信州の秘湯「白骨温泉」で、乳白色の湯と山の四季を堪能!

2018.10.31 更新

美しい乳白色の湯で名を馳せる長野県「白骨(しらほね)温泉」は、開湯から600年以上の歴史を誇る名湯。界隈には10軒の湯宿と2軒の日帰り入浴施設が密集していて、目的に応じて湯浴みを楽しむことができます。今回は、日帰り入浴が可能な2つの温泉施設をご紹介。秘湯ならではの美しい山の景色を眺めながら、肌にやさしい白濁の湯を楽しんでみませんか?

濁り湯、飲泉可能、源泉掛け流しの3つを兼ね備えた名湯

長野自動車道・松本ICから車で1時間ほど。乗鞍岳の東山腹から湧き出る「白骨温泉」は、古くから多くの人に親しまれてきた歴史ある湯治場です。

もともとは「白舟(しらふね)温泉」という名前でしたが、大正2(1913)年から新聞連載が始まった中里介山(かいざん)の長編小説『大菩薩峠』の中で、同地を架空の温泉地『白骨温泉』として書いたところ、そちらの名前の方が有名になってしまったのだとか。そのまま「白骨」の名が残り、現在に至ります。
▲山々に囲まれたすり鉢状の土地に、いくつもの温泉施設が密集している。人気の観光地「上高地」からも近く、セットで温泉に立ち寄る人も多いそう

白骨温泉の一番の魅力といえば、乳白色の湯。源泉は透明ですが、湯に含まれている“硫化水素”と“カルシウム成分”が空気に触れることで湯色が白くなるのだそうです。
▲湯が濁っているため、表面から20cmほど下はまったく見えなくなる

乳白色の温泉は強酸性の場合が多く、肌にピリピリ、チクチクとした強い刺激があるのが一般的ですが、白骨温泉は肌にやさしい弱酸性の単純硫化水素泉。婦人病や神経症などに効果があるといわれているほか、飲めば胃腸病や内臓疾患にも良いといわれています。さらに、湯量が豊富なため、白骨温泉ではどこの施設も100%源泉掛け流しが基本。“濁り湯”“飲泉可能”“源泉掛け流し”の三拍子そろっている温泉地は、全国的に見てもとても珍しいそうです。

白骨温泉のシンボル!約70坪の混浴大露天を備えた「泡の湯」

最初に訪れたのは、70坪もある混浴の大露天風呂で知られる「泡の湯」本館。本来こちらは「泡の湯旅館」の宿泊客向けのお風呂ですが、10:30~13:30(14:00退館)の時間帯に限り、日帰り利用ができます。
▲白骨温泉のシンボル的な存在になっている「泡の湯」の大露天風呂。水面から数mの高さにある湯口より大量の湯が注ぐ

白骨温泉の中でも随一の湯量を誇るこちらの宿。なんと、毎分1,730リットル(一般的なサイズの家庭用風呂に換算すると約6.2杯分)もの湯が湧いているというから驚きですよね!
▲「泡の湯旅館」の本館。山々の中にひっそりとたたずむ
▲外来用の入り口。宿の表玄関とは反対側にある

“混浴”と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、こちらは女性でも安心して入浴できるよう、さまざまな配慮がされています。1つは、バスタオルを巻いて入浴できるということ。さらに、脱衣場と大露天風呂の湯舟が専用の階段でつながっているので、中腰のまま移動すれば、全身を見られることなく湯浴みが楽しめます。
▲脱衣場に設けられた女性専用の出入り口。のれんで覆われているので、外から中の様子は見えないようになっている
▲外から見た女性専用の出入り口。右奥は男性用の出入り口で内湯とつながっている

こちらのお湯は青みが強く、水色に近い色。白濁が強いので、体のラインが見える心配はほぼないと言っていいでしょう。それでも不安な人は、持参したバスタオルを巻いて入浴を。万が一タオルを忘れてしまっても、売店で購入できるので安心してくださいね(700円・税込)。
▲広大なので、のんびり湯浴みできる。泉質は、含硫黄-カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩温泉

さて、こちらの湯の具合はというと、入ってビックリ、肌に細かな泡がたくさん付いてくるではありませんか!これは湯に豊富に含まれる炭酸成分で、屋号「泡の湯」の名前の由来にもなっているそうです。源泉は38度前後と低めですが、加温するとせっかくのこの泡が消えてしまうため、源泉かけ流しにしているのだとか。湯加減はぬるめですが、全身にまとった炭酸ガスの泡のおかげで、バッチリ温浴効果を感じることができます。
▲秋は紅葉が見事。見頃は10月中旬頃
▲冬は情緒たっぷりの雪見風呂が楽しめる

秋には、赤や黄色に色づく周囲の樹々と水色がかった湯の色の美しいコントラストを堪能でき、冬には美しい雪景色を眺めながら湯浴みができるのも秘湯ならでは。ひっそりとした森に囲まれているため、リラックス効果も抜群です♪
▲気兼ねなくゆっくり湯浴みを楽しみたい人のために、女性・男性とも専用の露天風呂と内湯も用意されている。写真は女性専用の露天風呂

豊富な湯量を誇る泡の湯では、通常よりも大量の源泉を掛け流すことで、白くなる前の生まれたての透明な湯も楽しめます。加温なしの透明なぬる湯と加温ありの白濁湯に交互に入ることで、温浴効果がアップするそうですよ!
▲男性用の内風呂。手前が透明な湯のぬる湯、奥が加温ありの白濁湯
▲飲泉ができるのも白骨温泉の魅力。源泉ごとに成分が微妙に異なるため、味わいもそれぞれ異なる。こちらの湯は、硫黄の風味や苦味、酸味もかなり強い印象を受けた

男女別行動になってしまいがちな温泉ですが、こちらはカップルや家族でも楽しめるとあって大人気なんだそう。女性向けの細やかな配慮がされているので、混浴デビューにもぴったりと言えますね。野趣あふれる大露天風呂は入る価値ありですよ!

名物は温泉粥!食事もできる日帰り入浴施設「媒香庵」

白骨温泉で日帰り入浴といえば、こちらの「媒香庵(ばいこうあん)」も有名。創業280余年の地元の老舗旅館「湯元齋藤旅館」が手がける、日帰り入浴専用の施設です。営業期間は4月下旬~11月下旬の限定ですが、たったの700円(税込)で気軽に白濁の湯を楽しめます。浴用タオル、バスタオルもレンタルできるので、手ぶらで立ち寄ることもできますよ!
▲「媒香庵」の立派な建物は江戸時代末期のもの。元は庄屋だった当主が暮らしていた自宅を移築したという
▲当時の面影が残る趣深い館内。奥の座敷は食事処になっていて、入浴後にのんびり食事をすることもできる

湯量が豊富な白骨温泉では、施設ごとにすべて源泉が異なります。そのため、“白濁の湯”と一口で言っても、少しずつ色合いが異なるといいます。さらに、季節や気候によっても微妙に湯色が変わるのだとか。

ちなみに、こちらの湯は白濁が強め。訪れた日の湯色はやや緑がかっていて、薄いエメラルドグリーンのような印象を受けました。
▲たくさんの人が入浴した後の方が、空気に触れ、白濁は強くなる。写真(男湯)は朝に撮影したため、色がやや薄め
▲男女とも、内湯はなく露天風呂1つずつのみ。洗い場にはシャワーが4つ付いている。石けんあり、シャンプーなし

泉質は含硫黄-カルシウム・マグネシウム・ナトリウム-炭酸水素塩温泉。源泉が40度前後のため熱々ではありませんが、その分長湯を楽しむことができます。熱めの湯が好きな筆者としては、入った瞬間少々物足りなさを感じたのですが、しばらくするとポカポカと体が温まってくるのが分かりました。「白骨温泉に3日入れば3年風邪をひかない」と言われているのも納得です!
▲細かい湯の花がたくさん浮かんでいる。発泡が強く、さっぱりとした湯ざわり

浴槽は深めで肩までしっかり浸かることが可能。湯船の縁を枕にして寝転ぶと、山の景色を見上げながらの湯浴みも楽しめ、秘湯気分を堪能できますよ!
▲飲泉口があったので試しに飲んでみると、硫黄の香りが口の中にふわり。ほのかな苦味と酸味が感じられた

館内では持ち帰り用のペットボトルを無料で配布していて、湯船の飲泉口から持ち帰ることもできます。
▲湯船の縁に付着した堅い固形物は温泉のカルシウム成分が固まったもの

媒香庵では、温泉だけでなく食事も気軽に楽しめます(9・10月平日、11月は食事お休み)。一番人気は、温泉で作る“温泉粥”付きの「湯の花膳」。飲泉ができる白骨温泉ならではの名物メニューですね!
▲温泉粥、ニジマスの甘露煮、温泉玉子、味噌汁、薬味付きの「湯の花膳」(850円・税込)

水は一滴も使わず、温泉だけで煮て作るという温泉粥。食べると、口の中にふわりと硫黄の香りが広がりました。
「さっき飲んだ温泉と同じ味がする!」
硫黄の香りも苦味もそれほど強くないため、嫌なクセはまったくありません。むしろ、単調になりがちなお粥の味に、温泉の風味がいいあんばいにアクセントを加えていました。
▲塩もわずかに効かせてある。のりの佃煮、野沢菜、梅肉などの薬味を添えて一緒に食べても美味

もう一つの人気メニューは、このあたりの郷土料理である“とうじそば”。季節の野菜やきのこが入った熱々のそばつゆに、そばを浸して(投じて)湯がいて食べるご当地そばです。シンプルにいただくことが多い“とうじそば”ですが、こちらのそばつゆには、鴨ロースと豚バラ肉、山菜、きのこ、油揚げなどの具がどっさり!やや甘めのつゆに、鴨や豚の脂がしみ出し、コクを加えています。
▲一口分に丸められたそばをザルに入れ、つゆでさっと湯がいて食べる「投じ蕎麦」(1人前1,300円、追加そば1人前500円、2人前から注文可能) ※写真は2人前

湯浴みと一緒においしい食事も楽しめる媒香庵。GWや夏休み、紅葉の時期は行列ができるほど混雑するので、朝早めの訪問がおすすめです。
▲湯元斉藤旅館本館の建物。媒香庵から、徒歩5分ほどの場所にある

湯めぐりを楽しみたい人は、観光案内所で日帰り入浴情報をゲットすべし!

白骨温泉にある温泉宿のほとんどは宿泊客向けのサービスを中心にしていますが、日によっては日帰り客向けに温泉を開放しているところも。“その日どこの宿のお風呂が利用できるのか”は、温泉街の入り口にある観光案内所で情報を掲示しています。時間のある方はぜひ立ち寄ってみてくださいね。
▲温泉街の入り口にあり、バス停・白骨温泉停留所のすぐ隣に立つ「白骨温泉観光案内所」。温泉宿や周辺の観光情報はここでゲットできる

肌にやさしく、体もポカポカに温まる白骨温泉。それぞれの施設ごとに少しずつ湯の特徴が異なるので、あちこち入り比べてみるのも楽しいですよ!紅葉や雪景色、新緑など、四季折々の景色を眺めながらの湯浴みは格別です。
▲日別に変動する温泉宿の日帰り入浴情報が掲示されている
(写真・香田はな)
松井さおり

松井さおり

出版社勤務を経て、フリーランスのライター&編集者に。雑誌や書籍を中心に、主に、食・旅・くらしなどにまつわる記事を執筆している。現在は、東京から長野県長野市に拠点を移し、県内外を奔走する日々。(編集/株式会社くらしさ)

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