ペロリ完食!青森ご当地グルメ「十和田バラ焼き」の美味しさとルーツを探ってきた

2018.05.26 更新

青森県十和田市といえば「奥入瀬(おいらせ)渓流」や「十和田市現代美術館」などが有名ですが、市内だけで約80軒(2018年4月時点)も提供店があるというご当地グルメ「十和田バラ焼き」も外せません!牛バラ肉とスライスした玉ねぎを鉄板で焼くだけのシンプルな「十和田バラ焼き」。その美味しさを、「十和田バラ焼きゼミナール」のご協力のもと現地からレポートします。

▲鉄板の上でジュージューと焼ける美味しそうな「十和田バラ焼き」

「バラ焼きゼミナール」が明かす「バラ焼き」とは?

「十和田バラ焼き」の発祥は十和田市のお隣・三沢市だとされています。三沢市には太平洋戦争後に米軍基地が建設され、その時に全国から多くの建設作業員が移り住みました。その作業員たちの胃袋を満たすため、基地周辺で安く仕入れることができた牛のバラ肉を使った「バラ焼き」が発案されたそうです。

では、なぜ三沢市発祥の「バラ焼き」が十和田市で花開いたのでしょうか。その疑問を、「十和田バラ焼き」だけでなく市民を巻き込みながら十和田市そのものをPRする団体「十和田バラ焼きゼミナール」の畑中宏之さんと共に食べ歩きながら紐解いていきます。
▲「ボンジュール」とあいさつする畑中宏之さん

待ち合わせ場所にタキシードで登場した畑中さん。「なぜタキシード?」という疑問に対し、畑中さんは「『まじめにバカをやる』をモットーに、バラつながりで、漫画『ベルサイユのバラ』にあやかって貴族風の格好をしています」とのこと(笑)。ちなみに畑中さんは地元で美容院を経営されています。

スタンダードタイプの「十和田バラ焼き」【司バラ焼き大衆食堂】

さて、本題に戻りましょう。「バラ焼きが十和田市で発展した理由を紐解く前に、まずはその美味しさを体感していただきたい!」と畑中さんに連れられてやって来たのは、スタンダードな「十和田バラ焼き」が食べられる「司 バラ焼き大衆食堂」。このお店では、冬はテラスにハウスが建てられ、店内に掘りごたつが設置されます。
▲冬は店先のテラスがハウスで覆われる(2018年3月取材)
▲奥(写真左上)には小上がりスペースがあり、掘りごたつを設置。防寒用のはんてんも置いてある

「バラ焼き」はかつて屋台スタイルで提供されていたとのこと。お店の中には、当時の雰囲気を少しでも再現しようと屋台も置かれていました。屋台文化の本場・博多から運んできたというこだわりようです。
▲屋台の柱や天井のいたるところに、全国からやって来た人たちの名刺が貼られている

さっそく「十和田バラ焼き」を注文してみました。ほとんど待つことなく運ばれてきた鉄板には、生の玉ねぎがたんまりと敷かれており、中央にどどーんと、まるでそびえ立つ塔のような牛肉が盛り付けられています。
▲肉のまわりは玉ねぎのみ。「十和田バラ焼き」(1人前800円・税込)

これは「十和田バラ焼きゼミナール」が推奨する「タワー焼き」。畑中さんによると、玉ねぎと牛肉の量が1.5対1になる割合が「十和田バラ焼き」をもっとも美味しくいただける黄金比とのこと。火の通る時間が違う2つの素材を同時に食べごろにするため、玉ねぎから焼くことがコツと言います。「タワー焼き」は、それを実現するために編み出された秘伝なのです。
▲まずは玉ねぎから焼いていきます

さっそくテーブルコンロに火をつけて、玉ねぎから焼いていきます。牛肉にはまだ手をつけません。全体にかけられてあるしょう油ベースのタレと一緒に混ぜていくと、少しずつ玉ねぎの色が変わっていきます。火が通った頃合いを見計らい、次は一気に牛肉の塔を崩して焼いていきます。
▲手際よく焼いていく畑中さん。おいしそうな匂いに思わず生唾を飲んでしまう

中火で焼くこと約5分。玉ねぎが茶色に色づくまでしっかり火を通し、最後は強火で、しっかりとタレの水分が飛ぶまで焼いていきます。
▲十和田バラ焼き完成!

いざ実食。アツアツの牛肉、やわらかくなった玉ねぎ、しょう油ベースの甘辛いタレだけというシンプルな組み合わせですが、いろいろな食材が調和したようなコクがあります。タレには青森県産のにんにくやりんごが使われており、じわじわとタレのうま味が口の中に広がります。
▲畑中さんといただく十和田バラ焼き。畑中さんはこの活動を通して着々と太っているという…笑

肉より玉ねぎの量が多い点が「十和田バラ焼き」の美味しさの秘訣。発祥当時はかさ増しのために玉ねぎを多くしていたようですが、その後、あえて玉ねぎを多く入れることになったと畑中さんは教えてくれます。ボリュームたっぷりな玉ねぎの甘みがタレとの相乗効果を生み、味に深みが出るからです。
▲白まんま(100円・税込)になま卵(50円・税込)を注文して卵かけご飯に。バラ焼きとの相性はもちろん抜群

ご飯の上に肉を乗せて食べれば、牛丼のような味わいに。肉のうま味と白米が合わないわけがありません!また、一味唐辛子などの薬味をかけたり、卵かけご飯にしたりして食べるのもオススメ。お好みのスタイルで食べられるのが十和田バラ焼きの魅力ですね。ちなみに焼き方が分からない場合は、店員さんに遠慮なく聞けば楽しく教えてくれるそうです。

つゆだく定食スタイルの「十和田バラ焼き」【食事処 味喜】

次に向かったのは、中心市街から車で5分ほど離れた場所にある「食事処 味喜(みき)」。こちらをオススメしたい理由は「十和田バラ焼き」の定食をいただけるということからです。さっそく行ってみましょう。
▲ぐいぐい引き込む畑中さんの勢いにつられて入店!

こちらは創業40年以上の定食店。もともとは中心市街で営む地域に密着したお店でしたが、1989(平成元)年にこの場所に移転。店主の水尻壽(ひさし)さんは、定番から子ども向けのセットまで幅広いメニューを家族で一緒に食べられるような店にリニューアルしたと話します。
▲店内の雰囲気はアットホームな定食店の趣

注文したのは「牛バラ焼肉定食」(850円・税込)。定食なのでこちらで調理する手間がなく、すぐに食べられる状態の「十和田バラ焼き」が出てきました。鉄板の上でジュージューと食欲をかきたてる音と、甘いタレの香りが店内に充満します。
▲牛バラ焼肉定食。マグロの切り身や手作りスイーツまで、お盆に乗り切らないほどの小鉢の多さにも驚き

味喜の「十和田バラ焼き」は、十和田バラ焼きゼミナールが推奨する黄金比よりも牛肉が多いような気がします。タレの水分も残っており、定食らしく、ご飯にかけて食べるのにもピッタリな一品です。牛丼で例えれば「つゆだく」の状態。
▲本日2食目の「十和田バラ焼き」

「味喜」のタレは「司」のタレと比べるとピリ辛の中にも甘みがより強く感じられます。タレのレシピは秘密とのことですが、ファミリー層を意識した味付けなのかもしれません。

なお、こちらのお店にはもう一つ名物メニューがあります。それが、納豆を豚肉で挟んで揚げた「かけはし」(900円・税込)。十和田市は、5千円札の顔になった新渡戸稲造のルーツとなる場所で、国際的に活躍した新渡戸に敬意を評し、洋食のとんかつと和食の納豆をコラボさせたと言います。
▲洋食のとんかつと和食の納豆が絶妙にコラボした「かけはし」

女子必見!ヘルシーな馬肉の「十和田バラ焼き」【吉兆】

最後に紹介するのは、牛肉ではなく馬肉を使った「十和田バラ焼き」を提供するお店です。店の名前は「馬肉料理 吉兆 (きっちょう)」。馬肉は牛肉に比べカロリーが低く鉄分やグリコーゲンが多いことから、女性を中心に静かなブームも訪れているとか。さっそく入ってみましょう。
▲のれんをくぐり店内へ。十和田市の中心市街地にあり、十和田現代美術館から徒歩約10分

十和田市周辺は、江戸時代末期から馬のセリが行われていた日本有数の馬の産地でした。さらに明治以降は軍馬の補充部があったことから、馬との関わりが深い地域でもあります。そのため馬肉を食する文化が古くからあり、馬肉料理の専門店も市内に点在しています。
▲吉兆の店内。1階はテーブル席と小上がり、2階には個室もある

こちらの「十和田バラ焼き」には玉ねぎだけでなくピーマンも入っていました。バラ焼きは十和田市民の食卓にも頻繁にあがる料理であるため、子どもの栄養を考えた親の想いから、玉ねぎ以外の野菜を加えたタイプも生まれたという逸話があるようです。
▲吉兆の「馬肉のバラ焼き」(1人前1,080円・税込)

こちらは「司」と同じく、自分たちで調理して食べるスタイル。畑中さんとの会話も弾みながら「十和田バラ焼き」の調理が進みます。そんな時間にも「十和田バラ焼き」の醍醐味があるのかもしれません。
▲「火の調整もバラ焼きには大事」と言う畑中さん

玉ねぎが色づき始めるまでは中火でしっかり火を通し、そこから強火にして一気にタレの水分を飛ばす。十和田バラ焼きゼミナール式の焼き方はこちらの店でも変わりません。
▲さすがの仕上がり!

いざ実食。馬肉は牛肉と違って脂身があっさりしているため、さっぱりとした後味。ピーマンも箸休めのようなアクセントになっています。かぐわしい香りのタレはニンニクがよく効いた辛めな味付け。馬肉との相性を熟知した馬肉店ならではのタレです。
▲3食目の「十和田バラ焼き」を食べる畑中さん。ちなみに畑中さんの肩書きは「舌校長(ぜっこうちょう)」

こちらのお店では「十和田バラ焼き」の他にも、馬肉料理のメニューを豊富に揃えています。特に「馬肉なべ」は人気メニューで、ランチ時でも1人前から注文可能なため、行列ができることもあるようです。
▲味噌味ベースの「馬肉なべ定食」(1,080円・税込)
このように「十和田バラ焼き」はお店ごとにオリジナリティーがあります。その提供方法や調理方法に違いがあるだけでなく、タレにも各店のこだわりがあるので、店ごとに違う「十和田バラ焼き」を食べ比べてみたいものです。ちなみに十和田市内には、豚肉やラム肉を使った「十和田バラ焼き」を提供する店もありますよ。

「十和田バラ焼き」の本質を知る

3つの「十和田バラ焼き」を食べ比べたところで、三沢市発祥のバラ焼きと十和田市の関係について、最後に触れておきたいと思います。
「十和田バラ焼き」は2014年に開催された「B-1グランプリ」でグランプリを受賞したことにより、全国から脚光を浴びることになりましたが、そこに至るまでにはいろいろな苦労がありました。
▲2015年のB1グランプリは十和田市で開催され、地元の高校生らも巻き込んだ

2010年の東北新幹線・新青森駅開業を前に、十和田市では観光客誘致のための「食」のブランド化を考え、ご当地グルメの開発に着手。その際、長年地元の人に愛されてきた「地域資源を活用する」という狙いから、注目されたのが「バラ焼き」でした。

この当時、バラ焼きはすでに十和田市民のソウルフード。発祥地・三沢市より根付いた要因には、南部鉄器のような鋳物の生活用品が十和田で手に入りやすかったこともあります。バラ焼きの必需品である鉄板の存在が「十和田バラ焼き」誕生の背景にあったのです。
▲十和田バラ焼きゼミナール公式で南部鉄器製の鉄板も販売している

畑中さんは「“十和田バラ焼き”を入り口に十和田市に足を運んでいただき、十和田バラ焼き以外のご当地グルメや文化にも触れてほしい」と呼び掛けます。「味喜」でいただける「かけはし」や「吉兆」の馬肉料理はその良い例ですね。

なお、「十和田バラ焼き」は肉と玉ねぎがあれば家庭でも簡単に作れる点が特徴です。十和田バラゼミナール公式の「ベルサイユの薔薇(バカ)ったれ」(400円・税抜)をお土産に買えば、自宅で「十和田バラ焼き」を楽しむこともできますね。
▲試作を25回も繰り返して完成したというゼミナール公式のタレ。「司」でも購入できる

おなかがはち切れそうなくらい「十和田バラ焼き」を食べ歩いた後、畑中さんから十和田市への愛や街づくりへの思いまでも聞き、まさか目頭が熱くなってしまうとは……。

市内の店からお気に入りの「十和田バラ焼き」を見つけたり、十和田の街にいるタキシード姿の人を探したりしてみるのも楽しいですよ、きっと。「十和田バラ焼き」を食べてバラ色の人生を。ラビアンローズ!(十和田バラゼミナールのあいさつ)

十和田バラ焼きゼミナール

くどうたける

くどうたける

東京でウェブライターを経験し、2012年に青森へ移住。地域新聞や地域の情報を発信するお仕事をいただきながら、田舎でせっせと暮らしてます。(編集/株式会社くらしさ)

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