金閣寺門前 「茶道×着物×いけばな」の3つを一度に体験できる場所があるなんて!

2018.05.04 更新

京都を旅する醍醐味は、やはり日本ならではの伝統文化に触れること。普段は敷居が高いと感じているものにも挑戦できるチャンスです。なかでも金閣寺から徒歩1分ほどの場所にある「茶道体験古都」では、茶道はもちろん、華道と和装の3つを一度に体験することができます。友達同士で、また海外からのお客様をアテンドするのにもおすすめです。

▲静かな茶室でお茶の作法を体験。左は倉中梨恵先生

茶道・裏千家、華道・未生流の有資格者に学ぶ伝統文化

京都観光の中でも、特に高い人気を誇る「金閣寺」。その門前にある「茶道体験古都」は、お茶を通じてたくさんの人に心豊かな時間をもってもらおうと、2015年にオープンした教室です。
▲教室は金閣寺門前の町家。Tea Ceremony KOTOと染め抜いた可愛い暖簾が目印

主宰する倉中梨恵先生は、茶道裏千家の専任講師であり、華道未生流(みしょうりゅう)師範、着付け指導師範をあわせもつ有資格者。お茶だけでなくお花や和装など、本格的な伝統文化を幅広く教えてもらうことができます。
倉中先生は英語が堪能ということもあり、いまでは海外から訪れる人が半数以上を占めているとか。茶道や華道の手順だけでなく、受け継がれてきた歴史や道具・所作の意味などを一つずつ外国人の方にもわかりやすく説明してもらえることが評判を呼び、その丁寧な指導法は日本人の幅広い年齢層にも好評です。

着物に袖を通し、気分もきりりと

教室では、お茶の点て方、いただき方を体験する貸し切りプランや、相席で体験する手軽なプランなどがあり、所要時間や料金にあわせて選ぶことができます。
そのなかで今回体験したのは、茶道といけばな、着物の着付けがセットになった90~120分の貸し切りプランです。
お茶とお花、着付けの順番は参加人数によって異なりますが、今回は着物の着付けからスタート。教室の二階に案内され、幾枚かの着物から似合う色柄を先生に見たててもらいます。
▲好みや顔映りなどを見ながら、着物と帯を選ぶ

体験する彼女に先生が選んでくれたのは、やさしい薄紅に花模様の着物。着付けも驚くほど早く、手際よく、しかも動きやすい!
「着物は帯が苦しいもの、と思い込んでいたのが嘘のよう」という彼女の感想と共に準備万端です。
▲着物着付けの所要時間は15分~30分

着物姿でいけばなに挑戦!

着物姿になったら、華道体験へ。花材や花器、はさみなどはすべて用意されています。先生からいけばなの歴史や基本の型などの解説を受けて、いざスタート。

いけばなは神様の依り代である榊(さかき)や、仏様に花をお供えした供花(くげ)が起源といわれています。
「室町時代に能狂言や茶の湯、枯山水庭園など日本を代表する文化が生まれ、それにあわせて花は供花から鑑賞するものへと広がっていきました。現在のいけばなが確立されたのは江戸中期頃です」と、華道だけでなくその背景となった日本の文化や歴史も交えて説明してくださいました。
▲まずは「体(たい)」と呼ばれる一番長い枝から生けはじめます。

いけばな初体験とあって不安げな彼女ですが、「基本のルールにのっとっていけば、初めてでもいけばならしい作品が出来上がりますよ。大丈夫」という先生の言葉にひと安心。
一番長いラインの「体」を基準に、体の3分の2の長さの「用」、体の半分の長さの「副(そえ)」といった順番で生けていきます。
▲今回、体と用として生けるのは南天。枝ぶりを見ながら剣山へ。高さや角度を見ながら“間”をつくっていくのが大切

「西洋のフラワーアレンジメントは全方向から鑑賞しますが、いけばなは床の間などに置き、正面から見て楽しみます。ですので生けるときも何度も前に向き直って、全体を確認しながらバランスを決めていきます」と先生。
▲「副」は白菊。切るときは水に浸けながら斜めに

仕上がりの全体像を頭に浮かべながらバランスを決めていくのは、初めて体験する彼女にとっては至難の業。最初はこわごわ…といった感じですが、先生が細かなところまでアドバイスしてくれます。
▲なんとか体、用、副が決まって、形が見えてきました

基本が決まったら、紫、黄色などの小菊を入れていきます。先生に見ていただきながら、取り合わせや配置をじっくり決めます。
▲配置よく入るよう、茎を切り落とし、高さを調整
▲「剣山に刺すのも意外と力がいるんですね」と彼女

席から立って、少し引いて眺めては手直しし、納得いったところで完成。「初めてにしては上出来じゃないでしょうか!?」と彼女も満足気です。
▲南天と菊を使った作品が完成

「今回はいけばなの基本や体、用、副のバランスを知っていただくことが中心でしたが、ご自身で花材を選んでみたり、テーマを決めたりしてぜひまた挑戦してみてください」と先生。

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いけばなの所要時間は40~60分程度。お花は季節にあわせて先生が用意してくださいます。

お茶のいただき方から、お点前も体験!

いけばなを終えて、お次はお茶席へ。茶道体験では、客として招かれた際の作法を学ぶことができ、最後に簡単にお点前も体験させてもらえます。自分で点てたお茶を味わうのがこの体験のクライマックスです。
▲この日、床に掛けられていたのは「日々是好日」の掛け軸

茶室に入ると、すでに釜に湯が沸き、あたたかな湯気とほのかな香が出迎えてくれました。
▲講習のはじまりは、やはり礼から

いけばなと同じく、お茶についてもまずは基礎知識の解説から。
「お茶も仏教とともに日本に渡来し、最初は薬として珍重されていました。その後、茶道具から茶室、露地にいたるまで独自の美意識で“わび茶”を大成させたのが千利休。それが茶道として後世へ受け継がれているんです」と先生。

歴史を知ったあとは、茶事のおおまかな流れや正しい礼の仕方、茶碗の持ち方、所作の意味などを教えてもらいます。
▲左手で受け、右手を添えて大切に茶碗をもつ
▲出された茶碗の受け取り方、畳の縁を境界とした器の置き方などを伝授

一通りの講義が終わると茶事が始まり、まず最初に主菓子(おもがし)をいただきます。折々に異なるお菓子は季節を写し取っていて、見ているだけでも心が華やぎます。主菓子をいただくための懐紙や黒文字(くろもじ)と呼ばれる楊枝も教室で用意してもらえるので準備は不要です。
▲この日の主菓子は春の桜をかたどったもの。手前に写るのが黒文字
主菓子をいただいている間に、先生のお点前がはじまります。流れるような動きを拝見しながら、事前に教えていただいた所作の意味などを心の中で復習。
▲点てたお茶が目の前に運ばれる

運ばれてきたお茶を「お点前頂戴いたします」とあいさつしたあと、膝前にいただきます。
▲あとに客がいる場合は、「お先に頂戴いたします」と左隣へあいさつしたうえで茶碗を取る
▲茶碗を時計回りに二回まわし、正面を避けて口をつける

茶碗のお茶は三口半で飲み、お茶は最後まで吸い切ります。茶碗や床の間の掛け軸、花、香合の説明を受け、その日の趣向を知ることで、招く側である亭主のもてなしの心を共有します。

「事前にじっくり教えていただいていたので、お茶の香りとあたたかさをゆっくり楽しむことができました。お茶も苦いばかりではなく、しみじみとしたおいしさがあるんですね」と彼女。飲み終わったあとは、いよいよお点前の体験です。
▲塗りの棗(なつめ※抹茶をいれる容器のこと)から竹の茶杓で抹茶をすくい、器の中へ

先生のお点前を見てはいたものの、実際自分でやってみるのは難しそう…。
▲釜から柄杓で湯を取り、茶碗に注ぐ
▲茶筅を手早く上下に動かし、茶を点てる

大きい泡をつぶしていくようなイメージで茶を点て、「の」の字を描くようにして茶筅を引き上げます。
▲最後の泡沫がふっくりと山を描けば、上手く点てられた証

「もっとお茶を“泡立てる”ようなイメージだったのですが、茶筅の使い方は思っていたのとぜんぜん違いました。一心に細かな泡沫を立てていると静かに心が落ち着いていくのがなんとも不思議」と彼女。
▲自分で点てたお茶はまた格別

お点前が終われば、着物姿を茶室で記念撮影するのもOK。
最後は先生に教えていただいた通りに「美しい礼」をして終了。「お茶の所作を知れば、自然と立ち居振る舞いも美しく見えます。短い時間ですべてを習得してもらうことはできませんが、伝統文化のなかで大切にされてきた心を知ってもらうことで、日々の暮らしに役立てていただけることもあると思います」との先生のお言葉に、なるほどと納得です。
「興味はあってもどこか腰が引けて挑戦できなかったお茶やお花に触れることができ、日本人という自分のルーツに興味をもつきっかけになりました」と彼女も感想を話してくれました。お茶を楽しむ時間の豊かさ、花を飾った空間の清やかさなど、長い歴史の中で培われた和の美意識が、日々の暮らしをほんの少し楽しくしてくれそうな予感がします。
若林扶美子

若林扶美子

フリーのライター&プランナー。京都をはじめ関西を中心に、雑誌、書籍、PR誌の企画・執筆を手掛け、伝統文化や地域情報などを発信している。6匹の猫とともに滋賀在住。

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