女性店主がずらり!埼玉の華やかかき氷/小池隆介のかき氷あっちこっち食べ歩きvol.22

2018.02.28 更新

埼玉、千葉、神奈川は、東京から小旅行するのにちょうど良い。夏になると海がある千葉や神奈川に心奪われがちだが、この季節行くとしたら僕は断然埼玉。実は埼玉には通年でかき氷を提供する店が多く、長瀞の「阿左美冷蔵」、熊谷の「慈げん」をはじめ、人気のかき氷店が季節を感じられるかき氷の楽しみ方を提案している。今回伺ったのは、さいたま市内の3つのかき氷店。どの店も女性が店主であるのも興味深い。

ものつくりカフェの提案する楽しいかき氷「クラフトカフェ」

JR浦和駅よりバスで10分ほどの場所にある「クラフトカフェ」は、「むさしのくらふと陶芸スクール」が運営する、ものつくり体験が出来るカフェだ。
「何か楽しいことが見つかる」がコンセプトのこのカフェでは、地元埼玉の美味しいものをメニューに揃え、そのカフェスペースで楽しいコトや素敵なモノをいろいろな形で紹介。陶芸体験をはじめ、様々なワークショップやイベントを開催している。
かき氷の提供をはじめたのは2012年から。かき氷を好きな店主姉妹が「埼玉の美味しい苺や梅を使って、埼玉の美味しい水で作った氷でかき氷を作ったら良くない!?」と提案。
もともとカフェでは「あまり手の込んだものは出さない」と決めていたのに、やり始めたら本気になってしまうのが彼女たちの本質らしい。最初はお店で使っているコーヒーと、埼玉の苺農園の苺をメインとしたかき氷のメニューだったのに、あれよあれよと言う間にメニューは激増。気がつけば、浦和のかき氷人気店となっていた。
▲「スペシャル苺」1,000円(税別)

クラフトカフェのかき氷の特徴は、「どんなかき氷を食べてもらいたいか」という店主の意思がはっきり伝わってくることだ。
例えば、クラフトカフェの代名詞である埼玉の苺を使ったかき氷を見れば一目瞭然。「メインは苺です!苺の美味しさを楽しんで!」と言わんばかりの苺満載に驚いてしまう。主役をはっきりさせた上で、欲張りな彼女たちはミルクやヨーグルトなど、主役を引き立てる豪華なトッピングを用意していて、好みの味を選ぶことができる。
▲「ラムレーズンコーヒー」850円(税別)

コーヒーのかき氷も同じく。主役はコーヒーですよ、というメッセージがはっきりと伝わってくる。その上で、涼を取るためにかき氷を食べるわけではないこの時期だからこそ、ラム酒をたっぷりしみこませたラムレーズンを脇役に選んだ。ゆっくりと味わって食べ終わる頃には、ほんのりと体が温まってくるような気がする。ラム酒の効いたかき氷は、大人限定・ドライバーは注文不可のR20指定・冬の大人のかき氷である。
▲「ゆずあん」850円(税別)

僕が最も楽しみにしているかき氷の一つ、「ゆずあん」かき氷が食べられるのもこの季節だけ。
柚子にレモンを加えて酸味を効かせた柚子シロップは甘さは控えめ、だからこそトッピングされている抹茶粉がとても印象的に感じる。氷全体にかかった柚子シロップと柚子ピールは、口に含み氷が溶けると同時に香りを放つ。ひんやり、ふわっと香りを楽しむうちに中からは白いんげんの餡が現れるのだ。この餡がとても美味しく、柚子シロップと非常に相性がいい。さらに添えられたミルクで味を変えながら楽しむのがたまらない。
▲「バナナラズベリーパイ」900円(税別)

フルーツ好きのかき氷ファンには、果物が少ないこの時期に楽しんでもらうために「バナナラズベリーパイ」を提供している。
バナナはフレッシュな味と香りを楽しんでもらうために、注文が入ってから半潰しにする。ねっとりとしたソースにバナナの食感が残っているのが楽しい。氷の中からはラズベリーとパイが現れ、なるほど!と思わせる味の組み合わせに楽しさが止まらない。
▲写真左からヨーグルトソース・練乳・カラメルソース

さらに、添え蜜はヨーグルトソース・練乳・カラメルソースの3種類から選ぶことができ、自分好みの味を作れるのがまた嬉しい。さっぱりしたいならヨーグルトソース、ミルク好きには練乳、味に変化をつけて濃厚な味わいを楽しむならカラメルソースがお勧めとのことで、この日はカラメルソースをチョイス。バナナの甘さ、ラズベリーの酸味、カラメルソースのほろ苦さが素晴らしい。大満足の一品だった。
▲「カンノーロ2016」750円(税別)

旅好きな姉妹は、いそがしい毎日の生活を無理やり抜け出して家族旅行や姉妹旅行を決行。「ストレス発散!」と言って出かけても、やりたいこと食べたい物が多すぎて、強行スケジュールで疲れて帰ってくることも多いらしい。
そんな旅の後には旅をイメージしたかき氷が提供されることもある。台湾・ハワイ・イタリアと訪れた海外で食べた美味しい料理やデザートをかき氷で表現してくれるのだ。
数年前にいただいたイタリアのデザート「カンノーロ」をインスパイアしたかき氷は衝撃的に美味しく、ずいぶんいろんなところで「あれは美味しかった!」と言い回った。
彼女たちの明るい笑顔を見るために通ってくるお客さんもきっと多いのではなかろうか、と思うほどとびきり明るい。お二人にはこの先もどんどん海外と日本を飛び回っていただき、また美味しいかき氷と元気な笑顔を見せ続けてほしいと僕は思っている。

林の中の古民家かき氷店「Ryan02」

「Ryan(ライアン)」は、2012年から東京・四谷の荒木町で、期間限定、日中限定で営業しているかき氷専門店である。
「え、あの荒木町で?」という年配の方は多いのではないだろうか?
四谷荒木町といえば、大人の飲み屋が多く集まる地域。上品で洒落た飲み屋や料理屋が立ち並び、外から中の様子が窺えないため一見で飛び込むには勇気がいるのだ。何故そこで?と思うのももっともである。

話を伺ってみると、店主の古くからの知り合いがスナックを経営しており、昼間の空いた時間にお店を間借りしてかき氷を提供しているということであった。隠れ家的な雰囲気と、手作りの蜜、そして大きなかき氷が評判になり、宣伝もしてないのに多くの人が訪れるようになったという。
そして2017年秋、店主はこのかき氷店の2号店「Ryan02(ライアンマルニ)」を、さいたま市のとある場所に開店させた。
その場所とは「馬と芸術の森~桃月園~」。JR指扇(さしおうぎ)駅から歩いて15分弱の荒川河川敷沿いの林の中にある人気のスポットで、園内には馬がいたり、人気の古民家カフェがあったり、芸術的な古民家群が集まっている空間である。
鳥のさえずりや虫の声が聞こえる空間はとても素晴らしく、ついつい時間を忘れてくつろいでしまう。
とはいえ、四谷荒木町からは車で1時間弱かかるこの立地。ここはもしかして店主の生家なのか?と尋ねると「いいえ。ご縁がある訳じゃないんです」とサラリと答える。
ではどうしてこの場所を選んだのですか?と質問すると、店主は「一目見て決めました」とあっさり答えた。

これが女性の強さだろうか。僕だったら、あまり馴染みのない場所へお店を出すとなると大いに躊躇してしまうに違いない。けれど、店主の直感が働いたのだろう。ここでかき氷を出せるといいな、と。そう思った時の女性の強さは、気弱な僕にはかなわない。
▲「いちじくチーズはちみつ」800円(税込)

「Ryan02」で提供されるのは、基本的に四谷の「Ryan」と同じメニューに加えて「Ryan02」限定メニューや食事も提供。ここ数年の一番人気は、イチジクコンポートが入った濃厚なシロップにチーズソース、粒胡椒のアクセントを効かせた「いちじくチーズはちみつ」。いちじく好きのリピーターが多く、「Ryan」を代表するかき氷だ。
▲「八宝ほうじ茶蜜」700円(税込)

そのほか、ほうじ茶シロップにドライフルーツ・緑豆・赤いんげん・白いんげんがどっさり入った「八宝ほうじ茶蜜」(秋限定)は自家焙煎したほうじ茶の香りが非常に香ばしい。まずはほうじ茶蜜の風味を楽しんで、それから別添えの黒蜜をかける。「Ryan」のかき氷はとても大きいので、途中で味が変化することで最後まで飽きずに楽しめる。
また「Ryan」といえば「相掛け」のシステムがあるのも人気で、追加料金を払って一つのかき氷に2種類のシロップをかけてもらうこともできる。この日は「マサラチャイ」と「ブルーベリーチーズタルト」を相掛けしてもらった。女性に人気のチャイと果物シロップの相掛け、通年とても人気がある組み合わせだという。
▲「マサラチャイ」と「ブルーベリーチーズタルト」900円(税込)

さらに2018年、店主が最も力を入れているのは、低糖質を謳ったかき氷シロップのメニュー開発だ。
ダイエット中の人や、糖分を控えなくてはならない人のために、砂糖やはちみつを使用せずに、天然の植物性甘味料のみを使用した低糖質かき氷を意欲的に開発しているという。「低糖質ベリーベリーミルク」は通常より少し小さめのサイズだが、可愛いガラスの器に、とても華やかな可愛いかき氷だ。
▲「低糖質ベリーベリーミルク」1,000円(税込)

「旅に来るような気分で訪れて欲しい」「ここでのんびりと気分を切り替えてリフレッシュして欲しい」と店主はとても清々しい笑顔で語ってくれた。四季折々の自然の移ろいが楽しめる「Ryan02」、これからの展開が楽しみだ。

幅広いファンを持つ愛されかき氷「かき氷 蔦」

JR浦和駅から歩いて約3分。蔦の絡まるこの店では、華奢な店主がいつもくるくると動き回っている。
彼女の素直な性格がそのまま形になったような「蔦」のかき氷は、大人にも子供にも愛される優しい愛情がこもったかき氷だ。
もともと栄養士の職につき、学校給食を作っていた経験がある店主。その経験を基にして、体に良く子供達にも安心して食べてもらえるかき氷を作りたいなぁと一念発起、2014年にこの店を開いた。

もともとは割烹料理屋で、そのあとスナックになり、20年近くも空き家だったというこの店に白羽の矢を立てて開店させた。「蔦が絡まって、お化け屋敷みたいだった」と笑う店主だが、なんでまたそのお化け屋敷を借りようと思ったのか…またしても女性は強し、である。
客層はとても広く、学生同士、ママ友、男性のひとり客、家族連れなど様々。誰にとっても入りやすい、ということだろう。ここで、夏はかき氷のみを、冬はメニューを増やしつつ、冬にしかできないかき氷を提供している。
▲「からめるチョコピー」850円(税込)

開店した年に人気を呼んだのは「からめるチョコピー」という、ピーナッツクリーム・カラメルソース・ココアにアーモンドという組み合わせのかき氷。氷への浸透が悪いので4層以上シロップを積み重ねた手のかかるかき氷だ。
▲「レモンタルト」800円(税込)

そして2017年、蔦を代表するメニューが登場。「レモンタルト」は、レモン風味のクリームがたっぷりかけられ、中にはサクサクのタルト生地、てっぺんにはちょこんとレモンのシロップ漬けがのっている。蔦の代名詞にもなっているかき氷である。
▲「ショコラオランジュ」850円(税込)

2017年に提供を始めた「ショコラオレンジュ」はかき氷の頂上にはオレンジコンポート、中にはオレンジピールと歯ごたえが楽しいクッキー。オレンジの香りが効いたチョコレートクリーム、という豪華な仕上がり。

また同じく2017年メニューに加わったのは「スイートパンプキン」。パンプキンクリームのオレンジ色に茶色のカラメルがよく映える、見ているだけで楽しくなるような、色鮮やかなかき氷だ。秋冬は時間をかけて仕込みをすることができ、また氷の溶けも遅いため、ゆっくり整形することができる。食べる側も同じく、のんびりと味わうことが出来るのが、シーズンオフのかき氷の良いところである。
▲「スイートパンプキン」900円(税込)

これからも少しずつかき氷のメニューを増やし、みんなが集まる気取りのないかき氷店を守っていって欲しいと思う。
小池隆介

小池隆介

かき氷のフードイベント『かき氷コレクション』実行委員会代表。かき氷専門ガイド本『かきごおりすと』の編集・発行者。一般社団法人日本かき氷協会代表。日本中のかき氷を食べ歩いて取材し、日本古来の食文化で伝統食でもあるかき氷を広く伝える為に活動。かき氷にとどまらず、氷雪業(氷の卸しや販売、製造)全体にも精通している。

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