九州最後の秘境!平家伝説の地・五家荘で渓谷と紅葉の絶景を楽しむ

2017.11.03

九州山地の奥地にあたる「五家荘(ごかのしょう)」というエリアをご存知でしょうか?熊本県八代(やつしろ)市の山間部に位置し、平家の落ち武者が逃れて来たという伝説が残る秘境です。美しい渓谷が多くあるほか、紅葉の名所としても知られ、10月下旬~11月下旬の紅葉シーズンには多くの観光客が訪れます。その絶景を目にするために、厳しい山道を越えて秘境へと旅しました。

▲紅葉に包まれる「梅の木轟(とどろ)公園吊橋」。壮大なスケールで紅葉が広がります(写真提供:五家荘地域振興会)

平家や菅原道真の末裔の隠れ里といわれる伝説の秘境

五家荘があるのは、熊本市から50kmほど南下した山間部。九州中央山地の奥地にあたり、標高1,300~1,700m級の山々が連なる中に民家が少しずつ点在しています。人が住むにはあまりにも厳しい環境で、まさに秘境の中の秘境。「九州最後の秘境」とも称されています。
▲山の中腹に見える民家。今も昔も秘境ならではの美しさと厳しさを残しています

人里離れたこの秘境の地は、平家の子孫や菅原道真の子が逃れてきた隠れ里であるといわれています。平家の子孫が椎原(しいばる)、久連子(くれこ)、葉木(はぎ)の3地区、そして菅原家の子孫が仁田尾(にたお)、樅木(もみき)の2地区に住んだといわれ、合わせて5つの庄屋があったことから「五家荘」という地名になったのだそう。

確かに、この深い深い山を見ると、隠れ里にはもってこいの立地のように見えます。
▲「せんだん轟」下流の渓谷。谷間を走る渓流では、山女魚(やまめ)などの川魚も見られる

五家荘までは、車1台がやっと通れるくらいの山道を15km近く延々と登ってようやくたどり着きます。交通アクセスは車のみで、北側、西側、南側と3方向から登るルートがありますが、いずれも細い山道で、運転はハラハラ、ドキドキ。昼間もライト点灯で運転は慎重に。運転に自信がない人は、紅葉シーズン限定の「五家荘観光周遊バス」や路線バス、民宿に宿泊するならその送迎を利用しましょう。

なお、紅葉シーズンは渋滞を避けるため、期間限定の一方通行など交通規制が行われます。最新の交通情報やバスの情報は「五家荘ねっと」で事前にチェックして行きましょう。

紅葉や緑の中を空中散歩!?絶景すぎる渓谷の景色を楽しむ

昔ながらの雑木が多く残る五家荘の山々は、秋になると一斉に色づきます。普段見る紅葉とは余りにも違う、壮大すぎるスケール感で、一生に一度は見ておきたい景色といっても過言でありません。中でも、名所として人気の3スポットを、紅葉シーズン前の10月上旬にいち早く回ってきました。

いずれも車で30分ほど離れていて、全部を回ると30kmほどの移動距離になります。車移動だけでもトータルで1時間かかるので、散策する時間も合わせて計画的に回るのがオススメです。
▲下は渓流が走っています。目もくらむような高さでスリル満点!

一つ目は、「梅の木轟公園吊橋」です。国道445号線(といっても細い道です)沿いからすぐ見えるこの橋。高さ55mの位置に掛けられ、長さ116mもの長い吊橋です。
▲橋の上はフォトジェニック・スポット!吊橋はしっかりしていて、比較的揺れが少ないので、安心して渡りましょう

山を越え谷を越えて移動しなければならない五家荘の人達にとって、吊橋は山の暮らしを支えてきた大切な生活道路。中でもここは最大級の長さと高さを誇ります。春夏の新緑に包まれた景色も美しいですが、これが紅葉の季節になると…。
▲目に見える山の全てに紅葉が!(写真提供:五家荘地域振興会)
▲吊橋に少しハラハラしながらも、紅葉に見惚れてしまいそう(写真提供:五家荘地域振興会)

上も下も紅葉に包まれて、まるで紅葉の中を空中散歩しているようだと大人気!「この感動のためなら、細い山道も何のその」という気持ちにさせてくれるような絶景です。ちなみに、橋の名前にある「轟(とどろ)」とは五家荘での滝の呼び名。この吊橋の先には、「梅の木轟」があります。体力に余裕があったらぜひ滝も見に行ってみましょう。
▲足場の悪いところも多いので、ヒールなど歩きにくい靴は避けましょう

滝までは遊歩道を10分ほど歩きます。かつて梅の木轟は、険しい山道を進んでようやく出合える「幻の滝」といわれていたのだそう。今はこの歩道が整備されているので、体力さえあれば見ることができますよ。
▲深い緑に包まれた大きな滝が見えて来ました

落差38mの大きな滝・梅の木轟に着きました。深い渓谷の美しさと滝の迫力に、思わず息をのみます。わざわざ来て見る価値のあるスポットです。
▲滝壺近くまで進むことができます。大自然!
二つ目は「樅木(もみき)の吊橋」です。こちらは高低差の違う大小2つの吊橋が並ぶ、珍しいスポット。まるで吊橋の親子のようで、なんだか微笑ましく見えます。上にある大きな橋が「あやとり橋」(橋長72m・高さ35m)、下にある小さな橋が「しゃくなげ橋」(橋長59m・高さ18m)と名前も可愛い!「樅木の吊橋」駐車場からそう歩かずに2本の吊橋に着くのも、うれしい限りです。
▲渓流から橋を見上げると、親子のようで可愛い!
▲どちらの橋も少し細く揺れやすいので、なかなかのスリル。丸太の間から下の川が見えます、ドキドキ
▲あやとり橋からしゃくなげ橋を見下ろした様子。ふたつの橋を行き来しながら珍しいアングルを楽しめます

こちらも紅葉シーズンになると、一面色とりどりの紅葉に。吊橋にふわふわと揺られながら、親子橋が作り出すダイナミックな紅葉の景色を楽しめます。また体力があれば、あやとり橋から続く遊歩道を10分ほど登ってみましょう。この親子橋を一望できる展望台へと着きますよ。
▲しゃくなげ橋から見上げたあやとり橋と渓流、そして紅葉が合体して、なんとも不思議な景色に(写真提供:五家荘地域振興会)
最後は、「せんだん轟」です。こちらは滝に着くまで、遊歩道を上って下って15分ほど歩くので、体力満タンで臨みましょう。大自然が待っています!
▲木立の中を、滝の上から滝壺の方へと下りていきます
▲「日本の滝百選」にも選ばれている「せんだん轟」

谷に下りると、壮大な滝が姿を現しました!落差70mの「せんだん轟」は、岩肌を打つように勢いよく落ちる水が大迫力です。この水は森の中の渓谷を流れて行き、周辺では山女魚などの渓流釣りも楽しめるそうです。
▲秋のせんだん轟の遠景。あまりにも色鮮やかな紅葉(写真提供:五家荘地域振興会)

深い山の中にあるので、紅葉シーズンになると驚くほどの彩りが滝を包みます。木立の中を歩く遊歩道の散策や、紅葉が流れて朱に染まる渓谷の美しさもゆっくり堪能しましょう。

平家の隠れ里伝説を今に残す、歴史スポットを散策

自然散策の後は、五家荘に残る伝説を追って歴史探訪!源平合戦の時代から今に伝わる隠れ里の伝説を知るべく足を運んだのは、樅木の吊橋近くにある「五家荘 平家の里」。五家荘に昔から伝わる平家落人ゆかりの品々を展示する「平家伝説館」や、当時の文化を感じられる「能舞台」などがあります。
▲左が資料館、右が能舞台。朱塗りの柱と平安時代を感じる造りは、大河ドラマの世界に来たかのよう
▲中央には平清盛像。館内には、源平合戦や平家の落人が五家荘に来るまでの物語が、美しい紙細工で語られています
▲珍しい「平家物語長門本」の写しの展示も

ここ「平家の里」には、平家にまつわる恋の祈願スポットがあります。
源平合戦の屋島の戦いで、源氏方の弓の名手・那須与一(なすのよいち)が、船上にいる平家の女御が持っていた扇を射貫いたという、有名なエピソードがあります。その扇を持っていた玉虫(たまむし)御前は、鬼山(おにやま)御前と名を変え、五家荘へと続く岩奥という土地に落ち延びてきます。その後、平家討伐のために五家荘に入ろうとした与一の息子・那須小太郎を鬼山御前が引き留めるうち、二人に愛が芽生え結ばれたと伝えられています。
▲敷地内にある総ヒノキづくりの「平家の館」。ここで恋の祈願を行います

諸行無常の平家の歴史の中で、敵同士であった源氏と平家が結ばれた愛の物語にちなみ、「げんぺいつむぎ」という縁結びの祈願が行われています。

入場時に、ストラップと紅白の水引が一緒になった「げんぺいつむぎ」を購入し、敷地内の高台にある「平家の館」へと上ります。ここの結び場で水引の「叶結び」をすると、運命の恋との出会いや、恋の成就、さらに美しい姫だったという鬼山御前にあやかって美しくなれる、などのご利益があるのだとか。
▲「げんぺいつむぎ」(税込600円)。ストラップは恋のお守りに
▲「叶結び」の手順も掲示してあるので、ゆっくり挑戦!未だ見ぬ恋への思いを馳せます
▲例年11月上旬には、琵琶と夜神楽の披露が行われます。ライトアップされた舞台と紅葉の中で悠久の浪漫を感じられるひととき(写真提供:五家荘地域振興会)
ちなみに、五家荘の南西には鬼山御前が祀られている「保口若宮神社」があります。多くの子どもに恵まれた鬼山御前はとてもお乳の出がよかったそうで、乳の神様としても祀られています。「平家の里」から車で1時間ほどの場所ですが、こちらもお参りすると、より恋のパワーがアップするかも!
▲柿迫という地区にある「保口若宮神社」。宮の横の湧水を飲むと乳の出が良くなるとも(写真提供:八代市泉支所地域振興課)
また、五家荘には歴史ある茅葺き屋根の古民家がいくつか残されています。そのうち、椎原地区にある「緒方家」は平家落人の子孫が、仁田尾地区にある「左座家(ぞうざけ)」は菅原道真の子孫が住んでいたといわれています。いずれも代々、地域をとりまとめていた庄屋の屋敷で、建てられた当時そのままの姿を見ることができますよ。
▲見上げるほどの大きな茅葺き屋根の「緒方家」。約300年前に建てられたもの
▲館内には平清盛像や琵琶の展示も。美しい庭園を望めるお座敷に、心が癒されます
▲謎の隠し部屋も探検できます。源氏の討伐を恐れていたのか、それとも他に理由があったのか…。空想が止まりません
▲11月上旬には、久連子地区に伝わる「久連子古代踊り」や筑前琵琶披露のイベントも(写真提供:五家荘地域振興会)
▲「左座家」は約200年前に立てられたお屋敷。11月上旬にはお茶会などのイベントが催されます(写真提供:五家荘地域振興会)

秘境の地に昔から伝わる山の幸を味わい、お土産に

美しい景色で目を肥やし、歴史スポットで脳を満たしたら、秘境メシでお腹もしっかり満たしましょう!というわけで訪れたのが、五家荘で最も標高が高い二本杉峠にある「東山(とうやま)本店」です。ここでは、生まれも育ちも五家荘のご主人が手作りする、昔ながらの秘境の味覚を楽しむことができます。
▲お店がある二本杉峠は標高1,100m!五家荘への北の出入り口にあたる場所
▲優しい笑顔で出迎えてくれた、東山(とうやま)夫妻

店内は食堂と売店に分かれています。まずは食堂で山女魚料理を楽しみます。こちらで提供される山女魚は、五家荘の美しい渓流で養殖しているもの。オーダーを受けて炭火で焼いた「やまめの串焼定食」は、こちらの名物メニューの1つです。
▲「やまめの串焼定食」(税込800円)。串焼は熱々のおいしさ!

新鮮な山女魚は臭みがなく、ホクホクやわらかい白身を頬張ります。大満足です!ご主人が子どもの頃食べていた山女魚の甘露煮や塩焼きの美味しさを伝えたくて始めたというこのお店。素朴で滋味深い山料理の真髄を、感じられた瞬間でした。
▲大きく開いた山女魚のてんぷらがたまらない「やまめ天丼」(税込800円)も人気

お腹いっぱいになったら、お土産選びに売店へ。昔ながらの山椒や柚子胡椒をはじめ、五家荘に昔から伝わる、暮らしの知恵がいっぱい詰まった調味料や加工品などを買うことができます。何と、山椒や柚子、ふきのとうなどは収穫から自家で行い、全ての商品が手作りです。
▲伝統の調味料から、オリーブオイルなどを使った新しい調味料まで。和食にも洋食にも合う商品がいっぱい
▲左から「ゆずごしょう・青」640円、「山椒とうがらし醤油だれ」640円、「粉ゆずごしょう」540円、「柚子こしょう味噌だれ」570円、和食にも洋食にも便利な「山椒オリーブ」540円、伝統食材の珍味「とうふのみそ漬」750円※すべて税込

ごはんや商品の一つ一つに、ご夫婦の優しい人柄がにじみ出ているようで、ついついたくさん買ってしまいました。これでどんな料理を作ろうか、考えるだけでも楽しみです!
また、五家荘には多くの民宿があり、宿泊するとイノシシや鹿などの「ジビエ料理」を楽しめる宿も多くあります。これも秘境ならではのごちそう。秘境の食文化を心ゆくまで堪能したいなら、民宿に泊まるのもオススメです。
▲民宿「山女魚荘」で宿泊客に供される猪鍋(写真提供:五家荘地域振興会)

「九州最後の秘境」の名も大げさではないほどに、人の足が届かないような深い山や渓谷巡りを楽しんだ秘境旅。その景色は今、海外の観光客にもじわじわと人気が広がっているのだそうです。隠れ里の歴史に秘境メシなど、昔から変わらないものの価値も全身で感じられたお出かけでした。イベントや交通情報を「五家荘ねっと」でチェックしてでかけましょう!
中川千代美

中川千代美

長崎生まれ、熊本在住。地方出版社に勤めたのち、「チヨミ編集事務所」として独立。地域の子育て情報誌や生活情報紙をはじめ、幅広いジャンルの編集・ライティング・企画を手がける。食欲・物欲・お出かけ欲・温泉欲・ビール欲が赴くままに熊本・九州を駆け回る日々。趣味は二胡。(編集/株式会社くらしさ)

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