うなぎの本場浜松「あつみ」で、“おいしい”と向きあう老舗のこだわりを食す

2015.10.20

5代続く、うなぎ料理の名店「あつみ」。良質な国産、浜名湖産のうなぎを使い、明治40年(1907年)の創業以来、多くの人の舌と心を満たしてきました。うなぎのまち・浜松にあって、おいしいのは当たり前。さらに期待を超える味を追求する老舗を訪ねました。

頭ではなく、自分の感覚で味わう

JR浜松駅から歩いて5分ほど。客足の絶えない老舗「うなぎ料理 あつみ」は、市内に数ある名店のひとつ。浜名湖で漁師をしていた初代・渥美吉重が天然うなぎを蒲焼きにして店を開いたのが、明治40年(1907年)のこと。今も変わらず、伝統の味を守り続けています。

「うなぎはもちろん国産、浜名湖産。炭や水をはじめ、素材や調理法にはこだわっています。でも、お客さまにお出しする料理がすべてなので、細かなうんちくを紹介する必要はないと思うんです」と、話し始める5代目の渥美悟さん。

そんなライター泣かせのことをおっしゃるのは、事前に知った情報にとらわれることなく、実際に食べて、自分自身でその味を感じて欲しいから。

豊かな自然の中で育まれる、浜名湖のうなぎ

▲店内にある生け簀で泳ぐうなぎを、注文を受けてからさばいて焼き上げる
海水と淡水が混じる汽水湖である浜名湖は、海と山の幸に恵まれた場所。四季折々の自然の中で育った浜名湖産のうなぎは、控え目な脂と良質な肉質が自慢です。脂がたっぷりのった外国産と比べるとパンチはありませんが、うなぎ本来の味を楽しめる素朴な旨みがあります。

渥美さんがおっしゃるには、浜名湖産と外国産うなぎの関係は、鮭とサーモンに似ていると。サーモンは一年を通じて品質をコントロールして、いつ食べても同じ味。一方、鮭は季節によって味が変わります。

「養殖といえども、浜松のうなぎは冬になれば身がしまり少し固くなります。うなぎの状態にあわせて蒸し時間や焼き加減を工夫したり、いかにおいしくするかが職人の仕事。この時期は味が落ちるからと言うのは、お客さまからしたら関係ない話ですし」。

口の中に広がる老舗の味わい

▲「うな重」3,850円(税込)は、吸物、漬物、フルーツ付き。+50円で肝吸に変更できる
うなぎの蒲焼きは、さばき方と焼き方で「関東風」と「関西風」に分かれます。関東風は、背開きにして白焼きにした後、蒸して焼くのでふわふわなのが特徴。逆に腹から開き蒸さずに焼く関西風は、ぱりっとした香ばしいおいしさを楽しめます。

浜松は、関東風と関西風が入り交じった境目のエリア。あつみの蒲焼きは、蒸しのふわっとした食感と、炭火で焼いたぱりっとした食感を楽しめる、ちょうどその中間。備長炭の炭でかりっと焼いた皮の奥に、ほどよい肉のやわらかさを感じられます。関東風でも関西風でもないから、どちらの人も満足できるといいます。

秘伝のたれは、甘辛で少し濃厚な味わい。ご飯にもたっぷりかかり、ほんのり焦げた皮の苦さとあわさって、白飯もすすみます。一膳に限りご飯のおかわりができるのも嬉しいポイント。
▲たれがかかっていないので、うなぎ本来の味をストレートに楽しめる「白焼き」2,300円(税込)
ふわふわ肉厚の白焼きのうなぎは、ゆず胡椒、生姜、わさび、刻んだ白ねぎといった薬味と一緒にいただきます。たまり醤油をつけることで、多彩な味わいを感じることができます。軽くたれをかけたご飯の上に白焼きを乗せた「白焼き重」3,950円(税込)も人気です。

おいしすぎない、自然本来の味わい

メインのうなぎはもちろん、一品料理にも手を抜かないのが名店たる由縁。「特製漬け物盛り合わせ」500円(税込)は、奥から時計回りに、ゆずを利かせ薄くスライスした大根に、だしの香りが食欲を誘う白菜の浅漬け、かつお節よりもほんのり甘みのあるまぐろ節をふった水菜。

どれも食の安全にこだわり、保存料を使わず、野菜も顔の見える地元生産者のものを使った自家製。素材の切り方ひとつとってみても、言わなければ気付かないほどのさりげない配慮が散りばめられています。

「余分なものは使っていないので、人によっては物足りないと感じると思います。過剰においしすぎない、人の手が作る優しい味わいは、変にお腹にたまらず、また食べたくなります。自然界にある食材って、本来そういうものだと思うんです」。

118年続く「あつみ」を受け継ぐこと

「代を重ねるたび、あつみの価値というか、純度を高めていきたいです。それは何かをプラスしていくものではなく、マイナスの要素をいかに減らすことができるかが大事だと思っています」。

「おいしさへの探求はもちろん、お茶は冷えていないか、お箸の口当たりはどうか、全方位にわたってマイナスの要素を減らしていきたいです。お客さまの立場になって、これでいいのか、もっとよくできないか、毎日悩みはつきませんね」と、笑う渥美さんの目は真剣でした。
▲大凧が舞う5月の「浜松まつり」。ふたりの息子さんの誕生を祝う凧が飾られる
「5代目ということで、レールが敷かれているのは確かです。でも、いつも初代のつもりで仕事をしています。どうすればおいしく食べていただけるか、大切なスタッフと一緒に、これからも変わらずこだわり続けていきたいと思います」。

おいしさの秘訣を声高に語らない渥美さん。そこからはお客さんに食事の時間を楽しんで欲しいという純粋な想いを感じずにはいられません。

いつもより少し余裕をもって、うなぎを食す贅沢なひと時を楽しむ。それがあつみならではの、おいしい食べ方なのかもしれません。
大杉晃弘

大杉晃弘

大阪にて結婚・住宅情報誌の制作ディレクターとして、企業の販促活動に従事。その後、地元浜松へUターン。編集、文章、写真の仕事をしつつ、活版印刷工としても修行中。

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