東京の名店かき氷/小池隆介のかき氷あっちこっち食べ歩きvol.1 

2015.06.17 更新

かき氷はハレの日(非日常的な・特別な日)の食べ物だと思う。子供の頃は海水浴の海の家だったり、花火大会だったり。特別楽しい日にかき氷があった。大人になった今でも、店先にゆらゆら揺れる氷の旗を見るとちょっと心が躍る。最近では、昔からあった蜜仕立てのかき氷に加え、バラエティーに富んだかき氷も増えてきた。一年中かき氷を提供する店舗も増えて、四季折々のかき氷を楽しめるようになっている。かき氷の面白さに魅了され、日本各地を食べ歩いてきたけれど、まだまだ今でも新しい発見がたくさんある。昔から愛され続けたかき氷の魅力と、今なお進化している新しいかき氷の世界を、これから私と一緒に旅してみませんか。

茶師十段の極上お茶のかき氷。

「美味しいお茶のかき氷が食べたい」と言われると、「まず『しもきた茶苑大山』を食べに行ってみて!」とおすすめしている。
ここでは、利き茶資格の最高峰である「茶師十段」の称号を持つ大山泰成氏が絶品のお茶のかき氷を作ってくれるのだ。
茶師十段の選ぶお茶の香り高さ、美味しさはもちろんの事、運ばれてきたかき氷の姿を見て毎回その美しさに感動してしまう。
店内でもその大きさと美しさに、あちらこちらから歓声があがる。
氷のコンディションに細心の注意を払い、ひとつひとつ丁寧に時間をかけて作り上げる「大山」のかき氷は、注文してからもちょっと時間がかかる。けれど待つだけの美味しさがこの氷にはあると思う。ふわりと溶ける氷の繊細さと、じんわり広がるお茶の旨みに苦味。日本茶の奥深さを感じさせてくれる素晴らしいかき氷だ。
また、探究心の深い店主が3年前に開発して注目されているかき氷がある。エスプーマという食品を泡状にする技法を使ったかき氷だ。
氷の上にふんわりと盛られたエスプーマは限りなく軽く、今までに味わったことのない初めての食感に驚くと思う。
まさに泡、しかし味わいは強く長く口の中にとどまる。数種類あるエスプーマのシロップの中でも、最も秀逸と思われるのが微糖抹茶のかき氷で、お茶が好きな方にはぜひ味わってみてほしい一品だ。


三世代に愛されるイチゴと小豆のかき氷。

生イチゴのシロップのかき氷は、最近ではあちこちで食べられるようになってきたけれど、数年前まではなかなかお目にかかることがなかった。西荻窪の「甘いっ子」は、フレッシュなイチゴのかき氷を食べられる店として知られる有名な甘味処だ。
平皿に盛られたシャクシャクとした歯触りの氷に、イチゴの香りの芳醇なシロップ、ふっくらと大粒な北海道産の小豆をたっぷり添えた「いちごミルク金時」は「甘いっ子」の名物かき氷で、夏になるとできるかき氷の行列はこの町の風物詩ともなっている。
甘酸っぱいイチゴのシロップは香りと味をひきたてるように非加熱で仕上げ、こだわりの小豆も時間をかけてじっくり煮る。白玉は注文のたびに茹でるのでもっちり柔らか。職人気質の店主が先代から譲り受けた味を、ひとつひとつ大事に守って作り上げている。
イチゴのほかにも、甘味処らしいメニューが並ぶ。
昔ながらの杏のかき氷は、干し杏を柔らかく煮て裏ごしたシロップがたっぷりかかった一品で、年配の男性にもファンが多いという。
「手間がかかるシロップだけれど、これを好きないる人がいるからね、やめられない。」と店主は言う。
ここのかき氷は、今流行のふんわりとしたかき氷ではないし、新メニューが並ぶわけでもない。
ただ、いつ食べても飽きない思い出の味が、変わることなくそこにあるのが嬉しい。
先代から譲り受けた味を大事に守り続け、町の人に愛され続ける「甘いっ子」は、古き良き昭和の時代のかき氷を提供してくれる名店
のひとつだと思う。


完熟マンゴーのかき氷は『三徳堂』なしには語れない。

もうひとつ、年に一度は絶対に食べたいと思うかき氷がある。ちょっと贅沢にひと皿2,000円する、銀座・三徳堂のマンゴーかき氷だ。
台湾から直輸入する完熟のマンゴーを丸ごとひとつ使ったかき氷は、マンゴーの美味しさはもちろんなのだが氷にかかった特製の
黒蜜との相性が抜群なのだ。6月後半から約一カ月間だけ提供されるこのかき氷の時期になると、今年もちゃんと食べに行けるだろ
うかとソワソワ落ち着かなくなってしまう。
「三徳堂」は日本では珍しいプーアール茶の専門店で、店内には珍しいお茶や高価なお茶が所狭しと並んでいる。専門店ならではの豊富な品揃えの中から選ばれたプーアール茶やジャスミン茶を使った黒蜜は、店主だけしか作れないという秘伝の黒蜜なのだ。
その黒蜜を使ったかき氷は、緑豆や蓮の実など9種類もの豆を使った「豆豆氷(ドードーピン)」や愛玉子ゼリーをのせた「奇異果茉莉蜜氷(キウイマリミツコオリ)」など、ここでしか味わうことのできない魅力的なかき氷ばかり。
「豆豆氷」はちょっと地味な見た目ではあるが、それぞれの豆が持つ美味しさを存分に楽しめるかき氷で、日本の小豆とはまた違う美味しさと台湾らしさを感じることができる。食欲の落ちる蒸し暑い夏に、涼をとるだけではなく栄養も取りましょうと、日本でも台湾でも栄養価の高い豆を氷に組み合わせたのだろうか。元気になれる気がする「三徳堂」のかき氷は、夏バテしそうな時に食べに行きたいご馳走かき氷だ。

【小池隆介のかき氷あっちこっち食べ歩き】
vol.1 東京の名店
vol.2 パティシエが手がけるかき氷
小池隆介

小池隆介

かき氷のフードイベント『かき氷コレクション』実行委員会代表。かき氷専門ガイド本『かきごおりすと』の編集・発行者。一般社団法人日本かき氷協会代表。日本中のかき氷を食べ歩いて取材し、日本古来の食文化で伝統食でもあるかき氷を広く伝える為に活動。かき氷にとどまらず、氷雪業(氷の卸しや販売、製造)全体にも精通している。

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