熱海で昭和にタイムスリップ!レトロな街並みが平成世代に大人気

2018.01.25 更新

日本三大温泉のひとつとして知られる熱海。昭和30年代には、新婚旅行や団体旅行でたくさんの観光客が押し寄せ大賑わいだったそう。その当時のまま残る洒落た店がいくつもあり昭和の残り香が漂う熱海は、レトロな景色に出合えると、最近では平成生まれの若い世代にも人気の旅行先になっています。そんな熱海を、カメラ片手にぶらりとお散歩してきました。

熱海駅のすぐ目の前にある洋食屋さん【レストランフルヤ】

東京駅から東海道新幹線で約50分。静岡県の玄関口である熱海駅に到着します。
改札を抜け、ロータリーの先に目を向けると、オレンジと白の鮮やかな色のテントが目を引くお店がありました。
熱海駅の真向かいにある「レストランフルヤ」。お店の横には、今やなかなかお目にかかれない公衆電話が置かれています。
お店の前に置かれたショーケースには食品サンプルがずらり。
エビフライ、オムライス、エビピラフなど洋食の王道ともいえるメニューが並びます。
▲「落ちつく店内」と看板にあるので、早速入ってみることに
真っ先に目に入ったのは、コカ・コーラのロゴ入りの冷蔵庫。正式名称は“ストッカー”と言うそう。瓶入りの飲料を冷やしながらストックできる冷蔵庫です。
ストッカーの下にあるロゴに注目あれ。“ナショナル”とは、松下電器産業(現パナソニック)が製造・販売していた家電製品のブランド名。今ドキの女子大生は絶対に知らないでしょう。主に冷蔵庫や洗濯機などの白物家電に使われていました。そのロゴに熱海で出合えるなんて!
ストッカーの真ん中あたりにある窪みは、栓抜き。自分の子供に、これを使って栓を抜く方法を体験させたくて来店される方もいるそうですよ。やってみたい方は、お店の方に声をかけてみて。使い方を教えてくれます。

ちなみに、コカ・コーラは1杯400円(税込)。瓶入りのコーラを1本丸ごと、氷とレモンスライスの入ったグラスに注いで提供してくれます。希望すれば、氷とレモンスライス入りのグラスと一緒に、瓶入りのまま提供してくれます。
店内は2階までの吹き抜けになっていて、開放感があります。2階へと続く赤い絨毯生地の螺旋階段もレトロでステキ。2階席は、団体での利用など予約した人のみ利用できるそうですが、今回はお願いして特別に上がらせてもらいました。
正面に見えるのは、熱海駅。ポップな色のテントも見下ろせます。2016年11月にリニューアルしたばかりの真新しい駅舎とレトロな店内を同時に見られるこの光景は、平成と昭和を同時に体験できて摩訶不思議。タイムスリップしたような、なんとも不思議な感覚に陥ります。

では早速、料理を注文しましょう!迷いに迷った末、昔懐かしい「ナポリタン」(750円・税込)を注文しました。
注文してすぐに運ばれてきたのは、フォークとタバスコ。折られたペーパーナフキンのロゴのデザインが、またいい味を醸し出しています。料理を待つ間「スパゲッティをパスタと呼ぶようになったのは、一体いつ頃からだったっけ?」とぼんやり考えながら店内を眺めると…
ショーケースの中にはウィスキーのロゴ入りグラスが並んでいたり、
真っ青な天井と、シャンデリアや真っ白な手すりのコントラストがかわいくて、ついついカメラに収めたくなってしまいます。どこもかしこもレトロ。まるで昭和の時代に戻って来たみたいです。

お店の創業は1955(昭和30)年。ナポリタンやオムライス、ハンバーグなど、懐かしい味のメニューは当時から変わらず。建物自体は1972(昭和47)年頃に建て替えて以来、一切手を加えていないそう。
2018年1月現在、この店の2代目と3代目の店主がお店を切り盛りしています。厨房で2代目が作ったナポリタンを、3代目が運んできてくれました。
「お待たせしました」
運ばれてきたのは“これぞナポリタン!”というようなザ・王道のナポリタン。湯気とともに立ち上るケチャップと粉チーズの香りが鼻腔をくすぐります。
▲お皿に描かれた文字もいい感じ
フォークでスパゲッティをくるくると巻いて、熱々をいただきます。もちもちとした食感のスパゲッティと甘酸っぱいケチャップ味が、郷愁を誘います。具は、エビ、マッシュルーム、玉ねぎ、グリーンピース。
ハムやベーコンではなくエビを使用しているのは、ナポリタンという名前の中にイタリアの港町・ナポリの地名が入っていて、熱海と同じく海鮮が美味しい街だからだそう。

昭和レトロなインテリアの店内でいただく昔ながらのナポリタンは、懐かしく、実に美味しくて、フォークが止まりませんでした。
お店を出て左手にある熱海仲見世商店街を通り抜けて、海の見えるほうへ行ってみましょう。
アーケードになっている商店街の中央には、レトロな看板がいくつも並んでいました。そういえば、さっき立ち寄った「レストランフルヤ」の店先にも、同じような看板があったのを思い出しました。聞けば、商店街のお店それぞれにレトロな看板があるそう。路地に目を向けると…
熱海仲見世商店街に軒を連ねるお店の看板が、1枚に集められていました。どの看板もノスタルジックでかわいくて、どのお店に行こうか、見ているだけで楽しい気持ちになります。

昭和の文豪が愛したモカロール【MONT BLANC】

東京からほどよい距離にあり、都会の喧騒を忘れて過ごせる熱海。明治時代から現代までの間、山本有三や志賀直哉、太宰治など、多くの文豪が訪れ、文学史に残る名作たちを生み出しました。
▲商店街から徒歩約13分、熱海駅から徒歩約15分

仏蘭西菓子「MONT BLANC(モンブラン)」は、晩年の10年ほどを熱海で過ごした文豪・谷崎潤一郎が愛したお店。この店の創業者である新田道雄さんは、横浜のホテルニューグランドなどで腕を磨いた料理人で、戦後間もなく、熱海でフレンチレストランを開業したそう。

料理の評判を聞きつけた谷崎潤一郎は、新田さんを別荘に招いてフルコースを味わいました。そのとき、デザートとして供された「モカロール」が大のお気に入りに。以来「MONT BLANC」には、執筆を終えた谷崎純一郎から、モカロールの注文が入るようになりました。
店内には谷崎潤一郎の写真(右)ともう1枚、ロバート・キャパが撮影した写真が飾られていました。ロバート・キャパは、ハンガリー生まれの報道写真家。1936(昭和11)年に撮影したとされる写真「崩れ落ちる兵士」で、世界中にその名が知れ渡りました。

1954(昭和29)年4月に来日した際、当時フランス料理店だった「MONT BLANC」へ、着物を来た女性と連れ立って食事しに来店したキャパ。この写真は、その時、彼自身が撮影したものです。被写体は、食事後に化粧を直す女性と、黙々と自分の仕事に打ち込む新田さんの姿でした。
翌年、キャパは、インドシナ・タイピンの土手で地雷に触れて亡くなったため、この写真が日本で撮影された彼の最後の作品となったそうです。

その後、1960年代の半ばに洋菓子の専門店に。
さて、ショーケースの中を見てみると、銀紙に包まれたケーキがずらりとならんでいます。
この日は、モンブラン300円、ガトーショコラ400円、ショコラシャンテリー380円、ミルフィーユ380円など11種類のケーキが並んでいました。たっぷりのりんごを煮詰めて作る自家製りんごペーストを使ったショソン(アップルパイ)450円のような、季節限定のケーキも並びます(価格はすべて税込)。
▲ホールケーキ5,700円(税込)も

ケーキはどれも、新田さんから伝えられたレシピを2代目が忠実に再現したもの。産地が確かな上質な素材を吟味し、1つ1つの工程を丁寧に作られたケーキはどれも、クラシカルで奥深い味わい。
美しい見た目にどれも食べたくなって目移りしてしまいますが、今回は「モカロール」をいただくことに。店内には小さなテーブル3つと椅子6脚が並び、イートインすることができます。
▲コーヒーは一杯430円(税込)

ふわふわのスポンジと、舌触りが驚くほど軽いバタークリーム。どちらもコーヒーの味と香りをふわりとまとい、ひと口食べれば、その美味しさに思わず顔がほころびます。“食魔”と呼ばれるほど美味しいものに貪欲だった谷崎潤一郎が惚れ込んだのも納得の一品です。

「モカロール」は1カット300円、1本1,850円、1本の倍量あるフルサイズは3,700円(すべて税込)で買うことができますよ。熱海土産にもぴったりです。
お店を出て海の方へてくてくと歩いて行くと、橋が見えました。
橋の欄干には、木々の間を自由に飛ぶ白い鳥が描かれています。ここから海の方角を眺めると、川の向こうに心惹かれる看板が見えます。
飲食店などが立ち並ぶ繁華街の看板がなんともレトロ。
この近くを歩いていると、レトロな路地裏に出合えたり、
ふと見上げれば、アーチを描いた装飾がかわいいビルがあったり、
お店の看板を目で追うのも楽しくて、熱海はレトロな景色の宝庫だとしみじみ思うのです。

海岸沿いにある貫一・お宮の像を見にいく

熱海の海沿いには、有名な貫一・お宮の像があります。次に目指す喫茶店「サンバード」があるのも海沿い。せっかくなので、貫一・お宮の像を見に行くことに。
歩道に埋め込まれた案内板を発見!お宮の松のある場所に、貫一・お宮の像があります。
サンビーチへの入り口を示す案内板の“ATAMI”の文字もちょっぴりレトロだったので、写真に収めておきました。熱海のレトロな風景を見つけながら歩いて行くと、貫一・お宮の像がありました。
▲物語の一幕を表現した、貫一・お宮の像

1897(明治30)年に読売新聞紙上で発表された尾崎紅葉の名作小説「金色夜叉」。主人公の間貫一(はざまかんいち)と鴫沢宮(しぎさわみや)は許嫁の関係でした。ところが宮は、実業家の元に嫁ぐことに。1月17日の月の夜、熱海の海岸で貫一は、宮の心変わりをなじり、すがりつく宮を邪険に蹴飛ばし、今宵の月を来年も再来年も僕の涙で曇らせてみせると言い、宮を置いて去ったのです。あまりにも切ないストーリーに世間は熱狂しました。そして、小説のヒットがきっかけで、熱海の名前が全国に知れ渡ったのです。

そんな貫一・お宮の像から歩くこと約3分。次の目的地である喫茶店「SUNBIRD」に到着です。
▲壁に描かれた「SUNBIRD」の文字と赤い鳥が目印

海を見下ろす純喫茶【サンバード】

▲熱海サンビーチのすぐ目の前にある
2階にあるお店はなんとなく入りづらくて尻込みしがちですが、“お二階でおいしいコーヒーをどうぞ…”の文字に惹かれ、階段を上ることに。手書きのメニューも味わい深くて、親近感が湧きます。
店内はガラス張りで、すぐそばに海が見えました。
窓には、ゆったりとしたドレープのカーテン。椅子は、アームレストのあるラウンジチェア。腰かければ自然と足が伸び、リラックスできます。
何もかもがレトロで素敵なこの店は、1968(昭和43)年に開店。すでに半世紀近くの歴史を刻んでいます。開店当時は、このようなガラス張りのお店は珍しく、注目を浴びていたのだとか。
▲レースのカーテンとソファがレンガの壁と好相性

店内の奥は、レンガの壁になっていて、入り口側とはまた違った雰囲気を感じさせます。実はこのスペースは、カフェテラスだったので、壁はもちろん屋根もなかったそう。開店から5年ほど経ってから、屋根と壁をつけて、雨の日でもくつろげる空間に作り変えたと言います。
▲カウンターにあるロゴがレトロでかわいい!

海と平行にあるカウンターには、外の壁にも描かれていたトレードマークの赤い鳥がいました。カウンターの中にいるのは、この店の2代目であるマスター。一緒に働いている奥さまと娘さんも明るくて、皆さんの朗らかな人柄と懐の深さに、筆者は初めて訪れたにも関わらず、リラックスしていろいろ話し込んでしまいました。
▲灰皿にも赤い鳥

店内の設計もロゴマークのデザインも完成度が高く、建築家やデザイナーに依頼して作っているはずだとマスター。今となっては誰にどういう経緯で頼んだのかもうわからないけれど、時を経てなお新しさを感じさせる美しいデザインは、プロの仕事であることを感じさせます。
▲コースターとマッチ。かわいくて、愛煙家でなくとも持っておきたくなる

店名の由来は、「サンバード」の入っているビルを外から見るとよくわかります。
ビルの1階部分には、自動車メーカー・日産の販売店が入っていました。「サンバード」が開店した頃、日本の代表的なミドルセダンとして大人気だったのが日産のブルーバード。開店当時から階下に日産が入っていたこと、また、目の前に広がる海から朝日が昇ることから太陽=SUNとブルーバードのBIRDをひっかけて「サンバード」となったそうです。
ブレンドコーヒー(500円税込)は、ペーパードリップで1杯ずつ淹れてくれます。豆は横浜に本社を構える老舗のコーヒーロースター・三本コーヒーのもの。初代が選んだものを変わらずにずっと使い続けているそうです。苦味と酸味のバランスがよくて飲みやすい味。熱々のカップに注いでくれるので、最後まで温かいコーヒーを飲むことができて幸せでした。

メニューは、創業当初からほとんど変わらないそう。最近ではクリームソーダやコーラフロート、ミルクセーキなどSNS映えするドリンクの人気が高いそうですが、バナナを丸ごと1本使用しているという「バナナスペシャル」800円(税込)が気になったので、注文してみることに。
美しい曲線を描くたっぷりのホイップクリームの下には、縦半分にカットされたバナナが鎮座。左側のスライスバナナと合わせて丸ごと1本が、器の上に盛られています。気になるのは、艶々のチョコレートソースが描く美しい球面。この球面の正体は、一体何だろうと思いながらスプーンですくうと…
バニラアイスクリームだったのです。

最初の一口は、バナナとホイップクリームを。次いで、バナナとホイップクリームとチョコレートソースをぱくり。その次にはアイスとチョコレートソースとホイップクリーム…と、いろんな組み合わせを試せて楽しい!
▲海がある熱海の景色を背景に写真をパチリ

ボリューム満点の一品ですが、あっという間にペロリ。ときには1人で2皿平らげるツワモノもいると聞いてビックリしました。

熱海に来たからには温泉も堪能したい【日航亭大湯】

せっかく熱海に来たのなら、温泉も満喫したいですよね!そこでご紹介したいのが、日帰り温泉施設「日航亭大湯(にっこうていおおゆ)」。サンバードからJR伊東線・来宮駅方面へ歩いて、6分ほどで到着します。
▲温泉の目と鼻の先にある「湯前神社」

目指す「日航亭大湯」のすぐ目の前には湯前神社があり、近くに大湯間歇泉があります。
この大湯間歇泉は熱海の代表的な源泉で、1200年以上も前から吹き出し続けているそう。一説によると、その昔、徳川家康が湯治のために入浴したことがあるのだとか。大湯間歇泉の泉質は、切り傷に効果があるとされる塩化物泉。その効能をすっかり気に入った家康が、天下を取る前に、お忍びで何度も訪れたことが文献に残されており、出世の湯とも呼ばれています。
間歇泉のすぐ隣には、レトロな佇まいの公衆電話がありました。実は熱海は、市外通話発祥の地。明治時代、多くの政治家や政府高官が保養や会談のために訪れており、東京と連絡を取らねばならないことがとても多かったのです。そのため、東京~熱海間に電話回線が敷かれ、1889(明治22)年1月1日に開通しました。
この公衆電話は、明治100年を記念して日本初のボックス公衆電話を模して復元したものを、1986(昭和61)年に改装したもの。電話は実物なので、ここから実際に電話をかけることができます。
▲大きな看板を目印に、右の坂道を少し上ると「日航亭大湯」の入口がある
「日航亭大湯」の敷地内には2本の源泉があり、泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物泉。その温度は98度あり、流し入れるお湯の量を調整して、浴槽内のお湯の温度を調整しています。水は一滴も加えず循環ろ過もしていない、天然温泉100%の源泉掛け流しのお湯を楽しめます。
フロントで入湯料(大人1,000円、子供500円。税込)を支払い、早速温泉へ。
▲名入りタオル200円、無地タオル100円(いずれも税込)の販売あり
男湯と女湯は日替わりで、取材に伺ったこの日は奥の浴場が男湯でした。
緑を眺めながら入れる露天風呂と
広い内湯がありました。浴室内を満たすのは、もうもうと立ち上る湯気と、温泉の香り。サラサラとしたお湯は肌触りがよく、体を優しく包み込みます。
次は、この日女湯だった浴場をチェックしてみましょう。
奥が露天になっているお風呂と、
窓から光が差し込む気持ちのいい内湯がありました。歴史あるお風呂ですが、隅々まで掃除が行き届いていて清潔。気持ちよく入浴を楽しめます。

もう1つ、こちらで忘れてはならないのは、家族風呂があることです。
脱衣所への扉に鍵がかかっていなければ、40分もの間、独占利用できる家族風呂。入湯料以外の料金はかかりませんが、予約できないので要注意。
家族風呂といえども、湯船は広々!5~6人で入っても余裕がありそうな広さです。こんなに広い温泉を家族やカップルで独占しながら温泉を満喫できるなんて、嬉しい限りじゃありませんか。
▲昭和の風景に出合える熱海銀座商店街

喫茶店や洋食屋さんなど、ほかにもたくさんのレトロスポットがあり、どこを切り取ってもフォトジェニック。街ごと昭和の匂いがする熱海は、カメラ片手に歩いているだけでも楽しい街なのです。
写真を撮る前に「撮ってもいいですか?」とかけたひと言をきっかけに、新しい会話、新しい繋がりが生まれるかもしれません。
そして、訪れるたびに新しい発見がある熱海を、どんどん好きになっていくはずです。
永井理恵子

永井理恵子

日大芸術学部写真学科卒のフリーライター。食いしん坊(飲んべえでもある)。東京の荒波に15年揉まれて気づいたのは、生まれ育った静岡県と御殿場市が思いのほか素敵な場所だったってこと!地元のいいところを発信すべく鋭意活動中。

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