昭和の鉄道風景と東京からいちばん近いSL列車、秩父鉄道の旅!/古谷あつみの鉄道旅Vol.25

2018.02.04 更新

みなさん、こんにちは!古谷あつみです。今回は埼玉県を走る秩父鉄道を訪れました。新幹線で東京からたった40分ほどの熊谷を中心に、羽生(はにゅう)と秩父の三峰口へと路線を延ばしている鉄道で、懐かしい昭和の鉄道風景が残っていることで知られています。SL列車「パレオエクスプレス」も楽しみ!今回も鉄道ライターの土屋武之さん、カメラマンのレイルマンフォトオフィス・山下大祐さんと巡ります。

今回の見どころはここ!

1.ターミナル駅・熊谷で、もう懐かしい雰囲気が…
2.貨物列車と木造駅舎を味わう
3.秩父名物の立ち食い蕎麦屋さんとSL列車撮影!
4.「パレオエクスプレス」の魅力!

1.ターミナル駅・熊谷で、もう懐かしい雰囲気が…

旅のスタート地は埼玉県の中央部にある熊谷駅。今回はここから秩父方面へ向かいます。

古谷「朝ご飯を食べているうちに、あっという間に熊谷へ着いてしまいました。新幹線だと東京からすぐですね~」
土屋「そうだね。このあたりから都内へ通う人もふつうにいるエリアだよね。」
土屋「今日のテーマはなんだい?」
古谷「そうですねえ…秩父鉄道と言えば、SL列車『パレオエクスプレス』が有名ですが、それだけではなくて、昔懐かしい、昭和の雰囲気を味わえたらいいなと。」
土屋「さすが、昭和生まれ。」
古谷「そうなんです。私、ギリギリ昭和生まれですから…。」
土屋「僕なんか、ギリギリどころかもっと古いよ。でも、そんな僕たちが、子供の頃に見たような鉄道の風景が、ここではまだ楽しめる。」
古谷「さっそく、何か懐かしい雰囲気が…」
▲JRの駅の隣りに…

ICカードを「ピッ」と自動改札機にタッチして、JR熊谷駅を出ると、すぐ隣りが秩父鉄道の改札口。
でも、そちらへ回ると、気配が少し変わります。
▲新しい案内用モニターもあるけど、改札口には駅員さんが立つ

古谷「うわっ。小さい頃の近所の駅が、こんな感じでした…。」
土屋「さすがに自動券売機はあっただろう?」
古谷「もちろんです。でも、改札口に駅員さんが立っているのって、懐かしい雰囲気で大好きです!」
土屋「自動改札機がないローカル鉄道は、珍しくないけどね。」
古谷「これまでも、銚子電鉄とか大井川鐵道はそうでしたね。でも、新幹線も停まる駅なのに、この感じ。ちょっと感動します!」

もちろん、ICカードが使える最新の自動改札機や自動券売機があれば、ふだん乗る人にとっては便利なのかもしれません。
だけど、人と人とのあたたかい「ふれあい」が秩父鉄道にはあるのです。
▲レールの柱、木製のベンチなどが残る熊谷駅ホーム

熊谷駅のホームも、今どきの駅とは違います。
ベンチや案内表示、時刻表などもレトロな感じですが、いちばんの見どころは屋根を支えている柱でした!
▲なんと1912年製!

土屋「この柱を見てごらん。」
古谷「これ…レールですね!」
土屋「昔は、古くなったレールを、こういうふうに屋根を支える柱などに、よく転用したのさ。」
古谷「何か、文字が浮かび上がっています…」
土屋「『CARNEGIE』というのがメーカーの名前。アメリカの鉄鋼会社だ。『1912』が製造された年なんだよ。」
古谷「1912年製!100年以上前のレールなんですね…」
土屋「鉄道ファンの中には、こうした刻印を探して調べるのが好きな、古レール愛好家も少なくないんだ。」
▲熊谷駅から出発!

いきなり熊谷で楽しんでしまいましたが、三峰口行きの普通電車に乗り込んで出発です。
▲普通電車に乗り込む

古谷「これ、どこかで見たような電車ですね。」
土屋「東急電鉄の大井町線を走っていたものだよ。」
▲天井に取り付けられている扇風機も昔懐かしいアイテム

もちろん冷房車なのですが、今、扇風機がついている電車は、そうはないんじゃないでしょうか…?
▲「足袋×たびきっぷ」

今回の秩父鉄道の旅でも、1日乗車券を利用しました。
全線が1日乗り降り自由なきっぷは、ふだん「秩父路遊々フリーきっぷ」(1,440円)と呼ばれています。

けれども取材した時は、旅と「足袋」を掛けて、足袋の形をした「足袋×たびきっぷ」という名前で、同じ値段で発売されていました。こういうスペシャルバージョンに出会えると嬉しいものです!

足袋は、沿線の行田市の特産品。池井戸潤の小説やTBSのドラマ「陸王」で有名になりましたね。

2.貨物列車と木造駅舎を味わう

電車は最初、広い平野を各駅に停車しつつ走ります。
秩父はまだまだ先だと思っていると…
▲車窓に見えてきたのは…

土屋「さあ、降りるよ。」
古谷「え?まだ15分ほどしか乗ってませんよ?!」
土屋「ほら。まず、あれを見ようよ。」
▲貨物列車がいた!

私たちが降りたのは、武川(たけかわ)という駅。
この駅にたくさん停まっていたのは、貨物列車でした。

JRなら珍しくないかもしれませんが、秩父鉄道はもう日本でも数少なくなった、貨物列車が走っている私鉄なのです。
▲かわいい電気機関車を眺める

古谷「JRの貨物列車と違って、電気機関車が小さくてかわいいですね!」
土屋「秩父鉄道の電気機関車は、昭和20年代から50年代にかけて作られたものだ。」
古谷「何を運んでいるのですか?」
土屋「セメントの原材料になる石灰石さ。秩父の鉱山から熊谷に近い工場まで運んでいるんだよ。」
▲次第に山の中へ

武川からは次の普通電車に乗り、寄居(よりい)を過ぎて、いよいよ秩父地方へ入ります。
次第に山の中へと電車は走って行きます。
▲荒川に沿って走る

土屋「荒川が見えてきたよ。」
古谷「川下りで有名ですよね。」
土屋「秋の紅葉はもちろんだけど、ここは新緑の季節もきれいなんだ。」
▲和同開珎(わどうかいちん)がなぜ駅のホームに?

次に私たちが降りたのは、和銅黒谷(わどうくろや)駅。
ホームには「日本通貨発祥の地」として、和同開珎の巨大なレプリカが置いてあります。ここで発見された銅で作られていたんですって!

駅の名前も和同開珎にちなんで、2008(平成20)年に黒谷から和銅黒谷に改称されました。
▲和銅黒谷駅舎は木造!

古谷「私としては、木造駅舎が見逃せないのです!」
土屋「CMなどの撮影にも、よく使われている駅だよね。」
▲待合室や改札口もいい雰囲気

秩父鉄道でも、この駅の良さを理解しており、昔の面影を残しつつ、和同開珎関係の遺跡への玄関口として、リニューアルしたそうです。
▲時刻表も手書き風のものが掲げられている

待合室の時刻表も手書き風に作られているのには驚きました。ここまでやるとは!
コンピューターで作ったものにはない味があります。
▲主な駅までの乗車券や入場券は、硬券でも売られている

実は自動券売機も置いてあるのですが、窓口では硬い紙でできた「硬券」も発売されていました。

「熊谷まで1枚。」
「820円です!」
シュッとかっこ良く乗車券を1枚抜いて、カチャンと機械(ダッチングマシンと言います)で日付を入れる。
私も昔はJRの駅員で「みどりの窓口」を担当していましたが、全部、コンピューターでした。こんなきっぷの売り方もしてみたかったなあ…

3.秩父名物の立ち食い蕎麦屋さんとSL列車撮影!

▲西武鉄道からの乗り入れ列車がやってきた

和銅黒谷からは、観光地として有名な長瀞まで少しだけ戻ります。

ちょうど、西武池袋駅から西武秩父線を経由し、秩父鉄道に乗り入れて長瀞まで直通する列車がやってきました。
東京都心から乗り換えなしで秩父を訪れることができるので、この列車は山歩きの人や観光客でいっぱいでした。
▲長瀞駅舎も渋い

観光地として有名すぎる長瀞ですけど、ここの駅舎も洋風で渋いんです。
みなさんは、和銅黒谷駅と、どちらがお好みですか?
▲照明がおしゃれ

いつも観光客でいっぱいな駅ですが、立ち止まって駅そのものを見てほしいです。
待合室のこの照明なんか、おしゃれですよ!
▲駅舎の外にある改札口の柵も木製

土屋「昔、ちょっと大きな駅では、改札口とは別に駅舎の外に出口があって…」
古谷「その話、いっつも聞かされています…列車を降りた人が、混雑した待合室を通らずに、直接、外へ出られるように、でしょ?」
土屋「そうそう。」
古谷「でも、その出口が現役の駅は、もうほとんどない。どこの駅でも跡しかない。」
土屋「それがここ長瀞では、今も実際に使われている。」
古谷「しかも柵が木製のまま。いかにも“昭和“です!」
▲駅の雰囲気を楽しむ

私もしばし、木製のベンチで長瀞駅の雰囲気を味わいました…。
▲長瀞駅の脇には立ち食い蕎麦屋さんが健在

古谷「さて、お腹が空きました!」
土屋「もう?!まだ10時過ぎだけど…」
古谷「食い気だけは忘れません!それに、この長瀞駅舎のすぐ横には立ち食い蕎麦屋さんがあるんですから。」
土屋「そうだね。駅の蕎麦屋も、いつの間にか少なくなった。秩父鉄道でも、以前は熊谷駅や寄居駅にもあったけれど、なくなってしまった。長瀞のお店は貴重だね。」
▲カウンターで気軽に注文できる

立ち食いがいいのは、気軽で安いところ。さっと、美味しい蕎麦が食べられます。
このお店には椅子やテーブルもあるので、天気が良ければ、青空の下でお蕎麦というのもいいですね。
▲「長瀞とろろそば」(600円)と、「みそおでん」(1本200円)

私が注文したのは、「長瀞とろろそば」と、秩父こんにゃくを使った「みそおでん」。
お蕎麦は細めで、しっかりとした風味と歯ごたえがあります。

そして、みそおでんは秩父の名物です。
秩父では、農作業の途中で小腹を満たすための食事を「小昼飯(こじゅうはん)」と言うそうですが、みそおでんもそうした食事のために生まれたもの。
甘めの味噌としっかりした食べごたえのあるコンニャクが、お腹に満たされる感じでした。
▲「長瀞舟ざるとろろそば」(700円)

ざるそばを頼んでいた土屋さんいわく、「蕎麦は寒い土地のものに限る」そう。確かに北海道や長野、山形などの蕎麦は美味しいですよね。
秩父も冬は寒いところです。
▲荒川を渡る「パレオエクスプレス」

お腹がいっぱいになったところで、長瀞に来たからには鉄道好きとしては見逃せない荒川橋梁へ!
通称「親鼻鉄橋(おやはなてっきょう)」とも呼ばれ、上長瀞~親鼻間にあり、秩父鉄道の撮影名所なのです。

ちょうど、下り三峰口行きの「パレオエクスプレス」がやってくる時刻。 荒川の河原へ降りて、蒸気機関車の勇姿をじっくり眺めました。

そして、この「パレオエクスプレス」。秘密があるのでした…。

4.「パレオエクスプレス」の魅力!

▲親鼻から、再び秩父鉄道の旅へ

荒川の鉄橋で11時45分頃、「パレオエクスプレス」を見送った私たち。

土屋「さあ、急ぐよ!」
古谷「ええ?」 

すぐにタクシーで近くの親鼻駅へと向かい、11時57分発の三峰口行きの普通電車に乗り込みました。

古谷「何があるんですか?」
土屋「見てのお楽しみさ。」
▲秩父駅で「パレオエクスプレス」に追いついた?!

私たちが乗った普通電車は12時13分に秩父駅に到着。
そうしたら、そこにいたのは「パレオエクスプレス」!

土屋「『パレオエクスプレス』は、エクスプレスと言っても、スピードは普通電車より遅いし、列車のすれ違いや蒸気機関車の点検のため、途中の主な駅でけっこう長く停まっているんだ。」
古谷「それで、追いついてしまったんですね…あ、こっちの電車の方が先に出発です。」
▲秩父の象徴・武甲山(ぶこうさん)も間近に見える

西武秩父線との乗換駅でもある御花畑(おはなばたけ)駅の付近では、車窓に武甲山が見えます。
貨物列車で運んでいる石灰石は、この山から切り出されるそうで、山肌が削られている様子もわかります。異様ですけど、見応えもあります。
▲「パレオエクスプレス」が三峰口に到着

終点・三峰口に着いて10分ほどすると、先ほど追い抜いた「パレオエクスプレス」も到着しました。
私たち、蒸気機関車が走るシーンを2回も見ることができたんですね。

古谷「SL列車は乗るのもいいけど、見るのも楽しいですものね。」
土屋「こういうことができるのも、時刻表の“妙“さ。」
▲方向転換と整備に向かうC58形蒸気機関車

「パレオエクスプレス」を引っぱってきたC58形蒸気機関車は、到着するとすぐに切り離されて、転車台での方向転換と整備に向かいます。
そうした様子も、三峰口駅の構内では間近に見ることができます。
▲三峰口駅にある転車台

古谷「いつもより多めに回しておりま~す。」
土屋「おいおい…。」

でも、実際に1周半してサービスしてくれるのです。
▲整備が終わったところで、お願いして運転台に入れてもらいました!

そして、今回は特別に運転台へ入れてもらえました! もう、大サービスです。
▲三峰口駅の正面

三峰口駅は、三峯神社など秩父観光でも人気のスポットへの玄関口。
駅前からはバスも出ています。
▲「パレオエクスプレス」は30周年

2017年が「パレオエクスプレス」運転開始から30周年に当たるため、あちこちにお祝いの飾り付けがありました。
▲旅の最後は「パレオエクスプレス」で

最後は、熊谷まで「パレオエクスプレス」に乗って戻ります。
夏休みや紅葉シーズンなどは、お客さんでいっぱいになりますが、上り熊谷行きの方が比較的空いています。
SL列車乗車がお目当てなら上りがおすすめです。
▲指定席券を確保したい

確実に座りたいのなら、4両中1両が指定席になっているので、ぜひ指定券を確保してください。
ちなみに、下り、上りとも指定席車が蒸気機関車のすぐ後ろになります。音を楽しむなら、指定席です!
▲ゆっくり力強く走るSL列車

上り「パレオエクスプレス」ものんびりと走ります。

土屋「御花畑で降りても、次の普通に乗れば長瀞でまた追いつくよ。」
古谷「ミステリーみたいですね…」
土屋「やってみる?」
古谷「いえ、遠慮しておきます。ていうか、置き去りにしないでください!」
▲車内販売も楽しみ

「パレオエクスプレス」では、SLグッズなど、さまざまな車内販売も楽しめます。
地元の銘酒やスイーツ類の販売が見逃せません。
各座席には、カタログも置かれていて、ゆっくりと品定めもできます。
▲ブルーベリー味を購入!(2017年度の販売商品)

一番人気は、地元産のアイスクリーム(300円)。
これが、牛乳のコクが感じられて、とても美味しいのです!
バニラ、いちご、ブルーベリー、チョコレートの4種類があります。
▲乗車記念スタンプもある

1号車には、乗車記念スタンプも置かれていました。
スタンプ大好きな私。もちろん、押しに行きます!
▲終点・熊谷に到着

秩父出身の落語家、林家たい平師匠が録音した車内アナウンスを聞きながら過ごしていると、2時間少々の旅はあっという間。熊谷に戻ってきました。
▲最後は、電気機関車が登場

到着した「パレオエクスプレス」には、SLとは反対側の最後尾に電気機関車を連結し、基地へと引き上げます。
これも最近では、あまり見かけない作業ですので、すぐに改札口へ向かってしまってはもったいないです。アトラクションとして楽しみたいですね。

こうして、「東京からいちばん近いSL列車」の旅も終わりました。
皆さんも、気軽に昔懐かしい旅をしに秩父鉄道へ出かけてみてはいかがでしょうか?
※記事内の価格表記は全て税込です。

土屋武之(鉄道ライター)

鉄道を専門分野として執筆活動を行っている、フリーランスのライター・ジャーナリスト。硬派の鉄道雑誌「鉄道ジャーナル」メイン記事を毎号担当する一方で、幅広い知識に基づく、初心者向けのわかりやすい解説記事にも定評がある。
2004年12月29日に広島電鉄の広島港駅で、日本の私鉄のすべてに乗車するという「全線完乗」を達成。2011年8月9日にはJR北海道の富良野駅にてJRも完乗し、日本の全鉄道路線に乗車したという記録を持つ、「鉄道旅行」の第一人者でもある。
著書は「鉄道員になるには」(ぺりかん社)、「誰かに話したくなる大人の鉄道雑学」(SBクリエイティブ)、「新きっぷのルール ハンドブック」(実業之日本社)、「ツウになる!鉄道の教本」(秀和システム)など。

古谷あつみ(鉄道タレント・松竹芸能所属)

古谷あつみ(鉄道タレント・松竹芸能所属)

小学生の頃、社会見学で近くにある車両基地へ行き、特急電車の運転台に上げてもらったことがきっかけで、根っからの鉄道好きとなる。 学校卒業後は新幹線の車内販売員、JR西日本の駅員として働く。その経験から、きっぷのルールや窓口業務には精通している。 現在はタレント活動のほか、鉄道関係の専門学校や公立高校で講師をしている。2015年には、「東洋経済オンライン」でライター・デビューし、鉄道旅行雑誌「旅と鉄道」等で執筆活動中。

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