漬物が寿司に!?山形「丸八やたら漬本店」でカラフルな漬物をお土産に

2018.05.01 更新

「西の京都、東の山形」と称されるほど、漬物文化が根付いている山形県。昔から伝わるスタンダードな漬物はもちろんですが、アレンジした食べ方を提案している老舗も数多くあります。県内の漬物店を代表するお店の一つ「丸八(まるはち)やたら漬本店」では、種類豊富な漬物はもちろん、名物の「漬物寿司」や山形の郷土料理も楽しめます。さらに山形の地酒を味わえるバーも併設されているのだとか!早速、山形市内にあるお店にお邪魔してきました。

JR山形駅から歩いて約15分、市役所や山形地方裁判所などが立ち並ぶ一角に、1885(明治18)年創業の漬物店「丸八やたら漬本店」があります。地元では古くから「やたら漬のまるはちさん」と親しまれてきた老舗です。

もともとは味噌・醤油の醸造を生業としていたというこの店。醸造のノウハウを活かし、副産物として漬物加工を始めたそう。
▲漬物屋さんらしい和風の店構えに、期待も膨らみます
▲店舗兼主屋は国の登録有形文化財に指定されています

建物は漬物を販売する漬物処「やたら漬本店」と、食事ができる「香味庵(こうみあん)まるはち」、お酒が楽しめる「旅籠町(はたごまち)立呑処」の3棟で構成されています。
▲観光客を乗せた大型バスが、漬物を買うため、食事をするために立ち寄ります

100余年もの間、地元で愛され続ける老舗の味

まずは漬物処から覗いてみましょう。ここでは、「丸八やたら漬本店」で製造販売する漬物を購入することができます。
▲ゆっくりと見て回れる広さがあり、買い物しやすい店内

朱色の樽が目を引く店内には、お土産用の漬物がずらりと並んでいます。奥にある、部屋のほぼ中央にある丸いテーブルの上には試食コーナーが。
販売している商品は常時30~35種類。そのほとんどが試食できます。たくさんの種類の中からお気に入りの味を見つけるのも楽しいですね。
▲種類の多さにびっくり!

山形県は山形市のある村山地方、県北部の最上地方、南部の置賜(おきたま)地方、日本海沿岸部の庄内地方の4つの地方に分けられ、各地域で伝統野菜を使った漬物を守り続けています。

例えば、村山地方ではこの店の人気商品でもある「青菜(せいさい)漬」、最上地方では茄子を使った「ぺそら漬」、置賜地方では「薄皮丸なす漬」や雪菜(ゆきな)を使った「ふすべ漬」、庄内地方では焼畑で育てた「温海かぶ漬」などが代表的。
▲店内に置かれた朱色の樽が目を引きます

現在のように流通が盛んでなかった時代の冬の保存食として、山形県では漬物が食べられてきたのです。

「山形は肥沃な土地と昼夜の寒暖差から、おいしい農産物が育ちます。豊富に採れた野菜類を越冬させるために工夫されたのが“漬ける”という技術です」と話すのは、6代目の新関芳則(にいぜきよしのり)さん。
▲芳則さんは市街地を活性化させようと、「やまがた食の案内人」「城下町やまがた探険隊」隊長としても精力的に活動

伝統的なものからオリジナルなものまで色トリドリ

それでは、お店の人気商品をご紹介しましょう。
▲彩り豊かでインスタ映えしそうな漬物の数々

看板商品は店名にもなっている「やたら漬」(写真中央)。味噌・醤油屋だった頃に、醸造の副産物としてつくられた漬物です。捨てるのがもったいないからと、大根やニンジンの皮、キュウリのヘタなど残り物の野菜を塩もみして布の袋に入れ、味噌の中に寝かせていたのが始まり。

「むやみやたら、めったやたら」にいろいろな野菜を漬け込んだことから「やたら漬」と呼ぶようになり、その名を店名にしたんだそう。食べ物を粗末にしない精神が受け継がれているお漬物なんですね。
▲「やたら漬」の材料は、大根、ナス、キュウリ、ゴボウ、ニンジン、紫蘇の芽、レンコンと7種類。それに白ごまと唐辛子を効かせて少し辛味を出している(1袋130g・500円・税抜)

山形の漬物を代表する「青菜漬」は、山形特産の葉物野菜「青菜」を使った漬物です。かつては、山々が初冠雪を迎える時期になると、冬に備え、多くの家庭で大きな樽何個分にも青菜を漬ける風景が見られました。

からし菜系の青菜は、高菜の仲間で肉厚なうえ、独特の辛味を持っています。収穫後、軽く日干しした青菜を塩漬けにし、一度塩抜きをしてから醤油などで調味。それから本漬けにするという、手間暇かけてつくる漬物です。
▲右下の緑色の漬物が「青菜漬」(1袋220g・500円・税抜)

「青菜は、明治時代、戦争時の兵隊の食料として育てられたものです。ルーツは中国の野菜なんですが、気候など様々な条件が山形に適していたため、この土地に根付いてきたんでしょう」と芳則さん。

漬けて間もなくも美味しいですが、日が経ってべっ甲色になった状態の美味しさも格別です。茶碗によそった白いご飯の上に葉を広げてのせ、箸でくるんと巻いて食べるのが山形流。
▲虎の模様と「あんちょこ」に引っ掛けたネーミングが楽しい「虎の巻」(1本約400g・1,000円・税抜)

「虎の巻」は芳則さんの代で開発した、この店オリジナルの漬物です。キュウリとニンジン、白菜を、菊と昆布で締め、甘酢に漬け込んでつくります。

出来上がりは太巻きのような長さと形。白菜を巻いている細めの昆布がアクセントになっていて、真上から見ると虎の模様みたい(下写真の商品パッケージ参照)。断面はニンジンの赤とキュウリの緑が可愛い!お土産にも喜ばれそうですね。さっぱりしている味なのでサラダ感覚で食べられます。
▲お土産に便利なパック入り

その他にも、青菜を細かく刻み他の野菜と一緒に漬けた「おみ漬」(200g・500円・税抜)や、「やたら漬」の姉妹品として大人気の「オーからい」(130g・500円・税抜)など人気商品が目白押し。わらびなどの山菜、山形の伝承野菜を使った漬物まで、たくさんの漬物が店頭に並んでいます。

名物の「漬物寿司」は必食!

一通り漬物を見て回ったところで、同店名物の「漬物寿司」をいただくことにしました。ホールを通って「香味庵まるはち」へ向かいます。
▲土間作りのホール。中央部にある入口から「香味庵まるはち」の蔵座敷へ入っていく

蔵座敷や蔵前ホールなど複数の空間で構成される「香味庵まるはち」は、昔の趣をそのままに残した食事処です。
この日は1階にある「一の蔵」で食事をいただくことに。
▲レトロな雰囲気が大正ロマンを感じさせる「一の蔵」

同店が「漬物寿司」を発案したのは昭和37(1962)年のこと。山形県漬物協同組合設立を記念して開催された「漬物コンテスト」における審査員の一言がきっかけでした。

「米処・山形と融合させる商品をつくったら」という審査員の言葉に、シャリにミョウガ漬をのせて「トロです(笑)」と差し出した先代の社長。寿司=海の幸というイメージを崩した斬新な発想が大きな反響を得ることになったのです。
▲きれいな彩りに、つい顔もほころびます

その後しばらくは予約で注文を受けていましたが、「香味庵まるはち」をオープンさせた平成4(1992)年から、本格的に提供するようになったそう。

さっそく、その「トロ」を食べてみましょう。
▲見た目はトロ。その正体はミョウガ漬け
▲見た目はイカ。その正体は大根を漬けたもの
▲見た目の可愛いらしさに食欲をそそられます

どのネタも酢飯と漬物の塩加減がちょうどいい美味しさ。巻物は、複数種類の漬物を巻いているのでシャキッ、サクッと様々な歯ごたえが楽しめます。
▲「漬物寿司」は季節の小鉢やお味噌汁がついて1,200円~(税抜)

他に、季節の味をふんだんに取り入れた会席膳も人気。「漬物寿司」はもちろん、旬の山菜や蕎麦も楽しめるので「山形の郷土料理を食べたいけど、どこで食べたらいいかわからない」という方にぜひ訪れてほしいお店です。

男前な異空間の佇まいに魅せられて

「香味庵まるはち」の魅力は料理だけではありません。歴史ある重厚な建物をリノベーションした店内では、まるで明治時代にタイムスリップしたかのような感覚を味わうことができます。
特に、明治18(1885)年に建設され、明治44(1911)年の山形大火で焼け残った蔵座敷(大正2年改修)は一見の価値あり。
▲平成19(2007)年に国の登録有形文化財に指定された蔵座敷は、宴会などに使われています
▲天井の太い梁が印象的な2階の板座敷
▲漬物樽が並ぶ「蔵前ホール」では、空いていれば「香味庵まるはち」で注文した山形の地酒やワインを飲むこともできます
▲「明治時代には、この器に味噌や漬物を入れて、お土産用に販売したんですよ」と芳則さん

館内を案内してくれる芳則さんの趣深い話に耳を傾けていると、過ぎ去った時間が蘇ってくるよう。懐かしくて心地よい空気感に包まれた空間です。

リーズナブルな立呑処「漬物BAR」で一杯

店と隣接する「旅籠町立呑処」は、「気軽にお酒が楽しめる」と仕事帰りの地元の人が立ち寄るバー。山形の地酒を手軽に楽しむことができるということから観光客にも好評です。
▲風情ある佇まいの「旅籠町立呑処」
▲控えめな灯りがレトロな雰囲気とピッタリ
▲女性客が多いというのも頷ける素敵な空間です

「旅籠町立呑処」のお酒のお供は、もちろん漬物。なんと、お通し代込の300円(税込)で食べ放題なんです。ちなみに、焼き魚や煮物、揚げ物などの料理も注文できるそうですよ(一品300円~・税込)。
▲ネーミングに納得、「漬物BAR」
▲日本酒、焼酎、ワインがいずれも1杯300円~(税込)とリーズナブルに味わえます
▲注目は山形の蔵元のお酒4種を湯呑茶碗1杯100円(税込)で飲める、日本酒の自動販売機

食べ放題のお漬物+日本酒1杯、しめて400円(税込)!この料金で飲めて、美味しい漬物もいただけるなんてリーズナブルすぎますね!
▲山形の美味しい酒をちょいと飲みながら過ごす夜も最高です
山形の美味しい漬物と漬物寿司、そして郷土料理やお酒までを1カ所で楽しめる「丸八やたら漬本店」。食べ物の工夫をしながら暮らしてきた山形県民の食文化をぜひ体感してみませんか?白いご飯にお漬物、きっと「日本人で良かった!」と思えるはずですよ。

「漬物を使った食べ方のアイデアを提案していきたい」と話す芳則さんの挑戦は、まだまだ続きます。店で芳則さんを発見したら、ぜひ声をかけてみてください。きっと、漬物に関する楽しい話が聞けますよ。
撮影:佐藤友美
佐藤昌子

佐藤昌子

エディター&ライター。オフィス マウマウワン代表。山形県内を中心にタウン誌、フリーペーパーや企業広報誌等ジャンル問わず、印刷物の企画、取材・編集の仕事を手掛ける傍ら、モデルハウスのディスプレイやリメイク等『気持ちの良い暮らし方』も提案している。

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