絶景の八幡平で日帰りトレッキング。満開の高山植物は夏が見頃!

2018.08.17 更新

秋田県と岩手県の県境に位置する「八幡平(はちまんたい)」は、「十和田八幡平国立公園」に指定されている奥羽分脈北部の山々の総称。平らな台形状の地形が特徴で、山頂周辺のトレッキングコースは初心者にもおすすめです。今回は現地ガイドに同行してもらい、日帰りトレッキングを楽しんできました。

子どもからシニアまで、気軽に楽しめる日本百名山のひとつ

春から秋にかけて、高山植物や野鳥などの見どころが満載の八幡平。県内外からトレッキングを楽しむ人々が訪れる人気スポットです。盛岡市内から車で80分ほどで山頂付近の登山口まで一気にアクセスできる、その気軽さも魅力。登山ルート沿いには大小の沼や湿原が点在していて、自在に時間を調整しながら散策を楽しめます。
▲暑い夏は「ちょっと涼みに」訪れる人も少なくありません

そこで、初夏の兆しを感じる7月初旬、手軽に山歩きを楽しんでみようと八幡平へ向かいました。

東北自動車道・松尾八幡平ICを降りたら、毎年4月中旬~11月上旬に開通するドライブウェイ(無料)の「八幡平アスピーテライン」へ。登山口にある「八幡平山頂レストハウス」まで40分ほどの道のりを、南部片富士の別名を持つ岩手山の佇まいを左手に眺めながら、ゆっくりと車を走らせました。
▲アスピーテラインの途中には、岩手山が眺められる展望スポットがいくつか設けられ、車を降りて景色を楽しめます

山頂付近はまだ雪が残っていて、冬から春への変化を感じられるとともに、遅い春と夏の高山植物を一度に楽しめる絶好のシーズンです。清々しい空気を吸って日頃の疲れを吹き飛ばすべく、天空に近い場所をめざします。
▲山頂に近づくにつれ、残雪もちらほら。写真左手に見えるのが、八幡平の登山口!

集合時刻の10時にレストハウスで迎えてくれたのは、「八幡平自然散策ガイドの会」の山本和憲さん。同会には、高山植物をはじめ八幡平の魅力についての知識が豊富なボランティアガイド23人が在籍しています(2018年8月時点)。観光で八幡平を訪れる人向けに、時間や体力、希望に応じたコースで案内してくれます(要事前予約)。

今回は、登山口から鏡沼(ドラゴンアイ)→めがね沼→頂上→ガマ沼→八幡沼→八幡沼湿原→見返り峠を通って登山口に戻って来る、初心者向け約2時間のコースを歩くことにしました。
▲鮮やかなピンクのポロシャツと紫の帽子がお似合いの山本さん。このチョイスの理由?は追って明らかに……

「八幡平は標高1,613m、登山では中級コースの山です。見どころは色々ありますが、ミズナラやオオシラビソなど原生林が広がる火山であることが大きな特徴です。そして、やはり季節折々の高山植物ですね。興味ありますか?たくさん咲いていますからね、見かけたらその都度ご紹介しますよ。では、行きましょう!」

頼もしい山本さんの後ろに続き、散策コースへ。空にはウグイスの鳴き声が響きわたり、なんだか足取りも一層軽くなります。
▲散策道は、石畳に整備されていて歩きやすい

春と夏の可憐な高山植物に心奪われる!

山本さんが話していたオオシラビソとは青森トドマツのこと。八幡平の冬の代名詞である「樹氷」は、このオオシラビソが氷雪をまとった姿を表します。
厳しい冬の姿とは一転、山々のオオシラビソは可愛らしい新芽をつけて、春夏を満喫中でした。
▲枝先に雌花をつけたオオシラビソ

「6~7月にかけて、徐々に山の気温が上がるなか、山道沿いの高山植物たちも徐々に開花していくんですよ」。道先で花を見つけるたび、山本さんが丁寧に解説してくれます。

花の名前の由来や特徴を教えてもらうことで、高山植物の存在がぐっと近づき、愛おしくなってくるから不思議です。ということで、ここからは散策中に出合った植物を一気に紹介しましょう!本当にごく一部ですが……。
▲可憐に咲くミヤマキンポウゲ(花の見頃:6~7月)
▲葉(穂)の先に花をつけるタカネナナカマド(花の見頃:8月上旬)
▲日本のイチゴの原種ノウゴウイチゴ。7月下旬に実る果実は食べられますが、くれぐれも道中の高山植物は採って食べないように!(花の見頃:6~7月上旬)
▲スミレの仲間、キバナコマノツメ。馬(駒)の蹄に形が似ていることから名がついたそう(花の見頃:6月)

実は、モデルのすみれさんのファンだという山本さん。すみれつながりで色々なスミレを調べたのだという冗談交じりのトークが全開になってきました。この日の紫の帽子とピンクのポロシャツのコーディネートは、すみれ=スミレ好きが理由のようです。

山本さんによれば、岩手県にはスミレが40種ほど生息しているそう。八幡平ではオオバキスミレ、ミヤマスミレ、ウスバスミレなど5種類程度が観察できるといいます。
▲鮮やかな紫色のミヤマスミレ(花の見頃:6月中旬~7月中旬)

次々に姿を見せる高山植物たちは、茂みの間で慎ましく隠れるように花を咲かせています。身をかがめたり、背を伸ばしたりしつつ花をじっくり観察していると、日常から解き放たれ心も体もリフレッシュするようです。
▲歩く先々で、山本さんは丁寧に草木の解説をしてくれます

緑の中に鮮やかなワインレッドの花を咲かせていたのはベニバナイチゴ。「成長した子グマがこのイチゴを食べている間に、親クマが静かに別れを告げることから“クマの子別れイチゴ”とも言われるんですよ」と山本さん。
▲美しいベニバナイチゴ。下向きに咲く様子が、健気!(花の見頃:6月中旬~下旬)
▲ボンボンのような花びらのイワカガミ。葉っぱがテカテカと鏡のようなことからその名がついたそう(花の見頃:6月中旬~7月中旬)

少しすると、「お、ラッキーですね」と山本さん。その視線の先には、7月だというのに桜が咲いていてびっくり!標高の高い山に咲くミネザクラという品種だそうです。忘れていた春が戻ってきたような、季節をワープしたような嬉しさに包まれます。
▲高山に咲くミネザクラ(花の見頃:6月中旬~7月上旬)

観光客に人気上昇中の、ドラゴンアイとは?

高山植物と触れ合いながら歩いていくと、標高1,590m付近に「鏡沼」が見えてきます。八幡平は100万年前に噴出した火山から成る山々。山頂付近にある水蒸気の爆発から生まれた火口に、水が溜まって形成された火口沼の一つが「鏡沼」です。
7月にもかかわらず沼の半分以上が雪と氷に覆われていますが、湖面には美しい緑の木々が映り込んでいます。
▲登山口から約20分で、八幡平の見どころの一つ「鏡沼」に到着

ちなみに、雪解けがはじまる5月頃は沼の中心部に残る雪が龍の眼のように見えるため、ここ数年で「八幡平ドラゴンアイ」と呼ばれるようになりました。
「実は2016年に海外からの観光客がSNSで呟いたのがきっかけ」と山本さん。
龍の眼のように見えるのは、5月下旬~6月中旬頃。期間限定のお楽しみです。
▲ドラゴンアイが浮かび上がる時期の様子

まるで、北欧の山あいのような「八幡沼」から湿原へ

▲登山口から約40分で頂上に到着

ほどなく頂上に到着するも、あいにく急な雨に見舞われ早々に移動。と思えば……、雲がさっと過ぎ去ってパッと雨があがり、山ならではの天候を体験しました。
▲頂上には景色を見渡せる展望台もあります(写真提供:八幡平市観光協会)

次に目指すのは、頂上から5分ほどの場所にある火口沼の一つ「ガマ沼」です。
▲頂上までの狭い山道とは一変し、やや視界が開けた先に「ガマ沼」が見えてきます
▲晴れた日には、こんな「ガマ沼」の絶景が広がります(写真提供:八幡平市観光協会)

「ガマ沼」のすぐ隣には「八幡沼」の展望台。
「八幡沼」は八幡平最大の火口湖で、八幡平のおすすめスポットの一つです。
▲展望台から眺める「八幡沼」の絶景はぜひライブで
▲太陽の光を受けてきらめく湖の美しさは、心が洗われるよう!

「八幡沼」を過ぎると、そこからは広大な「八幡沼湿原」が続きます。くるくる変化する景観のおかげで、疲れを感じることなく歩けるのも八幡平トレッキングの魅力かもしれません。
▲展望台から「八幡沼湿原」に向かう道中では、手が届きそうな雲に感激!
▲湿原は木道が整備されていて、歩きやすい

湿原を歩く途中には、棚田のような小さな窪地も点在します。この窪地は火山噴出物の間にできた凹地に水が溜まったもので、「池塘(ちとう)」と呼ばれるものだそう。
▲湿原のあちこちに、「池塘」と呼ばれる窪地が点在

「土砂の堆積などで次第に浅くなり、そこにさまざまな水生植物が生えるようになりました。深さによってさまざまな植物が棲み分けをしているんですよ」と山本さん。
▲池塘には、水場を好む高山植物が育つ
▲湿原で風に揺れるワタスゲに癒される(花の見頃:6月下旬~7月中旬)
▲空に向かってめいっぱい花を咲かせるチングルマ(花の見頃:6月中旬~7月中旬)
▲湿原には、遠足に来ていた近隣の子どもたちの姿も

ほんの数時間で、四季の自然を満喫!

「八幡沼湿原」をゆっくりと散策し、「見返り峠」を経てスタート地点の登山口付近に戻るまで、およそ2時間(八幡沼展望台から湿原へ向かうエリアをショートカットして1時間程度のコースにすることもできます)。
▲山頂散策路「見返り峠」から望む山々(写真提供:八幡平市観光協会)

たくさんの高山植物にも出合える八幡平のトレッキングコースは、登山に慣れていない筆者でも無理なく歩みを進められました。
▲登山口そばにある説明板。八幡平を構成する山々の全景に感激!

この日出合った高山植物は、果たして数十種に及ぶのでしょうか。初めて聞く名がほとんどでしたが、山本さんの丁寧なガイドのおかげで、名前の由来や特徴を知ることができ、トレッキングの面白さが倍増しました。
▲同行いただいた山本さん(右)。左はプライベートで散策にきていた同ガイドの会の山口さん

「雪解けとともに、春夏の花が順次咲き、四季の変化を一度に体験できることが八幡平トレッキングの醍醐味です」と山本さん。見返り峠→八幡沼湿原→頂上という逆コースで巡ることもできるので、次は気分を変えて逆回りコースを楽しんでみようと思いました。
なお、八幡平市観光協会では、JR盛岡駅前を発着地とした「八幡平自然散策バス」を運行しています(2018年4月27日~10月21日の期間限定、1日1往復)。こちらのバスを利用すると、八幡平頂上周辺を無料で散策ガイドしてもらえます。気軽に八幡平を訪れたい人にはおすすめですよ。

8月、そして紅葉の秋に向け、見どころは続く!

時計を見ればそろそろ13時、ちょうどお腹も空いてきた頃です。「八幡平山頂レストラン」内には軽食コーナーや売店があり、休憩をとったりお土産品も購入できます。体をたっぷり動かしたので、レストハウス内でランチをとることに。
▲軽食コーナー、物産売店、観光情報コーナーなどを備えた「八幡平山頂レストハウス」(写真提供:八幡平市観光協会)

稲庭うどんや源太カレー、牛丼やおでん等のメニューから選んだのは秋田名物「稲庭うどん」、岩手産牛すじ肉を使ったカレーをかけた稲庭うどん「源太カレー稲庭うどん」の2品。県境にある八幡平らしい2県のコラボレーションメニューです。
▲食堂で食べた「稲庭うどん」(税込800円)と「源太カレー稲庭うどん」(税込900円)。いずれも地元のたまご製造加工会社「岩手エッグデリカ」の味付ゆでたまご付

つるりとした細平麺で喉ごしの良い「稲庭うどん」は、だしが効いていて疲れた体に優しい味わいです。そして「源太カレー稲庭うどん」はじっくり煮込んだ牛スジ肉がとろける柔らかさでした。
八幡平に育つ高山植物をもっとも多く見られるのは7月中旬~下旬ですが、タチキボウシ、エゾオヤマリンドウ、サワギキョウなど8月から咲き始める花も多く、9月ごろまで楽しめます。また、10月上旬~下旬には紅葉も見頃を迎えます。
八幡平の日帰りトレッキングコースは、ほとんど平坦で山道も整備されているので、初心者の山デビューにもぴったりでした。色鮮やかな高山植物にカメラを向けつつ、飽きることなく楽しめます。動きやすい服装と歩きやすいスニーカー、雨具、飲み物を持って出かけましょう。今度は紅葉シーズンにも訪れたい!そんな思いで八幡平を後にしました。


撮影/菅原茉莉
水野ひろ子

水野ひろ子

岩手県在住フリーライター。行政や企業等の編集制作に関わる傍ら、有志とともに立ち上げた「まちの編集室」で、ミニコミ誌「てくり」やムック誌の発行をしている。 (編集/株式会社くらしさ)

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