町全体が雛づくし!「湊・酒田の雛めぐり」で春の女子旅を楽しもう

2018.03.10 更新

豪商の栄華を残す山形県酒田市では、毎年3月1日~4月3日の約1カ月間にわたって「酒田雛街道」が開催されます。期間中は市内の旧家をはじめとする14の施設で、雛人形や酒田に伝わる「傘福(かさふく)」を一斉に展示。この期間限定の料理やスイーツを提供するお店もあります。町全体が雛祭りと化す酒田市で、優雅に雛めぐりを楽しんでみませんか?

▲細やかな和細工のつるし飾り「湊町酒田の傘福」

山形県の日本海沿いに位置する酒田市。江戸時代、北前船の往来によって商都として繁栄し、財を成した豪商が次々と誕生した湊町です。市内には当時の名残りをとどめる旧家や倉庫などが数多く点在しています。
▲1893(明治26)年に建てられた、米の保管倉庫「山居倉庫」

そんな酒田の旧家で守り継がれているのが、海を渡って京都や大坂から運ばれてきたお雛さまたち。「酒田雛街道」の時期になると、市内のいたるところで雛人形が展示され、地元に伝わる素朴な「鵜渡川原(うどがわら)人形」や日本三大つるし飾りの一つ「傘福」などと一緒に鑑賞することができます。

湊町の粋な時代にタイムスリップ!旧家で楽しむお雛さま

艶やかなお雛さまを見ようと最初に訪ねたのは、JR酒田駅から歩いて15分ほどのところにある「本間家旧本邸」。江戸時代、日本一の大地主として名を馳せ、「本間様には及びもないが、せめてなりたや殿様に」と酒田節に謡われるほどの栄華を誇った豪商・本間家のお屋敷です。
▲酒田市最古の木造建築物で、県の文化財に指定されている「本間家旧本邸」

幕府巡見使一行の本陣宿として1768(明和5)年に建てられ、荘内藩主酒井家に献上されたこちらのお屋敷。その後、本間家が拝領し、1945(昭和20)年まで実際に子孫が住んでいたといいます。1982(昭和57)年からは観光施設として内部を公開しており、毎年この時期になるとお雛さまが飾られます。

風格ある漆喰の白壁に囲まれた邸宅の門をくぐると、本間家が栄華を極めた当時にタイムスリップしたよう。お雛さまとの出会いにも期待が高まります。
▲玄関扉を開けると、重厚感あふれる空間が!

入場料を払って受付を済ませ、まずは邸内を一回りすることにしました。
▲案内してくれたのは「本間家のことならおまかせ!」の佐藤美雪さん

約200坪の平屋建ての邸内は、書院造りの武家屋敷と商家造りが一体となった珍しい建築様式。武家屋敷のほうの梁や柱には欅(けやき)や桧(ひのき)が、商家造りのほうには杉や松の木が使われ、身分制度の厳しさを垣間見ることができます。また、部屋ごとに異なる装飾の美しさも見逃せません。
▲橋をイメージした欄間。火事にならないよう、水に関連したものをデザインしています
▲「(本間家は)商人なのに武士の身分を許されていたんですよ」と佐藤さん。土間ではなく、板張りの御勝手がその証し

邸内を見学しながら、いよいよお雛さまが飾ってある部屋へ!
▲出迎えてくれたのは、高い天井のお座敷に鎮座する愛らしい雛人形たち

ここでは江戸時代から伝わる「古今雛」や「享保雛」など、歴史を物語るお雛様を間近に見ることができます。高さ2m、幅1間半(約2.7m)の雛壇に、「源氏三尺屏風」を背にした古今雛、三人官女、六歌仙などの華やかな雛人形が飾られています。
▲一体一体に物語や意味が込められています

「“共に白髪になるまで仲睦まじく”という願いを込めた百歳雛をはじめ、様々な時代の雛人形が飾られているんですよ」と佐藤さん。
▲おじいちゃん、おばあちゃんを表現した珍しい雛人形「相生様(百歳雛)」
▲江戸時代の後期に作られた古今雛は、かすかに微笑んでいるよう

北前船の海運と最上川の舟運によってもたらされた雛人形は全て紅花染めの衣装をまとっており、厳かで優美な雰囲気を漂わせています。
▲古今雛。お雛様は瓔珞(ようらく/珠玉や貴金属の装飾)が印象的な冠を被っている
▲雛道具も期間限定で展示。徳川家の紋入りの道具など貴重なものがたくさん

「本間家旧本邸」では、江戸時代にタイムスリップしたような気分を味わいながら、雛人形の存在感に圧倒されっ放しでした。きらびやかで厳かな雛人形は、一見の価値ありですよ。

圧巻のつるし飾り「傘福」に感動!

お雛さまの後は「傘福」を見学に行きましょう。「傘福」とは、江戸時代から酒田に伝わる和細工のつるし飾りのこと。「福岡柳川さげもん」「伊豆稲取雛のつるし飾り」とともに日本三大つるし飾りと言われています。

訪ねたのは「本間家旧本邸」から徒歩15分ほどのところにある「山王くらぶ」。明治28年頃に建てられた旧料亭「宇八樓」を活用した観光施設です。
▲華やかな当時の面影を残す「山王くらぶ」。こうした趣深い建物が酒田には数多く残っています
▲中に入ると、可愛らしい「傘福」が迎えてくれます

「傘福」は子どもの健やかな成長と無病息災を祈願して、幕で覆った傘に布製の飾り物を色とりどりに吊るしたもの。
▲飾り物には約100種類もの縁起物があると聞いてびっくり!

飾り一つ一つに意味が込められ、例えば、赤い「さるっ子」は災いが「去る」ようにという魔除けを、「ねずみ」は子孫繁栄を、「おくるみ人形」は子どもの健やかな成長を願っています。
▲子どもの姿をした愛嬌のある「さるっ子」
▲「おくるみ人形」の可愛いこと!
▲「おめでたい」をもじった鯛の飾り
▲直径2mほどもある野点用の傘に和細工を吊るします

「1本の紐につるす飾りの数は奇数と決まっています。昔の中国では“割れないように”奇数が良いとされていることから、ひとつの傘福には999個の飾りを吊るしているんですよ」と話すのは、山王くらぶを活動拠点に一年を通してつるし飾りを作っている酒田商工会議所女性会会長の佐藤和子さん。
▲県内外から「傘福」の展示の依頼が舞い込み、大忙しの佐藤さん

「山王くらぶ」では「酒田雛街道」の期間中、大広間「文人墨客の間」で傘福の特別展示を盛大に行います。その数大小あわせて65本!つまり、1万個近い飾りで埋め尽くされるのです(通年でも数本の傘福の展示あり)。
▲大きな「傘福」の高さは4mもあるそう。部屋中に吊るされた傘福はまさに壮観!
▲和細工はすべて手縫い作業。立体的に裁断された布を縫い合わせ、綿を入れて丁寧に作っていきます

「1針ずつ愛情込めて作った傘福を見に来てくださいね」と佐藤さん。
気が遠くなりそうな作業ですが、一人ひとりの思いも込められていると聞いて納得。観る人の心を動かす「傘福」の魅力のわけがわかった気がしました。
▲通年で傘福づくりの製作体験ができます(体験料金は材料費として1個600~700円・税込、体験可能時間10:00~15:00※要予約)

華麗さの中に素朴な味わいのある「傘福」に包まれながら過ごすひととき。言葉にできないくらいの感動を味わうことができます。この特別感をぜひ皆さんにも楽しんでほしいと感じました。
「酒田雛街道」では、「本間家旧本邸」の他にも「本間美術館」「酒田あいおい工藤美術館」「旧鐙屋」「舞娘茶屋雛蔵画廊 相馬樓」など、市内各所でこの時期だけの展示を見学できます。湊町の空気を感じながら、お雛さま巡り…贅沢な時間をぜひ味わってくださいね。

老舗お菓子屋さんで見つけたアートな雛菓子

「山王くらぶ」から5分ほど歩いたところにあるお菓子屋さんで、思わず目を奪われるほどのアートな雛菓子を見つけました。1832(天保3)年創業の「御菓子司 小松屋」で販売されている、お雛様の飾り菓子です。
▲食べる目的ではなく、お雛さまと一緒に雛壇に飾って鑑賞するためのお菓子 

戦前までに作られていたお雛様の飾り菓子を1992(平成4)年に復元。鯛や亀、うさぎ、お多福、稲穂、きゅうり、桜の花など、全部で20種類あります。鯛の大きさは10cmほどと小さいですが、そのリアルでキュートな姿にため息しか出ません。
▲九代目店主の小松尚(たかし)さんに製作の様子を特別に見せていただきました

まずは細かい粒子の片栗粉と粉砂糖、新粉、山芋の粉を混ぜて水で練り、その生地を木型に詰め込んで形を作っていきます。
▲代々伝わる木型には亀などの縁起物も!小松屋では全国的にも珍しい3枚組の木型で立体的に仕上げています

「その昔、京都から北前船で型彫職人を招き、数カ月間寝泊まりさせて木型を彫ってもらっていたようです」と小松さん。

こうして形を作った雛菓子は、2~3週間自然乾燥させて彩色作業へ。
▲何種類もの筆を使い分けて色を重ねていきます
▲食紅を使って少しずつ彩色していく作業は、とても繊細
▲「飾り菓子の詰め合わせ」大8,200円、小2,160円(※ともに税込)。数量限定販売なので予約がおすすめ。翌年の雛の季節に届けてもらうこともできる
▲庄内産のもち米「女鶴(めづる)」を使った「さくら餅」(130円・税込)もこの季節に味わいたい一品

職人の技術と思いを受け継いだ雛菓子の愛らしさに触れてほっこり。贈り物にも喜ばれそうな“春告げ”菓子ですね。

和から洋まで、酒田の食に胃も心も満たされて

「酒田雛街道」期間中、市内の飲食店では特別メニューを楽しむことができます。
1950(昭和25)年創業の割烹食堂「伊豆菊」では「お雛さま膳」を提供。
▲「お雛さま膳」(2,300円・税込)は3~4月上旬までの限定メニュー

もともと本間家で食していた雛料理を、本間家からの依頼を受けてオリジナルにアレンジしたもの。ちらし寿司や鱒の塩焼き、蛤のお吸い物、山菜の天ぷらなど庄内浜で揚がった新鮮な魚介類や山の幸をリーズナブルに味わえます。
なお、「伊豆菊」の隣には系列の寿司処「武蔵」があります。入口は別ですが、中に入ると繋がっているため「お雛さま膳」はどちらでも注文可能。JR酒田駅から車で約5分、団体客にも対応できる広い店内で酒田の味覚を堪能してくださいね。
開高健、丸谷才一、土門拳をはじめ、多くの文人墨客に愛され全国にその名が知れたフレンチレストラン「ル・ポットフー」。こちらでは「春のお祝い 特別西洋会席コース」を提供します。春の味覚をふんだんに取り入れた、シェフ自慢の創作会席が楽しめます。
▲「春のお祝い 特別西洋会席コース」(6,000円・税サ込)の提供は4月20日まで。前日までの予約が必要です
▲落ち着いた店内で極上の時間を!「ル・ポットフー」は利便性の良い、JR酒田駅前の「ホテルイン酒田駅前」(日新開発ビル)3階にあります
湊町・酒田は、北前船で運ばれた京文化と独自の酒田文化が融合した魅力あふれる街です。
雛人形や風習が大切に受け継がれている街で、春の訪れを感じてみませんか?
撮影:佐藤友美
佐藤昌子

佐藤昌子

エディター&ライター。山形県知事認可法人アトリエ・ミューズ企業組合専務理事。山形県内を中心にタウン誌、フリーペーパーや企業広報誌等ジャンル問わず、印刷物の企画、取材・編集の仕事を手掛ける傍ら、モデルハウスのディスプレイやリメイク等『気持ちの良い暮らし方』も提案している。

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