味が多様に変化!店主こだわりの食べ方でいただく仙台「南國堂」の南インドカレー

2018.04.30

おいしい飲食店を紹介するガイドブックといえば「ミシュランガイド」。そのミシュランガイドの宮城県版『ミシュランガイド宮城2017特別版』に、ビブグルマンとして掲載されたカレー店が仙台市にある。南インドのカレーをベースにしつつ、北インド系の要素も取り入れ、食べ方に決まりを設けるなど遊びを効かせたカレーを提供している。ひと口ずつ味が変化していく魅惑のカレーだ!(by カレー調査隊隊長・井上岳久)

どうも、こんにちは!
カレーの第一人者である井上岳久先生と、一番弟子りかです。私たち2人は「カレー調査隊」として、ぐるたび編集部に届いた耳寄りカレー情報をもとに全国津々浦々を旅しています。

今回は、『ミシュランガイド宮城2017特別版』においてビブグルマンとして掲載されたカレー店のうわさを調査してきました。

※ビブグルマン…5,000円(東京・大阪・京都)ないしは3,500円(その他地域)以下で食事ができるコストパフォーマンスの高い飲食店

仙台にある南インドカレー店「カレーの店 南國堂」

りか「ぐるたび編集部宛てに、こんな調査依頼のメールが届きました」

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『ミシュランガイド宮城2017特別版』にビブグルマンとして掲載された南インドカレー店が仙台にあります。しかし、私は南インドカレーを食べたことがありません。どんなカレーを提供しているのか調査してきてもらえないでしょうか?
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井上先生「お、このお店は気になっていたんだ。カレー好きとして有名な某ミュージシャン御用達のお店らしくてね。ちなみに、一番弟子のりかさんなら南インドカレーの特徴は知っているよね?」

りか「もちろんです!簡単に言えば、ごはんに合わせて食べるカレーで、汁気が多いタイプですよね。あと、定食スタイルの『ミールス』が有名です」

井上先生「その通り。北インドは小麦が主食なのに対し、南インドは稲作が盛んだから、米が主食なんだ。でも日本で“インドカレー”というと最初に想起されるのはナンで食べる北インドカレーの方で、南インドカレーは全国的にまだあまり知られていないのが実情。東京では、ちらほらと南インドのカレー店が増えてきたけれどね。だからこそ、仙台にある南インドのカレー店がミシュランガイドに掲載されたのはすごいことだと思うよ。ぜひ、調査しに行ってみよう!」
ということで、やってきたのは仙台市営地下鉄南北線・長町一丁目駅から徒歩約5分の「カレーの店 南國堂(なんごくどう)」。
「いらっしゃいませ!」
出迎えてくれたのは、店主の齊藤信(まこと)さん。見るからにインドが好きそうな風貌です!内装のテーマは「屋根のある屋台」とのこと。店内にはインド音楽が流れていて、まるでインドの屋台に迷い込んだかのようです。

こだわりの食べ方でいただく!「おまかせカレー定食」

では、早速うわさのカレーをいただきましょう!お店おすすめの「おまかせカレー定食」をオーダー!
▲「おまかせカレー定食」(税込1,750円)

カレーと付け合わせが各数種類と、ごはんなどがワンプレートになったミールス。週2回程度、カレーや付け合わせの種類が変わります。

この日のカレーは、左下から時計回りに「ラッサム」「里芋とほうれん草のカレー」「豆腐と椎茸のケララ風カレー」「鶏と砂肝のトマトカレー」「カジキマグロのマラバールカレー」「サンバル(生豆と野菜のカレー)」「キャベツのクートゥ(マイルドココナッツカレー)」「長葱のコザンプ(※)」。

※ゴザンプとは…タマリンドやトマトなどを使い酸味と辛味が効いたスープで野菜を煮込んだカレー
真ん中にあるのが、赤米と麦をブレンドした「ひとめぼれ金芽米」、上にのっているのが「パパド(豆でできたインドのおせんべい)」、その隣にある白色のものが「ヨーグルト」です。手前にある付け合わせは、左端から「アチャール(漬物)」「めかぶのチャトニ(薬味)」「小松菜と香り菜のボリヤル(野菜炒め)」「マンゴーピックル(ピクルス)」です。

井上先生「これだけの種類が楽しめて税込1,750円なら、むしろお得に感じるな」

りか「そうですね!砂肝からカジキマグロまで具材のバリエーションが豊富で、どれから食べようか迷ってしまいます」
井上先生&りか「いっただきまーす!」

りか「ちなみに、食べる順番ってあるんですか?」
齊藤さん「はい、食べる順番といいますか、当店で推奨する食べ方があります。まずは全種類をひと口ずつそのまま味わってください。その後、卓上に置かれた『ベースンポディ』と『菜種油』をごはんの上に振りかけます。こうすることで吐く息に風味が出て、ワインのような残り香を楽しめるんです」
▲ベースンポディとは、豆を挽いた粉のこと。きな粉のような味わい

齊藤さん「そこに『サンバル』と『キャベツのクートゥ』、辛さが欲しければ『長葱のコザンプ』を混ぜて食べてみてください。そして最後は『ラッサム』と『ヨーグルト』も混ぜて味わってみるのがおすすめですよ」

りか「へぇ、食べ方が決まっているんですね!」

齊藤さん「インドでは、各店オリジナルの決まった食べ方というのがあるんですよ。なかには、好き勝手食べるお客さんもいるんですが(笑)。最初から全部を混ぜてしまうよりも、少しずつ混ぜ合わせたほうが過程も楽しめるし、味のバリエーションも増えますよ」

ちなみに齊藤さんは、大のインド好き。年2回はインドに行き、本場のカレーを研究しているのだとか。そして、帰国するたびに新しい食べ方を提案していると言います。
ということで、教わった食べ方を実践してみることに。まずは、そのままひと口ずついただきます!
りか「お!この『カジキマグロのマラバールカレー』は、辛さ控えめで食べやすいです。カジキマグロもジューシー!」

齊藤さん「そのカレーは出すたびに好評の声をいただいています。南インドカレーの入門と言ってもいいかもしれませんね。カレーのベースは、ココナッツミルクとトマトなんです」

作り手と受け手の共同作業!味が多様に変化するカレー

さて、ひと口ずつ味わったところで、続いて「ベースンボディ」と「菜種油」、「サンバル」などのカレーをごはんに混ぜて食べてみます。
▲ごはんにベースンポディと菜種油を振りかけ…
▲サンバルを、どばっとかけていきます
本場インドでは手食ですが、「南國堂」ではスプーンとフォークを使ってOK!南インドカレーを初めて食べる方でも安心です。
▲「ん~!おいしい~!」

井上先生「こらこら。おいしいじゃなくてさ、ちゃんとレポートしてよ」

りか「いやあ、いろんな味が複雑に混ざり合っていて、表現するのは難しいですよ。でもこれって、食べ方が決まっていても、混ぜる量やタイミングによって味が変わりますよね。みんながみんな同じ味には再現できないのではないでしょうか?」
井上先生「たしかに、“作り手と受け手の2人で作り上げていくカレー”と言えるかもしれないね。南インドカレーには熱狂的なファンが多いんだけど、それは食べる側もどうやったらおいしく食べられるかを研究できるからかもしれないな」

りか「なるほど…。やっぱりカレーは奥が深いです」
▲味に変化をつけたければ、岩塩やクミン入りのブラックペッパーを振りかけてもいいとのこと

ちなみに、時には南インドカレーをベースに北インドの要素を取り入れたカレーを提供することもあるそう。
井上先生「へぇ、南だけでなく他の地域の要素を取り入れているんですか?」

齊藤さん「はい。北インドではナッツをよく使うのですが、そういったカレーも出しています。またドライフルーツなど、カレーに使うことはあまりない材料を使うこともあります。遊びながら作っているので(笑)」
井上先生「ところで、どれもスパイス使いが絶妙ですね。スパイスに関しても南インドだけでなくインド全般のものを使いこなされているように感じたのですが、どうやって作っているのでしょうか?」

齊藤さん「いや~、それは秘密ですよ(笑)。ただ、その日の食材やカレーのバランスを考え、インドの手法を駆使して調理しています」

インドネシア料理店を開くつもりが、気づけばカレーの虜に!

さすがミシュランガイド掲載店。カレーのレシピは秘密とのことですが、なぜ仙台で南インドのカレー店を始めたのでしょうか?
齊藤さん「元々は仙台にある洋食店で働いていたんですが、祖父がインドネシアと関わりがあったことから、母から『アジアにまつわる仕事をしてほしい』とお願いされまして…」

そこで、齊藤さんは独立してインドネシア料理店を開くことを決意。インドネシアでもカレーが食べられているので、カレーを研究していくうちに、南インドのカレーに出合います。油が少なく野菜中心である南インドカレーは、毎日食べることで体調改善が期待できるし、またベジタリアンやビーガン、小麦アレルギーの方にも楽しんでもらえる料理だと思ったことから、どんどん南インドカレーの虜に。そして間借り営業を経て、2012年6月に「カレーの店 南國堂」をオープンします。
齊藤さん「とはいえ、最初はなかなか南インドカレーが受け入れてもらえず苦しかったんですよ。採算が合わず、営業できるのもあと何カ月…なんて数えていましたから」

しかしある時、仙台で発行されている情報誌の表紙を飾ったことがきっかけでじわじわとお客さんが来るように。そして2017年には『ミシュランガイド宮城2017特別版』にビブグルマンとして掲載されるまでになりました。東北地方に南インドカレー店がほとんどないことから、秋田など他県からもカレー好きのお客さんが多く来店するとか。
齊藤さん「ただ、近隣にお住まいのお客様の場合は、南インドカレーを食べにくるというよりは『南國堂』の料理を食べに来るという感覚ですね(笑)。まだまだ南インドカレー自体の認知は広がっていないので、これからです」

では井上先生、カレーの評価をお願いします。
井上先生「『カレーの店 南國堂』のカレーチャートはこちら!」
井上先生「食べ方に決まりがあったからオリジナリティは5。また、詳細は教えてもらえなかったけどスパイス使いが絶妙だったのでスパイステクニックも5。東京ではなく、仙台という地域で南インドスタイルのカレーが食べられることが何よりのポイントだね。これからも先陣を切って、東北のカレー文化を盛り上げていってほしいな」

りか「はい!カレー好きだけでなく、多くの人に南インドカレーのことを知ってもらい、食べてもらいたいですよね」
▲最後は齊藤さんとパシャリ!

仙台で南インドカレーを食べるなら、こだわりの食べ方を提案する「カレーの店 南國堂」へ。
ご協力ありがとうございました!

井上岳久(カレー大學学長/株式会社カレー総合研究所代表)

カレー業界を牽引する、業界の第一人者。横濱カレーミュージアム責任者を経て現職に至る。カレーの文化や歴史、栄養学、地域的特色、レトルトカレーなど、カレー全般に精通。レトルトカレーは全国から2,000種類を収集し試食している。著書に『一億人の大好物 カレーの作り方』『国民食カレーに学ぶもっともわかりやすいマーケティング入門』など多数。

名久井梨香

名久井梨香

フリーライター。毎日カレーを食べるカレー愛好家で、現在はカレーパンも研究している。カレー大學、カレー大学院卒。趣味はカレーとJリーグ。

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