栃木県最古の温泉、那須温泉元湯「鹿の湯」で格別の入湯体験を!

2018.05.17 更新

栃木県の那須温泉元湯「鹿の湯」は、塩原温泉、日光温泉をおさえて、県内で最も歴史の深い温泉です。泉質は硫黄泉で、白濁した湯が特徴。古くから湯治場として親しまれ、いまも全国から多くの人が訪れます。松尾芭蕉が「おくのほそ道」の道すがら立ち寄ったことでも知られる名湯で、独特な入浴法を体験してきました!

昭和初期にタイムスリップ!?

JR宇都宮線・黒磯駅からバスに乗って約35分。終点の那須湯本温泉で下車し、2分ほど歩くと「鹿の湯」に到着です。
▲鹿の湯のエントランス

鹿の湯の名前の由来は、今から1385年前、飛鳥時代にまでさかのぼります。

舒明(じょめい)天皇の御世に、那須の郡司(中央から派遣された国司の下で郡を治めた地方官)であった狩野三郎行広(かりのさぶろうゆきひろ)が山狩りに行き、狙っていた鹿に弓を射ったところ、山奥へと逃げ込まれてしまいます。その後を追ったところ、鹿が傷ついた体を癒している温泉を見つけたのです。鹿によって発見されたので、「鹿の湯」と名づけたと伝えられています。
▲ガラスの引き戸を開けると、目の前には受付が

木造の建物は1936(昭和11)年に建造されました。館内はメンテナンスが行き届いていて清潔感があります。ノスタルジックな雰囲気が漂い、まるで昭和初期にタイムスリップしたかのような気分になります。
▲玄関にある下駄箱もレトロな雰囲気
▲取っ手に、かわいらしい「おしどり」の文様を発見!

受付で入浴券を購入します。このとき、砂時計を借りるのをお忘れなく…(何に利用するかは後ほどご説明)。
▲平日は大人400円、小学生300円。大人のみ土・日曜、祝日は500円
▲貴重品は、受付の横にあるコインロッカーに預ける(大型200円、小型100円)
▲広々とした渡り廊下の両端はベンチになっていて休憩もできる
▲窓の外には湯川が流れる
▲いざ、入湯!

入湯前の儀式、かぶり湯200回!?

のれんをくぐってまず驚いたのが、脱衣所と浴室の間には戸がなく、ひと続きになっていること。脱衣中から、硫黄のにおいがプンプンと漂ってきます。
▲脱衣所。置かれているのは衣服を入れるカゴと椅子のみ
▲「効果ある入浴の心得」は必読!

入浴前に、まずは「かぶり湯」をします。かぶり湯とは、のぼせたり湯あたりをしないために行なう、全国でも数少ない温泉療法です。

ちなみに、よく聞く「かけ湯」にも同じ目的がありますが、かけ湯が足先から体全体にゆっくりかけていくのに対して、かぶり湯は頭部に湯をかけ続けます。
ひざを浴槽のふちに近づけて、頭を下げ、首の後ろに、ひしゃくでなんと200回!「湯が熱いので、首の後ろにタオルを置くといいですよ」という湯守の薄井和夫さんのアドバイス通りに行なってみます。

湯は周りの方に迷惑にならないよう、静かにかけます。
▲衝立にはさまれているのが「かぶり湯」用の浴槽
▲かぶり湯用の湯は48度!ただ、ひしゃくで少量ずつかけるせいか、思ったほど熱さは感じない
▲早く湯に浸かりたい気持ちを抑えて、湯をかけ続ける。首元を中心に、冷えていた体がじわじわと温まってくる

洗い場も鹿の湯ならではの造り。蛇口がなく、パイプから源泉が絶えず流れているのです。なんと贅沢…。ただし石鹸やシャンプーの使用は禁止されているのでご注意を。鹿の湯は硫黄泉のため泡立ちにくく、浴場内が滑りやすくなる危険性があるためです。
▲男湯の洗い場。中央に2つあるのは「うたせ湯」

源泉かけ流しで5種類の温度を楽しめる

かぶり湯を終えたら、いよいよ湯に浸かります。

女湯は温度別に5種類の湯があります(この日、各浴槽の看板に表示されていたのは41度、42度、42.5度、44度、46度でした)。男湯は、女湯の5種類に加えて48度の6種類です。
入る順番などに決まりはなく、好きな温度を選べばよいということで、一番低い41度の湯から入ってみることにしました。
▲41度の湯に浸かる。はぁ…気持ちいい~

湯は、入った瞬間に肌にすっと吸い付くようなやわらかさで、体中が湯にふわっと包まれます。また、擦りガラスや天窓からは太陽の光が差し込み、硫黄の香りも心地よく、静寂に包まれながら、頭からつま先まで癒されます。
▲硫黄泉はもともとは無色透明。空気に触れることによって化学反応が起こり、白く濁る

鹿の湯の泉質は単純酸性硫黄温泉(硫化水素型)で、神経痛や筋肉痛をはじめ、高血圧や糖尿病などの改善にも効能があるといわれています。ただし、ただのんびりと湯に浸かっているだけでは効果は十分には発揮されません!更衣室の看板にもあった「短熱浴」がおすすめです。

短熱浴とは、腰まで1分、胸まで1分、首まで1分湯に浸かるのを繰り返す入浴法。受付で借りた砂時計を横に置いて、時間を計りながら入浴します。ちなみに一回の入浴で約15分程度(5回反復)、一日4回までが目安です。正直ちょっと面倒くさいなと思いましたが、実際に試してみると、いきなり首まで浸かるよりも、じわりじわりと体が温まっていく過程が心地よい!
▲どの浴槽もすべて源泉100%かけ流し。贅沢な気分を味わえる

鹿の湯では毎晩、温泉をすべて抜いて掃除します。その後、約64度の源泉をパイプから流し込んで溜めていくのです。湯温の低い浴槽にはぽたぽたとゆっくり、湯温の高い浴槽にはザーザー勢いよく入れて温度を調整します。ゆっくり入れる方が空気に触れる時間が長いため、低い温度の湯のほうがより白濁します。

源泉はぬるくなったり熱くなったりと温度が変わりやすいので、一時間に一度、薄井さんが男湯に、女性スタッフが女湯に入り、湯の温度を確認し、調整しています。
▲「那須湯もみ唄(ドッコイショ節)」の歌詞が書かれた看板(写真は男湯)。5~11月の毎月最終週の水曜午前11時からは、「那須高原湯本ガイドクラブ」による湯もみショーを見学できる

41度に続いて、42度、42.5度、44度の湯に浸かってみました。44度の湯に少し浸かっていると、だいぶのぼせてきました。

「湯あたりしてしまうので長湯しないように気を付けてください。無理して高い温度の湯に入ろうとせず、自分の体にあった温度に入ってくださいね」という薄井さんのアドバイス通り、46度の湯には浸からずに上がりました。

ちなみに男湯の48度の湯加減を特別に体験させてもらいましたが、指先を少し入れただけで「熱っ!」と叫んでしまうくらい熱々でした。
▲42.5度の湯。天井が高いため、屋内でも開放感がある

入浴後は体に付着した温泉の成分を洗い流さないことが大切です。湯上がりは体を冷やさないように気をつけながら、渡り廊下でゆっくり休みました。

受付では、お土産にぴったりの「湯の素」を販売しています。「湯の素」とは、温泉に含まれる成分や物質が沈殿・固形化してできるもの。鹿の湯の「湯の素」は、鹿の湯と、近くにある別の源泉「行人の湯」から採取されています。自宅でも那須温泉に浸かっているような気分を味わえますよ。
▲受付で購入できる記念入浴タオル(400円)と「湯の素」(600円)

湯上がりは周辺をぶらり散歩♪

体のほてりを冷ました後は、近くを少し歩いてみました。
▲湯川に架かる元湯橋
▲元湯橋を渡ったところには「湯の素採取場」があり、採取用の箱がずらりと並ぶ
▲鹿の湯から徒歩3分のところには鹿の湯を発見した狩野三郎行広が建立した「那須温泉(ゆぜん)神社」がある

鹿の湯は、土・日曜、祝日は全国から多くの人々が訪れて混雑するので、ゆっくり湯を楽しみたい方は平日がおすすめ。周辺には鹿の湯を源泉とする温泉宿がいくつか並んでいるので、宿泊しながら湯治を体験するのもよいですよ。

筆者は冷え性なので首元や指先、足先がいつも冷えているのですが、この日は一日中体がぽかぽかしていて、幸せな気分になりました。肌もすべすべして、硫黄のにおいがほんのりと香っていました。この感動を味わうには、実際に湯に浸かってみるのがいちばん!那須方面におでかけの際はぜひ一度、立ち寄ってみてくださいね。
※記事内の料金・価格はすべて税込です

撮影:舛元清香
桑沢香里

桑沢香里

編集者、ライター。出版・編集プロダクションのデコに所属。雑誌、書籍、小冊子、ウェブ媒体の編集・執筆などを手がける。編集を担当した本に『わたしらしさのメイク』『おとなのヘアケア読本』(ともに技術評論社)、『劇団四季ミュージカルCATSのすべて』(光文社)、『大相撲手帳』(東京書籍)、『大相撲語辞典』(誠文堂新光社)などがある。

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