瀬戸内海に浮かぶアートの島「豊島」で、とっておきの島グルメが楽しめる店3選

2018.07.07 更新

アート施設が点在し、3年に1度開かれる瀬戸内国際芸術祭では直島に劣らぬ人気を誇る、香川県の豊島(てしま)。湧水に恵まれていることから、稲作や農業が盛んな島でもあるんです。瀬戸内海に浮かぶ、山海の幸が“豊かな島”で、とびきりおいしい島グルメが味わえるお店を紹介します。

起伏の多い豊島は、電動自転車で巡るのがおすすめ

豊島に行くには、四国側からは香川県の高松港、本州側からは岡山県の宇野港から出ている旅客船を利用するのが便利です。豊島の玄関口、家浦(いえうら)港まで、高松港からは35分、宇野港からは25分という近さ。運行は曜日によって異なり、1日3~6便ほどです。今回は高松港から乗船しました。
▲高松港の桟橋近くで船を待つ旅人たち。インバウンダー率高し!

大小の島々が点在する瀬戸内海の美しい光景を眺めていると、あっという間に豊島の北西部にある家浦港に到着しました。
▲家浦港の船着場。旅客船は、定員70名の小さな船で、運賃は大人片道1,330円

島内移動は、バスの本数が少ないのでレンタサイクルがおすすめ。豊島は面積14.5平方キロメートルの小さな島ですが、道のアップダウンが激しいので、断然、電動自転車が便利です。
▲見渡す限り海が広がる絶景。下り坂では、スピードの出し過ぎに注意!

家浦港近辺には、レンタカーやレンタサイクルサービスを行っている店やガソリンスタンドが点在。料金は、4時間1,000円、1日1,500円のところが多いです。豊島の道路は信号がないため、つい飛ばしてしまいがちですが、安全運転を心がけて、事故には充分注意してくださいね。
▲家浦港近くのレンタサイクルスポット。夏期や連休時は午前中で出払ってしまうことも多いので、事前予約がベター

島内には環状のメイン道路があり、一周は約12km。電動自動車で約1時間30分、車だと約30分で回れるそうです。
▲家浦港近くには、島の特産品を紹介する看板が。柑橘系やオリーブの多さが、温暖な気候を物語る

豊島の中央には標高320mの壇山(だんやま)がそびえ、ふもとのあちこちから清らかな水が豊富に湧き出しています。この湧水が島を潤し、豊かな大地の実りをもたらしているのです。

昔から行われている稲作を始め、近年ではイチゴやみかん、レモン、オリーブなどの栽培が盛んで、島の特産品になっています。今回は、そんな島の幸をたっぷり味わってみたいと思います!
▲途中の道沿いでは、みかんの花が満開!

海を見渡すテラス席で、豊島の山海の幸を満喫!

最初にご紹介するのは、家浦港から自転車で約7分、島北部の硯(すずり)地区の海辺に佇む「海のレストラン」。アーチ型の屋根がふたつ連なる建物は、遠くからも目を引きます。
▲オープンは2013年。空間デザイナーの二俣(ふたつまた)公一さんが設計を手がけた

中に入ると、テラス席の目の前は海!赤茶色の着色コンクリートが使われた床面と、青々とした空や海の対比が鮮やかで、思わず見入ってしまいました。
▲テラスの屋根は光を通す素材が使われ、開放感たっぷり

「豊島の中でも、ここまで海が間近にあるレストランはほとんどないんです」と教えてくれたのは、広報スタッフの菊地優里(ゆり)さん。
▲欧米からのゲストがゆったりしている光景は、まるで地中海のリゾートのよう

豊島の山海の幸をふんだんに使ったこちらのランチは、メイン料理を、香川のブランド牛であるオリーブ牛を使った「讃岐オリーブビーフ」か、旬の魚を使った「瀬戸内鮮魚」のいずれかから選べます。この日のおすすめに従って、お魚をオーダーしました。

洗練されたプレゼンテーションで登場したこの日の魚料理は、「平目のフライ 新玉ねぎソース」。人参のカステラ、サワラの真子のテリーヌ、季節の野菜が添えられています。
▲メインのほか、ご飯と汁物、プチデザートが付くランチ。瀬戸内鮮魚は1,600円、讃岐オリーブビーフは1,800円

衣のカリカリの食感がうれしい平目のフライは、ほんのり酸味が利いた新玉ねぎソースとのバランスが絶妙。テリーヌやカステラの味わいも、素材の旨みがじんわり伝わってきました。
▲デザートとドリンクを運んできてくれた菊地さん。東京からの移住者で、豊島の自然と食を満喫しているそう

カフェ利用もできるので、豊島らしいメニューでブレイクするのもおすすめ。「本日のデザート」(500円)は、豊島産イチゴのアイスクリームとのこと、これは頼むしかありません!メニューを見ると、小豆島の農家カフェ「ホームメイカーズ」のシロップを使った、美味しそうなオリジナルドリンクもちらほら。その中から「ダイダイソーダ」(600円)を頼んでみました。
▲イチゴアイスはボリュームたっぷりで、トッピングには生イチゴも!夏場は別の果実のアイスになるそう

アイスクリームを頬張ると、とっても濃厚!食べた後も、口の中にイチゴや牛乳の風味の余韻が残ります。ダイダイソーダは想像以上に酸味が強く、すっきりした味わいが爽快でした。

「レストランの隣には自家菜園があって、料理に使う野菜の一部を栽培しているんですよ」
こう語る菊地さんに案内されて、菜園を見せてもらいました。
▲海を見晴らす広々とした菜園では、玉ねぎやジャガイモ、空豆など、様々な野菜が育っていた

お店の正面側には美しいハーブガーデンもあり、青々としたミントやローズマリーが生い茂る様は、絵のような光景です。

日常を離れたリゾート気分を味わいながら、とびきりのランチやスイーツに舌鼓を打つ。そんな至福のひとときを味わうことができました。

カフェ利用も銭湯利用もOKのゲストハウスで、島果実のドリンクを

続いて向かったのは、同じく硯地区にあり、2017年にオープンした「mamma(マンマ)」。戦後間もない頃から長らく “乳児院”として使われていた建物を再生した、ゲストハウスです。次に紹介する「島キッチン」を手がけた建築家・安部 良(りょう)さんのアトリエスタッフが、リノベーションの設計を手がけました。
▲「誰もがありの“まんま”で過ごせる場」をコンセプトに再生されたmammaの外観

ここでは、宿泊者だけでなく、ビジターもカフェ&バーの利用が可能。ゆったりした島時間が流れる居心地のいい空間で、オリジナルドリンクやカジュアルな島ご飯を楽しむことができます。
「気軽にいらしてのんびりしてくださいね。夜は島民の皆さんも、飲みに来てくつろいでいらっしゃいます」と、運営スタッフの茂木(もてき)邦夫さんは語ります。
▲カフェ&バースペース。愛らしい鳩時計は、乳児院時代から使われていたもの

真っ白に塗り直された壁が爽やかなカフェスペースは、ほっとくつろげる雰囲気。豊富なドリンクメニューの中から、「豊島果実のフルーツカルピス」(600円)をチョイスしました。
▲ピンク色がきれいで美味しそう!

取材時に使われていた豊島産フルーツは、イチゴとブラックベリー。クラッシュしてカルピス割りにした色鮮やかなドリンクは、フレッシュな甘酸っぱさがたまりません!自転車を長時間漕いだ後だと、なおさら疲れも吹っ飛ぶのではないでしょうか。
▲カウンターには、手作りの酵素シロップやスコーンもスタンバイ

今回は時間的にトライできませんでしたが、18時30分からの夕食メニューも豊富です。前日までに予約すれば、内容は当日のお楽しみだという「ディナープレート」(1,540円)も用意してくれます。
▲メイン、ご飯、汁物付きのディナープレート。この写真のときは、大豆ミートの酢豚がメイン(写真提供:片岡杏子)

フライドポテトやオニオンリングなどのおつまみ系メニューや丼物などは、予約なしでも食べられます。アルコール類は、日本酒や焼酎のほか、香川県のクラフトビール「空海」も。
▲イラストが可愛いメニュー表。ヒレカツ丼や親子丼(ともに850円)は人気メニュー

ビジターにとってさらにうれしいのが、浴室を銭湯として利用できること。乳児院時代にサンルームだった場所を活かして改築されています。

コンクリートとガラスのモダンなつくりに、浴槽周りのヒノキが温かみを感じさせる空間は、さんさんと差し込む日差しが気持ちよく、半露天風呂感覚で入浴を楽しめます(大人500円)。タオルも販売されているので、手ぶらでもOK!
▲お湯に浮かべられているのは、ヒノキを輪切りにした“入浴木”。清々しい香りがほんのり漂う

乳児院としての歴史を感じさせつつ、世界じゅうのゲストが集う居心地のいい場所へと生まれ変わった「mamma」。泊まってゆっくりステイするのもおすすめです。
▲天日塩やレモンジャムなど、豊島の特産品が販売されているコーナーも

テラス席が気持ちいいレストランで、島のお母さんの手作り料理を

最後に訪れたのは、豊島でも屈指の人気を誇るレストラン「島キッチン」。島北東部の唐櫃(からと)地区の住宅地にあります。
▲住宅地の路地の奥にある「島キッチン」。小道の角にある、この看板が目印

実はここ、「瀬戸内国際芸術祭2010」の際に生まれたアート作品でもあるんです。建築家の安部 良さんが、空き家となっていた古民家を、食とアートで人々をつなぐ場所として再生させました。会期終了後もこの主旨を伝えていきたいと継続が決まり、現在はビジターのもてなしの場としてはもちろん、島内のコミュニティスペースとしても、すっかり定着しています。
▲瓦屋根の立派な門構え。建物は、築80年以上になる古民家

ランチやカフェタイムで提供される料理やドリンクには、豊島の食材がたっぷり使われています。水は島キッチン近くの名水「唐櫃の清水」から汲み上げたものを使い、お米もこの清水で育てたものだそう。
▲混雑時の待ち時間用にと、自家栽培のミントを使ったミントウォーターのサービスがあることも

ここでご飯を作ってくれるのは、島のお母さんたち。東京の「丸ノ内ホテル」のシェフと協同して開発した、オリジナルのメニューを提供してくれます。
▲カウンター席に加え、テラスに面した縁側席もある店内。島のお母さんたちのほか、芸術祭のボランティアサポーターが、開催年以外もスタッフとして活躍中
▲店内の黒板には、その日に使う野菜を育ててくれた、島のお母さんたちの名前が書かれている

島キッチンでいただけるランチは2種類。ひとつは、その時期の仕入れ食材によってメニューが変わる「島キッチンセット」(1,620円)。メインの魚料理に、前菜・サラダ・スープ・ご飯・お漬け物が付いています。この日のメインは、「スズキのフリット 豊島のベトナムソース」でした。
▲島キッチンセットは数が限られるので、遅めの時間帯に訪れる場合は事前予約がベター

ひとくち頬張ると、白身魚の上品な味わいに、ナンプラーとスイートチリソースのエスニックな風味がベストマッチ!しゃきしゃきサラダにかけられた香ばしい自家製玉ねぎドレッシングも、豊島の特産品の素麺を使ったおすましも、滋味がじんわり身体に染み渡りました。名水育ちのお米も、ほのかに甘みがあって美味!

もうひとつのランチは、「島野菜添えキーマカレーセット」(1,296円)。豊島のお母さんたちと丸ノ内ホテルのシェフのコラボから生まれたレシピで、こちらも前菜・サラダ・スープ・お漬け物付きです。
▲玉ねぎや人参、レンコン、スナップエンドウなど、島野菜のグリルが乗ったキーマカレー。サーブされる時は、カレールーは別添えになっている

キーマカレーは、程よいスパイシーさが食欲を刺激して、ご飯がどんどん進みます!島野菜も噛むほどに旨みが感じられ、あっという間にぺろり。毎日食べても飽きなさそうな、どこか懐かしさも感じる味わいでした。

ドリンクは、豊島で採れる果物を使った「季節限定ドリンク」(540円)をオーダー。この日は「豊島レモンのレモンスカッシュ」でした。
▲果実たっぷりのレモンスカッシュ

うーん、爽やか!暑い日だったので、思わず一気飲みしてしまいました。たくさん入っているハチミツ漬けのスライスレモンも美味しくて、汗もすっと引いていくような清涼感。

天気がよければ、ぜひ屋外のテラス席へ。大きな柿の木を囲んでぐるりと縁台が置かれ、その上に大きな弧を描く屋根がかかっています。ユニークで開放的な光景に、思わず目を奪われました。
▲気持ちのいいテラス席。屋根には焼杉板が張り巡らされている

「この辺りの集落では、外壁が焼杉板貼りの民家が多いんです。それを見て、安部さんが焼杉板の屋根を考案してくださいました」
こう語るのは、店長の藤崎恵実さん。そんな配慮があるから、個性的なフォルムにもかかわらず、周りの風景に自然と溶け込んでいるんですね。
▲「夏場も風が通るので、テラス席は気持ちいいですよ」と藤崎さん

テラスを吹き抜ける風は本当に心地よくて、お昼寝してしまいたい気分です。こんな気持ちのよい場所がコミュニティの場になっているとは、島の人たちがうらやましい!

このテラスでは、2014年から毎月「島のお誕生会」というイベントが開かれています。「ビジターだけではなく、島内の人にも来てもらえる催しにしたいと思って始めました」と藤崎さん。その月生まれの人は、島内外にかかわらず誰でも参加できるのだそう。
▲店内に飾ってある、これまでの「島のお誕生会」の記念写真。開催日は月によりまちまちで、その時々で食事会やおやつ会、オペラ上演など内容も変わるそう

美味しいだけでなく、時間を忘れてのんびりできる島キッチン。お誕生会の日程は、島キッチンのホームページのイベント欄でお知らせしているので、予定が合えばぜひ参加してみてはいかがでしょうか。
▲店を出て小道を歩くと、藤崎さんのお話通り、焼杉板貼りの家がちらほら

島をのんびり散策しながら、ユニークなアートや美しい自然も楽しんで

豊島といえば、アートや自然も大きな魅力。アート巡りを楽しむなら、開館時間や休館日の事前チェックが必須ですが、島内にはいつでも気軽に鑑賞することができるパブリックアートもあります。そのひとつが、島キッチンから徒歩3分ほどの高台にある「空の粒子/唐櫃」。彫刻家の青木野枝(のえ)さんの作品で、名前の通り、空に粒子が舞うかのごとく、コールテン鋼でできた円形の彫刻がつなぎ合わさっています。
▲下から見上げると、円形の連なりがいっそうリズミカルに感じられる

作品の隣には、島を代表する湧水である「唐櫃の清水」が、こんこんと湧き出しています。ここはかつて、水を汲みに来る人たちによるコミュニティの拠点だったそう。「空の粒子/唐櫃」には、この場所が賑わいを取り戻すきっかけになってほしいという意図も込められています。
▲「唐櫃の清水」は、現在も水道水源や近隣の田畑の灌漑用水として、島の人々になくてはならない存在

もうひとつは、唐櫃地区の海辺にほど近い公園にある「勝者はいない—マルチ・バスケットボール」。スペインのアーティスト、イオベット&ポンズの作品です。
▲ユニークな形のボードは、豊島をかたどったものだそう

リングがたくさん付いているバスケットボールのゴールには、実際にボールを投げ入れて楽しむことができるんです。さっそく挑戦してみましたが、こんなにリングがあるのに意外に入らない……。でも、青空に向かってボールを投げ入れるのは爽快でした!

島をのんびり巡っていると、ハッとするほど美しい光景に出合うこともしばしば。「空の粒子/唐櫃」から「勝者はいない−マルチ・バスケットボール」へ向かう途中の高台では、急に視界が開け、海を見晴らす棚田が目の前に出現!休耕田が豊島の人々の手で水田や畑に再生された場所で、豊島を象徴する風景のひとつになっています。
▲海を見晴らす棚田の光景の一角。ビニールシートが敷かれている場所は、畑として再生されている

さらに南のほうへ進むと、海の向こうに、香川県本土のランドマークである屋島が見えてきました。こちらも素晴らしい眺めです!
▲正面の台形の山が屋島。源平合戦の舞台として名高い

のんびりとくつろいでいる、動物たちとの出合いにも癒やされました。
▲海を望む高台の野原で牛を発見!オリーブの絞り果実を与えて育てる「オリーブ牛」だそう
▲昼寝中の島猫を発見!近づいても起きる気配がないのは、のんびりした土地柄のせい?

豊島のグルメを満喫した今回の旅では、美しい島の景色や空気もご馳走だと実感!芸術祭以外の時期で、平日だったにもかかわらず、インバウンダーを始めとしたビジターがたくさん訪れていたことが、島の魅力を物語っていました。
ちなみに、豊島はお店もアートスポットも火曜日定休のところが多いので、旅程を組む際はご注意を。アートはもちろん、豊島の豊かな食を堪能しに、ぜひ訪れてみてください!

※記事内の価格はすべて税込です
puffin

puffin

東京でのライター生活を経て、現在は縁あって香川県在住。四国のおおらかな魅力と豊かな食文化に触発される日々。取材で出会うモノ・コトの根幹に流れる、人々の思いを伝えたいと願っている。

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