発売即完売!「草間彌生美術館」は白亜の大人気テーマパーク!?

2018.07.02 更新

草間彌生さんは制作活動70年(2018年現在)を過ぎた今もなお、精力的に作品を世に出し続ける前衛アーティストです。未公開最新作も含めたコレクションの数々を展示する東京都新宿区の「草間彌生美術館」は、2017年10月のオープン以来、2カ月先の予約チケットが発売後すぐに売り切れてしまうほどの人気ぶりです。そんな日本の誇るべきアーティストの作品を隅々まで味わいに出かけました。

新宿の住宅街に誕生した白亜のミュージアム

▲無限に広がる世界へといざなってくれる体感型インスタレーション「無限の彼方へかぼちゃは愛を叫んでゆく」

「草間彌生美術館」は、東京メトロ東西線・早稲田駅から徒歩約7分、都営地下鉄大江戸線・牛込柳町駅から徒歩約6分、外苑東通り沿いにあり、住宅街に隣り合うようにたたずんでいます。
▲美術館の屋上(5階)からは新宿の住宅街を見下ろせる。このエリアには草間彌生さん自身のアトリエがあり、彼女にとって馴染みの場所でもある
草間彌生美術館は、白亜のビルの地下1階から地上5階の6フロアからなり、屋内外ギャラリー、体感型インスタレーション、資料閲覧スペース、ミュージアムショップが設けられています。

年2回の展覧会方式で、これまで手掛けてきた初期から最新に至るまでの草間作品を紹介しています。展示のほかに、館長の建畠晢(たてはたあきら)氏による講演会やスタッフによるギャラリートーク、子供向けのワークショップなども定期的に開催され、老若男女が現代美術に慣れ親しめるようになっています。
会期ごとにテーマが変わるので、行くたびに新たな草間作品に出合えるのも魅力です。
▲窓の向こうに広がる街並みをバックに、かぼちゃが輝く。この組み合わせ自体がひとつの作品のよう

観覧は日時指定の予約・定員制(各回90分/定員70名)で、毎月1日の10:00から美術館ウェブサイトで翌々月分のチケットが発売されます。観覧料は大人1,000円、小中高生600円、未就学児は無料。

取材したこの日は約3分の1が海外からの来場者で、草間彌生作品の海外での人気ぶりもうかがい知ることができました。
さぁ、ここでそろそろ草間ワールドをのぞいてみましょう!

「草間彌生の世界」へ潜入!初期から未公開の最新作までを一挙公開

丸みをおびたスタイリッシュな白亜ののっぽビルが特徴的です。エントランスは大小さまざまな白い水玉模様が施されているので、ひとめでわかるはず。
▲白い水玉模様で埋め尽くされたガラス張りのエントランスが目印。すでにここからワクワク♪

今回訪れたのは、2018年4月1日から8月31日までの展覧会「さあ、今、我が人生の最大の出発にきた」。1950年代の故郷・松本時代のドローイングと水彩画のほか、アクリル絵画シリーズ「わが永遠の魂」を中心に、草間彌生の「原点」と「今」に触れられる構成となっています。
▲現在、最も力を入れて制作している最新の絵画シリーズ「わが永遠の魂」

入場したら、バーコードチケットをスタッフに提示し、バーコードを読み取ってもらいましょう。どの時間帯の入場者か一目でわかるシールを見えるところに貼ったら、資料を受け取り、いざ出発!
▲展覧会のチラシ、美術館のパンフレット、会期中の作品リストが手渡される。作品のそばにはタイトルがないので、作品リストが役立つ
▲白壁沿いに階段が設置されている。安全のためフロア間の移動は上りは階段を、下りはエレベーターを利用する

草間彌生の創作の「種」はこうしてまかれた!草間作品の原点に触れられる

まずは階段をあがって2階のギャラリーへ。1950年代、ニューヨークへ渡る前の故郷・松本での作品をメインに、ドローイングや水彩作品が20点展示されています(展覧会後期の2018年6月21日~8月31日は別の20点が展示される予定)。今も好んで描く、点や水玉、目や人物の顔などのモチーフが描かれ、今につながる片鱗を感じとることができます。
▲目線に合う高さで語りかけてくる初期の作品たち。今につながる作品に目が奪われる

「植物の茎」「花の芽」「花頭(かとう)」と題した作品が多いのは、種苗(しゅびょう)問屋に生まれ育って、身近に素材があったからでしょうか。
▲1953(昭和28)年の作品「FLOWER X.P」

大胆さやカラフルな色使いは今より控えめながらも、「生命力の源」のような力強さを奧に秘めているように感じます。「早くここを出て、外の世界にはばたきたい!」という強い思いがつまっていたからでしょうか。

こんな風に自由に想像を巡らせながらゆっくり鑑賞できるのも、定員制だからこそ。ほかの来場客に気兼ねすることなく、自分のペースで草間作品とじっくり向き合うことができます。

ほとばしるエネルギーを直に受ける「わが永遠の魂」シリーズは、覚悟をもって鑑賞すべし!

つづいて、3階に一歩足を踏み入ると……。2階とはガラリと雰囲気が変わり、色鮮やかで色彩あふれる世界が広がっています。
約2m四方もの巨大なキャンバスが壁を覆いつくして、全16点。そこに描かれたアクリル絵画シリーズ「わが永遠の魂」が出迎えてくれます。まさに圧巻‼未公開最新作も展示されているので、見逃せません。
▲目の前に立ちはだかるアクリル絵画シリーズ「わが永遠の魂」

「わが永遠の魂」シリーズの展示の特徴は、額装なしで直接展示されていること。「ありのままの姿」で直接的に訴えかけてくるので、ほとばしるエネルギーのすごさは受け止めきれないほど。フロア全体に充満しているそのエネルギーだけで、お腹いっぱいになります。
いつの間にかそのパワーに引きずり込まれ、草間彌生の世界にどっぷり浸かっている自分がいました。
▲キャンバスの天地左右を変えても成り立ちそうな「自由さ」がある

作品との間に隔てるものがなく、至近距離で鑑賞できるので、「力強い筆致」もしっかり感じることができます。

驚くべきは、下書きなしでいきなりキャンバスに描いているということ。アイデアが次から次へと溢れて、勝手に手が動いてしまうそうです。ご本人でさえも「私の手に聞いてちょうだい」と言うほどだとか。
▲力強い筆致から草間彌生さんのエネルギーがひしひしと伝わってくる

草間さんが2009年から描きはじめたこのシリーズは、9年間で実に550点以上。平均すると2~3日に1点という驚異のハイペースで描き続けていることになります。
「館長の建畠氏も今の草間彌生を『第二の黄金期を迎えている』と語っているほどです」と語る美術館スタッフの説明に驚くばかりです。

「死ぬまで描き続けたい」というそのエネルギーと、自由奔放なスタイルを全身で感じてみてください。

「青春を食べてみたい」、「わが五体が生を去る日は月は栄光を止めるだろう」、「我が死の祭壇はかくのごとく」など、作品タイトルのひとつひとつも、とても独創的。作品リストをチェックしながら鑑賞すると、おもしろさが倍増しますよ。
▲ひとつひとつの作品の持つ迫力と存在感に圧倒されて、動けない……

たった2分間で、無限の世界へといざなってくれる⁉魔法の小部屋へようこそ!

さて、いよいよお待ちかねの体感型インスタレーション作品へ。4階への階段を上ると、扉があります。そこが、最新ミラールーム「無限の彼方へかぼちゃは愛を叫んでゆく」への入り口です。いったいどんな世界を見せてくれるのでしょうか。

スタッフの指示で中に入ると、そこは真っ暗闇。次第に目が慣れてくると、1m四方のミラールームの中に黄色地に黒い水玉のかぼちゃがぎっしり並べられているのが見えてきました。
すると、暗闇のなかで中央の1個だけが明るく灯り始めました。続いて、段階的に周りのかぼちゃも灯り、やがて、すべてのかぼちゃに明かりが灯ると……
そこには、暗闇のなかに浮かびあがったかぼちゃ畑が無限に広がっています。側面だけではなく、上と下にも目を向けてみると、上は宇宙の果てまで、下は奈落の底まで続いているよう。闇の部分も続いているので、少し恐ろしい気もしてきます。
▲最終的に全体が明るくなり、無数のかぼちゃが縦横無尽に広がる

制限時間2分で、1m四方の狭い世界から、無限の広がりを持つ不思議な世界へといざなってくれる、そんな旅ができる魔法の小部屋でした。

自分なりの楽しみ方で「最愛のかぼちゃ」とじっくり向き合う!

さて、最後の展示ギャラリー、最上階の5階に到着しました。屋上の開放的なスペースには、金色とピンクのタイルで埋め尽くされた立体作品「Starry Pumpkin」が配置されています。
かぼちゃといえば、草間彌生さんが「太っ腹の飾らぬ容貌」と愛して、たびたびモチーフとして登場する題材です。そのかぼちゃが、最後の最後で、太陽の光に燦然と輝きながら目の前に現れました。
2mほどのその巨体の表面は、日の当たる角度によって、微妙に色を変えていきます。表面の素材に使っているタイルの色が反射しているのです。

自由に動きまわりながら、いろいろな角度から眺められるのも、自分なりのおもしろさを見つけられて楽しい!

「作品の脇にはタイトルやNo.などをあえてつけていません。皆さまに自由に見ていただきたいからです」とスタッフが話すように、主体的で自由な関わり方ができるのも、この美術館の特徴なのですね。
▲無言のうちに語りかけてくる、黄金に輝くかぼちゃ
▲この曲線美をずっと見ていると、草間彌生さんが「最愛のかぼちゃ」と呼ぶ理由がわかる気がした
▲へたの部分の装飾も美しい。ひとつのかぼちゃをここまでじっくり眺めたのは初めてかもしれない
▲同じフロアには資料閲覧スペースもある。50冊以上もの草間彌生さんの作品集をはじめ、書籍などが並び、座って自由に閲覧できる

隅から隅まで「草間彌生の世界」を見せつける徹底ぶり。最後までファンを楽しませてくれる別空間!

ひとまず、作品の展示はここまで。でも、まだまだ「草間ワールド」はとどまるところを知りません。そう、トイレとエレベーターが、赤い水玉模様で覆われた鏡張りなのです。鏡に映り込んだ自分も、まるで作品の一部になったみたい!
▲トイレの扉を開けてびっくり!随所に「草間ワールド」がちりばめられている

最後に、水玉模様のエレベーターを満喫しながら、1階ロビーへ。
エントランス前の一角には、ポストカードをはじめ、スカーフ、お菓子、展示中の作品集などのグッズが所狭しと並んでいます。ひとめで草間作品とわかる鮮やかな色使いのスカーフやハンカチはインテリアにも活用できそう。美術館オリジナルグッズもあるので、自分好みのものを探してみてください。
▲作品と見まがえるショップのグッズたち。見ているだけでも楽しくなる
▲美術館オリジナルのスカーフ(各30,000円)は壁などに飾ってもよさそう
▲インパクト大の「かぼちゃクラッチ」(45,000円)と「かぼちゃパース」(10,000円)

全館まるごと使って、「草間彌生の世界」が表現されていました。定員制で混みあわないので、90分という制限時間でも十分にまわれます。ご本人はいらっしゃらなくても、「これでもか!」と次々に圧倒的な存在感と魂が突きつけられ、己の生きざまが問われている感じがしました。

気の赴くまま自分なりのペースで主体的に鑑賞することができ、敷居の高い美術館というよりは、アトリエに遊びに来たような感覚。気取らず自然体で、頭のてっぺんから足の先まで五感をフルに使いながら、ぜひ草間彌生ワールドにどっぷり浸かってみてください。

※次の会期については、詳細が決まり次第、公式ウェブサイトで発表されますので、ご確認ください。
※記事内の料金・価格はすべて税込です
※館内での撮影は4階と5階のみ可能です
※本記事の内容・情報は、2018年6月中旬現在のものです

撮影:阪本勇
古谷玲子

古谷玲子

編集者・ライター。出版社・編集プロダクションの株式会社デコ所属。移住者向け雑誌「TURNS」のほか、「孫育て一年生」を担当。フリーランス時代は、海外旅行ガイドブックで、台湾、台北、モンゴル、東アフリカを手掛ける。さまざまな「人の営み」に興味がある。

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