新横浜ラーメン博物館で、世界に誇る「RAMEN」を食べ歩く

2018.03.14 更新

「新横浜ラーメン博物館」(通称ラー博)は、1994(平成6)年に開館して以来、ラーメンコンプレックスの元祖として、また新横浜の観光名所としてすっかり定着しています。最近はどんな店が出店し、どんなラーメンが人気で、どんなラーメンがおいしいのか。食べ比べて調査してきました。

全盛期には年間400杯のラーメンを食べていた筆者の友人Yによると、ラーメン界はいま逆輸入がトレンドだという。
東京・大塚の「創作麺工房 鳴龍(なきりゅう)」が『ミシュランガイド東京 2017』『ミシュランガイド東京 2018』と2年連続で一つ星と評価されたことからもわかるとおり、海外では日本のラーメンは料理のひとつのジャンルとして認められつつある。

志のある若者は飽和状態になった日本を離れてアメリカやヨーロッパで店を開き、当地で人気を集めた店が日本に帰ってくる……。その代表がラー博の「YUJI RAMEN」(アメリカ・ニューヨーク)であり、「無垢-muku-ツヴァイテ」(ドイツ・フランクフルト)であるという。

マグロのアラ“ツナコツ”でダシをとる「YUJI RAMEN」

ラー博は、地上1階・地下2階の3フロアがあり、地下2階は昭和33年の町並みを模した吹き抜けの広場になっていて、その広場を取り囲むようにラーメン店が並んでいる。さっそく「YUJI RAMEN」の入口をくぐると、魚の芳醇な香りがただよってくる。店内はこざっぱりした木のカウンターが主体。なんだか寿司屋に来たみたいだ。
▲「YUJI RAMEN」の外観。どの店も注文は店頭の券売機で食券を購入する

「YUJI RAMEN」は、アメリカで魚の卸売りを手がけてきた原口雄次氏が、魚のアラを有効活用できないかと考えて開店を思いたった。マグロのアラを強火で煮て白濁させたツナコツスープが特徴である。
▲厨房で「ツナコツラーメン」の細麺をゆでる、副料理長の佐藤雪紅(ゆきえ)さん

看板メニューの「ツナコツラーメン」のスープをすくうと、まるでとんこつスープのようにトロッとしていて濃厚な味。細麺との相性がよい。
▲「ツナコツラーメン」(900円・税込)

具材がカイワレダイコンというのがやや物足りないかな……と思っていたが、食べてみるとこのスープにはあっさりしたカイワレダイコンが正解なのだと感じ入った。食べ終わると、口のなかにさっぱりとした辛さが残る。あとで佐藤さんに聞いてみると「ゆずこしょう」だという。
ちなみにチャーシューは豚肉ではなく、マグロのハラモ(脂の多い腹の部分)を使用している。
▲「YUJI RAMEN」のカウンター席

事前に友人Yから、ラー博には「ミニ」という小サイズのメニューがあることを聞いていた。
まだ序盤なので、あっさりしたものが食べたくて「ミニ季節野菜と麦味噌まぜめん」を頼んだ。太麺の上に焼いたカボチャやゴボウ、生の千切りキャベツがのっている。
▲「ミニ季節野菜と麦味噌まぜめん」(630円・税込)

赤く見えるのはビーツをすり下ろしたもの。春や夏はビーツではなく季節に合わせた別の野菜になるらしい。ラーメンはもはや立派なスローフードなのかもしれない。
ベジタリアン向けのメニューなのでツナコツのダシはない。麦味噌とゴマ油と醤油の味でいただく。
野菜のカリカリ&シャキシャキした食感が心地よく、さっぱりとした味なのでサラダ感覚で食べられる。食べ比べのひと休みに最適だ。
▲取材当日は厨房もホールも女性スタッフ。ラーメン店では珍しい!

ヨーロッパの食材を惜しげもなく使う「無垢-muku-ツヴァイテ」

「ツヴァイテ」とはドイツ語で「2」のこと。「無垢-muku-ツヴァイテ」とは、ドイツの本店「無垢-muku-」の2号店という意味である。店内は余裕のある4人がけテーブル3つとカウンター。ジャジーなヒップホップがBGMにかかっている。
▲「無垢-muku-ツヴァイテ」。カップルや男女グループのお客さんが多かった

厨房の上には黒板が掲げられ、グリューワインやバイエルン産伝統ビールなどのドリンクのほか、ポメス(フライドポテト)やソーセージなどのおつまみのメニューが書かれている。隣の店に移動しただけなのに、ニューヨークのスシバーからドイツのおしゃれカフェにひとっ飛びだ。
▲黒板のメニュー書き。お酒とおつまみが豊富
▲厨房には金髪の男性、ホールにはヘアバンドの似合う女性。カフェっぽい

店員さんに薦められるまま、店名を冠した「無垢ツヴァイテラーメン」を注文した。「ミニ」はないので通常のサイズである。ヨーロッパ直輸入の食材をふんだんに使った日本とヨーロッパの融合ラーメンとのこと。

スープはとんこつと鶏ガラ。黒コショウが効いている。顔を近づけるとラーメンなのにザワークラウトのほのかな酸味が鼻をくすぐる。これは新鮮!
同行するカメラマンにおすそわけすると、「あーなんだっけなあ……、そうだイタリアンのソフリット(香味野菜を油でじっくり炒めた料理)みたいな味。これでワインが飲めるね」とご満悦だ。
▲「無垢ツヴァイテラーメン」(1,200円・税込)

ザワークラウトは、炒めることでほどよく酸味を飛ばしてある。発酵食品であるザワークラウトを入れることで乳製品を入れたかのようなコクが出るという。
黒コショウだと思ったのは、「ズィーベン」(ドイツ語で7を意味する)と呼ばれる配合コショウ。七味唐辛子のように7つの香辛料を混ぜている。
クルトンも単なるクルトンではなく、「ラルド」という豚の背脂で揚げて塩とハーブで味つけたもの。ラーメンはここまで進化したか……。
▲チャーシューではなく「パンチェッタ」という豚バラ肉のベーコンが入っている

せっかくなので定番メニューである「無垢ラーメン」のミニも頼んだ。こちらも工夫が隠されている。下層が昆布ダシ&醤油のスープで、上層がとんこつ&鶏ガラのクリーミーなスープである。
作り方としては、最初に下層のスープを注ぎ、その上に麺をのせ、最後に上層のスープをレンゲの裏に伝わらせてかけるとうまくいくそうだ。
▲「ミニ無垢ラーメン」(570円・税込)

スープをすくって飲むと、濃厚だけど繊細な不思議な味がする。下層の昆布&醤油も混ざっているのだろうか。すくっては飲んで、すくっては飲んで味を確認していると、もはやスープがなくなりそうだ!
麺は「無垢ツヴァイテラーメン」と同様に、ピザ用の小麦とパスタ用のデュラム粉を配合した平打ちの極太タイプ。弾力のある独特のコシが楽しい。
具材はチャーシューとネギと海苔のみなので見た目はちょっとさびしいが、個性的なスープと麺を楽しむには、たしかに具材はシンプルなほうがいいと納得がいく。
全体的な印象としては、日本酒や焼酎に合いそうなラーメンである。

昆布ダシと焼き醤油が食欲をそそる「利尻らーめん味楽」

海外でヘビーな食事をしたあとは、日本の食べ物が恋しくなるもの。というわけで最後は「利尻らーめん味楽(みらく)」ののれんをくぐった。
▲「利尻らーめん味楽」。間口は狭いが中はけっこう広い

港の食堂のような店内で、北海道の地図がプリントされたTシャツを着た男たちが黙々とラーメンを作っている。なんだか落ち着くなあ。ドイツのカフェから利尻島の食堂へ。このギャップがすごい。
カウンターが2か所とテーブルが5つほど。庶民的なたたずまいだが、利尻島の本店は『ミシュランガイド北海道 2012 特別版』と同『2017 特別版』にてビブグルマン(3,500円以下で食事ができるコストパフォーマンスの高い店)と評価された実力派である。
▲これぞ日本のラーメン屋といった感じの厨房の雰囲気

看板メニューは「焼き醤油らーめん」である。スープは、ダシの王様とも呼ばれる利尻昆布と、とんこつ&鶏ガラをブレンド。醤油を中華鍋で焦がす寸前まで焼いて香ばしさを出している。具材は奇をてらうことなく、メンマとネギとチャーシューと昆布である。
▲「焼き醤油らーめん」(900円・税込)

見た目はあっさりしているが味は濃い。しっかりとした塩気が体に元気をくれる。海で昆布を収穫してくたくたに疲れたあとに食べたら最高においしいだろうなあ……。目の前に利尻の浜辺が見えてきた。
利尻昆布は高級品なので、その多くは問屋を通して料亭などに卸される。「利尻らーめん味楽」がふんだんに利尻昆布を利用して、なおかつ低価格で提供できるのは、本店店主の親戚が昆布漁をしていて、安価で仕入れられるからだそうだ。
▲具材のひとつとして昆布が入っている。噛み切ると濃厚なうまみが口に広がる。せっかくの利尻昆布なのでぜひ最初に食べてほしい

今回は3軒5食を食べ比べたが、どこもまったく異なる個性を持っていて、食べ飽きることはなかった。さすが「博物館」と銘打っているだけのことはある。

博物館だからミュージアムショップもある

店を出ると、広場に寅さんのような男が現れて紙芝居を始めた。ラー博ではほぼ毎日、紙芝居や大道芸などのアトラクションが行なわれる。

街頭テレビでは、力道山のプロレスが放映されていて、店舗の外壁には「鳴戸秘帖」や「大菩薩峠」などの名作邦画の看板がかかる。地下1階の回廊には、駄菓子屋や喫茶&スナックがあり、実際に買い物や飲食をすることができる。徹底的に昭和33年をつらぬいて、お客さんを飽きさせない。
▲紙芝居についつい引き込まれる
▲地下2階の全景。子どもの頃に見たような懐かしい街角
▲地下1階の回廊

ラー博は「博物館」と銘打っているだけあって、1階ではラーメンの歴史を写真や資料とともに紹介している。博物館だからミュージアムショップも併設されていて、各店のラーメンをお土産として購入することもできる。
▲1階の歴史展示
▲お土産ラーメンセット。4店のセットで1,642円(税込)~

個人的には「無垢ツヴァイテラーメン」が1位!

今回は通常サイズ3杯とミニ2杯をカメラマンと分けて食べたが、男性であれば通常1杯とミニ2杯がちょうどいいのではないかと思う。
裏技としては、手にスタンプを押してもらえば再入場ができるので、新幹線で新横浜駅にたどりついてまず一杯食べて、横浜観光を済ませて帰りにまた寄ればたくさん食べられる。「横浜アリーナ」や「日産スタジアム」も近いので、イベントの前と後ろに食べることもできる。
平日は14時くらいから、休日は15時くらいからが比較的すいているという。
▲個人的な第1位「無垢ツヴァイテラーメン」

筆者は今回食べたなかでは「無垢ツヴァイテラーメン」がいちばんおいしく感じられた。食べたことのない味だったので驚きが大きかった。値段もいちばん高いのだけど……。

最後に、今回はご紹介できなかった現在のラー博のお店のラインナップを紹介しておく(カッコ内はメインのスープ/本店所在地)

「すみれ」(味噌/札幌市)
「龍上海(りゅうしゃんはい)本店」(味噌/山形・赤湯)
「こむらさき」(とんこつ/熊本市)
「二代目げんこつ屋」(醤油/初代は東京・新高円寺にあったが閉店。2代目がラー博で復活)
「支那そばや」(醤油/横浜市)
「琉球新麺 通堂(とんどう)」(塩/ラー博のオリジナル企画で誕生。現在は沖縄・那覇に本店を構える)
▲「こむらさき」の「王様ラーメン」(800円・税込)

1994(平成6)年の開館のときから出店している「こむらさき」を筆頭にして、現在はこれらの計9店舗がレギュラー。店の入れ替えや新店の出店はいまのところ未定とのこと。
さて次回はどこに旅へ出ようか。
大塚真

大塚真

編集者・ライター。出版社兼編集プロダクションの株式会社デコに所属。近年編集した本は、服部文祥著『アーバンサバイバル入門』、『加藤嶺夫写真全集 昭和の東京』シリーズの「4江東区」「5中央区」(ともにデコ)ほか。ライターとしては『BE-PAL』(小学館)などで執筆。

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