神田&湯島天神ワンデイトリップ/小池隆介のかき氷あっちこっち食べ歩き vol.19

2017.09.10 更新

最近どうにも休みが取れない。かき氷をめぐる旅に出発できない…。毎日悶々と机に向かっていたのだが、かき氷不足によるストレスもピーク。そこで8月某日に半日仕事を忘れ、かき氷を求めて都内でワンデイトリップをしようと決めた。場所は神田。「神田明神」を出発してから「湯島天神」へと向かう道中にある3つのお店のかき氷をご紹介しよう。

▲「みじんこ」の「カスタードキャラメルパッション」

名物・明神甘酒のかき氷 「天野屋」

▲JR秋葉原駅より徒歩7分ほどの場所にある神田明神

昔、東京が江戸だった頃、真夏の暑い日に江戸っ子がスタミナドリンクとして愛飲していたのが甘酒だった。現代では、冬の飲み物と思われがちな甘酒だが、実は俳句では夏の季語としてつかわれており、暑い夏のカロリー補給や水分を摂取するのに最適な飲み物なのだ。1846(弘化3)年創業の甘味処「天野屋」では、今でも店の地下6mにある天然の土室で、化学添加物を一切使わず、米と糀だけの伝統的な製法で甘酒を造っている。
初めてこの店に訪れた時、神田明神の鳥居とお店がぴたりと寄り添うように並んだ美しい佇まいに感動した。秋葉原の街中からわずか徒歩10分でこんな風景が見られるとは。

店に入ると、年季の入った机と椅子が所狭しとずらりと並び、振り子時計や鉄道模型、坪庭などの昔懐かしい風景が広がっている。まるで、入り口を入ると同時にタイムスリップしたかのような不思議な感覚だ。
▲軒先にもノスタルジックなオブジェが吊るされている

メニューを見ると、昔ながらの氷メロンや氷レモンの他、あんずのかき氷やあんみつのかき氷も並んでいる。あんみつが気になるが、まずは名物・明神甘酒を使った「氷甘酒」を注文することにした。

運ばれてきたかき氷は足つきのガラスにふんわりとかき氷が盛られているが、上には何もかかっていない。そういえば、関東の下町流は、かき氷の蜜は上にはかけずに器の下に忍ばせると聞いたことがある。
▲「氷甘酒 」500円(税込)

ちょっと粗めの氷を甘酒と混ぜると、氷に甘酒がほど良く絡んで半冷凍の甘酒のシェイクのような状態になる。スプーンで口に運ぶと、氷と甘酒が体に染み込むかのように溶けてゆく。まるで乾いた土にグイグイと水分が入っていくような感覚。「飲む点滴」とはよく言ったもんだなぁと感心しながら、最後にはぐいっと飲み干してしまった。
▲「クリーム白玉あんみつかき氷」 1,050円(税込)

「天野屋」には、あんみつやみつ豆にかき氷をのせたメニューもあり、2杯目は「クリーム白玉あんみつかき氷」をチョイスした。
2杯のかき氷で汗もひき、落ち着いて店内を見渡すと、懐かしい壁掛け時計に色とりどりのアンティークな照明。坪庭からは風が吹き込み、風鈴がチリチリと涼しげな音が聞こえてくる。秋葉原からほんのちょっと歩いただけなのに、どこか小旅行に来たような気になる、ワンデイトリップにはオススメの店だ。

珈琲で美味しくなるかき氷「自家焙煎珈琲 みじんこ」

神田明神を後にして、次の目的地は湯島天神へと向かう坂の途中。自家焙煎珈琲で人気の高い「みじんこ」という変わった名前の喫茶店だ。2016年からかき氷を提供し始め注目を集めた。「みじんこ」のかき氷のテーマは、「珈琲で美味しくなるかき氷」だという。
この日提供されていたかき氷は2種類。「ほうじ茶と甘酒~白みそ仕立て~」と「カスタードキャラメルパッション」には、どちらにも別添えのエスプレッソが付いてくる。
▲「ほうじ茶と甘酒~白みそ仕立て~」950円(税込)

まずはエスプレッソをかけずに、そのままかき氷を味わう。幾つかの異なった味の素材を組み合わせ、羽のように薄く削った氷は何層ものシロップをまとっている。食べ進むごとに味が変わって実に面白い。上にかかっているのはポン菓子(米に圧力をかけて膨らませた駄菓子)で、味だけでなく食感の違いも心地良い。
基本の味を存分に楽しんだ後は、いよいよエスプレッソによる味変だ。白味噌が隠し味になった甘酒かき氷に、添え付けの濃いエスプレッソを半分ほどかけてみる。苦味が加わったことによって、今までよりも甘酒がぐっと甘く感じられ、隠し味の白みそとエスプレッソとが良い相性を醸し出している。想像がつかなかったが、いい意味で裏切られた。
▲「カスタードキャラメルパッション」950円(税込)

一方「カスタードキャラメルパッション」は甘さ控えめのカスタードソースにパッションフルーツの香りが加わり、女性好みの逸品だ。程よい甘さのかき氷を楽しんだ後、エスプレッソをかける事で口の中がすっきりする。

最後には、器から直接飲み干してフィニッシュ。かき氷とエスプレッソふたつを楽しんだみたいな気になれる、ちょっとお得なかき氷だ。

長い上り坂の上で「サカノウエカフェ」

湯島天神と神田明神のちょうど真ん中にある「サカノウエカフェ」は、コーヒーやラテアート、ランチセットに夜のお食事セットと、一日中どの時間に行っても楽しめるこぢんまりとしたカフェである。近所に病院や学校も多く、学生や病院の関係者の人たち、または病院にかかっている人たちにも愛されているようだ。

たまたま昼時に訪れると席は満席。なんとも良い匂いのパスタセットが右に左にと運ばれてゆくではないか。かき氷目当てで訪れはしたが、こんなにいい匂いを嗅がされては食べないという選択肢はない。急遽予定を変更して、ランチセットからのかき氷を楽しむことにした。
▲「こおりのショートケーキ」1,000円(税込)

「サカノウエカフェ」の名物かき氷は「こおりのショートケーキ」だと聞いていたので、まず一つ目は「イチゴのショートケーキ」を注文。

氷の上に果実感たっぷりのイチゴシロップがトロリとかかり、その上にはふんわりとホイップがのせられている。イチゴの真紅のシロップに純白のホイップがとても美しく映えて、写真写りもバッチリ。オリジナルの旗が氷のてっぺんにたてられているのも、程よくクールでカッコいいではないか。子供の頃のお子様ランチの旗にも高揚したが、なぜこの小さな旗にこんなに気持ちが揚がるのだろうか?神田界隈の大人女子達に人気なのも頷けるビジュアルだ。
▲「HEY!すだっちー!」950円(税込)

次に注文したのはすだちをたっぷり使った「HEY!すだっちー!」。
実は以前提供されていたレモンのかき氷を食べ逃し、随分後悔していたので、期間限定のこのメニューを見つけてすぐ「2杯目はこれ!」と決めていたのだ。

すっぱいレモンとすだちを使ったシロップは、苺を食べた後だったせいか、飛び上がるほどスッパイ!しかしトッピングの生クリームを混ぜながら食べると酸味が和らいで、さっぱりとした口当たりになる。すだちは秋刀魚と食べるもんだと思っていたが、かき氷と、さらに生クリームにのせられて随分オシャレになったなぁと感心してしまった。
▲「イチジクみるく」1,000円(税込)

最後に、期間限定で提供されているイチジクのかき氷が運ばれてきた。かき氷業界では、イチジクのかき氷は秋になると提供される人気メニューのひとつなので取り立てて驚きはしないが、写真を見て随分深い紅色だなぁと思っていたら赤ワインを加えてシロップにしているのだという。
一口イチジクシロップを食べると、スパイシーな香りとイチジクの美味しさ、ワインの旨みが一気に口の中に広がった。
隠し味にクローブとシナモン。この味の深さには驚いた。これは大人のためのかき氷だ!あっさりとしたミルクシロップとも相性がいい。
さらに嬉しいのは、添えられてきたヨーグルトクリームと粒胡椒。「途中から味を加えてお楽しみ下さい」という店員さんのお薦め通り、スプーンの上で合わせて食べると、味の輪郭がガラリと変わる。こっくりしたヨーグルトの味わいにピリッと辛い胡椒の風味が加わり、これはたまらない!三者三様のかき氷をいただき、大満足の締めくくりとなった。
なかなか夏休みが取れず遠くに行きたい病が慢性化していたのだが、半日の小さな旅で仕事モードの頭の中をスッキリさせることができた気がする。かき氷を食べながらお参りもできた。スッキリした頭でさっさと仕事を片付けてしまおう。そして今度はちょっと長い旅に出かけようと思う。
小池隆介

小池隆介

かき氷のフードイベント『かき氷コレクション』実行委員会代表。かき氷専門ガイド本『かきごおりすと』の編集・発行者。一般社団法人日本かき氷協会代表。日本中のかき氷を食べ歩いて取材し、日本古来の食文化で伝統食でもあるかき氷を広く伝える為に活動。かき氷にとどまらず、氷雪業(氷の卸しや販売、製造)全体にも精通している。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

こちらもおすすめ

もっと見る
PAGE TOP