東京の郷土料理に外せない!下町伝統の味・桜鍋を老舗「中江」で味わう

2018.04.05 更新

東京の郷土料理といえば、もんじゃ焼き、ちゃんこ鍋、深川めしなどを思い浮かべる方が多いのでは?実は、馬肉を使った「桜鍋」も東京で欠かせないグルメなんです。今回は桜鍋とはどんな鍋料理なのか、魅力をリポートします。

明治時代の流行の食べ物!吉原発祥の桜鍋は東京の歴史と密接な関係があった

桜鍋とは、桜肉(馬肉)と野菜などを甘めの味噌と割下で煮込んで、卵に浸して食す鍋料理。桜肉はカロリーが牛肉の半分以下でヘルシー、鉄分が豊富なので目覚めも良く、肉質が軽いので胃もたれしにくい、と人気があります。
今回訪れたのは、浅草にほど近い東京の下町・吉原大門のすぐ目の前にお店を構える「桜なべ中江」。明治38(1905)年創業、桜鍋の名店です。
▲東京メトロ・三ノ輪駅から徒歩約10分で到着

なぜ東京で桜肉?と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。実は、日本有数の歓楽街だった吉原遊郭では、借金のかたに乗っていた馬を置いていく人が多く、その馬をどうにか活用しようと生まれたメニューが桜鍋だったと一説では言われています。

当時の吉原は多くの人が集まったことから、流行の発信地としても重要な役割を担っていました。そして、吉原の入口でもある吉原大門周辺には何十軒も桜鍋のお店が並び、桜鍋は流行の食べ物だったそうです。
▲お店は吉原の入口「吉原大門」からすぐ。前の道路からはスカイツリーが見えます

店構えは重厚な造りで外観から歴史を感じられ、これぞ老舗、といった堂々たる雰囲気。さっそく暖簾をくぐってお店の中へ入ります。
▲入口に掛けられた暖簾からも歴史を感じます

店内に入るとまず、目に飛び込んできたのが、調理場で調理をしている職人の姿。ここで桜鍋ができるんだなと思いながらも座敷へ向かいました。

桜鍋を初体験!箸が止まらなくなるおいしさに驚愕

桜鍋の肉の種類はロース(2,580円)、バラ(3,580円)、ヒレ(3,580円)、サーロイン(4,580円)、霜降り(5,180円)、巻きロース(6,180円)の6種類があります。その日のおすすめの肉を教えてもらえるので、オーダーするときに聞くのをお忘れなく!この日は、昔から定番のロースをオーダー。※価格は1人前。桜鍋は人数分のオーダー必須。

待つこと5分。「ザク」と呼ばれる具材のセット(白滝、麩、焼き豆腐、しめじ、江戸菜、ネギ)と、卵がテーブルに用意され、仕上げに割下を入れた鍋を卓上コンロにセット。これが桜鍋!
▲テーブルの上でコンロに火をかけます ※写真は2人前

赤身と脂身のバランスが良い、綺麗でおいしそうな肉が鍋いっぱいに敷き詰められています。鍋の大きさもすき焼きに比べると小さいことにびっくり!予想を裏切られました。

火にかけて約1分、グラグラし始めたら外側の肉からひっくり返していきます。
▲サッとお肉をひっくり返します

最後に全体が味噌だれに絡むようにグルッとひっくり返したら、さらに5秒煮込んで完成!割下に味噌が溶け出し、味も見た目も濃厚な様子が一目でわかります。

作り方がわからない人は仲居さんにお願いすると作り方を教えてくれるので、初めての方でも安心です。
▲あっという間に肉が桜色になって食べごろに!

煮込みすぎると肉が固くなってしまうので、ひっくり返しながら、煮えた肉からどんどん食べていくのが正解。生でも食べられる肉を使っているので、レア肉でもおいしく食べられます。
▲肉が固くなる前にいただきます

桜肉を馬刺し以外で食べたことがなかった筆者は、その味にびっくり!味噌だれの甘さと、割下の醤油味が相まって濃厚で絶妙な味付け。そこに程よく脂が溶け出し、旨みだけでなくコクもプラスされ、ごはんにもお酒にもぴったりの味。牛肉や豚肉とも違い、しっかりとした食感もベスト。桜肉を煮込むとこんな感じになるんだ、と驚きの連続でした。
▲卵を溶いてお肉を一口。濃厚な味が舌に残ります!おいしい!
▲脂身も甘くてサッと口の中で溶けるような口当たり

肉と味噌だれは追加できるので、もっと食べたい、という人はぜひ追加オーダーしてくださいね。

ザクは肉を一通り食べ終わる頃に投入するのがおすすめ。野菜などから水分が出て水っぽくならないうえに、肉から溶け出した脂や旨みが野菜にもしみ込んで、おいしく食べることができます。桜鍋のおいしさに箸が止まらず、食べることに夢中になりすぎて、友達と無口になって鍋をつつきました。
▲一通りお肉を楽しんだ後にはザクをゆっくり堪能します
▲割下が減ってくると足してもらえます
▲箸が止まらなくなるおいしさ

桜鍋がとってもおいしかったので、どのように作られているのか調べるべく、調理風景を見せてもらいました。
調理場では職人が、大きな肉を部位により包丁を使い分け、桜鍋用の肉を丁寧にカットしています。
▲大きな肉の塊から、丁寧に切り分けていきます

現在、中江で提供されている桜肉は、北海道生まれ、九州・久留米育ちの国産馬のみを使用しているそう。馬刺し用の肉は柔らかくて色が綺麗な1~2歳の馬が多いのに対し、中江では鍋用に6~7歳まで育てた馬肉を使用。育てながら熟成させることで、臭みもなく、味と脂がのって旨みが増すんだとか。また、東京まで冷凍ではなく冷蔵のまま運ばれるため、食感も良く、味もおいしくいただけるそうです。
▲右がロース、左がバラ肉。どちらもツヤがあり脂がのっておいしそう

中江の桜鍋は、直径15cm程度の浅い専用鍋の縁に沿って肉を敷き詰めるように並べ、中央に特製の味噌だれを入れ、さらに肉で覆い隠すように盛り付けます。
▲調理場でひとつひとつ丁寧に肉を盛り付けます
▲味の決め手になる味噌だれは、江戸甘味噌をベースに中江秘伝のレシピで作られています。100年以上にわたり、一子相伝で味を守り続けています
▲たっぷり肉をのせていきます!

〆はこれで決まり!桜鍋の旨みがギュッと詰まった「あとご飯®」セット

鍋に肉も野菜もなくなった後は、鍋の〆として中江オリジナルの「あとご飯®」セット(880円)がおすすめ。常連客の中には、この「あとご飯®」セットを目当てに桜鍋を食べにくる人も多いそう。人気メニューと聞いて、それは絶対食べないと、と迷わずオーダー。ワンオーダーで女性2人分はたっぷりありました。
▲「あとご飯®」セットは、ごはん、濃厚な味のこだわり卵、桜肉の中落ち、おぼろ豆腐

「あとご飯®」セットは仲居さんにお願いすると作ってくれます。まず、鍋に桜肉の中落ちやおぼろ豆腐を入れます。すぐにおいしそうな匂いがしてきました。その後、溶き卵を入れ、かき混ぜます。卵の固さは好みですが、半熟に仕上げるとごはんと程よく絡み、食べやすいのでおすすめです。
▲旨みをプラスする桜肉の中落ちと、コクをプラスするおぼろ豆腐を入れて作ります
▲溶き卵を入れたら、完成!

「ごはんにかけて食べてくださいね」との案内どおり、ごはんにたっぷりかけていただきます。一口目で口の中に広がる、肉だけの時とは違うさらに甘くて濃厚な味。なにこれ!おいしい!!どんどんご飯が進みます。おなかはいっぱいなはずなのに、おかわりして鍋に残った卵を全部すくって食べちゃいました。これを目当てに来店する人がいるのにも納得です。大満足!
▲ご飯にかけていただきます!

桜肉は、秋から春にかけて脂がのっていておいしいとのこと。一方、馬の出産シーズンである春から夏はさっぱりして食べやすい肉になり、冷房で冷えた体を温めるために食べにくる方も多いそうです。つまり、通年おいしく食べられるということですね。

中江の桜肉は一味違う!アラカルト料理も見逃せない

中江では、桜鍋以外にも桜肉料理がたくさん用意されています。馬刺しも桜鍋と同じ肉を使っているので、他ではなかなか味わうことができない肉質です。また、甘い醤油だれではなく、生醤油で食べるのも特徴。肉自体が熟成されて旨みがあるので、生醤油でも十分おいしく食べることができました。
▲ロース、ヒレ、バラの「馬刺し3種盛り」(4,800円)。ヒレはサイコロカットで分厚いのに柔らかい!

常連客だった画家・岡本太郎氏のオーダーで作られたタロタロユッケや、お酒のおつまみにぴったりの煮込みなど、アラカルトメニューも充実していて、家族で訪れても楽しめるメニュー展開です。
▲桜肉をつかった「タロタロユッケ」(1,580円)
▲桜肉スジ煮込み(580円)

国指定登録有形文化財のお店は、店内の装飾も必見です

中江は、吉原大炎上での焼失や関東大震災での倒壊のために数回の建て直しを経て、現在の建物になりました。現在立っているのは東京大空襲の戦火を逃れた建物で、今も当時のままの姿でお客様を迎えて入れています。

宮大工が造った建物は、国指定登録有形文化財に指定されています。歴史ある建造物が評価されたからです。店内には数々の貴重な絵や珍しい装飾などが展示されているので、料理が出てくるまでの間も楽しむことができます。
▲1階に江戸時代後期の画家「谷文晁(たにぶんちょう)」が描いた、春夏秋冬の馬の画が飾られており、他にも先代の描いた牛が馬に負けている絵などを楽しむことができます
▲お店を建てた宮大工が作った神棚(左)と馬頭観音という仏像が飾られた棚(右)
▲2階に飾られている写真の菊正宗のポスターは、蔵元から譲ってほしいと頼まれたこともある貴重なものなんだそう
▲桜・松・竹・梅の欄干。桜のデザインは珍しく、有形文化財に認定される時に高い注目を集めました

「中江は、東京大空襲の時に3軒隣に落ちたのが不発弾だったので焼けずに残った建物です。まさに運が良い建物だということで、ラッキースポットとして来店する人も少なくなく、中江で桜鍋を食べて願掛けをしたから出世した、万馬券が当たった、合格した、という喜びの報告もある」と、四代目の中江白志(なかえしろし)さん。願い事が叶うかもしれないと思いながら桜鍋を食べるのも素敵ですよね。
▲四代目の中江さん。中江や桜鍋、吉原の歴史などいろんな話をしていただきました

お店に訪れる際は予約をするのがおすすめです。予約は2名からですが、当日席が空いていれば1名でも大歓迎とのこと。来店前に電話で問い合わせると、混み具合を教えてくれるので確認してみてくださいね。

今回取材した店舗は、実は本館になり、そのほかに、会員制・完全予約制の個室で桜鍋を楽しめる別館「金村」があります。初めて中江を訪れる方は本館のみの利用になりますが、一度、本館で食事をして名前を登録すると、次回から別館を利用することができます。別館は自分で鍋を作る必要があるので、必ず本館で作り方を覚えてから利用してくださいね。
▲別館「金村」は吉原の中にあり、前身の吉原最後の名料亭「金村」の趣を残しています
▲落ち着いた雰囲気の個室で桜鍋が楽しめます
「馬力をつける」という言葉の語源にもなった、元気になりたいときにぴったりの桜鍋。浅草やスカイツリーなどの東京観光、下町散策の時には、東京の郷土料理である桜鍋を食べに中江に寄ってみてはいかがでしょうか。

※記事内の価格はすべて税込です。
岸 久美子

岸 久美子

東京在住フリーライター。好きなことは海・山・ビールにワイン、たまにスポーツ観戦。気になる場所には行ってみないと気がすまない性分で、ちょっと暇ができると旅に出るフットワークの軽さがウリ。知らない文化に触れ刺激を受け、一緒に暮らすウサギに癒される日々。(制作会社CLINK:クリンク)

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