呼ばれる公園があり、白い山状のトランポリン「ふわふわドーム」があったそうです。「子どもの遊び場を奪ってはいけない」との思いでTADを建てた時に屋上にふわふわドームを移設。さらに、ふわふわがオノマトペである事から、グラフィックデザイナー・佐藤卓さんがオノマトペを思い浮かべてから7つの遊具をデザインしました。
▲ふわふわドーム改め「ふわふわ」は大人もOK!ちなみに土足厳禁、はだしで楽しんで

「ふわふわ」は昔と変わらず子どもたちに大人気の遊具。てっきり子どもだけかと思いきや…子どもが使用していない時は大人も遊んでいいとのことで、筆者も飛んでみました!強く飛んでも大丈夫!ドーム状なので着地時に気を付ければ、ぽんぽんと弾み続けられます。懐かしい感覚に思わず夢中になりました!
▲長いラッパのような管がいくつも絡まり、誰とつながるかドキドキする「ひそひそ」

「ひそひそ」は相手の声がかなり小声でも、まるで耳元で話しかけられているかのように鮮明に聞こえ、音の伝導率の高さに驚きます。多数の管が絡まりあっているので、どれがどこにつながっているのか探すのも楽しい!
▲こちらはハンモックに揺られてうとうとできる「うとうと」

ぽってりとしたかわいいフォルムのキノコが並び、低い位置にハンモックがかけられているので、ハンモック初心者でも安心。読書を楽しんだり昼寝したりと自由に過ごせます。
▲横にぐるぐる回してもらって遊ぶ「ぐるぐる」

がっちりと太いパイプの片方にひとりが乗ってつかまり、もう一方を友人や家族の手で回してもらう「ぐるぐる」。縦揺れはなく横回転のみとなり、良く晴れた日は回りながら景色を楽しめるので、ゆっくり回転するのがおすすめ。こちらも親子に人気の遊具です。

ここまでご紹介したスペースは、全6室の展示室を除いてすべて無料。気軽にアートに触れて親しめる仕掛けがいっぱいです。

アートなお土産もお忘れなく

館内1階にはミュージアムショップがあります。企画展の図録はもちろん、TADならではのオリジナルグッズも多く並びます。
▲外光を大きく取り入れた明るいミュージアムショップ
▲「Mountain Collector handkerchief」各 2,000円(税別)

「マウンテンコレクター」プロジェクトをスタートした鈴木優香さんが登山し、そこで見た景色を撮り、ハンカチに仕立てたマウンテンコレクターシリーズ。向こうが透けるほど薄くてやわらかい生地に、山ならではの自然の色が細やかに映し出されています。濡れてもすぐ乾くので実用性も文句なしです。
▲「富山もようペンケース」各2,200円(税別)
▲「富山もようポーチ」各3,300円(税別)

立山連峰や富山湾、ガラス工芸、シロエビ、ライチョウなど富山ならではの景色や暮らし、生き物などを模様にした「富山もようプロジェクト」。ペンケースをはじめ、ポーチやうちわなどさまざまなアイテムが展開され、どれもがほっと心和むかわいらしさです。

アートな空間で楽しむふわとろオムライス

美術館といえばレストランやカフェも気になりますよね。アートを楽しむ合間、または余韻に浸りながらゆっくりと食事やお茶を楽しめるお店が、TAD内には2軒あります。
まず1軒目はオムライスで有名なレストラン「日本橋たいめいけん富山店」です。
▲地方初出店の「日本橋たいめいけん富山店」
▲大きな窓から見渡す景色がとっても気持ちいい!

3階にあるので、まるで屋外かと見間違うほどに大きな窓が印象的な広いフロア。どの席からも富山の空や町が見えて、眼下には環水公園の豊かな水が広がり、優雅な雰囲気の中で食事を楽しめます。22時まで営業しているのでディナーもでき、ここから見る夜景はとても幻想的なんだろうな…と、期待が高まりますね。
▲「タンポポオムライス」1,680円(税込)(写真提供:日本橋たいめいけん富山店)

卵の真ん中をそっと切り開くとトロリとあふれ出る半熟の卵液。ふわとろオムライスが好きな人にはたまらないひと皿です。他にもハムを使用したケチャップライスを巻いた、一般的な「オムライス」(1,320円・税込)や、富山店ならではのメニューなら「洋食やのカツ丼 黒部名水ポーク」(1,100円・税込)、「オムライス&紅ズワイ蟹クリームコロッケ」(1,630円・税込)などもあって、選ぶのに悩みそう!

富山県産の味わいをカフェで楽しんで

1階にある、ガラス張りで明るくておしゃれな「Swallow Cafe」では、ドリンクやスイーツを楽しめます。晴れた日には、テラス席もおすすめです。
▲シックな雰囲気のSwallow Cafe入口
▲おしゃれな椅子に座ってゆったりと楽しんで

カフェのコンセプトは「いつでも富山に帰ってきて羽を休めてゆっくりしてもらいたい」という優しい気持ち。そのため店名には、ゆったりと座って休む「座ろう」、古期英語で飲む・食べるを意味する「Swallow」、帰巣本能が高くて絆も強いツバメ「Swallow」と3つの意味が込められています。

こちらでいただけるのは富山県の食材を用いたプレートやスイーツ、紅茶やコーヒーなどのカフェメニューです。
▲「スワロウプレート」1,000円(税別)

プレート料理は3種類あり、中でもいくつかのベーグルがメインとなったスワロウプレートは一番人気。富山県産コシヒカリ粉を使ったベーグルはふわふわもちもちな食感で、サラダやデリカ、スープには富山県産の野菜もたっぷりで色鮮やか。デリカとスープは日替わりです。
プラス300円(税別)でデザートセット(本日のスイーツ2種から1つセレクト)になりますよ。

スイーツの単品でのオーダーなら、店頭のショーケースから好きなものをチョイス。
▲左のタルトは「白雪苺」250円、右は「ベリーチーズ」200円(どちらも税別)

タルト以外にはすわろうる(ロールケーキ)やティラミス、季節のショートケーキなどいろいろ。さらにプラス300円(税別)で好きなドリンクがつけられます。
テイクアウトもできますよ。
▲ベーグルもテイクアウト可能。いつもあるプレーン以外に季節のベーグルもお楽しみ

ドリンクだけでもOKなので、美術館の鑑賞前後に気軽に立ち寄ったり、富山の景色や雰囲気をゆったりと楽しんだりと、思い思いに過ごせるのもいいですね。
外の景色を贅沢なまでに取り込んだ開放的で明るいTAD。特別に記されていない限り、どこも入場が無料というオトクさも魅力です。富山の美術だけでなく、全国、世界へと広がってアートとデザインを集積したTADは、子どもから大人まで幅広い層の好奇心を満たしてくれるはず。
見て、触れて実感するアートとデザインのおもしろさと奥深さ、ぜひTADで感じてみてください!
SARYO

SARYO

石川県の温泉地として名高い南加賀在住のライター・エディター、時々シナリオライター。北陸の地域情報誌に10年勤めていた経験と、国内も国外も興味津々な好奇心をフル活用し、さまざまな情報をお届けします。歴史、神社仏閣、旅、温泉に強く、利用者と同じ目線を重視するスタイル。

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