「金津創作の森」で過ごす、日常から解き放たれた至福の時間。森を散策しながらアートに出合う

2018.08.18 更新

広大な森に広がるアートミュージアムが福井県あわら市にあるのをご存知ですか?「金津創作の森」は、美術館を中心とする森の中に、アート作品や体験工房、アーティストたちのアトリエが点在する、知る人ぞ知る非日常の空間なのです。屋内とは違った開放的な森のなかで、アートを楽しんでみませんか?

芦原温泉からも近い、アートが点在する森

北陸自動車道・金津ICから車で約5分の場所にある「金津創作の森」は、東京ドーム約4個分に相当する20万平方メートルもの広大な自然のなかに、美術館やレストランのある「アートコア」やアート作品、体験工房、アーティストたちのアトリエが点在しています。福井の観光スポットとして有名な「芦原温泉」や「東尋坊」からも近い、県内屈指のアートスポットなのです。
北陸街道の交通の要衝であった金津は、もともと宿場町として栄えていた場所。商業の町に新たな文化施設をつくるべく、今から20年前の1998(平成10)年に誕生しました。

ここでしか見ることのできない企画が目白押し

入口近くに見えるこの建物は美術館「アートコア」。名前の通り、金津創作の森の「コア(中心)」となる建物で、企画展が開催されるミュージアムやホール、研修会議室、ギャラリー、レストラン&ショップなどさまざまな施設が揃っています。
▲“森との共生” “森と連続する空間” “文化交流と情報発信の場” “風景を創り出すデザイン” の4つの柱をコンセプトとする美術館「アートコア」

「アートコア」ではこれまでさまざまな企画展が開催されていますが、こちらの展示のすごいところは、なんとすべて学芸員の方の自主企画だということ。作家と直接交渉して展示を組み立てていくので、この場所でしか見ることのできない展示ばかりなのです!
▲メインとなる企画展は年に4回開催。アーティストとのつながりから思わぬ企画が生まれることも(写真提供:金津創作の森)

「アートコア」のホワイエ部分は、開放的な空間。ここにもさりげなくアート作品が展示されています。
▲森からのやわらかい光が差し込むホワイエ
▲丸みのある曲線が特徴的な「雲の椅子」は、金工作家・相川繁隆さんによるもの
▲QRコードを読み取ると、作品にインスピレーションを受けた作曲家・山口紀子さんによるオリジナル音源を聴くことも。山口さんは創作の森内にアトリエを構える作家の一人です

2018年に開館20周年を迎えた金津創作の森では、美術館「アートコア」や工房でさまざまな企画が予定されています。ぜひ公式サイトをチェックしてみてくださいね。

アート作品が点在する森へ

では、外を散策してみましょう!
「金津創作の森」では、初代館長であり、戦後美術批評の草分けとして活躍した針生一郎(はりういちろう)氏による「森はあらゆる芸術の源である」という基本理念のもと、開館の頃からアーティストが“現地滞在”しながらの創作活動「アートドキュメント」が開催されてきました。

自然の里山を生かした広大な空間は「人と創作活動が育てる出会いと交流の森」として、これまでアーティストたちがこの場所でつくりあげたアート作品16点が点在しています。
のんびり歩いていると、早速一つ目の作品を発見!
こちらは現代美術家・河口龍夫さんによる「森のために」という作品。
▲鳥の目線での世界観がコンセプトだそう

アートコアの壁面にも、同じく河口さんの作品が。こちらは鉛で作られた巣箱で、時間によって影の形が変化していく様子を楽しむことができます。
▲コンセプチュアルな作品に五感が刺激されます

下写真の作品は陶芸作家・藤田昭子さんによる「牀座(じょうざ)」。無数の穴はまるで巨大な軽石のよう。すべて陶土を使って表現しています。
▲この作品の最終仕上げはなんと野焼きで焼成したそう

森のなかに突如現れた鮮やかな木の造形は、画家・眞壁陸二(りくじ)さんによる「森のアンリの小屋」(森からはじまる物語展 2015)という作品。
▲(写真提供:金津創作の森)

鮮やかな色合いが季節によって表情を変える森の景色にも溶け込みます。雪の時期に訪れるのも良さそう!
森のなかには「こんなところに!」と驚くような場所にアート作品が展示されていて、まるで宝探しのようですよ。

経年変化もアートの一部

次に現れたのは、彫刻家・環境造形アーティストの土屋公雄(きみお)さんによる「隠されたピラミッド」。
▲まるで古代の遺跡のように太古から、そこに人々が訪れるのをひっそりと出迎えてくれているよう

2005年にできあがった当初は、下写真のように廃材のコンクリート瓦礫や枕木を使った高さ約6mのピラミッドでしたが、年月とともに草花が生い茂り、なんともいえない風格を漂わせています。
▲作品が出来上がった2005年当初の頃(写真提供:金津創作の森)

大阪を拠点にするクリエイティブユニット・graf(グラフ)による「3つの小屋」は2007年に作られたもの。
3つの小屋は同じ形、同じサイズでありながら、屋根がないものや壁が半分しかないものも。小屋の見え方や眺めはひとつひとつ異なり、さまざまな森の表情を見ることができます。
▲年月とともに森の新しい息吹も感じられます

野外のアート作品は1999(平成11)年から2017(平成29)年作のものまであり、なかには朽ちて元の形から姿を変えつつあるものも。アート作品は出来上がったときの美しさだけではなく、時間の経過とともに変化していく様子を楽しむこともできるんですね。

気持ちの良い森では野外イベントも

それにしても本当に気持ちのいい森!

金津創作の森の敷地内は自由に散策できるため、近隣の方は散歩コースとして訪れる方も多いそうです。
こんな森が近所にあるなんて、うらやましいです!
▲水辺を歩くのもおすすめ。川が流れていて夏も涼しげです
▲ところどころにベンチが置いてあるので、木陰で読書を楽しむこともできます

普段はひっそりとした森ですが、春や秋には全国からあつまった作家によるクラフトイベントや、欧州車やレトロカーが集うイベントが開催されます。多くの人で賑わう森も楽しそうですね。

森で暮らし、創作するアーティストたち

さらに歩いていくと、何やら家らしきものが見えてきました。実は金津創作の森には陶芸家やガラス工芸作家、竹細工職人、ろうけつ染めの作家、先ほどご紹介した作曲家・山口紀子さんの計6名のアーティストが暮らし、自然のなかで創作活動を行なっています。今も新たな入居作家を募集しているそうですよ。
▲アーティストたちは実際に住居とアトリエを構えて生活を送っています

アーティストたちの生活の場なので、普段は一般公開はされていませんが、見学したい場合は事前に問い合わせるか、時々開催されるアトリエ公開日に訪れてみましょう。

気軽にものづくりを体験!

次は金津創作の森内にある体験施設を紹介しましょう。

まずは「ガラス工房」から。こちらは手作り熔解炉を完備した吹きガラス工房やガラス加工室、キルンワーク室など、全国的にみても最新かつ充実の設備が整っている、ガラス工芸の拠点なのです。

世界的に有名なガラス工芸作家・山野浩さんや工房スタッフ、創作の森に入居しているアーティストたちの指導のもと、吹きガラスが体験できます。
▲吹きガラス工房では、約1,200度で溶けたガラスからコップや一輪挿しをつくることができます
▲ガラス加工室やキルンワーク室も完備。来訪者のための見学デッキもあり、体験の様子を眺めるのも楽しそう

「ガラス工房」前にある越前瓦の瓦窯(かわらがま)も必見です!創作の森一帯は土壌が瓦に適した粘土層だったことから、明治時代にはこの場所で瓦が作られていました。最盛期には20軒以上の瓦工場があったそうです。
▲実際に使用されていた瓦窯がそのまま展示されています
▲ここで作られた越前瓦は別名「滝瓦」とも呼ばれ、雪に強いのが特徴
「ガラス工房」に隣接する「創作工房」では、一年を通して陶芸体験ができるほか、陶芸教室やろうけつ染め講座をはじめとする各種の講座が開かれています。
▲粘土をこねて形成する手びねりの陶芸や絵付けも人気。ロクロから電気窯・ガス窯にいたるまで、作品づくりに必要な機材はすべて完備しています

小学生(保護者同伴)から大人まで幅広い年代が参加できる体験が多く開かれているのも魅力的。所要時間も約20分~2時間くらいまでと幅広いので、思い出づくりに旅の1ページとして体験してみるのも良いかもしれません。

森の中のレストランで「大人様ランチ」

最後に訪れたのは、美術館「アートコア」内にあるレストラン&ショップ「アンビション」。
フレンチを中心とした創作料理が人気で、気軽なワンプレートランチから本格コースメニューまで、さまざまなメニューが充実しています。
▲自然豊かな森を見渡せる窓側の席がおすすめです

人気メニューはお子様ならぬ「大人様ランチ」。オムライス、ハンバーグ、エビフライといったお子様ランチの定番が、味も見た目も大人仕様で提供されます。
お子様ランチを頼む子どもたちをいつも羨望のまなざしで見ていた方はぜひ注文してみてはいかがでしょうか?
▲「大人様ランチ」(スープ・ドリンク付き、1,400円・税込)

ランチ利用だけでなく、カフェタイムに訪れるのもおすすめです。チーズケーキやシフォンケーキ、クラシックショコラなど6種類以上から選べるケーキセットは見た目も美しく、味も抜群!
▲「ケーキセット」(ドリンク付き、880円・税込)

また、「アンビション」内には創作の森に入居しているアーティストのオリジナル作品のショップもあり、作品を購入できます。「金津創作の森」にしかないお土産もみつかりそうですね。
▲お気に入りの作品に出合えるかもしれません
野外の現代アートの醍醐味は、周りの自然によって驚くほど表情が変わるということ。たとえ雨の日でも、晴れの日では味わえない別の一面をみせてくれるはずです。日常の喧騒から解き放たれた大自然の森のなかで、アート作品の魅力にどっぷりと浸かってみませんか?
石原藍

石原藍

ローカルライター。 大阪、東京、名古屋と都市部での暮らしを経て、現在は縁もゆかりもない「福井」での生活を満喫中。「興味のあることは何でもやり、面白そうな人にはどこにでも会いに行く」をモットーに、自然にやさしく、心地よい生き方、働き方を模索しています。趣味はキャンプと切り絵と古民家観察。

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