町全体が将棋盤!?将棋の聖地・天童はあっちもこっちも駒だらけ

2018.01.20 更新

最年少プロ棋士・藤井聡太四段(2018年1月時点)の活躍もあり、最近の将棋ブームには目を見張るものがありますね。将棋と言えば山形県天童市。駒の生産量で全国の約9割を占める日本一の産地だけあって、街中に将棋にまつわる施設やモチーフがたくさん!そこで、将棋ファンはもちろん、将棋に興味を持ち始めた人でも楽しめる、ちょっとレアな散策に出かけてみました。

ボランティアガイドさんの案内で将棋の町を散策!

山形市内から車で約15分。東京からも山形新幹線で約3時間とアクセス良好な天童市は、温泉地として、また生産量日本一のラ・フランスをはじめ、さくらんぼなどの果物の栽培が盛んな町として知られています(農林水産省「平成28年産果樹生産出荷税計」)。

さらに、日本一の将棋の町としても有名。天童市は将棋駒の産地で、その生産量は全国の約9割のシェアを誇ります。市内にある老舗旅館「ほほえみの宿 滝の湯」が毎年竜王戦の対局場となっていることからも、将棋との縁の深さがうかがえます。
▲JR天童駅の改札を出て正面出口のほうに進んだ吹き抜けの壁には、駒の形をした時計が。さすが将棋の町ですね

そんな天童市では、観光ボランティアガイドによる「天童駒(わらべこま)ガイド」を実施しています。今回はこのボランティアガイドに申し込んでいたので、まずは駅に隣接する案内所へ。
▲優しい笑顔で迎えてくれた、今回ガイドをしていただく斉藤昭(あきら)さん

観光ボランティアガイドをお願いする場合は、3日前までに予約が必要です(※電話またはホームページから天童市観光物産協会まで)。ガイド料金は無料ですが、ガイド時間は午前9時30分~12時、午後は13時~15時の1日2回なので予約の時にどちらか選択しましょう。

「じゃあ、行きましょう」。万歩計を付けた斉藤さんの後を追いかけるように市内散策へ出発。さて、どんな将棋にまつわるスポットがあるのでしょうか?
▲早速、駅前ロータリーのポストの上に将棋の駒を発見!

なぜ天童が将棋の町に?そのルーツを資料館で探る!

ところで、どうして天童が将棋の町になったのでしょう?そのヒミツを探るべく、まずは天童駅の1階にある「天童市将棋資料館」へ案内していただきました。
▲将棋の歴史や天童との由来のことなど、将棋のあらゆることがわかる資料館

将棋資料館では、将棋のルーツや世界の将棋・駒の製作工程・駒工人の作品など、将棋全般に関することをわかりやすく展示しています。入場料(大人300円・税込)を支払って、早速館内に入りましょう。
▲館内の様子。右側に並んでいるのは駒工人の作品

将棋の起源は5世紀頃。古代インドの宮廷で考案された軍事上の図上演習を模したゲーム「チャトランガ」でした。
▲サイコロを使い、4人で遊んでいたというチャトランガ

「日本には大陸を渡って、インド、中国、朝鮮を通じて入ってきたコースと、東南アジアから海を渡ってきたコースとが有力視されていますが、ルールや文字の形を見ると東南アジア将棋のほうが、類似点が多いと言われています」と斉藤さん。
館内には、こんな大きな将棋盤も展示されていました。通常の将棋盤は縦横9マスずつの計81マスですが、この「泰将棋(たいしょうぎ)」盤は25×25マス、駒数354枚、駒の種類は93種類というスケールの大きさ!鎌倉時代のものだそうです。

天童で将棋造りが始まったのは1830(文政13)年頃から。当時、天童藩主だった織田信長の子孫・織田信美(のぶかず)が、貧窮を極めていた藩士をなんとかしようと将棋駒の製造を奨励したのが始まりだそうです。
▲お殿様が使っていた、お弁当箱にもなる将棋盤

将棋駒の文字の入れ方には、漆で直接書く「書き駒」、字を彫ったところに漆を塗った「彫駒」、漆を塗り込んで最後に平滑に仕上げる「彫り埋め駒」、彫り駒の文字を漆でこんもりと浮き出させた「盛り上げ駒」の4種類があります。技術的に最も難しい「盛り上げ駒」は、プロ棋士のタイトル戦で使われています。
ちなみに、天童の駒に使用されている伝統的な書体は草書体。その技を受け継いでいるのは書き駒工人の伊藤太郎さんおひとりなんだとか(※現在4人の若手工人に指導中)。
▲伊藤工人が書く王将は「玉将」。いろんな書体があって面白いですね

日本に伝来した将棋のルーツをはじめ、時代とともにルールや駒の形が変化していったこと、そして天童が将棋の町になった理由について知ることができました。

撮影ポイントの多さにびっくり!将棋の聖地は、想像以上に“将棋LOVE”

ひと通り将棋のことを学んだ後は、市街地へ出発。「詰将棋」が市街地の歩道15カ所に設置されているのです。「詰将棋」とは、定められた持ち駒を使って一手を研究しながら王将を攻める遊びのこと。将棋のわかる方には楽しいポイントですね。
▲駅前広場にあるのは、持ち駒「金」三つを使って「王将」を攻めていく詰将棋
▲「ここにもあるよ!」斉藤さんの声に促されるままに歩道を見ると、ここにも詰将棋が
▲なんと電柱にも詰将棋が!思わず立ち止まって考えてしまいそう…

詰将棋以外にも街中には駒のモチーフがたくさん。駒の形をしたものを探しながら散策するのも楽しいですよ。
▲駒の形をした案内板で位置を確認しながら進みましょう
▲マンホールのフタにも駒の絵が!

天童駅から5分ほどの温泉街には、小さな川「倉津川」が流れています。川にかかる橋のうち8本に、将棋にまつわる橋の名前が付けられています。駅に一番近い「王将橋」から「龍王橋」までは20分くらいの散歩道。橋を撮影しながら、川沿いを散策するのもいいですね。
▲ここは必ず押さえておきたい撮影ポイントですね
▲擬宝珠の代わりの駒のオブジェが面白い!
▲川沿いにはしだれ桜の木が並んでおり、春は絶好の花見スポットに
▲赤い橋に風情を感じます

しばらく歩いたので、足湯でリフレッシュすることに。天童駅から徒歩30分ほどのところにある公園「わくわくランド」の敷地内に足湯があります。この足湯も、真上から見ると駒の形をしているんですよ。
▲源泉から引いたお湯は熱め
▲公園内に、高さ約1mのモニュメントを発見。羽生善治棋士や谷川浩司棋士など有名棋士5人による詰将棋のお題は15問!
▲今回は市役所にも寄り道。特別に議場に入れていただきました。駒のモチーフがどこにあるかわかりますか?

天童駅を起点に、ゆっくりと約1時間の散策。斉藤さんの万歩計は約1万歩でした(笑)。それにしても将棋の駒のモチーフの多かったこと!天童を訪れたら、皆さんもたくさん探してみてくださいね。

将棋界最高峰を決める竜王戦が開かれるホテル

市内には将棋ファンにとって見逃せないスポットがもう1つあります。

天童では主要な棋士のタイトル戦が多数開催されますが、中でも10~12月の間に七番勝負が行われる「竜王戦」(読売新聞社主催)は、将棋界の中でも序列1位の将棋界最高峰のもの。その対局が開催されるのが、天童市にある老舗宿「ほほえみの宿 滝の湯」です。
▲「ほほえみの宿 滝の湯」の広々とした館内

女将の山口隆子(たかこ)さんは対局場を提供する立場として、歴史に残るような対局と棋士たちを長年見守って来られた方。

「1994(平成元)年の竜王戦では、島朗竜王に羽生名人が挑戦しました。当時、羽生さんは弱冠19歳で、ご自分で着物を着られるのも初めてのようでした。仕付け糸が付いたままの新しい着物を持って来られてね、その糸を取って着付けをして差し上げた思い出があります」。女将さんの脳裏には様々なエピソードが蘇ります。
▲物腰が柔らかく、とても素敵な女将さん

そんな女将さんの案内で、「竜王の間」を見せていただきました。
▲そうそうたる棋士たちが対局した部屋へ

「竜王の間」は天井にカメラが設置できるように、またカメラで上から写したときに縁が入らないよう畳1枚を1.5帖の大きさにするなどの工夫が施されています。
▲円形の書院障子戸(写真奥)は、人の気配を感じられるようにするため
▲2016年11月に行われた竜王戦の様子(写真提供:天童市総務部)
▲「竜王の間」の電話は漆塗り。シンボルの駒に特別な思いが感じられます

ちなみに、竜王の間は宿泊が可能です。空室の状況を確認して予約してみてはいかがでしょうか。プロ棋士気分が味わえるかも。
▲大浴場は日帰りで入浴することもできます(11:30~15:00、税込800円)。メンテナンスのため、休業する場合もあります(写真提供:滝の湯ホテル)

その他、滝の湯ホテルには入浴と昼食付きの「日帰りプラン」(5,000円~税別/人、入浴時間10:00~15:00)や、入浴と昼食・夕食が楽しめる「0泊2食プラン」(和室タイプ7,000円~税別/人、滞在時間・最大9時間)もあり、気軽に贅沢な時間を味わうことも。入浴と朝食バイキングが楽しめるプランなど、他にもオススメの日帰りプランが豊富ですよ。
※日帰りプランで竜王の間は使用できません。
▲売店ではオリジナルの将棋グッズを販売。スリッパ(1,620円・税込)とテレビ枕(1,080円・税込)も駒の柄
▲ロビーで大きな将棋盤も見つけました

自由対局から駒スイーツまで、天童の町はまだまだ将棋だらけ!

「天童市を訪れたついでに、ちょっと将棋を指してみたい」という方には、天童市将棋資料館に隣接している天童将棋交流室を覗いてみては。毎週水曜13~18時まで開館しています(年末年始を除く)。誰でも自由に将棋が楽しめますよ。
▲天童市将棋資料館に隣接している天童将棋交流室
▲気軽に将棋を指せる施設があるなんて、さすが「将棋の町」らしいですね(写真提供:天童市総務部)

また、将棋スイーツも豊富!美味しくて楽しい駒菓子をお土産にいかがですか?天童駅ビル「パルテ」の中にある「天童市観光物産協会」で購入できます。
▲将棋がわからなくても買いたくなってしまう「御将棋諸越(おんしょうぎもろこし)」(1,080円・税込)。将棋盤に見立てた紙が入っています
▲左から「出羽の王将もなか」(6個入り550円・税込)、カステラ風の焼き菓子「王将焼」(8個入り760円・税込)、「御将棋諸越」

ついには人間まで将棋に!?

毎年4月の「天童桜まつり」では、天童市の舞鶴山(まいづるやま)山頂広場で「人間将棋」も開催。満開の桜の中で甲冑を身にまとった人たちが将棋駒になり、プロ棋士が対局を行う祭りで、毎年全国各地から約5万人もの観光客が訪れます。興味がある人はぜひ、お祭りの日にあわせて天童を訪れてみては。
▲将棋の町にふさわしい祭りですね(写真提供:天童市総務部)
天童・将棋めぐりの旅、いかがでしたか?市街地はコンパクトにまとまっているので散策しやすく、駒のモチーフ探しは大人も子どもも夢中になりそう。散策の後は、天童温泉のお湯にひたってのんびりと。テーマを絞ったレアな旅行もたまには楽しいはずですよ。
撮影:佐藤友美
佐藤昌子

佐藤昌子

エディター&ライター。山形県知事認可法人アトリエ・ミューズ企業組合専務理事。山形県内を中心にタウン誌、フリーペーパーや企業広報誌等ジャンル問わず、印刷物の企画、取材・編集の仕事を手掛ける傍ら、モデルハウスのディスプレイやリメイク等『気持ちの良い暮らし方』も提案している。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

今おすすめのテーマ

PAGE TOP