江戸時代から親しまれる「前川」のうな重を、スカイツリーを望む絶景スポットで味わう

2015.11.16 更新

下町情緒あふれる東京・浅草には、老舗のうなぎ屋が点在しています。今回訪ねたのは、創業200年以上の老舗うなぎ専門店「前川」。音楽家の故山田耕筰や作家の故池波正太郎など、多くの文化人から愛されてきた、うなぎ好きなら一度は訪れたい名店です。

▲客間はすべて隅田川に面した窓があり、スカイツリーがよく見える

都営浅草線の浅草駅A2出口から徒歩1分。「江戸通り」の脇、隅田川沿いの静かな路地に「前川」はあります。創業は、江戸時代末期。なんと200年以上も前から、江戸の通人に親しまれています。

粛然とした正面玄関の雰囲気に、自然と背筋が伸びます。ちょっと緊張しながら中へ。
▲洗練されたデザインの正面玄関
▲中に入ると、まるで老舗旅館のような雰囲気

店長がにこやかな笑顔で迎え入れてくれ、常連さんも一見さんも関係なく、1組ずつ丁寧に案内してくれます。
お店は4階建てで、1階が玄関。2階が大広間、3階・4階が個室と、シーンごとに使い分けることができます。個室を利用したい場合は、事前に予約が必要です。お昼の限定メニューやコース料理も要予約なので、注文したい方は忘れずに。

客間から浅草のランドマークを一望!

2階から4階まで、客間の窓はすべて隅田川に面しています。
まず目に飛び込んでくるのは、どーんとそびえ立つスカイツリー!
さらに、アサヒビールの本社ビルや眼前の隅田川をのんびりと行き交う屋形船、水上バスなど……まさに「浅草」ともいうべき景色が広がり、テンションが一気に上がってきました。
こんなすばらしい景観を見ながら食べるうなぎ、最高に違いない!
▲2階の客間から。景色をより楽しみたいなら、窓際の席が◎

絶妙な焼き加減を見極める、代々受け継がれる職人の技

関東のうなぎ屋では、1.白焼き(タレを付けずに素焼きすること)2.蒸し3.焼き(タレ付けをして焼く)の3工程で焼かれるのが基本です。お店によって使用するうなぎや火加減なども違うため、焼き上がりまでの時間も異なります。
「前川」では、注文が入ってから焼き上がるまではおよそ30分です。

気になる主役のうなぎは、5年ほど前までは天然のうなぎを出していたそうですが、保護の関係で今は提供していないとのこと。
現在は、千葉と高知の養殖場で特別に手をかけて養殖されているブランド養殖うなぎ「うなぎ坂東太郎」を提供しています。
「坂東太郎」とは、古くから日本一の河川として名を馳せる、利根川の愛称です。
水質管理や自然に近い餌など、環境をできるだけ自然に近づけ、天然うなぎに限りなく近い味を実現しているそう。
▲タレをつけて焼く前に、20分ほど蒸す
▲うなぎを焼く。火加減を見ながら、適切な場所に移動したり、うちわであおいで火を広げたりする
▲うなぎ調理の担当者である小林さん。焼き加減を見ながら、ひっくり返す

小林さんはこの道19年。焼けるようになるまでは10年かかったんだとか。
「その日の天気によっても、蒸す時間や焼き加減は微妙に変わってきます。今でも日々勉強中ですよ」と小林さん。

この飽くなき探究心こそが、老舗の味を守っているんですね。

創業以来継ぎ足して使われている秘伝のタレ

タレの材料は、しょうゆとみりんだけ。200年以上前から継ぎ足して使われています。
なんと関東大震災や東京大空襲のときにも、タレ壷を持って逃げたと言い伝えられているという“秘伝のタレ”です。
▲タレには3回つける

「しょうゆとみりんの配合だけでなく、タレに重要なのはうなぎ。タレの中には代々のうなぎのエキスが入っています。ずっと、いいうなぎを使い続けてきたからこそ、奥深いうなぎの味がとけこんでいる。一度でもだめなうなぎを使ってしまえば、タレもだめになってしまうんです。だから『前川』では、最良のうなぎを使い続けます」と店長は言います。
200年前の職人さんがつけたうなぎのエキスもとけこんでいると思うと、壮大な歴史の長さに感動してしまいます。
▲焼き上がり。タレの照り具合が食欲をそそる
▲タレのかかったご飯の上にどーん!

ふんわり肉厚!名店の味をスカイツリーを眺めながらいただく

いよいような重とのご対面です!
フタをあけた瞬間に、香ばしいタレがふわっと香ります。
▲「うな重 うなぎ坂東太郎」5,184円。ちなみに価格は、4,212円、5,184円、6,156円の3段階で設定されており、その差はうなぎのサイズ

お重いっぱいのうなぎで、ご飯が見えません。きも吸いとお新香、デザートが付いてきます。
▲窓からスカイツリーを見ながら、いただきま~す!

しっかりと肉厚なうなぎは、噛むと弾力があるのに、ふわふわとほどけてしまうほどやわらか。
しょうゆとみりんのタレは、あっさりと上品な味で、うなぎそのものの味を感じられます。
ほどよい脂身はジューシーでしつこくなく、どんどん箸が進みます。
▲テーブルの上にある山椒はお好みで。少しかけるだけでもピリッと、鼻からふわっと抜けるように香ります。かけすぎに注意
▲一品料理の「うざく」1,296円。きゅうりとうなぎの酢の物

「うざく」は、お酢の酸味がやさしく、あっさりいただける上品なお味。白ごまが効いていて、箸休めにもぴったりです。
今回はうな重と一緒にいただきましたが、うなぎが焼き上がるのを待つ間、一品料理をつまみに、お酒をたしなむ乙な楽しみ方もおすすめです。

「前川」のこだわりは「先代からの味を守っていくこと」と話してくれた店長。
「タレの味や製法は創業から変わらず、代々の教えを忠実に守ってきています。先代からの味を守っていくことは、これからも変わりません。うなぎは、できたてをその場で食べるのが一番おいしい。ぜひできたてを食べにきてください!」

ゆっくりとおだやかな時間が流れる隅田川沿いで、老舗の味に舌鼓を打ちながら、江戸時代に思いを馳せてみるのはいかがでしょうか。

※価格はすべて税込です。
和田めぐみ

和田めぐみ

編集者、ライター。出版・編集プロダクションデコ所属。医療・健康フリーマガジン『からころ』や、その他小冊子、ウェブ媒体の編集・執筆などを手がける。編集を担当した本に『I Love クラシックカメラ』『リンゴをほめるだけでアイデアが豊かになる本』(ともに技術評論社)、『はじめてのレコード』(DUBOOKS)などがある。

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