松本城から10分!殿様も愛したレトロな温泉街「浅間温泉」で日帰り散策

2018.06.20 更新

開湯1300年の歴史を誇る長野県松本市の浅間(あさま)温泉。国宝・松本城から車で約10分の距離にあり、城下町「松本の奥座敷」として親しまれている名湯です。江戸時代にはお殿様が通い、明治時代には与謝野晶子や竹久夢二ら多くの文人墨客にも愛されました。松本観光と一緒に日帰りで楽しめるレトロな温泉街で、湯めぐり&散策を楽しみませんか。

▲「湯々庵 枇杷の湯」の「お殿様の野天風呂」

お殿様や文人墨客も愛した城下町松本の名湯

松本の中心部からほど近い浅間温泉。松本城からはもちろん、北アルプスの麓に広がる自然豊かな安曇野からも車で約35分とアクセスがよい温泉街です。

街中には3つの日帰り入浴施設や食事処、おしゃれなギャラリーなどもあり、古きよき温泉街の趣と近代施設の新たな魅力が調和しています。地域の文化とアートを巡る1時間半ほどの散策コースや、眺望抜群の展望台に登る2時間のトレッキングコースなども整備されていて、日帰りでも楽しむことができます。
▲JR松本駅からは路線バスで19分の浅間温泉

そんな浅間温泉の歴史は古く、日本最古の歴史書のひとつである日本書紀に登場する「束間(つかま)の湯」は、浅間温泉のことと推定されているそう。江戸時代には初代松本藩主・石川数正(かずまさ)が保養のために湯御殿を造営し、城主や臣下の武士たちの別邸が並んだほか、善光寺参りの湯治客も訪れるようになり、湯宿が立ち並ぶ「松本の奥座敷」として賑わうようになりました。
▲蔵造りの旅館「目之湯」がある「蔵の通り」は、四季折々の風情がある素敵な散歩道

明治時代以降には、竹久夢二、与謝野晶子、若山牧水、田山花袋ら多くの文人墨客が訪れ、この地で優れた作品を残しました。特に、正岡子規や伊東左千夫をはじめとするアララギ派発祥の地として知られています。
7本の源泉がある浅間温泉の泉質は、アルカリ性単純温泉。お肌がスベスベになると期待されており、いわゆる「美人の湯」としても親しまれています。無色透明の湯ににおいやクセはほとんどなく、万人が楽しめるのも特徴です。

まずは日帰り入浴施設「ホットプラザ浅間」へ

中心に位置する浅間温泉会館「ホットプラザ浅間」は、2009年にリニューアルされ生まれ変わった入浴施設。古民家風の趣を残した落ち着いた雰囲気が漂い、観光客からも松本市民からも親しまれる憩いの場となっています。
▲浅間温泉旅館組合が管理・運営している「ホットプラザ浅間」。一般650円(税込)とリーズナブルな料金で利用できる
▲リニューアルに伴い、建物前には無料で利用できる足湯も

施設には4つの源泉から地下タンクを通じて毎日26tの湯が供給されており、露天風呂と大浴場、サウナ、水風呂を完備。24時までの営業なので、仕事終わりに立ち寄る地元の常連客も多いのだとか。
▲広い窓が開放的な大浴場。天然温泉をたっぷり堪能できる

広い浴場は清潔感に溢れており、湯はさっぱりとした浸かり心地。湯温も熱すぎず適温なので、長湯が楽しめます。特に露天風呂は周囲の緑と風が心地よく、ゆったりと湯浴みを楽しむことができます。
▲四季を感じられ、旅情気分を味わえる露天風呂

館内にある寝ころび処などの休憩所は自由に使え、2階の和室座敷では近所の飲食店の出前を取ることも可能。休日には朝から入浴し、休憩所で休んだり昼食をとってもう一度温泉を楽しんだり、1日のんびり過ごす人もいるそうです。実際、私も取材を忘れ、すっかりくつろいでしまいました。
▲1階のテーブル席。お茶を飲んだりおしゃべりをしたりすることも
▲出前の注文もOKの2階の和室座敷。ゆっくりと過ごせる雰囲気

全体的に気持ちのよい雰囲気が漂い、市民に親しまれていることが伝わる温かい施設です。
▲夜は窓から漏れるオレンジの光が温かい。隣接する温泉広場では日曜8時から朝市、木曜16時から夕市を開催(6~11月)

お殿様が愛した御殿湯「湯々庵 枇杷の湯」

さて、もうひとつ日帰り入浴施設へ行ってみましょう。「湯々庵 枇杷の湯(とうとうあん びわのゆ)」の周辺には、自然が溢れ、日常の喧騒を忘れさせるような格調高い風情が漂います。
▲「ホットプラザ浅間」から徒歩5分ほどの場所にある「湯々庵 枇杷の湯」。佇まいからもその歴史を感じることができる

こちらの温泉は文禄3(1594)年に松本藩主・石川氏の「御殿湯」として造営されました。もともとはお殿様専用の別荘地でしたが、明治維新後に旅館に。そして平成9(1997)年、純和風の落ち着いた雰囲気はそのままに、日帰り入浴施設として生まれ変わりました。

中に入ると、趣のある雰囲気に思わず「素敵!」と声が出てしまうほど。玄関ホールの大きな窓からは、松本藩2代目藩主・石川康長が庭に植えた樹齢400年になる「お殿様のお手植えの松」を眺めることができます。
▲美しい枝ぶりが見事な「お殿様のお手植えの松」
▲受付カウンターで迎えてくれたのは、女将の小口菊英さん

浴場は、露天風呂付き大浴場(内湯)と野趣溢れる露天岩風呂「お殿様の野天風呂」のふたつ。大浴場は1階と2階で男女別に分かれており、週に1度、男湯と女湯の入れ替えが行われます。
▲こちらは広々として明るく落ち着いた雰囲気の1階の大浴場

大浴場は泡風呂つきで、サウナと水風呂も併設。加水はしていない天然温泉で、弱アルカリ性の単純泉は、つるつるとした気持ちよい肌触りと快適な湯温、さっぱりした湯上がりが特徴です。皮膚の炎症を鎮める効果も期待できるそう。
▲併設の露天風呂はヒノキ製。湯量も豊富で、のんびりと長湯を楽しめる

もうひとつの「お殿様の野天風呂」に入浴するには別棟へ。一度建物を出て、向かいの小道を数mほど上がった先にあります。日帰り入浴施設となった際に、かつて御殿湯があった場所に新たに建てられた建物で、隠れ家のような佇まいがこれまた素敵!木々に囲まれた岩風呂では四季折々の風景を眺めながら、お殿様気分を味わえますよ。
▲竹林に沿った小道の先にある「お殿様の野天風呂」
▲自然を間近に感じられる野天風呂。夏は緑、秋は紅葉、冬は雪景色が楽しめる

存分に湯浴みを堪能したら、母屋に戻って休憩を。
湯上がり処は縁側のある和室と木のテーブルを並べた広いスペースで構成されており、太くて立派な梁はなんと造営当時のまま。400年以上を経た情緒が感じられます。
▲調度も素敵な湯上がり処。湯上がりのひとときを穏やかに過ごせる。往時の資料や家宝なども展示

さらに、館内には庭を眺めるカフェ「MARUKURU」も。飲み物やジェラート、そば粉で作った「そばおやき」などの軽食を楽しめます。
▲カウンター席と畳席があるカフェ「MARUKURU」。入浴をせず、カフェのみの利用も可
▲「MARUKURU」ではお土産も販売

また、館内奥にはお食事処「日本料理 草創庵」もあり、落ち着いた雰囲気の中、国産そば粉で打つ手打ちそばや天丼、各種御膳など本格日本料理を楽しめます。
▲信州の食材と旬の素材を使った御膳(写真は「殿様御膳」税込3,800円)

思わず誰かに自慢したくなるような、贅沢な時間を過ごせる施設です。

レトロな街並みと名物スイーツを楽しむ温泉街散策へ

のんびり温泉を満喫したら、街歩きへ出かけてみましょう。浅間温泉は、温泉らしい情緒を感じるレトロな街並みもまた魅力です。
▲ちょっとした街角の風情も素敵
▲「湯々庵 枇杷の湯」近くにある飲泉所。備え付けのコップで温泉水が飲める。赤いポストもかわいい!
▲飲泉所の温泉は独特の味わい。飲むと整腸作用があるのだとか

温泉街に点在する7カ所の源泉を巡ってみるのも楽しいもの。飲泉所の横を抜けた先には「1号源泉」があります。どの源泉も一見すると倉庫のようで、見逃しがちですが、散策をしているとふいに源泉が現れるので、なんだか宝探しのようで楽しくなります。
▲こちらが「1号源泉」。建物の横に説明書きの案内板がある
▲「1号源泉」の奥の薬師堂。湯治場として栄えたという歴史もあり、温泉街の中には病気平癒を祈願する薬師堂も3カ所に点在している
▲薬師堂の先には鳥居が。その先に続く散策路を5分ほど登ると天満宮に到着する
▲パワースポットとしても知られる「不動院不動の滝」。1号源泉から徒歩5分ほどの場所に位置し、近くには2号源泉がある
▲手入れされた庭や美しい木々を備えた蔵造りの建物を見て回るのも楽しい

散策をしていると、小腹が空きますよね。そんな時には、湯の町通りの坂の入り口にある創業80余年の老舗「宮島商店」へ。
▲温泉宿が続く湯の町通りの坂の入り口

こちらでおすすめしたいのが、白米を粉にした新粉で作る名物「お新粉(おしんこ)餅」。明治時代から伝わる浅間温泉の代表的な郷土菓子ですが、今や宮島商店のみで販売される名物です。

独特のコシとツルツルとした食感、ソフトな歯ごたえと甘さ控えめのこしあんが特徴。懐かしい雰囲気と素朴なおいしさ、縁起のよい鶴のモチーフもかわいく、お土産としても最適です。
▲昔ながらの郷土菓子を懐かしんで買い求めに来る人もいるほか、おいしさと見た目のかわいさで若い世代にも人気の「お新粉餅」。1個95円(税込)

宮島商店は、かつて作り菓子屋として「お新粉餅」を販売していましたが、時代の流れとともに土産物屋になり、その後20年以上、菓子の製造をやめていました。しかし、15年ほど前に試行錯誤の末に名物を復活。現在はバラ売りのほか、6個入570円、10個入950円、16個入1,520円(いずれも税込)のセットも販売しています。
▲宮島商店では「お新粉餅」以外にさまざまな地元のお土産も販売している

独特の風情が魅力のギャラリーへ

温泉街の中にはひときわ洒落た風情を感じさせる隠れ家のようなギャラリーもあります。「不動院不動の滝」の近くに位置する「手仕事扱い処 ゆこもり」は、もともと湯治場だった建物を生かした空間。「ゆこもり」とは、源泉や施設を管理する「湯守」と、木を守る「木守(こもり)」が由来の造語です。
▲道路沿いに立つやさしい風合いの看板が目印
▲2004年にオーナーの瀧沢一以(かずゆき)さんの手により、ギャラリーに生まれ変わった

展示は全国の新進気鋭の作家たちの手による陶磁器やガラス、木工、漆、金属、布ものなど。月1回展示替えする企画展と常設展があり、企画展では作家によって空間の雰囲気も大きく異なります。器などの展示は穏やかで豊かな暮らしを想像させ、大きなオブジェの展示は現代アートの美術館のよう。時には展示に合わせ、演奏会なども開催しています。
▲野趣味溢れる庭の奥に、憩いの空間が広がる(写真提供:手仕事扱い処 ゆこもり)
▲オブジェ作品の展示は一風変わっていてユニーク(写真提供:手仕事扱い処 ゆこもり)
▲展示されている作品は購入も可能

取材時は営業期間外だったため、特別にギャラリー内を撮影させていただきました。3人の作家の作品が展示されており、個性的なそれぞれの作品からも瀧沢さんの独特のセンスが伝わってくるようでした。
▲ギャラリーの一角に並ぶ3人の作家の器たち

また、かつての風呂場へと続く斜めになった廊下や、増改築を重ねた4棟が連なる佇まいなど、湯治場時代の不思議な雰囲気が漂うゆったりとした空間も魅力。そうした中で、それぞれに趣が異なる作家ものの作品と出合うことができます。瀧沢さんとのトークや、大きなケヤキが何本も生えた広い庭の散策も楽しみのひとつです。
▲周囲に立派なケヤキの木が茂る縁側がギャラリーの出入り口(写真提供:手仕事扱い処 ゆこもり)

なお、こちらのギャラリーは、毎年4月中旬から12月まで営業しており、冬季はお休み、例年春先から営業を再開します。2018年10月には同ギャラリーでは初となる、ガラス作家の飯塚亜裕子さん・大塚真由さんの企画展を予定しています。
昔ながらの湯浴みはもちろん、温泉街ならではの懐かさを感じる街歩きも楽しめる浅間温泉。ふいに街中に現れるレトロかわいい風景や郷土菓子、ギャラリー探訪も満喫することができます。近年、クラフトや女子旅に人気の松本中心部の観光と合わせ、癒しとくつろぎのエリアに少し足を延ばしてみませんか。
島田浩美

島田浩美

編集者/ライター/書店員。長野県出身・在住。信州大学卒業後、2年間の海外放浪生活を送り、帰国後、地元出版社の勤務を経て、同僚デザイナーとともに長野市に「旅とアート」がテーマの書店「ch.books(チャンネルブックス)」をオープン。趣味は山登り、特技はマラソン。体力には自信あり。(編集/株式会社くらしさ)

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