住民の手で再生された町屋をめぐる。新潟県村上市をまちあるき!

2015.09.20 更新

新潟県に「実際に人が暮らす町屋を訪れることのできる町」があるのをご存知でしょうか。県最北部に位置する村上市は、かつての城下町の雰囲気を色濃く残す町。今回は、いまも点在する素敵な町屋をめぐってみました!

住民の手で古い町並みを残す、町屋再生活動

新潟県の最北部に位置し、江戸時代には村上藩の城下町として栄えた村上市。おもに商人町として栄えた市街地には、いまもなお町屋造りの商店や民家が点在します。

「町屋造り」とは、職住一体型の建築様式。用地が限られ、間口の面積が制限された都市部に多く見られた様式で、格子窓や下見板などの趣ある外観のほか、間口の狭さ、奥行きの深さなど、構造も特徴的です。

村上は徒歩、自転車で回ることができるほどのコンパクトな旧城下町で、酒屋、茶屋、そして名物の鮭料理のお店などの古き良き町屋造りを、お買い物や町歩きをしながら「体感」することができます。

そんな村上には全国的にみても珍しい取り組みがあります。それは、鮭料理店「味匠 喜っ川(みしょう きっかわ)」さんを中心として平成16年より始まった「むらかみ町屋再生プロジェクト」。「行政に頼らず、住民みずからの手で古い町並みを残し、再生していくこと」を大事にしています。

このプロジェクトは、全国各地の一般の方々からの寄付金を得て、空家になった町屋造りの建物に100万円の補助金を出すことで、町屋の町並みを昔の姿に再生する取り組み。これにより、10年間で30軒の町屋が再生されました。

住民みずからの手で主体的にまちの景観を残し、しっかりと後世へ伝えていく。観光地として能動的な努力を続ける村上を「まちあるき」しながら、その魅力に迫ります!

まずは観光案内所で情報収集

村上の町屋をめぐるにあたり、まずはJR村上駅前にある観光案内所を訪問しました。
「町屋めぐり」のニーズに対応したマップが揃っています。それを頂き、しっかりと情報を集めてから町あるきをスタート。厳密にコースを決めることはせず、観光案内所の方のご意見を参考にしながら、気になったところを訪れることにしました。

まちあるきのスタートは「味匠 喜っ川」から

まずは「むらかみ町屋再生プロジェクト」の中心的存在である「味匠 喜っ川」さんへ。まず目に飛び込んでくるのは大きな「鮭」の文字。日本で初めて鮭の養殖に成功した村上には、「塩引き鮭」と呼ばれる名物料理があります。

それは、軒先で鮭を風干しし、発酵させてつくる、「村上の気候風土でなければつくれない」郷土料理。寛永年間に米問屋として創業し、味噌醤油、造り酒屋と事業を変遷させてきた吉川家ですが、現主人の吉川晢鮏(てっしょう)さんの代になり、村上伝統の家庭料理であった塩引き鮭などの鮭料理を商品化し、これを生業にしました。
店内には、「鮭の焼漬」「はらこの醤油漬」などの伝統的な料理から、「鮭の生ハム」といった新しいアプローチの料理までが並びます。
村上の特徴である細長い独特の町屋造りの建物を奥へ進みます。通り土間の天井にはびっしりと鮭が。その数、実に1,000匹以上。1年もの間、こうして寝かされ、徐々に発酵させていくことで「塩引き鮭」が作られます。
鮭を愛するのと同じくらい、古き良き町屋造りを大切にする「喜っ川」さん。店舗は、町屋造りを最大限活かしたレイアウトになっていました。

点在する町屋の趣を堪能しながら歩こう!

「喜っ川」さんを出て、道なりに「安善小路(あんぜんこうじ)」の方へと歩みを進めます。どこを歩いても、至るところに町屋造りの建物が点在しており、格子窓や下見板、古瓦など、どれも非常に雰囲気豊かな顔を見せてくれます。
▲昔ながらの天日干しでつくる「越後村上うおや」さんの梅干し
▲こちらは、かの松尾芭蕉も滞在したという老舗の宿「井筒屋」。現在は、カフェを併設
▲「会津屋大町店」。仏壇仏具のお店が大改装し、モダンな和雑貨・小物屋さんに
▲こちらは何とクリーニング屋さん!

黒塀プロジェクト

市民の手による景観保護・再生の取り組みは、町屋だけではありません。安善小路とその周辺、通称「黒塀小路(くろべいこうじ)」は、村上の旧町人町の象徴でもあった黒塀を再現するべく、昔の景観に「修景」する黒塀プロジェクトも進んでいます。
小路に一歩足を踏み入れると、江戸や明治の時代へタイムスリップしたかのような感覚に襲われます!ただ歩いているだけでもワクワクしてきますね。
こうした黒塀は、修景作業を行うまではブロック塀などが建っており、統一感がなく、景観を損ねていたといいます。町屋再生とあわせて取り組むことで、格段に魅力的になっているという印象を受けました。こちらも旧城下町らしい、昔ながらの景観を再現したいという住民による自主的な取り組みであり、全国からの協賛を集め、それを元に住民みずからがブロック塀の上に板を張り、ペンキ塗りをしているそうです。
▲こちらは、蔵と黒塀の組み合わせ。たしかに、映えますね!

昔の仕事場がそのままの姿で残る鍛冶屋

町人町エリアからさらに歩みを進めると、鍛冶町にたどり着きました。旧城下町らしく、区画ごとに役割分担されていた頃の名残を感じます。いまでは残念ながら現役で営業を続ける鍛冶屋は無くなってしまいましたが、「孫惣(まごそう)刃物鍛冶」さんには、在りし日の作業場がそのままの形で再現されています。
入るとすぐ、作業場が。まるで、職人さんがその場に立って作業をしているかのような臨場感でした。管理人を務めるのは、実際にこの場で作業をしていた職人さんの息子さん。仕事場を見ながら、貴重なお話をたくさんして頂きました。
この「孫惣刃物鍛冶」さんは、「鍛冶屋の再生1万円運動」と題した全国からの寄付金募集により修繕資金を得て、見事に再生した事例のひとつ。協力者への特典として、村上で鍛えられた手打ち包丁を贈呈したそう。それはさながら「地域発のクラウドファンディング」。

「三和土土間(たたきどま)」を残す、築200年の酒屋

続いては、「吉川酒舗」さんにお邪魔してみました。こちらの町屋はなんと築200年!「ようこそ」と、お母さんが温かく出迎えてくれました。
こちらでは、町屋の「つくり」にフォーカスしたお話を伺うことができました。上を見上げると、立派な梁、梁、梁…!3本の美しい梁で4間もの広大なスペースをバランスよく支え、免震機構をもたせる仕組みになっているのだとか。よく見ると、バラバラに見える梁は、形がそっくり。職人さんのこだわりが垣間見えます。
最大の特徴は、この土間。「三和土土間(たたきどま)」といい、異なる三つの成分(粘土など)を、その土地の気候や風土にあわせ、配合比率を変えてつくる技術とのこと。左官職人さんの高度な技術が使われており、壁と同じくらいの強度を持たせることが可能なのだそうです。「200年経ってもほとんど痛んでいないんだよ!昔の技術はすごいでしょう」とお母さん。

貴重な文化財を、実際に人が住む町屋で鑑賞できる!

戦災や自然災害に見舞われることのなかった村上には、貴重な文化財が数多く残ります。町屋には、その外観だけでなく、文化財も大切に受け継がれてきたのです。
毎年3月~4月にかけて開催される「町屋の人形さま巡り」。古くは江戸時代から村上の家々に伝わる貴重な人形を、実際にそれを保有する住人の方からのお話を伺いながら鑑賞し、町の散策をすることができる催しです。まるで親戚の家を訪れているかのような温かい雰囲気のなかで、じっくりと楽しむことができます。
また、毎年9月~10月にかけて開催される「町屋の屏風まつり」では、秋の村上の町屋を巡りながら、美しい屏風、大絵皿、家具などを鑑賞できます。お店から一般のお宅まで、その家に伝わる屏風やお道具を見せていただけます。

いずれも、普段は入れない町屋の中まで入り、じっくりとお話を聞けるという意味でも、非常に貴重な機会。訪れたお客さんとの触れ合いを大切にしている、村上ならではの温かい催しです。

気軽に入れる町屋が最大の魅力!村上へぜひ一度!

村上の町中を歩き、町屋を巡ってみて感じた魅力は、大きく分けて2つあります。それは「入りやすいこと」と、「コンパクト」なこと。
写真のように、見学が可能な町屋には看板が出されていて、どの町屋を訪れても、住人の方が実に気さくに迎え入れてくれたのは印象的でした。住民による自発的な町屋再生が進んでいることを見ても、「最大限、観光客をもてなしたい」という住民の気持ちが伝わりました。

また、それと同じくらい大きな魅力と感じたのは、町全体がコンパクトであるということ。徒歩や自転車で歩いて回りやすいのは、短期滞在で訪れたとしても、十分に楽しめることを意味します。

是非一度、雰囲気あふれる村上の町屋をめぐってみてはいかがでしょうか。

なお、今回のまちあるきに際しては、村上市観光協会さんにて情報収集を行いましたが、町屋に関すること以外にも、グルメや宿泊に関する情報を得ることができますので、旅の参考に訪れてみては?
竹谷純平

竹谷純平

フリーライター。新潟をもっと楽しくするWEBマガジン「にいがたレポ」参加ライター。新潟県出身。SNS運営会社、WEB制作会社等に勤務後、独立。企業でWEBライティングに長年携わった経験とを活かし活動中。東京、アメリカなどを経て新潟へ帰郷した経験と、趣味の旅行での経験とを活かし、「新潟の魅力を内外へ楽しく発信する」をモットーに活動している。フィールドはインタビュー、グルメ、最新ITテクノロジーまでと幅広い。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
PAGE TOP