わざわざ食べに行く価値アリ!宮崎の郷土料理「冷汁」は、実はとっても手間のかかる絶品料理だった

2018.08.07 更新

暑い夏や二日酔いなど、食欲がない時でもさらさらとイケちゃう宮崎の郷土料理「冷汁(ひやじる)」。ご飯に冷たい味噌汁をかけた、いわゆる“猫まんま”だと思っている人も多いかもしれませんが、いやいや、似て非なるもの!宮崎の冷汁は、魚の旨みたっぷりながらもさっぱり爽やか、栄養満点のヘルシーな料理なのです。今回はその美味しさのヒミツに迫るべく、本場・宮崎の人気店「南風(なんぷう)茶屋」を訪れてみました!

鎌倉時代からの長~い歴史をもつ冷汁

宮崎市観光協会の公式サイトによると、冷汁の起源は鎌倉時代と言います。
「“武家にては飯に汁をかけ参らせ候、僧侶にては冷や汁をかけ参らせ候”と、鎌倉管領家記録に著されています。僧侶によって全国に流布したのがほとんどすたれ、気候風土に適していたと思われる所にのみに残ったとされています」(宮崎市観光協会公式サイトより引用)。
よって、ここ宮崎だけでなく、山梨や埼玉にも冷や汁が存在するのです。

地域によって歴史背景や内容は若干異なりますが、宮崎の冷汁は「農民食」。忙しいお百姓さんが簡単に昼食をとれることから根付いた料理。
現在は宮崎グルメを代表する夏の風物詩となっています。すりつぶした魚や焼き味噌、豆腐、キュウリや青じそなどの薬味を入れて、冷めた麦飯にぶっかけて味わうのが定番スタイルです。

「南風茶屋」で太平洋を眺めながら冷汁を味わおう!

▲日南海岸沿いに立つ人気店「南風茶屋」

宮崎市の中心部から、絶景ドライブロードとして名高い「日南海岸」を車で20分ほど南下したところに「南風茶屋」はあります。店主・荒木和美さんが手間ひまかけて作る宮崎の家庭料理と、香川で修業をしたうどん職人のマスターが手打ちするうどんの2枚看板をかかげる、地元でも評判のお店です。
▲店内からは日南海岸ならではのオーシャンビューが楽しめる。座敷のほか、テーブル席もある

目の前には太平洋ビューが広がります。手前に見えるギザギザ型の岩場は、「鬼の洗濯板」といわれる波状岩。これぞ、日南海岸らしい風景です。
▲日南海岸沿い約8kmに渡ってみられる「鬼の洗濯板」

こちらの冷汁は、店主・荒木さんが母親からのレシピを受け継いだもの。アジやイワシを使うところもあるけど、荒木家では昔からイリコを使うのがポイントだとか。
取り皿にご飯を入れ、冷や汁をかけたら準備OK!さっそく、いただきます!
▲昔ながらの冷えた麦飯ではなく、「南風茶屋」では温かい白飯を使用

ひと口食べてビックリ!想像する、“冷たいみそ汁”とはまったく別もの!イリコの風味と香ばしさが口いっぱいに広がります。コクがありながらも、大葉のおかげで爽快感が味わえます。キュウリのシャキシャキ食感もイイ感じ。するすると胃の中におさまっていきます。なるほどこれなら食欲の落ちる夏にピッタリ!
▲お茶漬け感覚でさらさら味わえる!

「南風茶屋」の冷汁は通年メニューです。単品(860円・税込)もありますが、ぜひ定食を!定食に付くチキン南蛮が、これがまた絶品なのです!
▲「冷や汁セット」1,080円(税込)。チキン南蛮が付く大ボリューム。うどんや小鉢も付く「冷や汁定食」1,400円(税込)もある

チキン南蛮は県内あちこちで楽しめる宮崎の名物グルメですが、筆者的にはこちらのチキン南蛮は県内トップクラスの美味しさ! 1時間かけて酸味を飛ばすというまろやかな甘酢とタマネギたっぷりのタルタルソースが、他とは一線を画します。甘味と酸味が絶妙なさっぱり上品な味わいなのです。
▲「南風茶屋」のチキン南蛮は、上品な味わいで大人好み

前にも紹介した通り「南風茶屋」は、家庭料理とともに、本場・四国仕込みのうどんが名物です。そこで生まれたのが「冷や汁うどん」!開業時からの人気メニューのひとつと言います。
▲南風茶屋ならではの個性派冷汁、「冷や汁うどん」(860円・税込)

店の一角でマスターが毎朝手打ちするうどんは、モチモチつるつる!細麺ながらほどよいコシが楽しめ、コクのある冷汁とよく絡みます。

麺を食べた後に白ご飯を投入して、シメにスタンダードな冷汁を楽しむ常連さんも多いとか。お腹に余裕があれば、ぜひ白ご飯(100円・税込)をお願いしましょう。

イリコの頭とハラワタを取ることから始める冷汁作り

冷汁は一見シンプルな料理ですが、想像以上に手間ひまがかかると言います。その作り方を荒木さんに特別に教えていただきました。
▲母親直伝の冷汁レシピを教えてくれた「南風茶屋」の店主・荒木和美さん

まず材料をみていきましょう。荒木家の冷汁に欠かせないイリコのほか、鹿児島産のカツオ生節(半乾燥のカツオ節のこと)、味噌、ダシ汁(白ダシ+冷水)、トッピング用にキュウリ、大葉、豆腐、ゴマが並びます。

さっそく作っていただきましょう。まずはイリコの頭とハラワタを一匹ずつ手作業で取っていきます。
▲雑味のない、澄んだ味わいにするため、頭とハラワタを取り除く。気が遠くなる作業

次にイリコをミキサーにかけて粉末状にします。すり鉢に入れ、生節をほぐしたものと味噌を加えて、よく擦り込みます。ちなみに、宮崎の味噌は米と麦のあわせ味噌です。
▲口当たりをよくするために丁寧に擦る

充分に擦れたらすり鉢に塗り付けるように伸ばし、そのまま鉢を逆さにして直火にかけます。これで冷汁の素の完成です。直火にかけるのは、香ばしさを出すほか、保存をきかせるため。火入れをすることで味噌の発酵を止めるのです。

ここまでくれば、もう一息!ここで、白ダシと冷水を入れた器に冷汁の素を溶きます。そこにキュウリや大葉、ゴマ、豆腐などのトッピングを加えれば、はい!できあがり。
▲「トッピングはお好みでいいけど、大葉は欠かせません。爽やかな香りが食欲を増進させてくれます」と、荒木さん

冷汁のおいしさは、擦って、炙って、溶いて…そんな手間ひまが生みだすものだったのですね!

いかがだったでしょうか?本場・宮崎の冷汁。昔は各家庭で作っていたらしいのですが、今は作るところもほとんどなくなっていると言います。宮崎に行った際はぜひ味わってみてくださいね♪
宮崎由希子

宮崎由希子

福岡在住のフリーライター。九州7県をメインに取材にかけずり回り、年間取材件数はのべ1000件以上。得意分野はグルメと温泉と旅。温泉好きが高じて、おんせん県おおいたが主催する「温泉マイスター」を取得。著書に『おいしい博多出張』(エイチエス出版)。

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