モダン&クールな「佐川美術館」がスゴい!琵琶湖のほとりに立つアートスポットへ行こう

2018.04.01 更新

自然美あふれる絶景スポットが数多くある滋賀県に、フォトジェニックな美術館があるのをご存知ですか?県南部・守山市の琵琶湖沿いに立つ「佐川美術館」は、自然と建築物が調和したモダンでクールな佇まいが印象的な文化施設。もちろん所蔵作品も国内最高峰の美術品が揃っています。そんなフォトジェニックな美術館にお邪魔しました!

2018年で開館20年。日本美術界の最高峰が集結した贅沢なコレクション

日本最大の面積を誇る湖・琵琶湖のほとりに立つ佐川美術館。物流企業・佐川急便の創業40周年記念事業の一環として、平成10(1998)年に開館しました。
▲美術館へのアクセスはJR守山駅から近江鉄道バス「佐川美術館」行きに乗り約30分

こちらの美術館では、日本画家の平山郁夫、彫刻家の佐藤忠良(ちゅうりょう)、陶芸家の樂吉左衞門(らくきちざえもん)という、日本美術界を代表する3人の巨匠の作品をコレクションしています。
▲日本画家・平山郁夫の作品「平和の祈り-サラエボ戦跡」。平山氏は、東京藝術大学の学長も務めた画家。仏教やシルクロードをテーマに、数多くの作品を残している
▲彫刻家・佐藤忠良の代表作「帽子・夏」。佐藤氏は、フランスの「国立ロダン美術館」で日本人として初めて個展を開いたことでも有名(写真提供:佐川美術館)
▲陶芸家・樂吉左衞門の「焼貫黒樂茶碗 銘 風舟」。千利休の創案により、樂一門の初代・長次郎が創り上げた技法・樂焼(らくやき)の源流を今に受け継ぐ十五代目(写真提供:佐川美術館)

なかでも平山氏のコレクションは、素描やスケッチを含めると350点以上!その所蔵規模は日本最大級を誇ります。これらの豊富な作品を、シーズンごとのテーマに合わせて展示したり、特別展を開催したりして紹介しています。

モダンな建築と近江の自然が見事に調和した美しい景観

佐川美術館は広大な敷地内に建てられていますが、そのスケールは館内に入る前から感じることができます。
入館ゲートを抜けると、目の前には水庭と本館。その姿は思わずのけぞってしまいそうなほどの大きさです。さらに「モノトーン」の世界観を連想させる無機質な佇まいがモダンな印象を醸し出しています。
▲水の上に浮かんでいるようにも見える神秘的な本館

この建物だけに注目すると、少し殺風景な印象を受けるかもしれません。しかし、抜けるような青空や、建物の足元をたゆたう水、水庭の植物などが合わさることで、あたかも一枚の絵のように建物と自然が調和して見えるのです。
▲神殿を思わせる佇まい
▲館内のいたるところから美しい水庭が望める

美術館のある一帯は琵琶湖岸に接しているため、湖からの風をダイレクトに受ける場所。その風が水庭の上を通り抜けるたびにさざ波が立ち、波に太陽の光が反射してきらめきます。
形のない風や光までも取り入れた見事な景観です。
▲入館ゲートから本館を望む

この景観と見事にマッチした建築美が評判を呼び、国内の建築分野で最も権威ある賞「日本建築学会賞」において、佐川美術館は「2000年作品選奨」に選ばれました。その他にも数多くの賞を受賞。有識者たちからも認められたフォトジェニックな美しさは必見です。

巨匠の作品に触れる!?贅沢なコレクションにどっぷり浸る

それでは館内へ入ってみましょう。先述の通り佐川美術館では3巨匠の作品を所蔵しており、3人それぞれの名を冠した展示室で、日本画、彫刻、陶芸の作品を、それぞれに適した方法で展示しています。

今回は学芸員の松山早紀子さんの案内で、特別に作品撮影を許可していただきました。
▲平山氏の代表作「楼蘭遺跡三題」。ほか、畳6枚分の大きさにもなる作品も展示されている

平山氏の展示室は、天井が高く開放感たっぷり!温もりのある照明がほわんと作品を照らしているので、平山氏の持つやわらかな作風をより際立たせているように感じます。松山さんによると「平山先生の作品は大きな作品も多数あるため、空間を大きくとってゆったりと展示しているんです」とのこと。

展示室にはベンチもあるので、そこに座って、作家の世界観にじっくりと浸れますよ。
▲じっくり作品と向き合える

お次はブロンズ像が有名な佐藤氏の展示室へ。
彫刻は立体作品なので、360度さまざまな角度から鑑賞を楽しみましょう。ちなみに、こちらではなんと作品に触ることができるんです!一般的に美術作品はその保護のために触れることが禁止されていることがほとんどですが、このブロンズ像はOK。触れることで、滑らかさやディテールの細やかさを直に感じることができます。
▲ブロンズ像はひんやり、ザラッとした手触り。金属とは思えないほど、軽やかさと躍動感も感じる(作品名「翔韻」)

そして3人目の巨匠、樂氏の展示室へ。こちらは佐川美術館の開館10周年を記念し、平成19(2007)年に建てられた別棟「樂吉左衞門館」内にあります。
なんとこの別棟は樂氏自ら設計の創案・監修をしたそうで、樂氏が設計に携わった建物の中で同氏の作品を見られるのは世界でもここだけ。茶道に伝わる「教えを守り、発展させ、新しく生み出す」という考え方「守破離(しゅはり)」をコンセプトに造られました。
▲水と光の移ろいを眺めている人も

展示室はちょうど水庭の地下にあります。室内の照明を暗く設定しているので、まるで土の中のようにすっぽりと包まれるような感覚です。一方で、一部のガラス天井からは水庭のゆらめきが影を落とし、とてもドラマチック。光が射し込む薄暗い室内に居心地の良さを感じるからか、訪れる人々の足取りがゆったりとしているように見えました。
▲1年のうち前期は吉左衞門作品の展覧会を、後期は様々なアーティストとのコラボ作品を発表

展示品にはスポットライトが当たっているため、周囲の暗さと相まって、作品が浮き上がっているような印象に。薄暗い室内のおかげで周りの人も気にならず、作品に集中することができますよ。

えっ“潜る”茶室!?常識を覆す奇想天外な茶室に驚き

もう一つ、この別棟で忘れてはならないのが展示室に隣接している「茶室」。展示室同様、こちらも樂氏が設計の創案を手掛けています。

一般的な茶室のイメージといえば、住宅の離れに造られた小さな庵。簡素に仕上げた“ザ・和風”を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。しかし樂氏の茶室は、茶道に対する熱い思いや独自の世界観をギュッと凝縮させた“ここにしかない特別な部屋”なんです。
▲待ち合いスペースの「寄り付き」。間接照明を駆使した、モダンでありながらぬくもりを感じる空間

最初に通されたのは、茶道で「寄り付き」と呼ばれる客人の待合スペース。客人は茶席に入る前に一旦ここで待ちます。

テーブル奥に掛け軸がかかっていなければ、茶道にまつわる部屋とは思えない造りですよね。加えて壁や足元にも注目を。壁はコンクリートの打ちっぱなし、床には枕木を敷いています。これら樂氏のこだわりに触れて、訪れた客人が驚きワクワクしている様子が目に浮かびます。
▲枕木はオーストラリアの鉄道で実際に使われたもの。傷のついた温かみある風合いが居心地のよさを演出している

次に通されたのが「腰かけ待ち合い」。茶席に通される前に、主人の迎えを待つスペースです。寄り付きよりもちょっと明るめですが、それは空の見える屋外だから。
▲枕木の次は大きな飛び石!アフリカのジンバブエから特別に取り寄せたのだそう

ここはちょうど水庭の真下にあたる「水露地」。水庭の一部を丸く切り取り、水庭と水露地を繋ぐコンクリートの壁に水をつたわせる仕掛けを施しています。ポトポトと壁をつたう水音が耳に心地よく、壁に囲まれた丸い空は青い。清々しい気分になります。
▲清々しい空気に背筋が伸びる。いつ訪れても、空の様子に四季のうつろいを感じる

そして、いよいよ茶室の小間「盤陀庵(ばんだあん)」へ。
▲茶室小間「盤陀庵」。馴染みの茶室と一味も二味も違う空間が広がる

茶室自体はとてもシンプルですが、天井には解体した古民家の煤竹(すすだけ)を使用したり、床柱にバリの古材を使ったりするなど、国内外から取り寄せた素材を組み合わせているところがユニークです。

さらにはこんな仕掛けも。茶室の窓にロールスクリーンのように掛けられた越前和紙は、窓からの光を受けて色を変化させます。例えば太陽の日差しが入る昼間は、水庭のヨシやヒメガマの緑が水面に反射し、緑色の反射光が越前和紙を照らします。
夕暮れになれば夕日が差してオレンジ色に変わり、和紙もオレンジ色に。
▲日中は越前和紙が緑色に染まる。絶妙な透け具合が、光をやわらかく映し出す

その和紙を通して差し込む自然光が茶室の空間を彩り、屋内にいながら、時の移り変わりや季節を感じることができるという、樂氏の心憎い演出です。
▲土間のスリットから水庭の水面が見える。茶室はちょうど水庭に潜っているようなもの

そして「小間の先に、もうひとつ広間がありますよ」と松山さん。案内されるとそこには―――
▲気持ちが穏やかになる開放的な空間

大きな広間が目の前に!ここは薄茶をいただく広間「俯仰軒(ふぎょうけん)」。改めて腰を下ろしてみると、ちょうど視線と同じ高さに水庭の植物が見えます。というのも樂氏の「水面と同じ高さに座す。人は自然と同じレベル、目線で生きていかなければならない」という思いで設計された部屋だから。

確かに、自然と一体になるような不思議な感覚を味わうことができますね。
▲「腰かけ待ち合い」と同じ石が敷き詰められた広間。外と中を区切るガラスの壁が印象的

なお、茶室はガイドツアー「茶室見学」に申し込めば見学が可能(開催は毎週木~日曜、1日5回、所要時間約30分、1名1,000円・税込、入館料別途)。ほか、定期的に開催される茶会に参加することもできます。詳細は公式ホームページにて確認を。

建物、自然、美術作品が一体となって見る者の感性を揺さぶるアートスポット

目をひく印象的な建築物、自然と調和した景観、国内最高レベルの美術作品など、フォトジェニックな要素が満載の佐川美術館。実際に館内を巡ってみると、ただ見て終わるだけじゃない、感性を揺さぶられるユニークな施設でした。

所蔵作品の展示のみならず、見て触って楽しめる光のアート「魔法の美術館II」など、大人から子供まで楽しめる体験型の展示イベントなども精力的に行っています。今度の週末は「佐川美術館」でアートと自然に触れてみませんか?
▲水庭にたたずむ佐藤氏の作品「蝦夷鹿」
中河桃子

中河桃子

編集・ライター、京都出身滋賀育ち。大学在学中に京都でライター業を開始。以後、関西・東京の出版社や制作会社で、グルメ・エンタメ・街情報を中心に18年以上携わる。新しいもの・おいしいもの・興味のあることは自分で体感しないと気が済まない現場主義。今は酒蔵巡り・和菓子作り・美術鑑賞・旅にハマり中。

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