竹原の町並み保存地区のノスタルジー感がスゴかった!映画やアニメの舞台になるのも納得!

2018.05.02 更新

江戸時代後期の雰囲気を残す広島県竹原市の町並み保存地区。「安芸の小京都」とも呼ばれていて、歩くだけでタイムスリップしたような気分になります。今回は地元の観光ガイドと一緒に風情満点の街を散策。パンフレットや情報誌には載っていない見どころもたくさん教えてもらいましたよ。

思いがけず聖地巡礼! “時をかける”古い町並み

▲ガイドの槇野幸枝(ゆきえ)さんがお出迎え

広島県のほぼ中央部の瀬戸内海に面した竹原市。しっとりとした風情の町並み保存地区を案内してくれる「たけはら観光ガイド会」があると聞いて、待ち合わせの「道の駅たけはら」へ。たけはら観光ガイド会には約10名のガイドさんが所属していて、1~2時間で町並み保存地区を案内してくれます。
▲道の駅から町並み保存地区へは徒歩3分ほど

竹原の町並み保存地区(重要伝統的建造物群保存地区)は「全国に117ある町並み保存地区の中でも唯一の特徴があるんです」と槇野さん。「城下町や商家町などはたくさんありますが、竹原の種別は製塩町。他にはないんですよ」と、いきなりの情報をゲットです。
▲町並み保存地区の入口。ん、何かが違う…?

町並み保存地区は、大雑把に言えば南北にほぼ真っすぐな350mほどの通りで「本町通り」と呼ばれています。
「通りを見渡して、何か気づきませんか?」と槇野さんに言われ、よ~く見ると電線や電柱がまったく見当たらない。
「だから時代劇のロケに使われることも多いんです。ロケと言えばこちらも……」
▲「日本のウイスキーの父」と呼ばれる竹鶴政孝の生家は、町並み保存地区に入ってすぐ

NHKの連続テレビ小説「マッサン」のモデルになったニッカウヰスキーの創業者・竹鶴政孝の生家「竹鶴酒造」はロケでも使われ、今も営業を続けています。酒造は製塩と並ぶ竹原の発展に書かせない産業で、今も市内には3軒の酒蔵があるそうです。
▲町並み保存地区の代表的な商家「松阪邸」は竹鶴酒造の向かい

こちらは江戸時代に塩田経営や廻船(かいせん)業、醸造などで財を築いた豪商の住宅。塩田経営者は「浜旦那(はまだんな)」と呼ばれ、当時はそれぞれが競うように豪華な家を建てたそうです。
▲波打つ屋根に注目

うぐいす色の漆喰壁に乗る屋根は、よく見ると波打っています。
「古い建物だから歪んだんでしょ、と勘違いする人もいますが、これは宮大工が匠の技でつくったもの。町並みの中でも独特の建築意匠なんです」と槇野さん。ん~、言われなければ気付かなかった……。
▲フォトジェニックな格子の細工

「ここにハートマークがあるのに気付いた?」と槇野さんに言われ、窓の格子を見ると本当にハート!
「これは猪目(いのめ)という伝統的な日本の紋様なんです」と説明してもらった後「最近は若い女性にハート集めが人気なので、西洋のトランプに憧れて格子にこのマークを入れたの」とジョークも織り交ぜてくれました。
▲趣向を凝らした「竹原格子」

町並み保存地区の町家ではそれぞれが格子の意匠にこだわっていて、切り絵のような羽目板や紋様付きの横格子など、変化に富んだデザインを見ることができます。これらは「竹原格子」と呼ばれ、一軒一軒の違いを見て歩くのも楽しみのひとつです。そして、実はクローバーの形をくり抜いた格子もあるんです。どこにあるのか、皆さんも観光の際に探してくださいね。
▲映画「時をかける少女」のロケで使われた看板

1983(昭和58)年に公開された大林宣彦監督の映画「時をかける少女」は尾道三部作として知られていますが、ここ竹原の町並み保存地区でも多くのロケが行われたそうです。
「この醤油屋さんの看板はそのときのもの。クランクアップの記念に寄贈してもらったものなんです。それからね、後ろを見て……」
▲高台にある「西方寺 普明閣(さいほうじ・ふめいかく)」

看板のある場所から後を振り向くと、舞台のような建物。「あそこへ登ってみましょうか。とても眺めがいいんですよ」と脇道に入ると、目の前に長い石段。
▲これもどこかで見たことのある石段では……?

「時をかける少女のオープニングで、主人公が階段を駆け下りるシーンがあったでしょ、それがここです。CMにもよく登場しているんですよ」と槇野さん。
▲1段の高さは10cmほどしかない

この石段はすべて1枚岩でできていて、普通の石段より段が低く、奥行きがあるのも特徴とのこと。長い石段ですが、歩きやすい設計なんだそうです。
▲京都「清水寺」のような舞台づくり

普明閣は二重屋根の舞台づくりで、柱は朱塗り。1758(宝暦8)年に京都の清水寺を模して建立されたそうです。
▲舞台からは市街も一望

自由に見学することができ、舞台に上がることもできます。まわりに高い建物がないことから、市街や町並み保存地区を見渡すことができます。

見逃せない小ネタのオンパレード!

▲それぞれの家に竹の一輪挿

町並み保存地区は貴重な文化遺産であると同時に、今も多くの人が暮らし個人所有の家から成り立っている区域です。
「軒先に飾られている花は観光客をお迎えしようという各戸の気持ちの現れなんです。歴史を語り継いでくれる町を大切に守りたいと、皆さんが自主的に始めたんです」と、槇野さん。
▲町並み保存地区のほぼ中心にある郵便局跡

西方寺の石段の下には1871(明治4)年に建てられた郵便局も残っていました。1874(明治7)年から郵便取扱所として使われ、竹原で初めての郵便局として約60年間も市民に親しまれていたとのこと。町並み保存地区の中では比較的新しい建物ですが、それでも築約150年。なかなか風格のある佇まいです。
▲真っ黒な郵便ポストは何と現役!

建物の前には開設当時に設置された黒い郵便ポストも残っていました。横には「取り集めを行いますのでご利用ください」の説明文も。えっ?これって現役なんだ!
▲築300年以上の「吉井邸」

郵便局跡の斜向いには「竹原で現存する最古の建築物」とされる吉井邸がありました。母屋は1690(元禄3)年の建築で、かつては広島藩の本陣として使用されていたそうです。
▲雨樋も建てられた当時のまま

「ここもよく見てください」と槇野さんが指差したのは軒先。何か珍しいものでもあるのかと探していると「この雨樋も建築当時のものなんです。銅製で緑青が出ていますが、300年以上もずっと残るというのは随分と質のいいものを造らせたという証拠。豪商ならではの贅沢だったんですね」と、見落としそうなところまでしっかり説明してもらいました。
▲竹鶴政孝・リタ夫妻の銅像は等身大

北に少し歩くと、通りに面した「憧憬の広場」に竹鶴政孝・リタ夫妻の銅像がありました。設置されたのは2015年で、作者は竹原出身の陶芸家・今井眞正(まきまさ)さん。
「銅像の多くは行政のお金で造られますが、これは企業や市民の寄付を中心に造られたんです」と、槇野さん。今もこの銅像と並んで記念写真を撮る観光客が多いのだとか。
▲本町通りの北端にある「胡堂(えびすどう)」

ここが町並み保存地区の終点です。映画「時をかける少女」では、地震で屋根の瓦が落ちるシーンが印象的でした。今でも聖地巡礼には欠かせないスポットになっています。
▲竹原の祠では最古とされる胡堂

槇野さんに「胡堂は商売の神様を祀っているので、屋根には縁起物が隠れているんです。見えますか?」と言われて見上げると……。
▲屋根の先端に鶴を発見

屋根の四隅に鶴と亀、そして花が咲いたら必ず実をつける茄子、株が上がるにかけた蕪(かぶ)が飾られていました。教えてもらって良かったあ~、これで少しは運気が上がるかも!
▲胡堂のすぐ横にある酒造用井戸

六角形のこの井戸は300年以上前に掘られ、酒造りの井戸として使われていたそうです。中を覗くとまだ水が溜まっていました。周囲の敷石も当時のままで、現在の石畳よりも一段ほど下。ここに立っていると、まさにタイムスリップした気分です。
▲木造3階建ての「旧・日の丸写真館」は国登録有形文化財

胡堂で折返し、竹鶴酒造の前のT字路を曲がって100mほどのところに趣きのある木造の建物があります。ここは竹原を舞台にしたTVアニメ「たまゆら」で有名になった写真館で、町並み保存地区ではありませんが、ぜひ見ておきたいスポット。もちろん、たまゆらファンなら必須!です。
▲レトロモダンな洋風建築の「竹原市歴史民俗資料館」

槇野さんに案内してもらったのは約1時間30分。最初は350mほどの観光にそんなに時間が必要なのかと思っていましたが、むしろ時間が足りないくらいの充実ぶりでした。今回は紹介できなかった「竹原市歴史民俗資料館」や「町並み保全センター」、それに竹細工の体験ができる工房など、他にも見どころがまだまだありますよ。
また、町並み保存地区では2018年5月3・4日に「たけはら 竹まつり」が開催されます。竹原のシンボルである“竹”をテーマにしたお祭りで、子供たちが扮するかぐや姫のパレードや笹酒の振る舞い、竹細工体験教室などを楽しめます。

「幻のパン屋」で絶品カレーパン!

▲営業時間要チェックの「村上ベーカリー」

旧・日の丸写真館から川沿いに70mほどのところに“幻のパン屋”と言われる「村上ベーカリー」があります。なぜ幻なのかというと、ここが開店しているのは木曜と金曜の16:00~19:00のみ。とにかく営業時間の短い店なんです。
▲オーナーの村上さん夫妻

週に6時間しか営業していないなんて、普段は何をやってるんだろうと思ったら、約70年前からずっと学校給食や卸売り用のパンをメインに焼いているとのこと。2010年から不定期に店頭での小売りを始めると評判が評判を呼び、2016年に今の店舗にリニューアル。開店中はお客さんがひっきりなしに訪れています。
▲30〜40種のパンが並ぶ

使用する水は酒蔵などでも使う地元の名水。塩も昔ながらの製法で海水からつくる地元の天然塩で、とにかくこだわりまくり。その中でも、焼き上がる度に飛ぶように売れるのがこれ!
▲「峠下(たおした)牛肉入り揚げカレーパン」(税込250円)

竹原のブランド牛・峠下牛を大きめに挽いたミンチがたっぷり。スパイスが強すぎないので肉の旨みもしっかり味わえ、もちっとした生地の食感で食べ応えも満点。購入できるのは店頭だけです。
▲「焼きそばパン」(税込140円)

キューブ型のパンを使って何かできないかと試行錯誤の末に誕生したのがこちら。中にソース焼きそばがぎっしり詰まり、片手でも食べやすいと評判。こちらも店頭販売のみです。他にも「全粒粉食パン(税込230円)」や「3種のチーズパン(税込150円)」など、おすすめのパンがいっぱい。なお、一部のパンは近くの「道の駅たけはら」で毎日購入することができますよ。

道の駅でタケノコと峠下牛のご当地バーガーを味わう!

▲町並み保存地区の入口に位置する「道の駅たけはら」

町並み保存地区はもちろん、竹原を観光するならぜひ訪れて欲しいのが道の駅たけはら。
▲1階では地元の新鮮な野菜や加工品などを販売
▲2階の特産品・お土産売場。市内に3軒ある酒蔵のお酒もすべて揃う
▲村上ベーカリーのバンズを使った「竹原バーガー」(税込600円)

竹原バーガーは2015年の「全国ご当地バーガーグランプリ(とっとりバーガーフェスタ)」で4位になったこともある竹原グルメの代表格。タケノコの照焼きと峠下牛や竹原産のジャガイモのコロッケを使い、米粉のバンズはもっちり。タケノコの食感や肉の旨み、ジャガイモの甘みも堪能できますよ。
町並み保存地区を訪れる観光客は年間約37万人。驚くほどの人数ではありませんが、年々その数は増えているそうです。皆さんも実際に訪れてみれば、きっとその理由が分かるはず。知れば知るほど魅力的なスポットですよ。
それから、町並み保存地区を観光するなら、ガイドをお願いするのが絶対におすすめ。知らずに歩けば通り過ぎてしまいそうな面白い情報がたくさん聞けます!

あ、おすすめと言えば……。
▲大久野島(おおくのしま)は竹原市の忠海(ただのうみ)港から船で約15分

ウサギの島として人気の「大久野島」も竹原を代表する観光スポット。
▲島内には野生のウサギが約700羽も生息

女性やファミリーには特に人気で、近年は世界中から多くの観光客が訪れています。のびのびと暮らすウサギに囲まれて、癒しの時を過ごしてはいかがですか?
廣段武

廣段武

企画から取材、撮影、製作、編集までこなすフリーランス集団「エディトリアルワークス」主宰。グルメレポートの翌日に大学病院の最先端治療を取材する振り幅の大きさと「NO!」と言わ(え?)ないフレキシブルな対応力に定評。広島を拠点に山陽・山陰・四国をフィールドとして東奔西走。クラシックカメラを語ると熱い。

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