明治時代“そのまま”が残る世界遺産「三角西港」でレトロ写真スポットめぐり

2018.08.24 更新

熊本県宇城市三角(みすみ)町に、レトロな景観で人気のスポットがあります。それが「三角西港(みすみにしこう)」。石畳の港湾や洋館など、明治時代に造られた姿がそのまま残っており、多くの映画やドラマのロケ地としても使われているんです。2015年に世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成要素の1つとしても登録されたこの港を散策してみました。

▲明治ロマンを感じる洋館「浦島屋」

まずは海の景色を楽しみながら、レトロな港を散策!

▲石畳がフォトジェニック!

熊本市から天草方面へと国道57号線を車で走ること約1時間、天草諸島へ向かう橋「一号橋」及び「天城橋(てんじょうきょう)」のすぐ手前にあるのが「三角西港」です。

石積みの港に、大正期の洋館(龍驤館/りゅうじょうかん)や復元した建物(浦島屋)などが並び、山手にある建物(旧三角簡易裁判所本館)と合わせて公園として整備されているスポット。敷地に入ると一気に明治時代へタイムトリップしたかのような景色が広がります。
▲現代の港にはない趣を感じられる景色。右手奥に見えるのは天草の島

この港が着工したのは明治17(1884)年。福岡県の三池炭鉱で採掘された石炭を、上海など海外に輸出するための起点として明治政府の主導で造られました。オランダ人技師ムルドルが設計し、長崎県にある「大浦天主堂」や「旧グラバー住宅」を手掛けた小山秀(ひいで)が地元の石工職人たちと施工したといわれています。曲線が多く難しい西欧の設計に日本の技術で応えて、海岸線にゆったりと沿う美しい港が明治20(1887)年に完成しました。
▲明治三大築港の一つといわれています。背後の山を切り崩して海沿いを埋め立て、高度な石工技術で造られました
▲国の重要文化財に指定されている石積み埠頭。この曲線に技術力の高さが感じられます

九州随一の貿易港として、最盛期には200戸以上の倉庫や洋風・和風の建築物などが建てられましたが、鉄道の開通と三角東港への機能移転に伴い、三角西港は徐々に使われなくなりました。ところがそのことが幸いし、明治時代に造られたそのままの姿が現代まで残る結果になったのです。
▲奥に見えるのは、天草諸島へと渡る橋。2018年4月に開通した「天城橋」(手前のアーチ状)と、開通50年を超える「天草五橋」の最初の一号橋

明治期の港が完全な形で残っているのは、今は日本でここだけ。その歴史的な価値が評価され、2015年に世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成要素の1つとして登録されました。

その貴重な景色は、NHKドラマ「坂の上の雲」(2009~2011年)や映画「るろうに剣心 京都大火編・伝説の最期編」(2014年)、フジテレビ三谷幸喜脚本ドラマ「オリエント急行殺人事件」(2015年)など、様々な映画やドラマの撮影にも使われています。作品の“聖地巡礼”を楽しむファンも多く訪れるスポットです。
▲釣りスポットとしても人気。海が穏やかな日には、運が良ければスナメリが泳ぐ姿を見ることも

レトロな洋館をめぐりながら、明治・大正ロマンや歴史を感じる!

海沿いの港湾一帯から、山手まで含める三角西港の敷地内には、明治時代から残る建物や、当時の姿に復元された洋館があります。いずれも明治ロマンを感じられる、レトロなフォトジェニックスポット!そこで、カメラやスマホを片手に、SNS映えを探して洋館めぐりを楽しみました。海沿い約500mに広がるので、10分程度で散策できる広さです。

まず訪れたのは、三角西港のシンボル的な建物「浦島屋」です。
▲正面からの角度が、絶好の撮影スポット!入場無料です
▲パステルグリーンのカラーがかわいい建物。現在は休憩所として開放されています

この建物は、三角西港の最盛期にこの地にあった旅館「浦島屋」を復元したもの。港湾都市が廃れるとともに、建物は中国・大連へと移築されましたが、当時の写真をもとに平成5(1993)年に造られました。当時最先端だった洋風建築で、多くの賓客をもてなしていたと言います。
▲まるで映画のセットのような空間!

この「浦島屋」は、熊本県にゆかりのある文豪・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の短編小説「夏の日の夢」に登場します。旅行で立ち寄ったこの旅館の女将の美貌に惚れ込んだ八雲が、短編小説の構想を立てたと言われています。
▲2階バルコニーからは、港と海を望めます
▲建物裏手のアプローチの奥行きも、写真映えします!
続いて、その隣にある「龍驤舘」へ。明治天皇の徳をたたえる館として大正7(1918)年に完成した建物で、宇土郡(現・宇城市など)の公会堂などに使われていました。今も当時のままの形で残っており、国の登録有形文化財に指定されています。
▲「龍驤館」(入館料:高校生以上200円、小・中学生100円、幼児無料)

現在は、三角西港の歴史を学べ、世界遺産のガイダンスが聞ける施設として活用されています。
▲水色の窓枠がかわいい空間。大型パネルや様々な展示物を通して、三角西港と明治日本の産業革命遺産について知ることができます(館内は撮影不可)
▲最盛期の三角西港にはこれだけの建物が並んでいたそうです
さらに港の中には、当時の和風建物や排水路なども残っています。
▲旧高田回漕店は、1階は海運業事務所、2階は旅館として使用された和風建築
▲入館無料で内部を見学できます(9:00~17:00開館、年末年始定休)。かつての港町の賑わいを感じられます
▲当時のガス灯風デザインの照明設備など、明治ロマンの雰囲気を損なわないよう整備されています
▲国の重要文化財にも指定されている、石張りの排水路。奥に見えるのは、橋幅4m余の「三之橋」とアコウの樹

映画撮影にも使われた、山手の建物へと足を運んで

港から国道を越えた背後には、小高い山があります。三角西港が港湾都市だった時代、この山手にも多くの施設が建てられ、隣市の宇土市や天草エリアまで含めた一帯の行政・司法の拠点にもなっていました。

今も残る「旧三角簡易裁判所本館」は、映画「るろうに剣心 京都大火編・伝説の最期編」の撮影にも使われたという場所。映画の世界を感じるべく、山手へと足を運びます。
▲山から海へと続く石積みの排水路も、国指定重要文化財です

港から歩いて約3分、30段程度の階段を上ると、着きました!
「旧三角簡易裁判所本館」は現在、司法の仕組みを紹介する施設「法の館」として活用されています。映画では、登場人物達がけがを治療する病院として登場したそうです。
▲大正時代の重厚な造りをそのまま残しています
▲館内には当時の法廷がそのまま残る部屋も
▲映画の世界にうっとり…。登場人物気分で見学しました!
▲なんともいえないレトロ感
▲このイスのツヤ感も、レトロ好きにはたまりません
▲当時の「弁護士等控室」やレンガ造りの記録倉庫も残ります
古い建物のレトロ感を心ゆくまで堪能したところで、そのまま遊歩道を5分程上ったところにある「展望台」へ。少し坂がきついですが、頑張ります!
▲遊歩道沿いには「イノシシ注意!!」の立て看板が

未舗装の山道を少し上ると、展望台に到着!三角西港全景と海峡を一望できます。この海峡は、八代海と有明海を結ぶ「三角ノ瀬戸」と呼ばれています。昔ながらの港と海、そして奥に見える現代的な橋のコントラストが素晴らしい景色です。
▲景色をボンヤリ眺めていると、今が何時代かわからなくなりそう!

明治築の倉庫の中で、熊本名物・馬肉料理を堪能!

三角西港を海沿いから山手まで、しっかり堪能したところで、ちょっと歩き疲れてきました。ランチをいただきましょう!というわけで港へと下り、三角西港内唯一のレストラン「西港明治館」へと向かいます。

こちらは国の登録有形文化財である「旧三角海運倉庫」を利用したレストランです。明治20(1887)年に建てられた土蔵造りの建物で、当時は多くの荷物を海外へと運び出す荷揚げ倉庫として利用されていました。
▲海沿いに立つ白壁の倉庫。当時の賑わいを思わせる建物

中に入ると、重厚な梁や柱と白壁が作り出すレトロな空間が広がります。これらの建材も、明治時代に建てられたときそのまま。なんとも贅沢な空間!レトロ好きにはたまりません。
▲広い店内には、テーブルがゆったりと配置されています
▲梁や柱、窓の造りは昔のままのもの。海が見えるようにテーブルが配置されているのもうれしい!
▲レトロな屋内も素敵ですが、せっかくなので海を一望できるテラス席に陣取りましょう!

さあ、ランチを注文です!
ここ「西港明治館」では、熊本名物の馬肉料理をメインに、熊本のあか牛や洋食、手作りスイーツなどを提供しています。宇土市の馬肉・精肉店が営んでいるため、上質な馬肉・牛肉メニューをお手頃に楽しめ、観光客はもちろん地元の人にも人気です。

というわけで、看板料理「花びら馬肉丼」を注文しました。
▲「花びら馬肉丼」(1,458円)※2018年8月現在はお重で提供

こちらのメニューは、霜降り・赤身・そして希少部位であるフタエゴの3部位の馬刺が乗った丼です。とにかく馬刺のボリュームがすごい!これも、馬肉店が営んでいるからこそできる技でしょう。

馬刺は冷凍の状態で薄切りにしてごはんに乗せられるので、席に届く頃にはごはんの熱で程よく溶けて、とろりと柔らかい食感に。中央の温泉卵を割って黄味をからめ、ワサビを溶かした甘辛醤油をかけていただきます。程よい歯ごたえの中に赤身肉の旨みが凝縮していて、うーん、うまい!

馬刺は良質なタンパク質が豊富でローカロリーなので、健康にも嬉しい食べ物。さらに、セットのサラダも山盛りなので、罪悪感を抱くことなく満腹になれました!
▲希少部位・フタエゴ。あばら部分の3層肉で、濃厚な甘みと旨みが魅力です

丼で満腹になったら、スイーツもいただきましょう。ケーキも店内で焼かれているんです。オーダーしたのは、「豆乳シフォンケーキ」。米粉やきび砂糖を使用したやさしい甘さでフワッフワ、おいしい!
▲「豆乳シフォンケーキ」(432円・数量限定)。フレーバーはプレーン・チョコ・抹茶などから日替わりで焼かれます。テイクアウトも可(324円)
▲土・日・祝日限定で、かわいい「スナメリパン」(イートイン248円、テイクアウト194円)も。味はチョコ・キャラメル・シャキシャキリンゴの3種

運が良ければ、目の前の海に小型のイルカ・スナメリが顔を出すこともあるそう。レトロな空間と気持ちのいい海の景色に包まれて、ゆったりおいしい時間を過ごしました。
▲港からテラスを見上げるアングルも素敵
さあ、最後はお土産を買いましょう!向かったのは、西港明治館のお向かいにある「ムルドルハウス」。トンガリ屋根が目印の物産館です。他の建物と同じ洋風建築の中に、地元のお土産や特産品がそろいます。
▲港の雰囲気にマッチした、明治時代洋館造りのお店
▲三角名産のお菓子や工芸品がそろいます
▲せっかくだからここでしか買えない逸品を。レトロなパッケージもかわいい「吟将製菓 ムルドル通り」(1個170円)
気付けば夕方。三角西港は西側に開けているので、天草の島々の隙間から夕日が差し込み、さらに情緒ある景色が広がります。ここだけ時間が止まったかのように、古き良き時代のロマンを今に伝える特別な場所。レトロ好き、歴史好き、建物好き、そして写真好きな人にとって、大満足の時間が過ごせるスポットです。
▲夕日に照らされて、情緒ある景色が広がります
▲マジックアワーの写真撮影も、ぜひ楽しみたい場所です

カメラマン垂涎!夕暮れにぜひ寄りたい、海の絶景スポット 2カ所

三角西港から熊本市内へと帰る場合、海沿いの国道57号線を長い距離走ります。ここは、海の絶景の宝庫。そこで、三角西港の帰りに立ち寄りたい夕方の絶景スポット2カ所をご紹介します。

まず1カ所目は「御輿来(おこしき)海岸」。宇土市に面する有明海は潮の干満の差が激しく、干潮時には最大で全長10km・沖合2kmにわたって美しい曲線の砂紋が現れます。この干潮と夕日の時間が重なると、絵画以上に美しい景色が広がります。
▲高台にある「干潟景勝の地」(大栄稲荷神社横)から2月に撮影した景色(写真提供:宇土市観光物産協会)

干潮と日の入りが重なる日は年間で2~5月の間の10日余りしかないため、カメラマンがその瞬間を狙い、多く撮影に訪れます。宇土市の観光情報サイトで御輿来海岸の干潮と日の入り時刻の情報を提供しているので、事前にチェックして行くのもオススメです。
▲昼間も干潮と重なると、美しい波紋を楽しめます(写真提供:宇土市観光物産協会)
もう1カ所は、網田海岸公園より車で10分程熊本市方面に走った海沿いにある「長部田海床路(ながべたかいしょうろ)」です。TV-CMに出たことから「幻想的!」とSNSを中心に人気が高まっているスポットです。
▲道路が、海の中に続いている…?

こちらの道路、実は満潮時には途中から海に沈みます。この地域で盛んな海苔・貝の漁業者が、干潮時に車で漁場まで行けるよう造られたこの道。満潮時に海へ沈み、電柱と電線だけが見える景色は、まるで幻想映画や絵本の世界のようです。
▲道が少しずつ海の中へ。なんとも切なく美しい景色
▲夜になると、電柱の電灯が付いて海に反射し、さらに幻想的な景色になるそうです
▲干潮の日の夕暮れの様子。海への道が現れています
本当に「昔のまま」の風景が広がる三角西港と、海の絶景スポット。夢中でカメラのシャッターを切り続けた、大満足のお出かけでした。帰ってカメラの撮影データを振り返るのが、楽しみです!

※記事中の価格はすべて税込です
中川千代美

中川千代美

長崎生まれ、熊本在住。地方出版社に勤めたのち、「チヨミ編集事務所」として独立。地域の子育て情報誌や生活情報紙をはじめ、幅広いジャンルの編集・ライティング・企画を手がける。食欲・物欲・お出かけ欲・温泉欲・ビール欲が赴くままに熊本・九州を駆け回る日々。趣味は二胡。(編集/株式会社くらしさ)

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