2019年「酒田雛街道」は町全体が雛づくし!春の女子旅を楽しもう
豪商の栄華を残す山形県酒田市では、毎年3月1日~4月3日の約1カ月間にわたって「酒田雛街道」が開催されます。期間中は市内の旧家をはじめとする14の施設で、雛人形や酒田に伝わる「傘福(かさふく)」を一斉に展示。この期間限定の料理やスイーツを提供するお店もあります。町全体が雛祭りと化す酒田市で、優雅に雛めぐりを楽しんでみませんか?

山形県の日本海沿いに位置する酒田市。江戸時代、北前船の往来によって商都として繁栄し、財を成した豪商が次々と誕生した湊町です。市内には当時の名残りをとどめる旧家や倉庫などが数多く点在しています。

そんな酒田の旧家で守り継がれているのが、海を渡って京都や大坂から運ばれてきたお雛さまたち。「酒田雛街道」の時期になると、市内のいたるところで雛人形が展示され、地元に伝わる素朴な「鵜渡川原(うどがわら)人形」や日本三大つるし飾りの一つ「傘福」などと一緒に鑑賞することができます。
湊町の粋な時代にタイムスリップ!旧家で楽しむお雛さま

幕府巡見使一行の本陣宿として1768(明和5)年に建てられ、荘内藩主酒井家に献上されたこちらのお屋敷。その後、本間家が拝領し、1945(昭和20)年まで実際に子孫が住んでいたといいます。1982(昭和57)年からは観光施設として内部を公開しており、毎年この時期になるとお雛さまが飾られます。
風格ある漆喰の白壁に囲まれた邸宅の門をくぐると、本間家が栄華を極めた当時にタイムスリップしたよう。お雛さまとの出会いにも期待が高まります。

入場料を払って受付を済ませ、まずは邸内を一回りすることにしました。

約200坪の平屋建ての邸内は、書院造りの武家屋敷と商家造りが一体となった珍しい建築様式。武家屋敷のほうの梁や柱には欅(けやき)や桧(ひのき)が、商家造りのほうには杉や松の木が使われ、身分制度の厳しさを垣間見ることができます。また、部屋ごとに異なる装飾の美しさも見逃せません。


邸内を見学しながら、いよいよお雛さまが飾ってある部屋へ!

ここでは江戸時代から伝わる「古今雛」や「享保雛」など、歴史を物語るお雛様を間近に見ることができます。高さ2m、幅1間半(約2.7m)の雛壇に、「源氏三尺屏風」を背にした古今雛、三人官女、六歌仙などの華やかな雛人形が飾られています。

「“共に白髪になるまで仲睦まじく”という願いを込めた百歳雛をはじめ、様々な時代の雛人形が飾られているんですよ」と佐藤さん。


北前船の海運と最上川の舟運によってもたらされた雛人形は全て紅花染めの衣装をまとっており、厳かで優美な雰囲気を漂わせています。


「本間家旧本邸」では、江戸時代にタイムスリップしたような気分を味わいながら、雛人形の存在感に圧倒されっ放しでした。きらびやかで厳かな雛人形は、一見の価値ありですよ。
本間家旧本邸
山形県酒田市二番町12-13
[雛人形展示期間]毎年2月下旬~4月上旬
[開館時間]9:30~16:30(11~2月は~16:00)
[入館料]大人700円、中高生300円、小学生200円(すべて税込)
[休館日]12月中旬~1月下旬、展示替え日(雛めぐり期間中は無休)
0234-22-3562
圧巻のつるし飾り「傘福」に感動!
訪ねたのは「本間家旧本邸」から徒歩15分ほどのところにある「山王くらぶ」。明治28年頃に建てられた旧料亭「宇八樓」を活用した観光施設です。


「傘福」は子どもの健やかな成長と無病息災を祈願して、幕で覆った傘に布製の飾り物を色とりどりに吊るしたもの。

飾り一つ一つに意味が込められ、例えば、赤い「さるっ子」は災いが「去る」ようにという魔除けを、「ねずみ」は子孫繁栄を、「おくるみ人形」は子どもの健やかな成長を願っています。




「1本の紐につるす飾りの数は奇数と決まっています。昔の中国では“割れないように”奇数が良いとされていることから、ひとつの傘福には999個の飾りを吊るしているんですよ」と話すのは、山王くらぶを活動拠点に一年を通してつるし飾りを作っている酒田商工会議所女性会会長の佐藤和子さん。

「山王くらぶ」では2019年2月24日(日)~12月27日(金)にかけて、大広間「文人墨客の間」で傘福の特別展示を盛大に行います。その数大小あわせて65本!つまり、1万個近い飾りで埋め尽くされるのです。


「1針ずつ愛情込めて作った傘福を見に来てくださいね」と佐藤さん。
気が遠くなりそうな作業ですが、一人ひとりの思いも込められていると聞いて納得。観る人の心を動かす「傘福」の魅力のわけがわかった気がしました。

華麗さの中に素朴な味わいのある「傘福」に包まれながら過ごすひととき。言葉にできないくらいの感動を味わうことができます。この特別感をぜひ皆さんにも楽しんでほしいと感じました。
山王くらぶ
山形県酒田市日吉町2-2-25
[文人墨客の間・傘福展示期間]2019年2月24日(日)~12月27日(金)
[営業時間]9:00~17:00(最終入館16:30)
[入館料]大人800円(傘福の特別展示期間以外は310円)、高・大学生210円、小・中学生100円(すべて税込)
[休館日]なし(3~11月)、火曜(12~2月)、年末年始
0234-22-0146
酒田雛街道
[開催期間]毎年3月1日~4月3日
[会場]酒田市内観光施設、中心商店街
0234-24-2233(酒田観光物産協会)、0234-26-5759(酒田市観光振興課)
老舗お菓子屋さんで見つけたアートな雛菓子

戦前までに作られていたお雛様の飾り菓子を1992(平成4)年に復元。鯛や亀、うさぎ、お多福、稲穂、きゅうり、桜の花など、全部で20種類あります。鯛の大きさは10cmほどと小さいですが、そのリアルでキュートな姿にため息しか出ません。

まずは細かい粒子の片栗粉と粉砂糖、新粉、山芋の粉を混ぜて水で練り、その生地を木型に詰め込んで形を作っていきます。

「その昔、京都から北前船で型彫職人を招き、数カ月間寝泊まりさせて木型を彫ってもらっていたようです」と小松さん。
こうして形を作った雛菓子は、2~3週間自然乾燥させて彩色作業へ。




職人の技術と思いを受け継いだ雛菓子の愛らしさに触れてほっこり。贈り物にも喜ばれそうな“春告げ”菓子ですね。
小松屋
山形県酒田市日吉町1-2-1
[営業時間]9:00~18:00
[定休日]1月1日
0234-22-5151
和から洋まで、酒田の食に胃も心も満たされて
1950(昭和25)年創業の割烹食堂「伊豆菊」では「お雛さま膳」を提供。

もともと本間家で食していた雛料理を、本間家からの依頼を受けてオリジナルにアレンジしたもの。ちらし寿司や鱒の塩焼き、蛤のお吸い物、山菜の天ぷらなど庄内浜で揚がった新鮮な魚介類や山の幸をリーズナブルに味わえます。

伊豆菊
山形県酒田市中町2-1-20
[営業時間]11:00~21:30(武蔵は11:00~22:00)
[定休日]不定休(武蔵は木曜不定休)
0234-22-3216
雛人形や風習が大切に受け継がれている街で、春の訪れを感じてみませんか?

※本記事は2018年取材記事を一部更新したものです。

佐藤昌子
エディター&ライター。オフィス マウマウワン代表。山形県内を中心にタウン誌、フリーペーパーや企業広報誌等ジャンル問わず、印刷物の企画、取材・編集の仕事を手掛ける傍ら、モデルハウスのディスプレイやリメイク等『気持ちの良い暮らし方』も提案している。
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