広島の秘境「三段峡」は五感が刺激される絶景スポットだった!

2019.04.25 更新

西日本有数の秘境として知られる広島県安芸太田(あきおおた)町の「三段峡(さんだんきょう)」。国の特別名勝にも指定され、穏やかな清流とダイナミックな景観が愉しめる全長約16kmの大渓谷です。今回はたくさんの見どころの中から比較的手軽で、しかも王道と言われる「黒淵(くろぶち)」コースを歩いてきました。五感が心地よく刺激されるので、癒やしを求めている人は必見ですよ!

正面口から片道徒歩約50分で大自然の芸術品を観賞できる!

三段峡は広島市の中心部から北西に車で約1時間。島根県との県境付近にあり、西中国山地国定公園内に位置する県内有数の景勝地です。入口は正面口のほか、車で45分ほど離れた場所に「水梨(みずなし)口」もありますが、今回はオーソドックスに正面口からのスタート。正面口は場所も分かりやすいので、初めて訪れる人にもおすすめです。
▲土産物店や宿などが軒を連ねる三段峡の正面口

かつて、正面口は広島市安佐北(あさきた)区にある可部(かべ)駅とJR可部線によって結ばれていましたが、この区間は残念ながら2003年に廃線となりました。マイカー以外のアクセスは、広島バスセンター(広島市中区)から三段峡行きの高速バス(約1時間15分)を利用します。
▲鉄道ファンにはたまらない(?)正面口付近にある三段峡駅の跡

さて、三段峡について一言で簡単に説明すると「大自然が残る変化に富んだ渓谷」。全長は約16kmもあり、すべてを歩こうと思ったら5時間以上はかかる大渓谷です。
2015年にはフランスの旅行専門誌「ブルーガイド」で最高格付の三ツ星を獲得しています。広島県内に限れば、世界遺産の「宮島」や「原爆ドーム」と並ぶトップ3の世界的観光地です。
▲あきおおた里山ガイドの小林久哉(ひさちか)さん

三段峡がある安芸太田町では、豊かな自然を資源に「森林セラピー®の町」として魅力を発信しています。そこでガイドとしても活動する小林さんは、町内の自然を知り尽くす生き字引のような人。今回は、そんな心強い助っ人に三段峡を案内してもらいます。
なお、安芸太田町で実施している「森林セラピー®ツアー」(有料/要予約)は小グループが主な対象ですが、希望すれば1人からでも対応可能。三段峡以外でも町内の各地で実施していますよ。
(本記事の内容は森林セラピー®ツアーの内容とは異なります。詳しくはホームページをご確認ください。)
▲正面口から先は遊歩道のみで車両は進入禁止

「今回は、森林セラピー®でも取り入れている黒淵(くろぶち)を目指す道順を歩いてみましょう。片道約3km、ゆっくり歩いて片道約50分です」と小林さん。これは三段峡のもっともオーソドックスな観光コースで、景観の醍醐味もしっかり楽しめるとのこと。期待が高まります!
▲葉っぱの真ん中に花や実をつける「ハナイカダ」

歩き始めてほどなくすると、小林さんが面白い植物を教えてくれました。三段峡には都会の暮らしの中では見かけることがない珍しい植物もたくさん自生していて、この「ハナイカダ」もそのひとつ。葉っぱの真ん中にちょこんと乗っているのはまだ若い蕾で、初夏には淡い緑色の小さな花を咲かせるそうです。
▲な、何かいる……!遠吠えが聞こえる「狼石(おおかみいわ)」

正面口から3分ほどの場所で「何か聞こえませんか?」と、立ち止まった小林さん。耳を澄ませると「ウォォ~ン」と獣の遠吠えのような音が!
実は渓流の音が岩に共鳴して、あるポイントだけで聞こえるそうです。その名も狼石。知らなければ通り過ぎてしまいそうな場所なので、これは要チェックですよ。よく見ると岩の形も口を開けた狼に見えなくもありませんね。
▲QRコードを読み込めば解説も見ることができる!

遊歩道には、随所にQRコードをプリントしたプレートがあちらこちらに設置されていました。スマホで読み取ると、その場所についての解説が表示されるので、活用すれば散策の楽しみが倍増しますよ。
▲正面口から5分ほどの場所にある「姉妹滝(しまいだき)」

滝や淵、奇岩など三段峡には多くの見どころがありますが、その代表的な景観の一つとされるのがこの姉妹滝。山の中腹から流れ落ちる滝で「水量によって流れる滝の本数が変わります。普段は2本ですが、今日は水量が多いので三姉妹ですね」と小林さん。太陽の位置によっては虹が見えることもあるそうです。
▲美しい渓谷に沿って曲がりくねった遊歩道をずんずん進む

遊歩道は多少の勾配はあるものの、でこぼこも思ったより少なく登山ほどハードではありません。とはいえ断崖が迫って来たり、すれ違うのがやっとという細い場所もあるので、結構スリリングです。手すりもないので、眺めばかりに気を取られていると落っこちちゃいますよ。
▲これは何のおまじないだろう……?

路肩に尖った石が並べられていました。何だか異様なので小林さんに尋ねてみると「何もないと歩き疲れてここに腰を下ろす人がいるんです。それだと危ないので、座れないように石を並べているんです」とのこと。なるほど、そう言われれば納得。
▲白いブラシのような「シライトソウ」

緑いっぱいの渓谷の中で、ひときわ目立っていたのがこの花「シライトソウ」。もう歩き始めて10分以上が経ち、そろそろ疲れも出はじめていたので、可憐な姿に癒されます。
▲崖を流れ落ちる「赤滝(あかだき)」

遊歩道のすぐ横を流れる赤滝が涼気を運んできてくれました。「珪藻類が繁茂することで岩肌が赤く染まり、赤滝と呼ばれるようになりました」と小林さん。滝の下に立つと飛沫を浴びることができ、夏場はきっと気持ちいいはずです。そして赤い色もきれい!
▲秘境ムードが高まる「庄兵衛岩(しょうべえいわ)」

三段峡には5カ所の絶壁が並立する「五立(ごたち)」と呼ばれる場所があります。庄兵衛岩は五立の中でも最も川に近い絶壁で、遊歩道は巨岩を貫いています。10mそこそこの長さですが、中は真っ暗で、ノミでくり抜かれた跡があります。入るときはちょっとドキドキします。
▲川に横たわる「蓬莱岩(ほうらいいわ)」は70トンを超える大きさ

「庄兵衛岩」を過ぎると勾配がきつくなり、川の流れも速くなりました。すると、小林さんが大きな岩を指さし「これは『蓬莱岩』といって、川床の岩が浸食されてできたものなんです。中国で仙人が住むといわれる蓬莱山に形が似ていることから名付けられたんですよ」と、教えてくれました。その形状から崩落した岩かと思いましたが、川床を形成する岩の一部とは!さすが大自然の力は偉大です。
▲いよいよ目的地が近づいてきた

「蓬莱岩」から5分ほど歩くと「黒淵」を案内する看板が現れました。ここまで、数々の景観を楽しんできましたが「三段峡の中でも随一」とまでいわれるクライマックス名所がもうすぐ。1時間近くも歩いたのでそれなりに体力も消耗しましたが、何だか足取りも軽くなります。そしてついに!
▲黒淵に到着。ここは渡舟(一般往復500円・片道300円、小中学生往復400円・片道200円 ※すべて税込)の乗り場

やっと黒淵に着いたかと思ったら、遊歩道が行き止まりに。あれ~と思っていると「迂回して遊歩道でここを越えることもできるのですが、黒淵はぜひ渡舟から楽しんでください。これまでの大自然とはひと味違う神秘的な景観に感動しますよ」と、小林さん。いやぁ、そんなこと言われたら、もうワクワクが止まりませんよ。でも「感動する」なんて、ちょっとハードルを上げすぎじゃないですかねぇ……、とここまではまだ半信半疑。

まさに世界レベル!黒淵は期待以上の見応えだった

この渡舟乗り場から眺める黒淵も悪くはありません。切り立った絶壁と原生林が織りなす淵は秘境のムードたっぷりです。が、せっかくなので、おすすめの渡舟観光を楽しむことに。
▲渡舟がいない場合は、紐のついた棒を引っぱって呼ぶ

ところが、渡舟の乗り場なのにお目当ての渡舟がいません。あれっ?と思って、ふと見ると「渡舟の方は前の棒を二、三度強く引っぱって下さい」の看板が。どうやら運航時刻表はなく、これが呼び鈴になっているようです。てことで、グイッグイッ。
▲すると、断崖の影から音もなく渡舟が登場

この雰囲気やシステムも何だかのどかでいいですね。しかも絵になる。もっとも、この日は観光客の少ない平日だったため、乗り場には渡舟がいなかったようですが、新緑や紅葉のハイシーズンには数隻の渡船がひっきりなしに運航しても1時間待ちになることがあるそうです。
▲渡舟は天候や増水状況等によっては運休となる場合もある

やって来たのは15人ほどが乗れる大きさの渡舟でした。船外機は付いているようですが、音がしなかったことから普段は使わないようです。つまり基本的には人力。小さな船体なので注意しながら乗り込んで、さぁ出発!
▲渡舟から乗り場の方を振り向いてみた。黒淵に湛えられた水は鏡のよう

渡舟は水面を滑るように進み、振り返ると先ほどの乗り場が断崖の間に。黒淵は最も深いところが水深約5mもあり、水の色が黒く見えることから名付けられたそうですが、この日は周囲の緑が映り込んでエメラルドグリーンに見えました。
▲切り立った断崖は迫力満点

船頭さんが竿で川底を押してゆっくり進んで行きます。そして、断崖の間を抜けて対岸まで一直線で……、なんて野暮なことはしませんよ。わざわざ断崖のすぐ下まで接近してくれて、自然が刻んだ岩肌を間近に見せてくれました。
▲中国の「桂林」にたとえられる山水画のような景観

船上からの黒淵観光は、周囲の時間が止まっているかのような感覚で幻想的。本当にうっとりする美しさです。三段峡が世界レベルの絶景として評価を受けたのは、きっとこの景観があったからに違いない、と勝手に納得してしまいました。さらに、その美しさに彩りを加えるのが紅葉シーズンです。
▲秋の黒淵は1年の中でもひときわ美しい

10月下旬~11月中旬には周囲の鮮やかな紅葉が水面を赤や黄色に染め、もう見とれるばかりの美しさとのこと。秘境感も格別です。ん~、うっとり。
▲黒淵を渡って茶店がある対岸に到着

黒淵渡舟は5分ほどの観光でしたが、見応えは充分でした。非日常の時間も味わえて、癒しを求めている人にはピッタリですよ。また今度いつか乗ろう……、って、往復チケットにしたから帰りもまた乗るけどね。

茶店で黒淵を眺めながら食事も

渡舟を下りると、すぐのところに茶店の「黒淵荘」があります。
▲黒淵荘は三段峡の中にある唯一の休憩スポット

ドリンク類やうどんなどの軽食があり、トイレもあります。三段峡には他にトイレはないので休憩はここで。さて、何をいただこうかと考えていると、渡舟で一緒に渡った小林さんから「名物は流しそうめん。絶品ですよ」とアドバイス。
▲「流しそうめん」(税込700円)は春と夏だけ

三段峡の冬は深い雪に閉ざされるため、黒淵荘の営業は新緑の4月中旬から11月下旬の紅葉シーズンが終わるまで。流しそうめんはその中でも期間限定で提供しているそうです。
▲「ヤマメの串焼きとむすびのセット」(税込1,000円)

清流育ちのヤマメを店頭で炭火焼きにしています。こちらも春と夏だけの限定メニューで、ヤマメは単品(税込700円)での注文もOK。
▲超軟水で味わうそうめんは絶品

黒淵荘で使用している水は「日本一の名水」とも言われる三段峡の湧水で、含有ミネラルが9mg/Lという世界的に見ても珍しい超軟水。すぅ~っと喉を通る滑らかさで、胃腸にもやさしい水です。食材の味を引き立てることでも知られていますよね。その超軟水で食べるのだから、そうめんが美味しくないわけがない。つゆの味もめちゃくちゃ美味しくて、するするっといくらでも喉を通っていきます。
▲スリリングな吊り橋も

食後は黒淵荘の周辺を散策。すぐ裏手には遊歩道と繋がっている赤い吊り橋があり、歩いてみると揺れること揺れること!本気でビビってしまいました。
▲遊歩道から川原に下りて自然をもっと身近に感じる

三段峡は美しい景色はもちろん、せせらぎや野鳥の声、草花や大地の香りなど癒しの要素がいっぱいでした。寄り道で遊歩道から外れて森の中に入ったり川原に下りたりすれば、日ごろ溜まったストレスも吹っ飛びますよ。ぜひ、その素晴らしさを体感してみてくださいね。
廣段武

廣段武

企画から取材、撮影、製作、編集までこなすフリーランス集団「エディトリアルワークス」主宰。グルメレポートの翌日に大学病院の最先端治療を取材する振り幅の大きさと「NO!」と言わ(え?)ないフレキシブルな対応力に定評。広島を拠点に山陽・山陰・四国をフィールドとして東奔西走。クラシックカメラを語ると熱い。

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