名古屋で巡る冬のかき氷/小池隆介のかき氷あっちこっち食べ歩きvol.21

2018.02.01 更新

ここ数年の間に東京でも関西でもかき氷通年提供を謳う店が増えた。しかしほんのちょっと前までは数える程しかなく、秋冬に都心でかき氷を食べられる店が少なくなると、かき氷好きは、かき氷を通年提供する店の多い名古屋へと足を延ばすことが多かった。かき氷を好きな僕らにとって、「名古屋」という町は真冬のオアシスのような場所だった。今回は名古屋で真冬でもかき氷を食べられる店を巡ってみよう。

名古屋マダムの憩いの場、美と健康のかき氷「カフェ サブヒロ」

数年前、「すごいかき氷を出す店が名古屋にある」とあちらこちらで「サブヒロ」の名前を聞くようになった。
味もいいが値段もお高いらしい。高価なものになると2,000円を超えるとか。それでもファンが多く、いつも賑わっているというのだ。
好奇心半分、期待半分で訪れた初回の訪問で、僕はすっかりその味と口どけに魅了され、すぐに東京から2度目の訪問をしたほどだった。
「サブヒロ」のかき氷は、氷の扱い方・削り方が大変特徴的だ。ここ最近は羽のようにふわふわと薄く削り、空気を含ませるように盛り付ける技法が一般的だが、サブヒロの氷はとにかく細かい。
羽氷の対局にあるパウダースノーの状態に近い。シロップは注文が入った段階で素材とオリジナル白蜜をあわせて完成させる。
注文から提供まで少し時間はかかるが、作りたての蜜というものはやはり香りも味も際立っている。

店も落ち着いた雰囲気で、ゆったりとした気持ちで待つことができるので、待ち時間はさほど気にならない。むしろ、ミキサーを回す音が聞こえてくると、「今、自分のシロップが作られているな…」と期待度も上がってくる。
▲「ピンクグレープフルーツのかき氷」1,000円(税込)

まず、いつも一番に注文するのは「ピンクグレープフルーツのかき氷」。薄ピンク色の蜜が氷にしっとりと染み込み、シンプルではあるが大変美しい姿をしている。

グレープフルーツの甘さ、酸味、ほろ苦さが最初から最後まで味覚神経を刺激し続け、最初から最後までずーっと美味しいのだ。

舌に乗せた瞬間に一気に喉元に流れ込むような滑らかな口溶けも、なかなか他では味わうことのできない「サブヒロ」らしさを感じさせる特徴である。まるでフランスの滑らかな氷菓のソルベを、もっと軽く更に口溶け良くしたような氷というところだろうか。
時おり感じるグレープフルーツの果肉と、氷に散りばめられている柔らかな寒天が、しっとりとした氷の口溶けにアクセントを与えてくれるのも僕好みである。
▲「苺ミルク氷」1,000円(税込)

店主に「一番人気」を尋ねると、「やっぱり苺ミルクですね」と即答だった。そういえばここで苺のかき氷を食べたことなかったっけ、と注文してみた。これは、苺とミルクのどちらを選ぼうかと迷っている人のために追加されたメニューだという。

なるほど苺シロップの上にミルクがかかっているわけではなく、苺のかき氷とミルクのかき氷が一度に味わえるように、2つのシロップを綺麗に掛け分けているのだ。

これはいい!苺の爽やかな美味しさも印象的なのだが、岐阜の「ひるがの牛乳」を使用したミルクの美味しさも勝るとも劣らない。2つの味が楽しめるお得なメニューだ。
▲「トマトの氷」1,500円(税込)
▲「アボカドミルク氷」1,500円(税込)

「サブヒロ」と言えばよく画像に上がってくるのが、「トマトのかき氷」と「アボカドのかき氷」だ。どちらも素材を厳選して味の良いものを常時確保し、そのものの味を活かしつつ美味しいデザートとして完成させた、とても美味しいかき氷だ。

トマトの串切りが飾られていたり、アボカドのスライスがインパクトがあったり、とてもインスタ映えするかき氷だが、その姿を上回るほど味が良いのが「サブヒロ」らしさと言えるだろう。
▲「夜明けのハーブ氷」1,500円(税込)

最近店主が力を入れているのが、「夜明けのハーブ氷」という色が変わるかき氷だ。
「ブルーマロウ」というハーブから抽出されたシロップはアルカリ性で、酸性の食材を合わせると色が変色する。

この特徴を利用して、途中で酸性の生レモン果汁をかけることでかき氷の色を変えることができる。
▲生レモン果汁を注ぐと、かき氷の色に変化が

最近こういうかき氷があることは知ってはいたが、いざやってみるとやはり楽しい。
今後は果物の組み合わせを変えながら、通年で提供を考えているとのことだった。

「サブヒロ」のかき氷は美しい。そして、食べ物本来が持つ美しさは美味しさにも比例していると僕は思うだのが、「サブヒロ」の氷はそれを実感させてくれる。

時として、見た目も良く、味も良く、全てを兼ね備えるものは高価になることもある。それでも妥協せずに美味しいものを自信を持って出してくれるのであれば、多少高価になったとしても僕は構わないと思う。

そんな中、2016年まではなかった「スモールサイズ」のかき氷の提供を始めたという。高価なものでも、量を少なくすることでほんの少しお手軽に食べてもらいたい。そういう人気にあぐらをかかない姿勢が、更に僕を惹きつけるのだと思う。

「サブヒロ」は、平日は朝9時から、土日祝日は朝7時半からかき氷の注文ができる上に、名古屋名物モーニングも11時まで注文可能。
名古屋巡りの最初に訪れるのに最適だ。

お茶屋が薦めるお茶かき氷の美味しい味わいかた「Shizuku」

昭和4(1929)年創業のお茶の専門店「お茶の芳茗園(ほうめいえん)」の隣にある「Shizuku」は2016年6月にオープン。日本茶とともに楽しめる甘味と、お茶に特化したかき氷メニューが注目を集め、あっという間にかき氷ファンの集まる店として知られるようになった。
かき氷に注目したきっかけは、家業である日本茶の風味や味を損なうことなく、最高の状態で食べられる甘味を提供したいと考えていたからだという。
加熱することなくシロップを作り、できたての状態で冷たい氷とともに味わってもらうかき氷は、お茶を使ったスイーツとしては最もシンプルで、最も効果的なものだと思う。

卸問屋だから、上質なお茶を贅沢に使用できる上、更に抹茶に関して言えば隣の本店の店内で挽いた挽きたての抹茶を使用したかき氷を提供してくれる、お茶好きにはたまらない環境だ。

スタイリッシュなコンクリートの壁に囲まれた広い店内には、10人以上がゆったりと座れるヒノキのテーブルが一つ。全ての客は向かい合いように一つのテーブルを囲むのだが、ゆったりとした大きなテーブルなので圧迫感や違和感がない。ただ、一つのテーブルを共有することで、客同士の間に程よい緊張感が漂っているように感じる。
客席から店の奥を見ると、テーブルの端には鉄瓶にお湯が沸き、いつでもお抹茶が点てられるように準備されている。
またその奥にはガラスの向こうに氷削機が置かれている。
注文が入るとガラスの向こうではシロップが準備され、適温にもどされた氷が機械に設置される。

やがて氷を挽いて形を整え、シロップをかける…そんな作業が静かに進められるのが見えて、まるでステージのようだ。
日本茶を点ててもらう時に、その手元をじっと見つめているような感覚。氷を削り、仕上げてゆく一つ一つの動きがとても美しく感じる。

まずはお店の一推しである、上級宇治抹茶の「京みどり」をたっぷり使用した「濃茶氷」をいただくことにした。
▲「濃茶氷」1,200円と、トッピングの「とうふ白玉」150円(ともに税別)

普段、トッピングをすることはあまりない僕だが、「とうふ白玉」という柔らかそうな言葉に惹かれて追加注文。
目の前に運ばれてきた「濃茶氷」は、本当に美しい深い緑色をしていた。
羽にかかったシロップがつやつやと光り、口に含むと上質の抹茶に感じるお出汁のような深い旨みを感じた。
甘さはごくごくわずか。糖度をおさえることによって、抹茶本来の甘さと旨みを敏感に感じることができるのだろう。

抹茶の下の白雪の部分には、やはり甘さは控えめだがほんのりと甘いみぞれがかかっているようだ。
抹茶の甘さに慣れた舌にちょうど良い加減、控えめな甘さが心地よい。
できれば最初の一口は、ミルクも小豆もかけず、抹茶本来の味を味わってもらえたらと思う。

さて追加注文した白玉はというと、想像通りの柔らかさ。
氷と一緒に食べても硬くならず、抹茶の味を邪魔しない、とてもオススメのトッピングである。
▲「ほうじ茶氷」650円と、トッピングの「自家製ミルク」100円(ともに税別)

抹茶とは系統の違うお茶のかき氷をと次に選んだのは「ほうじ茶氷」。オススメはミルクトッピングと書いてあるのでミルク付きで注文してみた。

「ほうじ茶氷」は、「お茶の芳茗園」で自家焙煎した香り豊かなほうじ茶をたっぷり使ってシロップを作っている。
抹茶よりも色、香り共にインパクトが薄いため、なかなかほうじ茶の味を打ち出すのが難しいと言われているが、さすが自家焙煎ほうじ茶をたっぷり使っているだけあって、色も香りもほうじ茶の香ばしさが際立っている。
途中でミルクを加えると、まろやかな味わいになるのもいい。和風のチャイの味といったところだろうか。新しい発見である。

定番の日本茶のかき氷の他に、オフシーズンになり少し手がかけられるようになると変わり種のメニューが登場することがある。
「あまり、新しいものをどんどん出すというわけではないんです。日本茶を中心としたお茶を主体に、その季節季節に美味しいと感じるものを、じっくり食べていただきたい」と店主は言う。
▲「あんずジャスミン茶(10月限定)」1,000円(税別)

この日に提供されていたかき氷は「あんずジャスミン茶」だ。
ジャスミン茶のシロップは、最初は優しくほのかに感じるのだが、食べ進むうちにジャスミンの茶葉のほろ苦さと鼻に抜ける香りが濃くなっていく。
やや苦味を感じるようになったところであんずのシロップを追加。あんずの甘さはジャスミンの風味を邪魔しない程度に口の中に広がってゆく。このバランス、すごく美味しいではないか!
▲アクセントにブラックタピオカが添えられており、ジャスミンの魅力をうまく引き出している

冬のメニューは11月は「白味噌」、12月は「クリスマス」、1月は「酒粕」…毎年ある程度決めたテーマの中で、ちょっと変化させたり新しい美味しさを追求してみようと思う、と語る店主。
「でも気まぐれだから。出せるかもしれないし、先延ばしにするかもしれないし」
メニューに関しては、自然体で無理をしない提供をする予定とのこと。あえてゆとりを持って物事を考える姿勢が、この優雅な空間を作り出しているのだろう。

大好きな柴犬と柴氷に逢いにゆく「甘味処 柴ふく」

きな粉のかき氷といえば、僕がまず最初に思い出す店は「柴ふく」である。

2009年、ご夫婦二人で甘味処を始めた頃には「まだきな粉のかき氷を提供している店はなかったと思う」という。
確かに、氷の白色が隠れるほどにきな粉をたっぷりと振りかけたかき氷は衝撃的で、またその美味しさも感動ものであった。
きな粉とかき氷がこんなに相性がいいなんて!と驚いたことを、よく覚えている。
▲「黒柴金時」790円(税込)

「柴ふく」一番人気は沖縄産の黒糖を使った黒蜜に、たっぷりのきな粉をかけた「黒柴」で、これにミルクが加わると「黒柴ミルク」、小豆が加わると「黒柴金時」になる。

黒蜜は黒糖のえぐみが出ないように数種類をブレンドし、かき氷にかけた時になじみの良い味になるように気をつけている、と店主は言った。
「みなさんが美味しい、美味しいって言ってくれるから、その期待を裏切らないようにしなくちゃいけない。いつ来ても、おんなじ、美味しいかき氷を提供できるように。そこは気を遣ってます」

「黒柴」より、もう少しあっさりとした蜜で食べたいという方には、精製を抑えた砂糖で作った優しい甘さの「赤蜜」を使った「柴」(赤蜜ときな粉)がオススメだ。
濃厚な黒蜜と比べ、赤蜜はスッキリした後味が特徴である。
▲「柴」660円(税込)

このかき氷は色目が柴犬にそっくり、ということでネーミングが決定。なるほど、看板犬のくるみちゃんによく似た配色。
「黒柴」に比べてコントラストがはっきりしていて、なんだか可愛さを感じてしまう。
こちらもきな粉がたっぷりなので、くしゃみ注意、吸い込み注意だ。

2つのきな粉かき氷を楽しんだ後、温かいほうじ茶を飲みながら人気メニューに関するお話などを伺っていると、「今年は、宇治金時にきな粉をトッピングしたものがよく出た」という話になった。

「柴ふく」の抹茶は、愛知県のお茶の産地として有名な西尾の抹茶を使用している。一度食べてみたいな、と思いつつも、ついついきな粉を捨てがたく、抹茶には手を出さなかったのであるが、なるほどその手があったか…。
▲「宇治金時きな粉」830円(税込)

抹茶ときな粉のかき氷は、想像以上に彩りが美しく、なんで今まで気づかなかったのだろうかと後悔。
気を取り直して口に運ぶと、まずはきな粉とトッピングの小豆の味が混ざり合い、ついつい顔がほころぶ美味さ。
それから追いかけてくる抹茶の風味が、これまたきな粉と小豆に良く合うことと言ったら!
抹茶、きな粉、小豆がそれぞれ美味しく、無限にループしてしまいそうだ。
「これから先も、あまり今までの道から外れるようなことはしないようにしようと思ってます」と店主ご夫婦が話す。

「今あるものを美味しい状態でずっと続けていく、変わらない味を守り続けていく」ということは、多分私たちが思っている以上に大変なことだ。
変わりゆく世間の中で、どっしり腰を据えて、流されず、変わらない努力をし続けなければならない。むしろ変わっていくことよりも難しいかもしれない。
けれど、僕は「柴ふく」はいつも変わらず、同じものを提供し続けていてほしいと思う。愛すべき柴犬かき氷は、いつもいつまでもこのままであってほしいと願ってやまない。
名古屋近辺には、ここで紹介しきれなかったかき氷通年提供の店がまだ他にも沢山ある。
フルーツパーラーのかき氷、和菓子屋のかき氷、カフェのかき氷。
オフシーズンに巡るかき氷の旅、名古屋はまだまだ先が長い。
次の機会には、さらなる名古屋かき氷の魅力を探ってみたいと思う。
小池隆介

小池隆介

かき氷のフードイベント『かき氷コレクション』実行委員会代表。かき氷専門ガイド本『かきごおりすと』の編集・発行者。一般社団法人日本かき氷協会代表。日本中のかき氷を食べ歩いて取材し、日本古来の食文化で伝統食でもあるかき氷を広く伝える為に活動。かき氷にとどまらず、氷雪業(氷の卸しや販売、製造)全体にも精通している。

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