自然食レストラン「茅乃舎」の心に沁みる滋味をいただく

2015.10.19

全国で根強いファンを持つ「茅乃舎(かやのや)だし」。その商品が生まれたのがこちら、自然食レストラン「茅乃舎」です。山里にひっそりと佇むレストランは、数カ月先まで予約で満席になるシーズンもあります。そんな人気のスポットを訪ねました。

素材の味が生きている!スローフードを提唱して10年

福岡市内から車で1時間弱、辿り着いたのは糟屋郡久山町にある遠見岳(とおみだけ)の麓。季節になると、すぐそばを流れる川に蛍が飛び交う自然豊かな場所です。この山里にある「茅乃舎」こそ、全国のファンが愛してやまない「茅乃舎だし」を生んだ自然食レストランです。

レストランを営むのは、明治26(1893)年に小さな醤油屋として創業した久原本家。九州・福岡の豊かな食材に恵まれ、地域ならではの食品づくりや地元の魅力ある素材探しに取り組むうちに出会ったのが、イタリアで生まれたスローフードの考えでした。

郷土料理を守る、質のいい食材をつくる生産者を応援する、消費者や子どもたちに味覚を教育すること。この考えにもとづき、農業や昔ながらの食品づくりに取り組むようになり、約4年の歳月を費やして2005年8月に「茅乃舎」をオープンさせました。
「茅乃舎」のシンボルでもあるのが、こちらの茅葺き屋根。どこか懐かしい日本の風景を感じさせる茅葺き屋根のレストランは、山里の風景に美しく溶け込み、その場所にどっしりと構えています。
暖簾をくぐり中に入ると、採れたての新鮮な野菜が籠に並べられていました。地産地消へのこだわりから地元の野菜をふんだんに使用。野菜の皮や種もまるごと使ってしまう「茅乃舎」の料理は、九州の豊かな自然の滋味あふれるものです。その究極のスローフードを楽しみに、県内外から多くの人がこの山里をめざします。
レストランの中からも、まわりの美しい自然を眺めることができます。大きな梁や竈、囲炉裏があり、訪れる人をあたたかく迎える空間は、そこにいるだけで贅沢な気持ちになれます。テーブル席は、全部で50席。時期によっては、数カ月先まで予約で満席になることもあるため、事前予約で席を確保しておくと安心です。
▲個室のテーブル席は1部屋4人から利用可能。仕切りを外すと最大16名(和室は最大14名)まで利用できる
個室はテーブル席3室と、掘りごたつの和室2室をそれぞれ完備。大人の落ち着いた空間で、自然の恵みたっぷりのご馳走を味わいながら大切な人と語り合える優雅な時間を過ごせます。
レストランでいちばん人気のメニューがこちら、「十穀鍋」(コースで提供)です。香ばしく乾煎りした十穀と、料理人が手間ひまかけて、かつおから丁寧にとっただし、生姜、にんにく、白胡麻、大豆で深みを増したところに、豚肉とゴボウなどの野菜を加えてじっくりと煮込みます。

素材一つひとつの旨みがすべて溶け出したスープは絶品!一度食べたら忘れられない味がリピーターに支持されています。
食事はコース料理のみで、季節によってメニューが替わります。こちらは、「芽(めぶき)コース」5,400円(税込/写真は2015年11月30日(月)までの内容)。前菜7品、大地の恵みスープ、甘長唐辛子のセモリナ粉焼、太刀魚の木の子真丈巻(しんじょうまき)、メインは十穀鍋、黒豚の実山椒焼、木の子の鯛すきから1品、土鍋炊きご飯、味噌汁、香の物、薩摩芋羊羹(ようかん)と秋の味覚を存分に堪能できるコースです。

平日のお昼は3,780円から、土日祝のお昼は5,400円から、夜は5,400円から用意されています。(すべて税込)
▲和食料理の世界で20年以上の経験を持つ尾﨑副料理長
「私たちが大切にしているのは素材そのものの味を最大限に引き出すことです。都会からお越しになる方も多いので、旬の味や新鮮な味、ここでしか味わえない自然の恵みを存分に味わってほしいですね」と話すのは、副料理長の尾﨑雄二さん。

和食の世界で修業を積んでいた尾﨑副料理長。「茅乃舎」の料理指南役でもある”長野おばあちゃん”こと長野路代さんとの出会いがきっかけで、これまで以上に素材そのものを大切にした味わいを追求するようになったといいます。

秋なら里芋やさつま芋、銀杏。春になれば、フキノトウや蕨、筍――。旬の素材を大切に味づけしていくことで、野菜の力強さを表現できたらと話す尾﨑副料理長。佐藤料理長とともに、驚きと感動に満ちる創作料理で人々をもてなしています。
ちなみに、別棟の「楽舎(らくや)」では、定期的に料理教室やイベントが催されています。尾崎副料理長も月1回、和食料理を教えているそうです。

お昼時の料理教室では、下ごしらえからはじめると時間が足りないので、ポイントを絞りながら指導していきます。季節によっては、ツユクサを摘んできて天ぷらにしたり、ミョウガやつくしなどを取りに山に入ったりもしているそうですよ。

和食料理教室は月1回、佐藤料理長の洋食料理教室は不定期で開催されているので、ぜひ参加してみてくださいね。

料理を愉しんだ後にひと息。「茶舎」で至福の珈琲タイム

レストランのお隣には、パチパチと薪が爆ぜる音が心地よく響く「茶舎(ちゃや)」があります。究極の一杯を求めて辿り着いたのは、コスタリカにあるロス・アノノス農園の有機栽培豆。その豆の旨みを引き出すために、炭火焙煎で軽く焼き上げます。この時、希少な対馬産備長炭を使うことで、花のような香りが生まれるそうです。
こちらでは、ネルドリップによるクワイエットドリップ方式を採用。珈琲歴50年という焙煎技師・田中義一氏から指導を受けたスタッフが、オーダーが入ってから珈琲豆をミルで挽き、手際よく適温のお湯を注ぎます。

「一投目が肝心なので、そこがいちばん気を張ります。豆が膨らんだら、後はひたすらゆっくりお湯を注いでいきます。3年目になりますが、今でも毎回同じ味に辿り着くのは難しいですね」と話すのは、権藤美佳さん。この贅沢な一杯を楽しみに通う常連のお客様もいらっしゃるそうです。
▲バウムクーヘンと珈琲のセット1,080円(税込)
華やかな香りがする珈琲は、酸味と苦みのバランスがよく、甘みを含む豊かな味わい。ドイツで修行を積んだ職人が丹念に焼き上げる手作りバウムクーヘンとの相性も抜群です。

その他にも、「キッシュプレート」1,620円や「珈琲きんつば」860円、数量限定の「十穀カレー」1,940円など(すべて税込)、スイーツから軽食まで喫茶メニューも充実していました。
入口隣の販売コーナーでは、「茅乃舎だし」8g30袋入り1,944円をはじめ、各種調味料、「有機栽培珈琲豆」100g1,296円、「バウムクーヘン」(プレーン・抹茶・珈琲)各1,620円など(すべて税込)、手土産にしても喜ばれそうな商品が並んでいました。

茅葺き屋根の日本家屋が長閑な山里の景色にしっとりと馴染み、四季折々の風情を愛でながら旬の素材の味を堪能できる「茅乃舎」で、懐かしく温かい日本の心を感じてみてはいかがでしょうか。
隠岐ゆう子

隠岐ゆう子

大学でデザインを学んだ後、大手印刷会社に入社。制作ディレクターとして5年勤めた後、フランス・パリに語学留学へ。現在は、九州・山口を中心に編集・ライターとして活動している。無類の旅好きで、暇とお金さえあればヨーロッパを中心に旅する行動派。旅、温泉、スイーツのキーワードに目がない。

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