人力車でめぐる奈良公園。ガイドブックには載っていない俥夫さんのガイドが面白すぎた!

2018.07.13 更新

歴史ある神社仏閣と豊かな自然に囲まれた「奈良公園」は、世界遺産である「東大寺」「興福寺」「春日大社」が隣接する都市公園です。学生時代に修学旅行で訪れた人も、大人になった今、“人力車”で巡ってみれば違った楽しみ方ができるかも。俥夫(しゃふ)さんのガイドなら、教養を深めるお話から教科書には載っていない噂や伝説なども楽しめます。新しい「奈良公園」の魅力に、出合ってみませんか。

511ヘクタールもの広大な敷地の「奈良公園」には、世界遺産である「東大寺」「興福寺」「春日大社」などの神社仏閣や「奈良国立博物館」などの施設が隣接。雄大で豊かな自然美と調和しています。萌える芝の上で、鹿が自由にくつろぐ光景は奈良の象徴的な風景ですよね。

今回はそんな広大な奈良公園観光を、「観光人力車 やまと屋」の45分間のコースで巡ります。自分の足で周るのもいいけれど、人力車なら移動も楽々!奈良公園に詳しい俥夫さんに、ガイドをお願いできるのでおすすめなんです。
新緑が美しい季節に、ちょっと贅沢な人力車の旅を楽しみたいと思います。

旅の始まりは「大仏殿交差点」から

この日の集合場所は、東大寺からほど近い「大仏殿交差点」です。「浮雲(うきぐも)園地」を背景に出迎えてくれたのは「観光人力車 やまと屋」の西條功也(さいじょうかつや)さん。普段は若手の指導も担当するベテランです。
▲さわやかな笑顔が好印象の西條さん!どんなお話が聞けるのか楽しみです
「観光人力車 やまと屋」さんでは、事前に行きたい場所を相談すれば、30・45・60分というコース時間の範囲内で、希望に合わせたルートをカスタマイズしてくれます。“絶対行きたいのはココ!”と言うだけでOK。特に希望がなければ、もちろん「おまかせ」でも大丈夫なんだとか。

今回は、世界遺産「東大寺」「興福寺」と「浮見堂」に必ず案内して欲しいとお願いしました。45分で周れる範囲で、ルートはお任せ。さてどこに案内してくれるのでしょうか。
▲木陰ではたくさんの鹿たちが。ゆったりとした空気に心も和みます

奈良公園にいる鹿は“神の使い”とされています。西條さんによると「春日大社が祀る『武甕槌命(タケミカヅチノミコト)』が白鹿に乗ってやってきたという言い伝えから、そのように崇められています」とのこと。「園内には、約1,200頭の鹿が群れで生活していますよ」と教えてくれました。

「飛火野」の萌ゆる若草をその目に

▲人力車に乗る時は手を取ってエスコートしてくれますよ

それではいよいよ人生初の人力車に乗り込み出発!思ったよりスピードのでる人力車。高い位置に座っているのでなんとなく空気も澄んだように感じられます。
▲心地よい揺れと、観光客からの羨望の眼差しにちょっぴり優越感です

「揺れは感じませんか?」という西條さんの心遣いに感動しつつ、まず最初に向かう先は「飛火野(とびひの)」。
▲快適に移動できる人力車。飛火野周辺の道路は茶色く塗られています

「よく見ると車道が茶色いの分かりますか?」と西條さん。「これは“鹿優先道路”という意味なんですよ。鹿が横断していたら、待ってくださいね」とのこと。道のあちらこちらに“鹿飛出注意”の注意書きがあるのも奈良ならではかも。

話を聞いているうちにあっという間に、雄大な緑が広がる「飛火野」に到着しました。
▲美しい新緑に心が癒されます。どこまでもどこまでも緑が続いているようでした

西條さんのガイドによると、「この場所で奈良時代に狼煙(のろし)を上げていたことが、飛火野という名前の由来になったんですよ」とのこと。飛火とは狼煙のことだったんですね。初めて聞く話ばかりで、誰かに教えたくなります。
▲車通りが少ない時は、人力車を停車してゆったりとガイドしてもらえます。「正面にある高円山(たかまどやま)では毎年8月に、奈良の大文字焼き(送り火)が行われていますよ」

鹿たちものんびりとくつろぎ穏やかな時間が流れているように感じました。「木々の裾の高さが同じなのは、鹿が若葉を食べているから。鹿の届く範囲より下には枝が伸びないんです」と、そんなプチ情報も教えてくれます。
人力車を引きながらでも質問に答えてくれる西條さん。奈良の歴史にも詳しく、「飛火野」だけでも地名の由来や、春日大社と鹿にまつわるエピソードなどたくさんお話が聞けました。ちなみに「飛火野」の情景は、万葉集にも詠まれているそうですよ。

民衆が愛した憩いの場「浮見堂」へ

続いて向かうのは「浮見堂」。鷺池に浮かぶ檜皮葺き(ひわだぶき)の六角形の東屋です。
▲公園内の至るところに案内看板。景観を損なわないよう自然に馴染む色

「全国にある“浮御堂”と呼ばれるお堂は、真ん中の漢字に“御”が使われていることが多いんです。これは神社仏閣が建てたお堂だから。奈良の“浮見堂”は、民衆によって建てられたため“見”を使って区別しているんです」と、移動しながら説明してくれます。
▲道中には木陰もあり、そよそよとやわらかな風に触れられます

西條さんが人力車を停めてくれたのは、浮見堂が美しく見える場所。撮影スポットとしても人気で、浮見堂を背景に素敵な写真が撮れるそうです。
▲浮見堂の左右の橋は同じ長さ。男女がそれぞれから渡った時、浮見堂で出会えるようになっているのだそう。水面に写った逆さの浮見堂も美しい!

浮見堂からほど近く、公衆トイレのすぐ横には謎の土壁が。
「ここはかつての僧侶の住まいがあった場所で、この土壁はそれぞれの僧侶の院(=家)を分けていた壁なんです。全く手入れされていないので、昔のままの状態なんですよ」と西條さん。歴史ある建物の一部がそのまま残っているなんて逆に貴重かもしれません。

世界遺産「春日大社」へ

続いては「春日大社 一之鳥居」へ向かいます。急な坂道をスイスイ登っていく西條さんは、とっても頼もしい!
▲自分の足で登るにはちょっとキツそうな坂も、人力車なら本当に快適です

坂道を登った先に「一之鳥居」が現れました。世界遺産・春日大社は768(神護景雲2)年に創建された神社で、第一殿に武甕槌命(タケミカヅチノミコト)が祀られています。
▲「春日大社 一之鳥居」は「日本三大鳥居」のひとつ ※他は広島県の「厳島神社」と福井県の「気比神宮」

今回は春日大社には立ち寄りませんでしたが、人力車を停めて俥夫さんに中をガイドしてもらうこともできるそう(別途料金)。もし興味があればお願いしてみてもいいかもしれません。

ちなみに、世界遺産・春日大社の「御本殿」までは、「一之鳥居」から徒歩約20分。御本殿は四方をぐるりと囲った回廊の中にあります。4棟並ぶ美しい本殿と「釣燈籠」は壮観です。
▲「中門(ちゅうもん)」は左右それぞれに約13メートルの御廊(おろう)が続きます。中門・御廊ともに重要文化財(写真提供:春日大社)

「春日大社の参道は『一之鳥居』までと思われがちですが、元々はJR奈良駅までだったんですよ」と西條さん。え!?初めて聞きました!
「その証拠にJR奈良駅前には、春日大社の石燈籠が2つあるんです」とのこと。駅の石燈籠は、単なるオブジェではなかったんですね。
▲回廊の「釣燈籠」に施されているのは、文字や模様、家紋など。戦国武将が奉納したものから、誰もが知る有名企業のものまであり、見ているだけでも楽しい(写真提供:春日大社)

「興福寺」を横目に旅は後半へ

「一之鳥居」から続く穏やかな風景を進んで行くと、右手には世界遺産「興福寺」。
▲奈良公園の数ある景色の中で、抜群の存在感を見せた興福寺の五重塔。とっても美しい!

五重塔は、古都・奈良を象徴する塔として、長い歴史の中で大切に守られてきました。釈迦の舎利(しゃり=遺骨のこと)をおさめる墓標として知られています。

「全国に数ある塔すべてに釈迦の舎利を入れることが難しかったため、中にはお米を代用していたものもあるといわれています。お寿司の“シャリ”はこの言葉から生まれたという説もあるそうですよ」と西條さん。なるほど、とっても勉強になります!
▲奈良県庁の南側にある登大路園地にも、多くの鹿がくつろいでいました

旅の締めくくりは世界遺産「東大寺」

人力車の旅もいよいよ終盤。今回の終着点は「東大寺」です。
華厳宗大本山の寺院で、奈良時代に聖武天皇が建立した「東大寺」。「大仏殿」は世界最大級の木造建築物で、“奈良の大仏”として親しまれる東大寺盧舎那仏像(とうだいじるしゃなぶつぞう)が祀られています。学生時代に柱をくぐった人も多いのでは?
▲「東大寺 大仏殿」は世界最大級の木造建築物(写真提供:奈良市観光協会)

残念ながら、人力車は境内には入れないので境内西側の一般道から拝見。横から見る大仏殿も、堂々とした佇まい。その趣を感じることができます。

「東大寺の屋根の上にあるのは、鯱(しゃちほこ)ではないんですよ」とは西條さん。
「あれは鴟尾(しび)と呼ばれ、鯱の原型になったとされるものなんです。毎年3月12日深夜(13日未明)に行われる、“お水取り”という行事で汲まれる香水が万病に効くとされるなど、東大寺は水と縁が深いんです」と、最後まで楽しい話をしてくれました。
▲大仏殿をバックに記念撮影!
これで今回の人力車の旅は終了!あっという間の45分間でした。
広い広い奈良公園を、スイスイと快適に周れたのはもちろん、俥夫さんのお話が勉強にもなり大変楽しかったです。時折挟む「シカ」のダジャレも最高でした。ここでは全て紹介できませんがシカたありません。シカらないでくださいね。
詳しく知りたい人は、ぜひ、俥夫さんと一緒に奈良公園を旅してみてください。
▲「45分間ありがとうございました!」西條さんのエスコートで降車。今まで人力車に揺られていたので、足元がふわふわします

ちなみに、人力車の旅は途中下車して参拝することも可能です(わたしのように乗りっぱなしでなくてもいいそうです。わたしは乗ったままが快適でしたが)。ゆっくり楽しみたければ1時間コース、さっくり気軽に楽しみたければ30分コースもあります。
奈良へ観光に来た方はもちろん、奈良にお住まいの方でも知らない世界に出合えて、楽しむことができそうです。友達同士やカップルの旅にも人力車はお勧めです。人力車ならではの景色を楽しんでみてくださいね!
藤井彩加〈Stylo Plume〉

藤井彩加〈Stylo Plume〉

フリーランスの編集・ライター。西の湖の畔に住み、コーヒー片手に仕事をしています。主に京都・滋賀で活動中。愛犬のGINGERとの散歩が癒しの時間です。

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