鬼怒川ライン下りで四季折々の渓谷美を堪能!ゆったり漂う舟に身をまかせて森林浴も

2018.08.04 更新

関東平野東部を北から南へと流れる鬼怒川は、利根川の支流の中で最も長い全長176.7kmを誇ります。上流部は深い山間を流れ、緑色の川の色が印象的。川沿いにそびえ立つ高さ100mほどの巨岩「楯岩(たていわ)」周辺は、季節ごとに美しい表情を見せてくれます。大自然が創造した渓谷美を最も近くに感じられる鬼怒川の名物「鬼怒川ライン下り」で、鬼怒川の大自然と迫力の舟旅を味わってみましょう!

▲舟の上から味わう鬼怒川の大自然は迫力満点!(写真提供:鬼怒高原開発)

鬼怒川渓谷をゆっくり、じっくり巡る極上の舟旅へようこそ!

▲スタートは東武鉄道・鬼怒川温泉駅。都心から特急で2時間ほどの場所
▲駅前で出迎えてくれる「鬼怒太(きぬた)」の像。栃木県益子町在住の陶壁作家・藤原郁三氏による「邪鬼(じゃき)」をモチーフとした作品で、計7体が鬼怒川の温泉街や橋のたもとなどに点在する

「鬼怒川」の地名の由来には諸説ありますが、一説には文字通り、鬼が怒ったように荒々しく流れる川を表しているともいわれています。
そんな鬼怒川の人気アクティビティが、渓谷美を最も近い目線で楽しめる「鬼怒川ライン下り」(営業期間:4月中旬~11月下旬)。ゆっくりした川下りなので、老若男女そろって楽しめるのも魅力です。

料金は、中学生以上2,800円、4歳から小学生まで1,800円、1歳から3歳まで600円。乗船時間は約40分ですが、下船場から無料シャトルバスで戻る時間を含めると、全行程の所要時間は約1時間10分になります。
▲鬼怒川温泉駅から徒歩約5分でライン下りのチケット売り場に到着

電話かウェブサイトによる事前予約が基本ですが、予約をしていなくても当日空席があれば乗船することができます。ゴールデンウィークや8月の夏休み時期は最も混みあうので、事前に予約することをおすすめします。
▲予約したチケットを受付カウンターで購入する
▲ロビー内のモニターで当日の空き状況を確認することができる

毎日9:00~15:45の間に12便出航します。10分前には乗船開始となるので、出航時刻の20分前までに受付を済ませるようにしましょう。
※天候や河川の水量により、予告なく運休となる場合があります。事前にお問い合わせください。

下船後の無料シャトルバスもここで予約することができます。行き先は鬼怒川温泉駅か駐車場で、所要時間は約10~15分です。
▲チケットと一緒に手渡されるパンフレットには、ライン下りの見どころが紹介されている。事前にチェックしておこう
▲日焼けが気になる方は竹笠(1枚900円)を購入してみては?さらに風情が増すことまちがいなし!
乗船場はチケット売り場から階段を下ったところにあります。約150段という段数が渓谷の深さを物語っているとおり、足腰の弱い方は少々注意が必要です。また、女性の方は歩きづらいヒール系の靴は避けたほうが無難ですよ。
▲木々の間から舟が並んでいるのが見えれば、乗船場はすぐそこ!テンションがさらに上がってきた

階段を下りると、白い砂利の河原が広がっています。待合所に到着したら、ライフジャケットを装着して、あとは乗船時刻を待つばかりです。
▲チケット購入後に渡されるライフジャケットを装着して準備万端!

目の前の舟は思ったより大きく、重厚感があります。これなら安心!舟内にはゴザが敷かれ、靴を脱いで乗船します。脱いだ靴は乗船前に配られるビニール袋の中に入れておきます。

乗船人数は最大28名ですが、川の水量によって人数を調整するそうです。この日は水量が少なかったため24名ということで、舟内のスペースも十分。屋形船のようで、思わずくつろいでしまいそう!
▲船頭さんの案内で、船に乗り込む
▲靴を脱いでリラックスする乗船客たち

豪快な櫂さばきで導く船頭のもと、自然が創った渓谷美を舟の上から大満喫!

静かに舟が漕ぎだされ、岸から離れていきます。
鬼怒川は川幅が広めなので、「長瀞ラインくだり」などで見られる竿ではなく、櫂(かい)といわれる木製のオールのような道具を使って前進させます。同じ川下りでも川幅や水の流れ方、舟のタイプによって違うのですね。
▲先頭と後ろにそれぞれ櫂を持った船頭が立つ(写真提供:鬼怒高原開発)

「キャー!」最初のカーブに差し掛かりました。川幅が細くなり舟が白いしぶきをあげながら、スピードをぐんぐん上げていきます。舟の横についたビニールシートを持ち上げれば、水しぶきはほとんどかからないので、安心です。
▲最初のカーブの辺りはコースのなかで最も流れの速いエリア

移りゆく渓谷美と迫力のライン下りの様子を、動画でもお楽しみください!

最初の急流を越えてしまえば、そのあとはほとんど静かな流れの中をゆったりと下っていきます。ここからが、船頭さんたちの腕の見せ所です。舟の先頭に立つ船頭さんは後ろ向きになりながら櫂を巧みに操り、後ろの船頭さんは、櫂を右や左に傾けながら舵を取る……。二人の息の合った櫂さばきのもと、舟は前進を続けます。
▲先頭の船頭さんは櫂をさばきつつ、周辺の名所やエピソードをガイドしてくれる。まさに神業
▲後輩である先頭の船頭さんを温かく見守りながら、後ろで舵を取る先輩船頭さんの姿も頼もしい!

そのダイナミックな雄姿についつい見とれているうちに、船頭さんによる周辺ガイドがすでに始まっています。鬼怒川には「象岩」「ゴリラ岩」など動物の姿に似た奇岩怪石が点在していて、船頭さんが紹介するたびに、目をキョロキョロさせている乗客から「どれどれ?」「似てるーー!」などと歓声があがります。
▲コース最初に目の前に迫ってくるのは、鬼怒川最大の名勝「楯岩」。高さ100mもの巨岩が天を衝くようにそびえ立つ姿に圧倒される
▲進行方向左手には「ゴリラ岩」が。ゴリラの横顔にそっくり!
▲見どころに差し掛かるたびに一斉にパシャリ!なかなか忙しい舟旅
▲さらに船が進むと「虹見の滝」が涼し気に出迎えてくれた。太陽の光の加減によって虹が見えることがあるのが由来だそう

「ほら、あそこにセキレイがいるよ!」と船頭さん。目を移すと3~4羽が水辺に近い岩場でうれしそうに戯れています。このあたりは他にも、カワガラスやカワセミ、サルや鹿などが姿を現すこともあるそう。こうした個性豊かな船頭さんによるガイドも“見どころ”のひとつですが、鬼怒川ライン下りでは船頭の個性を生かすために、あえて細かいマニュアルは用意していないそうです。

「先輩たちのやり方を見ながら、自分なりのスタイルを確立していけばいいと思ってる」と話すのは、2018年でこの道26年の永山さん。約3年間の船頭の修業を経たあと、舵取りの修業を5年ほど積み、ようやく一人前になれるとのこと。渓谷内を知り尽くした船頭さんとのコミュニケーションもぜひ楽しんでみてくださいね。

2018年は創業50周年の記念として、天候などの条件が揃えば、特別に舟の先頭と後ろで櫂さばきの体験をさせてくれます。筆者もさっそく、後ろで舵取りにチャレンジです。
▲船頭さん指導のもと櫂を動かしてみるも、重くて思い通りに動かない!

櫂の向きを変えながら左右に舵を取るのですが、舟が大きい分、方向転換にタイムラグが生じて難しい!「船頭体験」は貴重な機会なので、チャンスがあればぜひトライしてみてください。
▲緑豊かな山間をゆったりと下っていく

水量にもよりますが、川幅のある鬼怒川ライン下りは、どちらかというとスリリングさより、周囲の自然をゆっくり満喫できるコースといったほうがよいかもしれません。この日も周辺の木々の間からは始終、野鳥の声が溢れていました。

鳥たちのさえずり、水の流れる音をBGMに、ゆったりとした川の流れに身をまかせていると、まるで「森林浴」をしているようです。川を抜ける風も気持ちいい!ぜひ、ここでは日常を忘れて、五感をフルに働かせてみてくださいね。
▲約40分のライン下りが無事に終了。川岸に案内される
▲舟の旅を演出してくれたナイスコンビネーションのお二人

春にはヤマザクラやヤシオツツジなどの花、初夏には目にまぶしい鮮やかな新緑、秋には色とりどりの紅葉と、四季折々に違った表情を見せるので、季節ごとに乗船して鬼怒川の自然を満喫するのもよさそうです。
▲例年10月下旬~11月初旬には色とりどりの紅葉を舟上から楽しめる(写真提供:鬼怒高原開発)

ライン下りのあとは絶品!栃木グルメに舌鼓

さて、下船後は無料シャトルバスが到着するまで、「大瀞(おおとろ)ドライブイン」で一休みです。階段を上り、国道121号を左折するとすぐ左手に見えてきます。ジャズが流れる家族経営のアットホームなお店です。川魚の定食、そばやうどんなどの食事を楽しめるほか、お土産を買うこともできます。
▲まぶしい笑顔で迎えてくれたのは、看板娘の有澤実希子さん。三代目である弟さんを支える頼もしいお姉さん

無料シャトルバスの待ち時間はわずか15分ほどなので、あまりゆっくりはしていられません。お目当てのものをすばやく注文しましょう。

おすすめは、山椒味噌を使っただんごやおでんと、川魚の塩焼きです。地元の炭焼き名人が焼いた「炭」で香ばしく焼き上げる「山椒味噌だんご」と、鹿沼(かぬま)こんにゃくを使った「山椒味噌おでん」は、実希子さんのお母さん手作りの山椒味噌をピリリと効かせています。
▲「山椒味噌だんご(1本300円)」を炭火で焼く香ばしい匂いが漂う

「鹿沼こんにゃく」は良質のこんにゃく芋の産地であるお隣の鹿沼市で、江戸時代から作られている特産品です。特徴は、粘りが強く歯ごたえがあること。手で一つ一つちぎって木型に押しこんで作るので、形はちょっといびつですが、とても愛嬌がある風貌をしています。この微妙なでこぼこに、味噌がしっかりと絡むのです。
▲鹿沼こんにゃくを使った「山椒味噌おでん(2本300円)」は歯ごたえ抜群。噛むとザクザクと音がしそう
▲暑い日には、氷で冷やした「朝採り野菜(各100円)」はいかが?お好みで塩をつけて召し上がれ!
▲炭火でじっくり焼き上げられた「いわなの塩焼き(600円)」。ほかに「あゆの塩焼き(500円)」もあり、おいしく食べる方法や味の違いも教えてくれる

もうひとつのおすすめは、日光の天然氷の蔵元のひとつ「松月氷室」から取り寄せた天然氷を使ったかき氷です。ゴールデンウィーク前から10月中旬くらい(その年の天候による)まで楽しめます。
日光の天然氷といえば、山間の池に引いた湧き水が自然に凍るのを待ち、切り出したあとに氷室に積み上げ、おがくずで封じ込める昔ながらの製法で作られています。ここでも食べられるとは、感動です。

全部で18種類もあるなかで、やはりここ栃木ならではの味「果肉入りとちおとめ」を試してみないわけにはいきません。
▲「果肉入りとちおとめ(700円)」は甘酸っぱさのバランスがちょうどいい

果肉がしっかり残ったいちごのソースがたっぷりかかった天然氷を一口含むと、爽やかな酸味が口いっぱいに広がります。その後、サーッと溶けていき、火照った体に涼を運んでくれました。
▲甘党には、練乳のかかった「果肉入りとちおとめミルク(800円)」もおすすめ
▲珍しいご当地ラムネ「とちぎの地ラムネ とちおとめ(1本250円)」はほんのり優しいいちご味

店の奧の広い縁側からは、先ほど舟で下ってきた鬼怒川がゆったり流れる様子を眺められます。そして川から流れる風はまるで天然のクーラーのようで気持ちいい!思わずゴロンと横たわりたくなるほど居心地が良く、時がたつのも忘れてしまいそうでした。
▲川をぼーっと眺めていたら、次の舟が通り過ぎていった

タイミングが合えば、下今市駅~鬼怒川温泉駅を結ぶ「SL大樹」の走行風景を見ることもできます。
▲縁側の贅沢な特等席で、目の前を走り抜ける「SL大樹」を見届けるのはいかが?

こんな風に時間を気にせずゆっくり過ごしたい場合は、無料のシャトルバスではなく、路線バスを利用するのもひとつの手です。本数は多くありませんが、お店の目の前にある「鬼怒大瀞」バス停から鬼怒川温泉駅や下今市駅に出られます。

栃木ならではのグルメに舌鼓を打ちながら、鬼怒川ライン下りの余韻に浸るのにぴったりの「大瀞ドライブイン」でした。
▲(写真提供:鬼怒高原開発)

渓谷の大自然を最も近くに感じながら、渓谷内を知り尽くした船頭さんと巡る鬼怒川ライン下り。川の流れに身を任せていると、いつしか自分も自然の一部になったような気がしてきます。極上の舟旅で、鬼怒川の自然を満喫してみませんか?贅沢なひと時が待っていますよ。

※記事内の料金・価格はすべて税込です

撮影:川村恵理
古谷玲子

古谷玲子

編集者・ライター。出版社・編集プロダクションの株式会社デコ所属。移住者向け雑誌「TURNS」のほか、「孫育て一年生」を担当。フリーランス時代は、海外旅行ガイドブックで、台湾、台北、モンゴル、東アフリカを手掛ける。さまざまな「人の営み」に興味がある。

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