隅田川花火大会の見どころ&穴場ガイド
毎年7月の最終土曜日に東京の夜空を彩る「隅田川花火大会」。日本の花火大会としては最も長い歴史を持ち、約95万人(主催者発表)という想定観客数も国内最大規模。今年ならではの楽しみ方と、穴場の探し方をお伝えする。(※最新情報は施設へ直接お問い合わせください。)

隅田川花火大会は、桜橋と言問橋(ことといばし)の間の「第一会場」と、駒形橋と厩橋(うまやばし)の間の「第二会場」で行われる。橋の上で花火を上げるのではなく、どちらも「台船(だいせん)」と呼ばれる平らな船の上から打ち上げる。

大都会ならではの非日常感が魅力
隅田川花火大会実行委員会の事務局を務める墨田区文化芸術振興課の河村さんに聞いてみた。ちなみに河村さんは、花火大会で有名な長岡市(新潟県)の出身で、子どもの頃から花火を見て育ったという花火愛にあふれる人物である。
「最大の特徴は、大都市の真ん中で開かれるということだと思います。たとえば
や土浦、また都内の他の花火大会では、広い土手に座ってのんびりと鑑賞する。それに対して隅田川は、ビルの合間や路地の軒先など、ふだんの生活空間から不意に花火が現れる。一年に一度だけの独特の非日常感が醍醐味です」

「都会で行なわれるがゆえの制約もあります。両岸に建物が密集しているため安全に配慮しなければならず、玉の大きさは第一会場は5号玉まで、第二会場は3号玉までと決められています」(河村さん)

1号は直径1寸(約3cm)なので、5号玉は直径約15cm。
現代の花火は最大で40号(直径120cm)があり、長岡や大曲、土浦といった広い会場では10号玉(直径約30cm)がポンポン打ち上げられている。それに比べるとたしかに小さい。打ち上がる高さは5号玉で約200m、10号玉で約300mという差がある。

ひとつひとつの玉は小さいが、発数は多い
大玉を一発一発じっくり見せるというよりも、「スターマイン」と総称される連発花火を小気味よく打ち上げていくのが隅田川らしさだ。

「花火師の方にお話をうかがうと、小さな玉だから簡単ということはなくて、観客の皆さんが遠くにいても近くにいても、この隅田川上でいかにして最高の花火の打ち上げを演出することができるかを考えて、さまざまな工夫をしているそうです。花が開いたあとに色を変化させたり、光を点滅させたり、和火のやさしい橙色と洋火のあざやかな発色を組み合わせたり……」(河村さん)

また、隅田川上に光と色がどのようにして映えるかなど、細かいところまで考えをめぐらせて玉づくりを行なうそうだ。玉の号数は小ぶりであったとしても、いかにダイナミックかつ華麗に見せるかが花火師の腕の見せどころだという。
コンクールが行なわれる第一会場、リズムが魅力の第二会場

第一会場では、19時40分頃から約20分間、花火コンクールが行なわれる。前記の2社を含めた隅田川ゆかりの打ち上げ事業者と、大曲や土浦などの花火競技大会で優秀な成績をおさめた国内を代表する打ち上げ事業者を合わせた合計10社が参加する。
コンクールの約20分間は、各社の趣向をこらした大きな玉をじっくり見せる時間帯である。花火大会公式ホームページには打上玉のタイトルと、そこに込められた想いが掲載されているので、打ち上げ開始前に一読しておくと楽しさがさらに深まるだろう。

一方、第二会場は、1時間半を通して途切れることなく小さい玉がリズムよく打ち上がる。じっくり見られる場所を確保できたらコンクールを見たいが、歩きながらであれば第二がおもしろそうだ……。どちらを目指すか、なかなか悩ましい。
2018年からの新しい試み「カウントダウン」
「2020年のオリンピックイヤーに向けて、花火大会を“参加型”にすることで、花火大会が人と人とのつながりを深めるきっかけとなり、愛着・誇りを感じてもらえるようにしたいと思って企画しました。どこか1カ所の会場に大型モニターを設置して、というやり方ではなく、アプリを活用して、いつもの観覧場所あるいは屋内にいても、どこからでも参加できるようにします。秒読みがゼロになったら、両手を広げる“すみはなポーズ”をして、みんなで大輪の花火を咲かせましょう」(河村さん)

また、アプリでは、江戸時代から続く隅田川花火の歴史のほか、花火の見どころポイントや種類などの豆知識、浴衣を着ているときの雨対策など、「花火大会がより楽しくなるコラム」が大会当日に向けて随時配信される。これまでとは一味違った隅田川花火大会を楽しむことができるだろう。
390年の歴史をもつ隅田川の花火
隅田川で花火が上げられた最古の記録は390年前の寛永5(1628)年。浅草寺を訪れた僧・天海が隅田川で船遊びをしながら花火を見たという。
花火は急速に江戸の人びとに受け入れられ、慶安年間(1648~1651)頃には5月末から8月末までの3カ月間、隅田川で町人や武士が船遊びの際に花火を楽しむようになった。

打ち上げ花火が開発されたこともあり、寛政12(1800)年頃から5月末の船遊びの初日が重視されるようになり、やがて「川開き」と呼ばれるようになる。海開きのように泳ぐわけではなく、夕涼みのための屋形船などが営業しはじめる日だった。
8月28日まで花火を上げることが認められていたので、船遊びをする客のために花火がたびたび打ち上げられた。

とくに両国橋西の柳橋周辺にある料亭は、花火組合を結成して大規模な花火を上げるようになり、明治に入っても柳橋料亭組合が花火のスポンサーとなって年1回の大きな花火大会を開催した。
第二次世界大戦中の中断をはさんで続けられたが、隅田川の水質悪化や堤防の建設、料亭文化の衰退といった事情から昭和36(1961)年で中止になった。
その後、美濃部亮吉都知事時代に再開の機運が高まって昭和53(1978)年に復活、東京都・台東区・墨田区が中心となって、さまざまな民間団体、官公庁と協力して運営を行っている。その中でも事務局運営は台東区と墨田区が毎年交互に担っており、2018年は墨田区の担当である。河村さんによれば台東区とのライバル意識はなく、姉妹区でもあることから、区をまたいだひとつのチームとして日々協力し合っているそうだ。

すみだ郷土文化資料館で「隅田川花火の390年」展を開催中

すみだ郷土文化資料館
東京都墨田区向島2-3-5
[開館時間]9:00~17:00(入館は16:30まで)
[休館日]月曜(祝日は開館、翌日休館)、第4火曜
[観覧料(特別展会期中)]大人200円、中学生以下は無料
03-5619-7034
会場から約2km圏内で穴場を探してみる

というわけで、基本的に散歩しなが見る花火大会といえる。とはいうものの、混雑しない穴場から見てみたい……。
「ネット上で穴場として紹介されている場所、たとえば『銅像堀公園』などは、実際には当日立ち入りできないエリアもあったりします。また、ビルが新たに建てられて見えないなど情報が古かったりする場合もあります。一方で、空いている場所は見えにくく、比較的見やすい場所は混雑していると思います……」(河村さん)
人のいない場所=見えない場所だから、人のいない穴場というのはなかなかむずかしい。しいていえば、大きな通りであれば、初めての方でも迷わず歩けるので、比較的安心して楽しめるのではないか、と河村さんは教えてくれた。

自分なりに穴場を見つける方法を考えてみた。
会場図の赤枠内は交通が規制されるほど人がごった返すから、穴場を見つけることはあきらめる。第一会場から汐入公園までが直線で約2.3kmなので、各会場から2.3kmの円を描いてみて、その範囲で開けている土地を探してみた。

比較的距離の近いところでいえば「横網町(よこあみちょう)公園」周辺が有力か。しかし駅から近いので人は多そうだ。
隅田川東岸の「東白髭公園」は駅から離れているので、人は少ないかもしれない。
2.3kmの円の外側だが、「猿江恩賜公園」は敷地が広くていかにも見えそうだ。
筆者が穴場として期待するのは、「上野公園」の両大師橋(りょうだいしばし)から観光バス駐車場を経てパンダ橋のあたり。よく知られているように、山手線の線路を境に上野台地は標高が20mくらい高い。線路との境が崖になっていて見晴らしがよい。花火は小さくなるかもしれないが、ビルの合間から見えるポイントがあると思う。



さて、見えなかったらどうするか。心配はない。会場まで2.3kmなので、20分も歩けば会場近くに到達できる。ぶらぶら散歩しながら自分だけの穴場を見つけるのはきっと楽しい。隅田川花火大会とは、花火を見つけに行くというひとつの旅なのである。
今年は浴衣でも着て、花火を見つける旅はいかがだろうか。
隅田川花火大会を浴衣で楽しもう
手ブラで楽チン!気軽にレンタルできる浴衣を探そう!

どうしても人ごみを避けたいという方には、船上クルージングもおすすめだ。
隅田川花火大会
[会場]第1会場:桜橋下流~言問橋上流、第2会場:駒形橋下流~厩橋上流(東京都台東区、墨田区)
03-5608-1111

大塚真
編集者・ライター。出版社兼編集プロダクションの株式会社デコに所属。近年編集した本は、服部文祥著『アーバンサバイバル入門』、『加藤嶺夫写真全集 昭和の東京』シリーズの「4江東区」「5中央区」(ともにデコ)ほか。ライターとしては『BE-PAL』(小学館)などで執筆。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
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