全国メディア初登場!カレー未開の地でカレー道を切り開く「笑夢」

2018.02.08

カレー専門店が少ない福島県で、長らく繁盛する人気店がある。独学でレシピを習得したという好青年が作るスパイスカレーは、シンプルなスパイス使いで、やさしい味わいに仕上がっている。隠し味に福島の特産品を入れるなど、地元愛も垣間見える。そんなカレー店だが、全国向けメディアへの登場はなんと今回が初!このカレー店の登場を機に、福島のカレー文化が盛り上がることを願う。(by カレー調査隊隊長・井上岳久)

どうも、こんにちは!
カレーの第一人者である井上岳久先生と、一番弟子りかです。私たち2人は「カレー調査隊」として、ぐるたび編集部に届いた耳寄りカレー情報をもとに全国津々浦々を旅しています。

今回は、福島県福島市で食べられるスパイスカレーのうわさを調査してきました。

全国メディア初登場!福島にあるカレー店「Curry dining bar 笑夢」

りか「ぐるたび編集部宛てに、こんな調査依頼のメールが届きました」

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今度、福島県に遊びに行くのですが、スパイスカレーを食べられるお店はありますか?近頃では、大阪や東京だけでなく各地で食べられているようですが、福島県はいかがでしょうか?おすすめのカレー店があれば教えてください。
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井上先生「福島県か~!20年以上前に、仕事でよく行っていた思い出の地域なんだよ。聞いたうわさではスパイスカレーを提供しているお店があるらしいんだ。私もまだ行ったことがないから、そこを調査しに行ってみようか?」

りか「スパイスカレーが大好きなので、ぜひ先生の思い出の地・福島県へ調査しに行きましょう!」

※スパイスカレーについて知りたい方は「コロンビア8」「旧ヤム邸」「バビルの塔」の記事へ
ということでやってきたのは、JR福島駅から徒歩約8分にある「Curry dining bar 笑夢(カレーダイニングバー エム)」。2006年にオープンしたカレー店で、店名の通り、夜はバー営業もしています。お店は建物の2階にあります。
「いらっしゃいませ!」
出迎えてくれたのは、オーナー店長の芳賀眞(はがまこと)さん。フランクな爽やかイケメンです!趣味で、DJ活動もしているといいます。
店内はカウンター席とテーブル席を併せて20席ほど。壁に飾られているのは、芳賀さんと芳賀さんの弟さんの似顔絵だそう。実は、福島交通飯坂線・岩代清水駅から徒歩約12分のところに2号店があり、そこの店長を弟さんがやっているのだとか。
▲カウンターに目を向けると、とある缶を発見!

井上先生「こ、これは…!1959(昭和34)年にエスビー食品から発売された『即席モナカカレー』(※)じゃないか!」

※即席モナカカレーとは…即席カレー粉をモナカの皮で包んだ商品

芳賀さん「あ、それっすか?お客さんが、自宅の倉庫を掃除したら出てきたとかでもらったんですよ。さすがに古すぎて危険だから、食べずに飾っているだけですけどね」
井上先生「え?中身まであるの!?これは当時全国で大ヒットするも、数年で販売終了した伝説の商品なんだよ。まさか、こんなところでお目にかかれるとは。これを見ただけでも福島県に来た甲斐があるな~!」

りか「…先生、テンション上がり過ぎですよ(笑)」
▲今ではなかなかお目にかかれない「即席モナカカレー」

珍しく、井上先生が興奮する姿を見られたところで、まずはカレーを食べてみることに!

りか「うわさで、スパイスカレーを提供しているとお伺いしたのですが…」
芳賀さん「『笑夢のトリプルカレー』のことですかね?たしかにスパイスカレーに分類されるカレーだと思いますが、もう2008年頃から提供しているんですよ。大阪でスパイスカレーが最近ブームなのは知っていましたが、俺はもうずっと前からやっているぞって(笑)。まあ、福島県はなかなかフィーチャーされないんで仕方ないですけどね」

井上先生「なるほど…。誰かが先駆者となって発掘していかないとお宝は眠ったままなんだな。地方ならなおさら。この『即席モナカカレー』のようにね」

やさしい味わいが特徴「笑夢のトリプルカレー」

では、うわさの「笑夢のトリプルカレー」をいただくとしましょう!カレーソースは「バターチキン」「キーマ」「欧風」「海老マサラ」「野菜」「タイ風」「ポークビィンダル」の7種類から、お好きなものを3種類選べます。今回は、おすすめされた「バターチキン」「海老マサラ」「ポークビィンダル」をかけてもらうことに。
▲「笑夢のトリプルカレー」(税込1,000円)。右上から時計回りに、「ポークビィンダル」「バターチキン」「海老マサラ」
▲中央には「ジャガイモのサブジ(炒め煮)」「ヨーグルト」がのっている

りか「わぁ、おいしそう~!スパイスも後がけしてあり、香りもいいです。これは期待できますね」
井上先生&りか「いっただきまーす!」
▲パクっ

りか「う~ん!おいしい~!香辛料の後がけがくどくないので、カレーソースの優しい味わいが生きていますよ。『バターチキン』もライスに合うよう重たくないし、『ポークビィンダル』も酸っぱすぎないですね」
▲ポークビィンダルとは、インドのゴア地方で食べられるカレーのこと。豚肉を酢やスパイスでマリネして作る
井上先生「どれどれ…。お、いいね~。『海老マサラ』も、エビ本来の味わいが残っていて、これが逆にいいよ」
▲「海老マサラ」はランチには小海老を、ディナーにはブラックタイガーを使用
芳賀さん「お味はどうですかね?実は『バターチキン』は、店が繁盛するきっかけになったカレーなんですよ!」
▲大ぶりのチキンが入った「バターチキン」(写真右下)

芳賀さんによれば、オープンしてから最初の3年間は儲けが少なく、経営が苦しかったそう…。というのも、当時の福島県では、大手カレーチェーン店ですら閉店してしまうほど、カレーを外食で食べる習慣がなかったからなのだとか。しかし、めげずに試行錯誤をくり返し、「バターチキン」をメニュー化したところ大ヒット!今では福島県のカレー店としては珍しく、10年以上続く人気店になったのです。

あえてスパイスは大量に使わない!「笑夢」流カレーの作り方

すっかり「笑夢のトリプルカレー」に魅了されてしまった私たち。このカレーはどうやって作っているのでしょうか?芳賀さんに聞いてみましょう!
芳賀さん「『ポークビィンダル』は、酢や白ワインビネガーでマリネした豚肉を最初に炒め、水で煮込みながらスパイスを加えていきます」
芳賀さん「『バターチキン』は、まず玉ねぎを炒めます。炒めてから粗熱を取り、ミキサーにかけ、そこにフレッシュトマトとホールトマト、レーズン、プルーン、生クリーム、あとスパイスはフェネグリーク(※)とクローブを中心に入れ、一緒に煮込みます。鶏肉は2日間ヨーグルトとレモン汁などでマリネしてから後入れしてます」

※フェネグリークとは…甘い香りと強い苦みがあるスパイスのこと

「海老マサラ」は、トマトをベースに玉ねぎ、パクチー、ししとうを一緒に炒め、そこにヨーグルトやココナッツミルクを入れていると言います。
ちなみに、鶏肉のマリネには、鶏肉の本来の味が生きるようにニンニクとショウガを使っていないとのこと。一方のエビは、臭みは取るものの、あえてマリネで味付けはしないんだとか。これもエビ本来の味わいを生かすためだそうです。

芳賀さん「食材とのバランスも考え、大量にスパイスを使わないようにしているんですよ。これが正解かはわからないんですけど。もしかしたら、カレーに詳しい人からしたら『そんなのカレーじゃない』『作り方が間違っている』とか言われるかもしれないっすね(笑)」
井上先生「ちなみに、カレーはどこで学ばれたんですか?」

芳賀さん「完全に独学っすね!カレー店で修業したくても、福島にはほとんどカレー店がないんですよ」

井上先生「でも、スパイスを使いこなすのは難しかったんじゃないでしょうか?」

芳賀さん「ガラムマサラ(※)を自分で調合して、肉に合うガラムマサラ、魚に合うガラムマサラ…などと作っていったら、自分の中でスパイスの使い方が弾けた感じがしましたね。とはいえ、今でも研究中の身なのでガラムマサラやカレーは日々進化していってますよ」

※ガラムマサラとは…香りづけを目的とするミックススパイスのこと
▲カレーを作っているときの真剣な眼差しは、求道者そのもの!

りか「カレー店で修業したくでもできない環境で、ご自身でカレーの道を切り開いていったとはかっこいいです!」

では井上先生、カレーの評価をお願いします。
井上先生「『Curry dining bar 笑夢』のカレーチャートはこちら!」
井上先生「ブームになる数年前から独自でスパイスカレーを作っていたということで、オリジナリティは5。スパイスを大量に使わない、かつガラムマサラは自分で調合するなどの工夫が見られたので、スパイステクニックも5。感じのいい好青年で、思わず応援したくなっちゃうね!」

りか「はい!『笑夢』が筆頭になって、福島県のカレー文化を盛り上げていってほしいです」
▲最後は芳賀さんと一緒にパシャリ!

福島県でスパイスカレーを食べるなら「Curry dining bar 笑夢」へ。
ご協力ありがとうございました!

井上岳久(カレー大學学長/株式会社カレー総合研究所代表)

カレー業界を牽引する、業界の第一人者。横濱カレーミュージアム責任者を経て現職に至る。カレーの文化や歴史、栄養学、地域的特色、レトルトカレーなど、カレー全般に精通。レトルトカレーは全国から2,000種類を収集し試食している。著書に『一億人の大好物 カレーの作り方』『国民食カレーに学ぶもっともわかりやすいマーケティング入門』など多数。

名久井梨香

名久井梨香

フリーライター。毎日カレーを食べるカレー愛好家で、現在はカレーパンも研究している。カレー大學、カレー大学院卒。趣味はカレーとJリーグ。

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