平安神宮 古の都を今に伝う社殿と、百年の自然が息づく庭園を巡る

2018.05.07 更新

平安遷都1100年を記念し創建された「平安神宮」。広大な敷地には、平安時代の正庁を再現した勇壮な社殿と、長い歴史に培われた造園技術の粋を集めた庭園が広がっています。京都でゆっくりと庭園を愛でるのにオススメの神社です。

京都の町の再興を願い、現代によみがえった「平安の都」

平安神宮の創建は明治28(1895)年。歴史ある神社仏閣がひしめく京都にあっては比較的新しい時代にできた神社です。
創建当時、京都の町は幕末期の戦乱により荒廃していました。また、明治維新により首都機能が東京へ遷ってしまったのも、京都の人々の心に大きな悲しみを与えたと言われています。そんな中、古き良き京都を取り戻したいという京都市民や全国の人々の思いが結集し、平安遷都から1100年の節目の年に、京都復興の象徴として平安神宮が創建されたのです。
平安神宮への参拝は、まずこちらの応天門(おうてんもん)をくぐるところから始まります。平安京の正庁であった朝堂院を8分の5のスケールで再現した平安神宮。こちらの応天門はその朝堂院の南面正門にあたります。
写真に写っている人と比べると、圧倒的な存在感。これで8分の5サイズというから当時の都のスケールの大きさに驚いてしまいますね。
応天門から振り返ると、300mほどの距離には大鳥居が。こちらは昭和3(1928)年に京都で行われた昭和天皇の即位の礼を記念して昭和4(1929)年に造営されました。遠く離れたところから見てもこの大きさで、朱の大鳥居としては日本有数の大きさを誇っています。
応天門をくぐった正面には大極殿(だいごくでん)が鎮座しています。ここは朝堂院における正殿にあたります。平安時代には即位や朝賀をはじめ主要な儀式が行われる国の中枢でした。現在は、国の重要文化財に指定されています。
ちなみに大極とは、宇宙の本体・万物生成の根源を示す言葉。不動の指針である北極星に例えられ、天皇の坐す御殿を意味しているそうです。

大極殿の奥には内拝殿や本殿が配されています。二礼二拍一礼、まずはここでしっかりとお参りしましょう。
▲身守(みまもり)。初穂料500円

参拝を済ませたら、大極殿にある授与所でお守りをチェック。ここで、教えていただいた人気のお守りをご紹介します。
まずはこちらの身守。健康・病気平癒のご利益があるそうです。
▲平安守(へいあんまもり)。初穂料2,000円

続いてはこちらの平安守。京都の東西南北を守護するといわれている四神(蒼龍・朱雀・白虎・ 玄武)を表す、4色の「京都オパール」が埋め込まれています。開運招福・無病息災のご利益があるそうです。
大極殿から応天門に至る各回廊などに吊るされている釣燈籠(つりとうろう)。先ほどの平安守でも紹介した四神の姿があしらわれています。こちらは 明治38(1905)年の日露戦争勝利を記念して奉納されたもの。境内には現在145個の燈籠が吊り下げられています。
大極殿へ向かってそれぞれ東西に配されている蒼龍楼・白虎楼(そうりゅうろう・びゃっころう)。こちらも創建時に建立され、国の重要文化財に指定されています。
写真の白虎楼には、社殿の周囲に広がる名勝・神苑(しんえん)の入り口が。別途必要な拝観料を支払い、さっそく中へ入ってみましょう。

人の手と100年の時が生んだ、四季映す美しい庭園を巡る

社殿を取り囲むよう東西南北に配された4つの庭からなる「平安神宮神苑」。総面積は33,000平方メートル(約10,000坪)にもおよびます。作庭は明治から昭和にかけて活躍した7代目小川治兵衛(じへえ)。「植治(うえじ)」の通称で親しまれ、京都では東山界隈に円山公園をはじめとした名庭を残しました。

創建時に作られた庭は西、中神苑の2つ。東山を借景にし、琵琶湖疎水を取り入れた美しい景観です。人の手が創り出した広大な庭園ですが、創建後100年以上の時を重ね、現在は様々な生き物たちが暮らす豊かな環境になっています。
入口から入ってすぐの南神苑は別名「平安の苑」と呼ばれ、八重紅枝垂桜(やえべにしだれざくら)の名所として親しまれてきました。取材時(2018年3月20日)はまだ桜のつぼみに色が付き始めたかな、という状態でしたが、満開の時には写真のような美しい姿で見る人を楽しませてくれます。
▲苔むす庭園。木漏れ日が差し込み情緒ゆたかな表情

南神苑は昭和44(1969)年の作庭です。平安時代の特色である野筋(道筋)と遣水(やりみず)が設けられ、まるで本当の山野を歩いているような気分が味わえます。
昭和56(1981)年には、竹取物語や枕草子など平安時代の文学書に登場する草木約180種類ほどが植栽され、当時の王朝文化をしのばせるということで、平安の苑という名前が付けられたそうです。
こちらは、神宮の創建と同じ明治28(1895)年に運行が開始された日本最古の電車「京都電気鉄道」の車両(後継機)です。京都市から寄贈され、南神苑にて保存・展示されています。
南神苑から順路を進むと見えてくるのが西神苑。中心の白虎池に四季の移ろいが映し出されるこの庭園には、池の西側に出島、北側に神苑唯一の滝、西南の築山には茶席「澄心庭(ちょうしんてい)」が配されています。
白虎池の周辺は毎年6月上旬ごろには美しい花菖蒲(はなしょうぶ)で埋め尽くされます。日本古来の品種ばかり200種・2,000株が競うように咲く姿は圧巻です。
西神苑に続いてはこちらの中神苑を観覧。庭の中央にある蒼龍池には、東側の大島(さんご島)から北岸をつなぐ臥龍橋(がりょうきょう)と呼ばれる沢とび石が有名です。天正年間の三条・五条両大橋の古い石柱や梁を用いていると言われています。
▲初夏になると、珍しいカキツバタの群生やスイレンなども咲き、趣ある景色が広がります
順路の最後にある東神苑。ここは明治末期から大正初期の造園で、京都御所から移築された泰平閣(たいへいかく)や尚美館(しょうびかん)が中央の広大な栖鳳池(せいほういけ)を囲むように配されています。
▲泰平閣(橋殿)の様子。ゆらめく水面の光が天井に反射しています
▲栖鳳池の対岸から見た尚美館

池の周辺には八重紅枝垂桜のほかサツキやツバキなどの多様な花が植えられ、水面に映る美しい風景は格別な風情を醸しています。

創建時より続く動く歴史風俗絵巻「時代祭」

最後に、毎年10月22日に執り行われる平安神宮の祭「時代祭(じだいまつり)」をご紹介します。
葵祭、祇園祭とともに京都三大祭の一つとして知られ、国内だけでなく海外からも多数の観覧者が訪れています。
祭の特徴は「市民参加」と「本物の調度品」。市民組織によって運営されている祭には、現在2,000人が参加し、8つの時代を20に分けた一大行列をなしています。
また使用される衣装などの調度品は、綿密な時代考証を経て復元された本物の伝統工芸品が用いられ、まさに動く歴史風俗絵巻の名にふさわしい豪華絢爛な祭になっています。
神宮の創建と時を同じくして誕生した時代祭。町の復興と京都の伝統を後世に伝えたいという、神宮創建と同じ想いが込められているのです。
時代祭当日の行程ですが、京都御所を出発(12:00)し西へ向かいます。烏丸丸太町 (12:30) から南下し烏丸御池 (12:50) へ。御池通を東へ向かい河原町御池 (13:20) へ、続いて河原町通を南下し河原町三条 (13:30) へ。三条通を東へ向かい三条神宮道 (14:10) へ、神宮道を北上し平安神宮 (14:30)に至ります。

有料の観覧席は京都御苑、御池通、平安神宮道に設置されます。当日は混雑が予想されるため、ゆったり観覧したい人にはおすすめです。
いかがでしたか?町の復興に尽力した当時の京都の人々の想いを胸に、社殿と広大で美しい庭園を巡れば感動もひとしお。京都に訪れた際にはぜひ時間をとって、ゆったり散策してみてください。

[平安神宮までのアクセス]
京都市バス・岡崎公園 美術館 平安神宮前バス停下車、徒歩約5分
京阪電車・三条駅または神宮丸太町駅下車、徒歩約15分
妙加谷 修久

妙加谷 修久

京都市在住の旅行系ライター兼ディレクター。全国各地に足を運び、旨いモノを食べ、温泉に浸かる日々。ここ京都を中心に、知っているようで知らない「日本のイイトコロ」を紹介します。日本酒好きが高じて利き酒師の資格を取得しました。

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