冬の青森を満喫するストーブ列車で、異国情緒を味わう旅!

2018.02.21

青森県・津軽地方の冬は、真っ白な雪に覆われた銀世界。奥津軽となれば、地吹雪やホワイトアウトが発生することもしばしばです。そんな極寒の世界を走る、ダルマストーブを暖房にした「ストーブ列車」は冬の津軽地方の風物詩。さあ、レトロな風情に浸れる冬の旅に出てみましょう。

▲銀世界を進むストーブ列車(写真提供:対馬雅人)

ストーブ列車のスタートは五所川原!

青森県の西部、津軽半島の根本に位置する五所川原(ごしょがわら)市。その中心に位置するJR東日本五能線の五所川原駅には、津軽鉄道の津軽五所川原駅が併設されています。今回ご紹介するストーブ列車の始発駅が、こちらの駅なのです。
▲駅の外観とは思えないほど小さな津軽五所川原駅

津軽鉄道は、津軽五所川原駅~津軽中里駅の間の約20kmを運行しているローカル線です。これから乗車するストーブ列車は1936(昭和11)年に始まりました。現在は例年12月1日~3月31日の冬期間に、一日3往復のみ運行しています。沿線には10駅ありますが、今回は文豪・太宰治の生家で、記念館にもなっている「斜陽館(しゃようかん)」がある金木駅まで行ってみることにします。
▲ノスタルジックな津軽五所川原駅の待合室

まずは乗車チケットを購入します。津軽五所川原駅内は小さな待合室に売店がある程度の大きさ。お気付きの通り、ここは自動券売機や自動改札口などの文明とはいっさい無縁の駅です。
▲呼び出しベルすらないが、そこもまた魅力

ストーブ列車には乗車券の他にストーブ列車券の購入が必要になります。金木駅までの場合、550円の乗車券とストーブ列車の乗車券400円となりました(ともに税込)。
▲金木駅前の乗車券とストーブ列車券

乗車券は今では珍しい硬券です。車掌さんがハサミを入れて乗車の確認をします。ICカードに慣れてしまっているせいか、すっかり昭和な気分に浸ってしまいます。それではストーブ列車に乗り込んでみましょう!

ストーブ列車、その楽しみ方とは?

ホームに向かうと早速ストーブ列車がお目見え。この車両は90年近く続くストーブ列車の歴史の中で、4代目にあたるのだとか。車両の乗車口は前方と後方の2カ所。デッキが外にあるタイプの車両で、客室車内への入り口は別にあります。
▲この日は2輌編成のうち1輌がストーブ列車。もう1輌は普通車両となり主に地元民が乗車する

車内はすでに旅情であふれています。石炭を燃料とするダルマストーブは両サイドの座席の並びに1基ずつ。木製の椅子や窓枠は、私たちが普段乗る電車とはあきらかに雰囲気が違ってレトロ感たっぷりです。
▲床も木製のストーブ列車の車内。最大80人の乗車が可能
▲炭入れは車掌さんがやってくれます

座席は自由。ストーブ周辺の座席は人気席となるため、どうしてもストーブの近くに座りたい人は早めに席を取った方がいいでしょう。
出発するとまもなく現れたのは車内販売用のワゴン。これがストーブ列車の醍醐味です。販売されているのは、スルメやビール、日本酒のほか、ジュースやお菓子類。迷いなくスルメ(500円)と日本酒(350円)を購入しました(ともに税込)。
▲スーパーのワゴンを改良したという車内販売用ワゴン

スルメはもちろんストーブの熱で炙ってからいただきます。ちなみにスルメは持ち込んだものでもOK。ただしスルメ以外のものは網の上にのせてはいけません。
▲ストーブで炙るスルメ

ダルマストーブを使ってスルメを炙るなんて、そうできる体験ではありません。初めての方にはハードルが高いと感じるかもしれませんが、ご安心を。車掌さんや販売員の方も手伝ってくれるのでお願いしてみましょう。むしろ手際よく焼き加減も知っているので、お任せした方がだんぜんおすすめです。
▲今回は津軽半島観光アテンダントさんに焼いてもらいました

ストーブ列車には、津軽半島観光アテンダントさんが必ず乗車しています。バスガイドさんのような存在で、スルメを焼くだけでなく、乗車している間に津軽弁を交えて楽しく青森のことをガイドしてくれます。
▲津軽半島観光アテンダントの“みっちょん”こと小枝美知子さん。地元愛を感じずにはいられない津軽弁

販売員さんにもスルメを焼いてもらったので、その様子は動画でご覧ください。

▲取材当日は外国の方が同乗していました
そうこうしている内に香ばしく炙られたスルメができました。日本酒との相性は抜群。流れる雪景色とガタンゴトンと心地よい列車の揺れを感じながらお酒がさらに進みます。こんな贅沢をしちゃってもいいのでしょうか。いいのです。それが旅です。
▲炙ったスルメのほかにストーブどら焼き(150円)、石炭クッキー(350円)も購入(ともに税込)

奥津軽の冬景色を車窓から満喫

ストーブ列車は平均速度30km程度の低速で進みます。スルメや日本酒を味わわなくても、車窓から奥津軽の銀世界を眺めるだけで旅を楽しむことができるでしょう。
▲出発直後はまだ建物がみえる

出発から5分も進めば地平線まで見えそうな広大な銀世界が広がります。天気によっては雪しか見えないこともあるんだとか。今回は雲がありましたが、この時期の津軽地方としては、天気のよいほうだったようです。
▲時折、雲間から青空が見えました

広がる白い大地が「遠くまで来てしまった」感を演出しますね。そんな車窓から見える景色も珍しいものばかり。津軽弁で「かっちょ」と呼ばれる防雪柵は、毎年冬になると沿線の各地に設置されるようです。
▲かっちょと呼ばれる防雪柵

目的地となる金木駅の1駅手前には嘉瀬駅という駅があります。津軽のスター・吉幾三さんが「ラジオや電気がない」と歌った地元であり、香取慎吾さんが塗った「夢のキャンバス列車」があることでも有名です。車窓からでも十分に確認することができ、新たな観光スポットとして人気が高まっているそうです。
▲香取さんと地元の人たちで20年ぶりに塗り替えた「夢のキャンバス列車」

津軽五所川原駅から25分ほど乗車したのち、金木駅に到着。振り返ってみると、まっすぐな線路が地平線近くまで続いていました。これぞ奥津軽の旅なのかもしれません。
▲金木駅から来た線路を振り返る

太宰治の生家で文学散策

さて、ストーブ列車を降りたら、レトロな金木町を散策します。まず、金木駅から徒歩10分ほどの太宰治記念館「斜陽館」へ。雪の中を歩いて行くのも一興ではないでしょうか。古い民家が立ち並ぶ住宅街の中に何か発見があるかもしれません。
▲金木駅から見た金木町の街並み。滑らないように足元に気を付けて歩きましょう

目的地の斜陽館は1907(明治40) 年に建てられた、旧津島家の豪邸です。実際に太宰治(本名・津島修治)が生まれ育った生家であり、現在は国の重要文化財建造物に指定されています。
▲レンガ造りの外壁に青森ヒバを使用した、和洋折衷の木造家屋(入場料:大人500円、高・大学生300円、小・中学生200円 ※すべて税込)

太宰の家は地元の大地主で、銀行を営み、父は政治の世界に進出したこともありました。太宰はそんな家の仕事に疑問を抱き、身分の違いに違和感を覚えていたと伝えられています。
▲小作人が毎日のように訪れていたという。太宰もその様子を見ていた

斜陽館は約600坪の敷地内にある2階建て全19室の建物です。米蔵などは資料展示室に活用され、太宰が生前着用していたマントや執筆用具、直筆の原稿、書簡などが展示されています。
▲これは記念撮影用に着用できる外套(無料)。太宰が着ていたわけではありません

館内は資料展示室以外は撮影OK。外套などを羽織り、気に入った撮影スポットから文豪気分を楽しむのもいいかもしれません。
▲階段はケヤキ造り。手すりにもこだわりを感じる

また、館内では無料ガイドのサービスもあります。所要時間は30分程度で、太宰が過ごした幼少時代のことや建物の魅力を教えてもらうことができます。

さらにディープな奥津軽観光とレトロな駅舎カフェ!

太宰の聖地巡礼は斜陽館だけではありません。斜陽館から約200m離れた場所にあるのが「太宰治疎開の家」。かつては斜陽館の敷地内に離れとして存在していましたが、後に曳家で現在の場所に移動しました。太宰が東京から疎開した1年数カ月間住んだという新座敷で、太宰のルーツを知ることができるまさにディープなスポットです。
▲太宰治疎開の家の館内

こちらの書斎では、太宰が『パンドラの匣(はこ)』『トカトントン』『親友交歓』といった短編小説23作品を執筆したと伝えられ、実際に同じ場所に座って太宰と同じ目線を体験することができます。
▲太宰が実際に使っていたという場所に、暖を取るための火鉢と机が置いてある
▲館長の白川公視(ひろし)さん。太宰は右膝を立てながら執筆していたという

白川さんが教えてくださる太宰のさまざまなエピソードには、驚くことばかり。豊富な知識に感心してしまいます。その人柄の良さに惹かれた多くの太宰ファンも訪れるそうです。
▲ノートに書き残された太宰ファンのメッセージ
次に訪れたのは、駅舎を利用したカフェです。金木駅の隣駅・芦屋公園駅内にあり、斜陽館からは徒歩約15分。太宰治の短編小説『津軽』にも登場した旧駅舎の中がそのままカフェとなっていて、リンゴを使ったカレーやスイーツをいただくことができます。
▲駅舎を活用したカフェ「駅舎」。電車を利用する人は、カフェの隣にある改札を通る。ちなみに無人駅

木のぬくもりを感じる店内には、駅舎の名残があちこちにあり、切符を販売していた窓口も当時のまま残っています。
▲元駅舎をそのまま使った店内
▲切符売り場の窓口がそのまま残っている

こちらのオススメは青森県産のリンゴを贅沢に使った「スリスリりんごカレー」。リンゴの甘い風味が溶け込んだカレーは、家庭で作るようなやさしい味がします。
▲「スリスリりんごカレー」(税込700円 ※スープ付き)

店内で焼き上げる手作りケーキなどの日替わりスイーツも、コーヒーと一緒に味わうことができます。次の電車が来るまでの待ち時間にいかがでしょうか。店は今でもホームと直結しており、切符もお店で購入することができます。
▲この日の日替わりはパウンドケーキ(税込200円)、コーヒー(税込450円)
▲金木駅から五所川原駅に向けて出発するストーブ列車

本州の北の最果てにある奥津軽。その旅情を演出するストーブ列車には、近年は海外から訪れる旅行客も増えているのだとか。太宰治ファンでなくとも魅了される独特の雰囲気が、このエリア全体にあるような気がします。フラッと冬の旅に奥津軽を訪れてみてはいかがでしょうか。
くどうたける

くどうたける

東京でウェブライターを経験し、2012年に青森へ移住。地域新聞や地域の情報を発信するお仕事をいただきながら、田舎でせっせと暮らしてます。(編集/株式会社くらしさ)

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