京都・祇園祭の絶対外さない楽しみ方ガイド!元舞妓さんによるトリビアあり

2018.07.07 更新

毎年7月1~31日の1カ月にわたり開催される「祇園祭」。京都の夏を代表する風物詩であり、日本三大祭の一つとしても知られています。壮麗な山鉾(やまぼこ)をはじめ、夜に浮かび上がる提灯、熱気あふれる神輿担ぎなど、雅さとエネルギッシュさを兼ね備えているのがこの祭りの奥深さ。そんな祇園祭の定番の見どころを、地元っ子や元舞妓さんが教えるとっておきの楽しみ方と一緒にご紹介します!

▲祭りのハイライトのひとつ「辻廻し(つじまわし)」

平安時代から続く伝統の祇園祭

「コンチキチン♪」の祇園囃子が町のあちこちから聞こえてくると、いよいよ京都にも夏がやってきます。祇園祭は京都市東山区にある「八坂神社」の祭礼。例年7月1~31日の1カ月にわたり開催され、市内の繁華街・四条を拠点に、2回にわたる山鉾行事や、各種神事などの行事が執り行われます。

お祭りが1カ月続くだけでも驚きですが、実は世界的にも長い歴史があります。
事の始まりは平安時代。当時は日本各地で疫病が大流行し、大地震などの深刻な災厄にも見舞われる暗黒の時代でした。これを怨霊のたたりと恐れた朝廷は、貞観5(863)年、怨霊を鎮め災厄をはらう「御霊会(ごりょうえ)」を庭園「神泉苑(しんせんえん)」で開きました。
▲四条通りの突き当りから祇園の町を見下ろす八坂神社の西楼門

さらに貞観11(869)年、怨霊を鎮めるために洛中の男児が神泉苑へ神輿3基をおくり、当時の国の数と同じ66本の剣矛(ほこ)を立てて災厄除去を祈願しました。これが現在まで1100年以上続く祇園祭の原形とされています。

祇園祭は、八坂神社の氏子が主催する町衆の行事と、八坂神社が取り仕切る神事に大別されます。なかでも最低限押さえておきたい行事は、町衆行事の「宵山(よいやま)」「山鉾巡行(やまほこじゅんこう)」、神事の「神幸祭(しんこうさい)」「還幸祭(かんこうさい)」の4つ。それぞれの見どころを次の章からご紹介します。

壮麗な山鉾の行列に感動!「山鉾巡行」のスケジュール

山鉾巡行は、祇園祭のハイライトとしてテレビや雑誌でも多く取り上げられる代表的な行事。ビルの高さ6階分ほどにもなる山鉾が四条通、河原町通、御池通を巡行します。実はこの山鉾巡行は「前祭(さきまつり)」と「後祭(あとまつり)」の2回に分けて行われるんです。
▲山鉾が並ぶ様は圧巻!

全部で33基ある山鉾は、「山鉾町」と呼ばれる氏子の33の町会によって保存・運営されています。各町会は前祭と後祭に分かれ、毎年同じ日程で「鉾建て・山建て(山鉾を組み立てること)」を行います。

それぞれの日程は以下。
【前祭】
7月10~14日 鉾建て・山建て(山鉾によって異なる)
7月17日 山鉾巡行

【後祭】
7月18~21日 鉾建て・山建て(山鉾によって異なる)
7月24日 山鉾巡行

前祭では23基の山鉾が登場。7月17日9時に四条烏丸の交差点をスタートし、四条河原町、河原町御池、新町御池を反時計まわりに巡行します。
山鉾の巡行順は、7月2日に行われる「くじ取り式」で決まります。しかし先頭は前祭・後祭ともに毎年決まった山鉾が務めるため、「くじ取らず」とも言われています。
▲前祭の巡行ルート

前祭の先頭を務める「長刀鉾(なぎなたほこ)」は、山鉾の中でも最も注目を集める存在。全基のうち唯一、神の使いとされる人間の子供・生稚児(いきちご)が乗る鉾です。巡行中、生稚児はとても重要な儀式を行います。それが「注連縄(しめなわ)切り」。

八坂神社の神域は、四条麩屋町(しじょうふやちょう)から八坂神社までの東のエリアとされています。そのため、巡行日の早朝に四条麩屋町の四条通りを横切るように注連縄で結界を張ります。

「注連縄切り」とは、この縄を切ることによって神域の結界を破る儀式のこと。巡行中、先頭の長刀鉾が四条麩屋町に差し掛かると、生稚児が大きな刀を「トン」とふりおろしてアーケードの高さぐらいに張られた注連縄を切ります。これによって結界が破られ、山鉾が神域へと突入していくのです。
▲生稚児が乗った長刀鉾。注連縄を切る瞬間に大勢の観客が注目する

一方の後祭では、山鉾10基が登場。烏丸御池の交差点を7月24日9時半にスタートし、前祭のルートを逆に巡行します。

まるで「動く美術館」!京都の街を彩る山鉾の見どころ

33基の山鉾は、全て装飾が異なります。大きく分けて「鉾」「山(曳山/ひきやま・舁山/かきやま)」「傘鉾(かさほこ)」の3種類があり、災厄の元凶・疫病神を寄り集める役割を担っています。鉾と曳山には、「依り代(よりしろ)」と言う高さ10~17mの柱が備えつけられています。
▲大通りを埋め尽くす山鉾と観客

また、舁山では、日本の説話や中国の故事にちなんだ舞台を、御神体となる人形と舞台装置で表現しています。そして「傘鉾」は、その名の通り傘の形をした鉾。「綾傘鉾」と「四条傘鉾」が大通りを賑やかに舞い踊ります。
▲舁山の一つ「鯉山(こいやま)」。中国の故事「登竜門」にちなみ、滝を登ろうとする鯉の姿を描いている

なかでも巨大な鉾それぞれの絢爛豪華は目を見張るほど。金糸・銀糸を贅沢に使って織り上げたたタペストリーや、ヨーロッパからもたらされた貴重な文化財で惜しげもなく飾り立てられています。その様は「動く美術館」とも称されるほど。ひとつひとつの山鉾の豪華な装飾にも注目してみましょう。
▲経済力を蓄えた町衆が「わが町の山鉾こそは」と自身の教養と高い美意識をもって飾り立てたそう。いわば、この山鉾自体が町衆のステータスのようなもの

そしてもうひとつのハイライトが、巡行ルートの交差点で山鉾を90度回転させる「辻廻し」。山鉾の車輪は構造上曲がれないため、車輪の下に竹をしき、水をかけて竹の上を滑りやすくさせることで、山鉾を方向転換させるのです。

音頭取りの「ヨーイヨーイヨーイトセ、ヨーイトセー」の掛け声に合わせて、山鉾を縄でぐぐーっと引っ張り、3回ほどに分けて回転。観客からは、上手に回った山鉾をたたえる拍手と歓声があちこちから沸き起こります。

注連縄切り、山鉾巡行の様子は京都新聞社の動画ライブラリからもどうぞ。
▲1回に平均10分かけて行う辻回し。約60人もの人々が力を合わせて山鉾を動かす様子はダイナミック

なお、山鉾巡行の当日は大勢の人でごった返すため、落ち着いて見るには場所の確保がベター。そんな時は有料観覧席がおすすめです。価格は税込3,180円~10,000円まで。チケットの詳細・購入は京都市観光協会の公式サイトでご確認ください。

また、河原町御池や四条烏丸の交差点は、車道を広く見渡せるので、山鉾全体の様子を見物するにはおすすめのスポット。山鉾は常にゆっくりと移動しているため、山鉾を追いかけながら見物する方法もアリですよ。

艶やかな山鉾が夜の街に一堂に会する「宵山」

山鉾巡行の前3日間には、「宵山」と呼ばれる夜のお祭りが開催されます。正確には前祭・後祭ともに3日前は「宵々々山」、2日前は「宵々山」、前日は「宵山」と呼ばれています。
▲宵山では、山鉾のやぐらに腰かけてお囃子を響かせる

宵山の期間中、完成したばかりの山鉾が各町会の前でお披露目されます。また、陽がおちると「駒形提灯(こまがたちょうちん)」と呼ばれる提灯に明りがともり、各町会が「屏風祭(びょうぶまつり)」と称して、それぞれの町会で保存している屏風や着物、花器などの貴重な文化財を披露します。
▲町会のみならず、個人宅や企業もこぞって屏風祭に参加し、自慢の品を披露する

なかでも、祭りの空気が最高潮に達するのは、前祭の宵々山(7月15日)と宵山(同16日)の2日間。歩行者天国となった車道には屋台が立ち並び、大勢の人がこぞって繰り出します。
▲歩行者天国となる四条通・烏丸通。祇園囃子の調べとともに、風情ある夏の風景が人々を楽しませる

幻想的な宵山は浴衣でそぞろ歩きするのもおすすめです。友人やカップルで夏の風物詩を楽しんでみませんか?
また、前祭の7月10~16日限定で専門のガイドとともに山鉾巡りを楽しめる街歩きツアーも開催されます。1時間程度で祇園祭の歴史や見どころ、トリビアなどを知ることができますよ。

祇園祭の真髄!祭り最大の神事「神幸祭」「還幸祭」

町衆行事に続いて、八坂神社の神事についてご紹介しましょう。
祇園祭の中で最も見ごたえのある神事が、前祭の山鉾巡行と同日7月17日の16時ごろから行われる「神幸祭」。八坂神社の御祭神であるスサノヲノミコト、その妻・クシイナダヒメノミコト、その子供たち・ヤハシラノミコガミの御神霊を3基の神輿にお乗せして、山鉾巡行で清められた各氏子町会を巡りながら、四条寺町にある神様の宿「御旅所(おたびしょ)」へお連れする行事です。
▲八坂神社の舞殿に納められた3基の神輿(写真提供:三若神輿会)

毎年必ず神幸祭を見物するという、地元っ子の河口えりかさんに話をきくと「祇園祭を本当に楽しみたいなら、この神輿もぜひ見ていって」と話します。黄金の神輿がシャンシャンと揺れる様や、輿丁(よちょう/担ぎ手のこと)たちの掛け声、男気あふれる様に、高揚感で胸がいっぱいになるのだそう。
▲スタート地点となる八坂神社の石段の下。ここに3基の神輿と、約2,000人の輿丁が集結する

なかでも見逃せないのが、18時ごろに祇園石段下で行われる出発式。輿丁たちが「ホイットーホイットー」「マワセー!マワセー!」の掛け声も高らかに、3基の神輿を担ぐ様子は圧倒的な迫力!
▲神輿を高らかに担ぎ上げる「差し上げ」が始まると、輿丁も観客も一体となり盛り上がる(写真提供:三若神輿会)

「女性は神輿を担げないけれど、輿丁を見守っているだけで“私たちも参加している”と熱い気持ちになれます」と河口さん。「勇壮」「雄々しい」「豪勇」といった言葉がぴったりと当てはまるお祭りです。
▲八坂神社前から御旅所までの道のりは、男たちの熱気であふれかえる。大勢の人が押し寄せるので、ケガや事故にご注意を(写真提供:三若神輿会)

そして、後祭の山鉾巡行と同日の7月24日に行われるのが「還幸祭」。これは御旅所で7日間おやすみになった御祭神を、再び八坂神社へお還しする神事です。17時ごろから3基の神輿が御旅所を順次スタートし、22時ごろに八坂神社へ到着。威勢のいい掛け声が上がる中、各神輿が境内の舞殿を3周ずつまわって祭りはクライマックスを迎えます。
▲還幸祭のクライマックス!八坂神社の境内は大いに盛り上がります(写真提供:三若神輿会)

そして深夜0時になる前に、境内の明りが全て消え、周囲は漆黒の闇に。神輿から御神霊を本殿にお遷しする「御神霊遷し(みたまうつし)」の神事を行います。「この時ばかりは周りは何も見えず、不思議と虫の音も鎮まるんですよ。静寂のひとときは鳥肌が立つほどに神秘的。神様の存在を身近に感じる瞬間です」と河口さんは語ります。

祇園祭限定のお土産・グルメにも注目!

お祭りを見学すれば、お土産も欲しくなりますし、お腹もすきますよね。ここでは祇園祭期間中にしか手に入らないお土産やグルメもチェックしておきましょう。

各山鉾町で有料で配られるのがちまき。といっても食材不使用で食べるものではなく、玄関に飾るありがたいお守りです。祭りの由来にならって厄除けのご利益が基本ですが、山鉾によっては「安産祈願」や「縁結び」などもあるそう。
各和菓子屋より食べられるちまきも販売されるので、こちらもチェックを。
▲ちまき(500円~1,000円程度)を求めると山鉾に乗せてもらえる町会もあるので、係の人に確認してみよう。ほか、山鉾町限定のお守りや手ぬぐいもある

また、八坂神社では祇園祭限定で「御霊会朱印」という御朱印(500円)を授与しています。祇園祭の期間中に京都を訪れた際は、ぜひゲットしておきたいレアな御朱印ですね。
▲京都の夏の定番。鱧を湯引きし梅肉を添えた「鱧落とし」も人気料理

祇園祭の期間中に京都を訪れるなら、鱧料理もぜひ。鱧は京都の夏に欠かせない食材であり、祇園祭は別名「鱧祭(はもまつり)」と言われるほど。例えば京都の寿司屋に並ぶ鱧寿司は、ふっくらとした身と甘辛く味付けしたシャリが相性抜群で、数多くの舞妓さんにも愛される逸品ですよ。

元舞妓さんだから知っている、祇園祭のトリビア

最後に、元舞妓さんで、現在は四条縄手通りのお茶屋バー「京都祗をん はるちん」のおかみさん・はるちんさんに、花街ならではの祇園祭の過ごし方を教えていただきました。

7月、祇園祭の関係者や氏子は“きゅうり”を食べないのだそう。その理由は八坂神社の神紋と、輪切りしたきゅうりの断面図が似ているから。祭り期間中にきゅうりを食べることは、神紋を食べること、恐れ多いこととされているのです。
▲きゅうりの断面にも見える、八坂神社の社紋

もう1つ、花街で過ごした元舞妓さんらしい願掛けエピソードを。御祭神が御旅所でおやすみになっている7月17~24日の間、各花街から御旅所までの道を、言葉を発することなく毎日1往復する「無言参り」ができたら願いが叶うとされています。
もし道中でお客さんと言葉を交わしてしまったら最初からやり直し。はるちんさんも、かつては無言参りをしたことがあるそうです。

1カ月かけて行われる壮大なお祭りは、定番行事だけでなく、いろんな見方ができるのがポイント。何度も足を運んで、祇園祭を心ゆくまで堪能してみてはいかがでしょうか。
<神事以外の問い合わせ先>
京都観光全般について 
075-213-1717(京都市観光協会)
山鉾について 
050-5548-8686(ハローダイヤル6月1日~7月31日8:00~22:00)
中河桃子

中河桃子

編集・ライター、京都出身滋賀育ち。大学在学中に京都でライター業を開始。以後、関西・東京の出版社や制作会社で、グルメ・エンタメ・街情報を中心に18年以上携わる。新しいもの・おいしいもの・興味のあることは自分で体感しないと気が済まない現場主義。今は酒蔵巡り・和菓子作り・美術鑑賞・旅にハマり中。

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