愛媛では、これがタルト!?「の」の字の和菓子の魅力に迫る

2018.05.20 更新

みなさんは「タルト」というと、どんなお菓子を思い浮かべますか?一般的には、いえ世界的にも、タルトはお皿状のサクッとした生地の上に果物やクリームをのせた洋菓子のこと。でも愛媛県民にとってのタルトは、見た目はロールケーキ、食べれば餡入りの和菓子。今回は愛媛のタルトの魅力に迫るべく、「一六(いちろく)本舗」を訪れました。

生みの親はスイーツ男子のお殿様!?

▲スポンジ生地で巻かれた餡が「の」の字を描く愛媛の「タルト」

愛媛を代表する郷土菓子のひとつ「タルト」は、スポンジ生地で餡をくるりと巻いたロールケーキ状のお菓子です。

起源を辿るとなんと江戸時代にまで遡り、松山藩のお殿様に行き着きます。時は1647(正保4)年。久松家初代松山藩主・松平定行公は、幕府からの命を受けて、長崎の監視や警護を行う長崎探題職を兼務していました。ポルトガル船が長崎へ入港したという知らせを聞いて、急遽長崎の海上警備へ赴いた定行公は、カステラの中にジャムが巻かれた南蛮菓子タルトに出合い、その味の虜に。松山への帰郷の際に製法を持ち帰ったと伝わります。
▲ポルトガル伝来の洋菓子は殿様を魅了

製法は後に久松家の家伝となり、明治以降に松山の菓子司に技術が広められたのだそうです。もともとジャムが巻かれていたものを、餡を巻くようにアレンジしたのは定行公だったともいわれています。
定行公は、今でいう「スイーツ男子」だったのかもしれませんね。タルトに夢中になっている殿様の姿を想像すると楽しくなってきます。

ポルトガルには、今もジャムやカスタードクリームを巻いた「torta(トルタ)」というロールケーキ状の伝統菓子があり、この「トルタ」が愛媛の「タルト」の起源であり、語源でもあるという説も。昔も今も、遠い国とお菓子でつながっているなんて、なんだか嬉しいですね。

タルトの美味しさの秘密を探りに「一六本舗」へ

道後温泉本館前に並ぶ一六本舗。向かって右が「道後店」、左が「道後本館前店」
江戸時代から愛され続けたタルトは、今や松山のみならず愛媛県全域にすっかり定着しています。多くの店で製造・販売されていますが、今回はその中のひとつ「一六本舗」を訪ねてみました。

一六本舗は1883(明治16)年の創業。130年を超える歴史を持つ老舗です。愛媛県内に約30店舗を構えるほか、全国の百貨店や一部のサービスエリアなどでも「一六タルト」を始めとする商品を販売しています。
▲道後本館前店の入り口は道後商店街のアーケード通りに面しています

「一六本舗 道後本館前店」は、道後温泉駅から商店街を行き、アーケード通りを端まで来て道後温泉本館を真正面にしたその左手にあります。
隣り合う「道後店」は商品販売だけですが、「道後本館前店」は販売以外にも、店内で購入した飲み物やお菓子を食べながら休めるテーブルが設けてあったり、2階には飲み物やお菓子、軽食も楽しめる茶寮があったりと、観光や買い物の合間にちょっと憩うこともできる店舗になっています。
▲店内にタルトの形の可愛らしいテーブルが置かれています

「一六タルト」は多くのこだわりを持って丁寧に作られています。
ほんのり香る柚子が特徴の餡は、皮むき小豆のみを使ったなめらかな舌触り。白双糖(しろざらとう)の優しい甘みの中に、爽やかな柚子の風味が気品を加えています。
▲柚子の風味の餡をふわふわのスポンジ生地で巻いた「一六タルト」(1本680円)

スポンジ生地の材料は、卵と砂糖と小麦粉だけ。バターや油といった「洋」の材料を入れずに作ることで、「和」の味わいである餡との親和性を高めています。熟練の職人がその日の気温や湿度も加味して、生地の仕込みから焼き上げまで細かくチェック。きめ細かくてふわりと軽く、それでいてしっとりとした絶妙の生地に仕上がります。
▲愛媛県民にタルトの絵を描かせれば、きっとほぼ全員が丸の中に「の」の字を書くでしょう

一本ずつなんと手作業で餡を巻いて、生地にほど良くなじませるために一晩寝かせます。こうして手間を惜しまず作られ、最後に食べやすくスライスされ、美しい「の」の字を描くタルトになります。

細長いロールケーキ型のタルトはたいがい予めスライスされていますが、実は愛媛のタルトにこのスライスを取り入れたのは、一六本舗が初。1968(昭和43)年に食べる人のためにと考案され、今やタルトの定番になりました。

様々なバリエーションやコラボにも注目!

▲生地だけでなく餡にも香り高い抹茶が練りこまれた「抹茶」(1本864円)

タルトは多くのバリエーション展開もされていて、「抹茶」も一六本舗の定番人気商品のひとつ。福岡県の八女(やめ)抹茶を使用し、抹茶の豊かで深い味と香りを存分に活かし、そして色の美しさにもこだわった逸品です。
▲季節ごとのタルトがあるのも楽しみのひとつ。2018年の夏の限定は「甘夏みかん」(左から3個入486円、10個入1,512円、1本1,080円)

また毎年季節ごとに色々な限定商品も販売されていて、2018年の4月中旬から8月末までの限定タルトは「甘夏みかん」。春はピンク色をした「桜」、秋は「栗」など、訪れる季節に応じた楽しいタルトと出合えますよ。
▲タルト以外にも、個包装のお菓子がずらり

お店の奥には、自分で好きなお菓子を1個ずつ選ぶことができる個包装のお菓子が並ぶコーナーもあります。全種類食べてみたくなります!
思わず「パケ買い」したくなるかわいいパッケージもありますよ。
▲「道後温泉別館 飛鳥乃湯泉」の個室・特別浴室用のお茶菓子は一六本舗の商品です(1個108円、5個入り648円、8個入り993円)
可愛いパッケージを発見!タルトの被り物姿の「みきゃん」が描かれているのは、愛媛県産のみかんと伊予柑の果皮を使ったみかん味のタルトです。
▲愛媛県のイメージアップキャラクター「みきゃん」とのコラボ!「ひと切れ一六タルト みきゃん・ダークみきゃん」(1個各151円)

もうひとつの緑色の「ダークみきゃん」は、愛媛県産久万(くま)茶を使用した生地に伊予柑果皮入りのチョコ餡を合わせています。

ちなみに「ダークみきゃん」とは、「みきゃん」の邪魔をすることが生き甲斐という敵役キャラクターで、カビているみかんがモチーフ。タルトはもちろんカビていませんのでご安心を。
▲ナイロン巾着に入った「みきゃん」と「ダークみきゃん」のセット(3個入540円)
▲お土産にも最適な、「道後温泉本館」や「松山城」をかたどった箱にもみきゃんたちが(5個入864円)。 屋根や側面もきちんと描かれていて、見ているだけで楽しい気分に
▲紙袋は片面がみきゃん、反対側がダークみきゃん。これは捨てられない!

可愛く工夫されたパッケージがたくさんあって、あれもこれも買い集めたくなります。ナイロン巾着や紙袋も再利用できて、旅の思い出に、またお土産や贈り物にもぴったりですよ。

こんな楽しい詰め合わせもあります。愛媛県今治市の老舗タオルメーカー「吉井タオル株式会社」とのコラボ商品です(オンラインショップで販売)。
▲思わず笑みがこぼれる「一六タルト 今治タオル 詰合わせ」(3,300円)
タルトの生地さながらのふわふわタオルを2枚使って、色も形もタルトそっくりにくるりと巻いています。「の」の字の餡も忠実に再現。ほどいてしまうのがもったいない完成度です!

道後本館前店のオリジナル商品「ゆずドリンク」もおすすめ。スッキリとした味わいで、暑い季節には特に、一口飲めば体中に爽快感が広がります。大きなタルト型のテーブルに腰かけていただきましょう。
▲ゆずドリンクは1杯100円。カップを店員から受け取ったらセルフサービスで

2階の「一六茶寮」でちょっと一服

▲窓いっぱいに道後温泉本館の景色が広がる特等席「一六茶寮」

お菓子や飲み物、軽食が楽しめる2階の「一六茶寮」へも行ってみましょう。
なんと言ってもまず素晴らしいのはこのロケーション!大きな一枚ガラスの向こうに道後温泉本館が大きな絵画のように見える迫力の景色です。
▲大きな木のテーブル、天井や床の木目、全てが清々しく気持ちの良い空間

おすすめの「一六名菓セット」は、一六タルトと、さらにもうひとつ、松山名菓の坊っちゃんだんごがセットになって、抹茶と一緒に味わえます。
▲一六タルトと坊っちゃんだんごに抹茶がついた「一六名菓セット」(520円)

京都の宇治抹茶で立てたお茶が、ふくよかな香りとともに程よい苦味で口の中に広がり、タルトの上品な甘さとひきたて合う、最高の組み合わせです。ゆっくりと味わいながら、ホッとひと息つきましょう。
▲アルミの鍋に入った鍋焼き「昔ながらの鍋焼きうどん」(670円)

他にもうどんなどの軽食もあります。松山市のソウルフード、鍋焼きうどんは人気ですよ。これを食べて、デザートにお菓子と抹茶なんていうランチもいいですね。
▲階段周辺には、故・伊丹十三氏の写真やゆかりの品などが

父親が松山出身で自身も高校時代を松山で過ごした伊丹十三氏は、昭和50年代に一六タルトのCMに出演。コテコテの伊予弁で話すCMは当時話題になりました。一六本舗の現社長・玉置泰(たまおきやすし)氏が出演を依頼したことがきっかけで、後に玉置氏は伊丹映画を制作する「伊丹プロダクション」の社長も務めるようになりました。
映画ファンにもぜひ注目してほしいコーナーです。
愛媛のタルト、いかがでしたか?遠い昔に遠い国からやってきた、歴史にロマンに彩られたお菓子です。旅の思い出に、そしてお土産にもぜひ、選んでみてくださいね。
※記事中の価格は全て税込です。
矢野智子

矢野智子

愛媛県在住。愛媛県出身ながら高校卒業後ほとんどの時間を県外で過ごした後、生活の拠点を愛媛に定めた現在、改めて気付く地元の魅力に感動しきり。 人生を豊かにするものは「食」と「読」と信じ、そこに情熱を傾ける日々。

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