軽井沢焼きチーズカレー/全国カレー巡礼の旅Vol.3

2015.08.18

今や世界中で愛されるカレー。しかし、ひと言でカレーといっても日本人に馴染み深い欧風カレーに始まり、スープカレーやキーマカレー、さらには独自の進化を遂げた個性派まで、カレーの世界というのは本当に奥深いもの。

この企画では、これまで7,000店舗以上のカレー店を制覇したカレーの第一人者・井上岳久先生(株式会社カレー総合研究所代表取締役)と、私、カレー初心者ライター・井上こんの“ダブル井上”で全国の名店カレーを食べ歩き、先生の解説とともに地域性や歴史背景も交えてさまざまなカレーを紹介していきます! 前回は金沢の名物カレー「金沢カレー」をご紹介しました。さてさて今回はどんなカレーが登場するのでしょうか……?

リゾート地はカレーで有名?

第3回目となる本日は長野県・軽井沢からお届けします。世界的に有名な避暑地でありながら、東京からは約1時間というアクセスの良さ。日がな都会の片隅の湿気くさい部屋で原稿に勤しむ身に、軽井沢の澄んだ空気が染み渡ります。
こん「う~ん、空気がキレイ。こびりついた邪気が祓われていくようです。さて先生、今日はどんなカレーですか?」
井上「ヒントは……ズバリ『とろ~り』です」
こん「と、とろ~り?」
井上「そう、とろ~り」
突如、井上先生から出された謎のヒント。“とろ~り”なカレーとは一体……?
井上「ところで、ここ軽井沢をはじめ日光や清里、箱根などのリゾート地はカレーで有名なのは知っていますか?」

こん「え、なぜリゾート地でカレーなんですか?」
井上「現在リゾート地と呼ばれるところの多くは、明治時代に富裕層が別荘を建て始めたことが始まりなんです。別荘が増えリゾート化するにつれ高級ホテルが参入してくる。箱根でいえば富士屋ホテル、日光でいえば金谷ホテル、閉業してしまったけれど、ここ軽井沢でいえば三笠ホテルが有名ですね」

こん「ふむふむ」
井上「ホテルといえばやはり洋食=カレーがメインでしたからね。次第にレベルの高いカレーがリゾート地で根付くようになった、という背景があります」

こん「そういえば、リゾート地のホテルって、ホテルブランドが付いたレトルトカレーを出しているところも多いですもんね」

チーズ工房の直送チーズだから、おいしいに決まってる!

軽井沢駅から歩くことおよそ6分。こちらのコテージ風の建物が今回お邪魔させていただく「アトリエ・ド・フロマージュ 軽井沢ピッツェリア」さんです。
こん「あ、これ!」
井上「そうです、今日の目的はこの『焼きチーズカレー』です。ほら、チーズが“とろ~り”してるでしょ」
こん「むあ~想像しただけでよだれが」

国際チーズコンクール最高賞の受賞歴もある人気チーズ工房「アトリエ・ド・フロマージュ」の系列店として、22年前、ここ軽井沢にオープンした同店。工房から仕入れたチーズを使用したスイーツやチーズフォンデュなどこだわりのチーズ料理が堪能できるお店として、軽井沢を訪れる人々から愛されています。
外観と同じく店内のインテリアもすべてウッディに統一。「モダン」や「アーバン」もいいけれど、こんな風に自然と肩の力が抜ける空間ってホッとしちゃいます。
さて、こちらがお店一番人気の「焼きチーズカレー」。シーズン中にはこのカレー目当てのお客さんで行列ができることもあるそう。このカレーのどこが素晴らしいって……
……ん?
んん?
んおおお! なんてフォトジェニックな。

そう、これこれ。この惜しげもなく乗せられたチーズがたまりません。チーズへのこだわりを同店チーフの小野寺さんが教えてくれました。
小野寺さん「このメニューには、モッツァレラチーズ・ゴーダチーズ・硬質チーズの3種類をブレンドしたものを使用しています。東御(とうみ)市の工房から取り寄せている硬質チーズは熟成に半年以上かかるのですが、その分濃厚な旨みを感じていただけるはずです」

こん「聞いているだけで口元が緩んできます。先生、私たちも熱いうちにいただきましょう」
井上&こん「いただきまーす!」
こん「本当だ、チーズが濃い! カレーに負けていませんね。野菜も形がなくなるまで煮込まれていて……あと、何というんでしょう、デミグラスのような大人な味がします」
井上「たしかにデミグラスに近いかも。あとはこのシズル感! たまりませんねぇ」

毎日3時間以上煮込むルーの材料には、工房から出るホエー(乳清)を飲ませて育った長野産ホエー豚を使用するこだわりっぷり。さすがチーズ屋さんです。また、旨みだけを味わえるようにとあえてペーストにかけてから煮込む鶏肉もポイント。旨さの秘密は、ダブルスープならぬ“ダブルエキス”にあり!

北九州生まれの「焼きカレー」がなぜここに?

こん「(フゥーッフゥーッ)そういえば、焼きチーズカレーの認知度って全国的に高いんですか?」

先生「うん、それにはまず『焼きカレー』の説明が必要ですね」

こん「え、焼きカレー?」
先生「そう。焼きカレーの発祥は北九州の門司港(もじこう)なのですが、ほかの土地ではあまり知られていませんでした。それがなぜ全国区になったのかというと、焼きカレーの専門店『伽哩本舗(かりいほんぽ)』が横濱カレーミュージアム(現在は閉館)に出店したことがきっかけです。その後、焼きカレーは世間に浸透しましたね」
こん「なるほど! あの~今さらなんですが、“焼きカレー=普通のカレーライスを焼いたもの”という認識でいいんでしょうか?」

井上「ただカレーを焼くだけじゃありませんよ! 基本的には『ご飯・カレー・チーズ・生卵』、これらを400~500度のオーブンで一気に焼き上げたものを指します。ちなみに、よくカレードリアと混同する人がいるんですが、カレードリアはご飯の上にカレーをかけ、オーブン等で焼いたものです」
こん「白状すると、私もカレードリアとの違いを分かっていませんでした(笑)」

井上「こんさんも……。話を戻すと、焼きカレーの認知度が高まったことで、最近では独自のアレンジを加えたものが増え、全国的に焼きカレー文化が発展している傾向にあるんです。たとえば野菜を乗せたり、その土地ならではの食材を使ったり。こちらのお店では特にチーズに力を入れているわけですね」

こん「焼きカレー界はまだまだ伸びしろありってことですね!」

さて、それではそろそろ本日の格言へまいりましょう!
じゃんっ!

井上「リゾート地に名カレーあり!! 軽井沢はシズル感に注目」

こん「チーズ屋さん自慢のカレーを食すべし」

井上「こんさん、やっと格言っぽさが出てきたんじゃない(笑)」

こん「とりあえず“べし”をつけておけば格言ぽいかと思い」

「夏の軽井沢」なんてどこ吹く風。シーズンを問わず全国からファンが訪れる同店には、人気工房こだわりのチーズを堪能できる絶品カレーがありました。美味しい空気と美味しいチーズに、みなさんもとろけちゃってくださいね!
はい、チーズ! 「アトリエ・ド・フロマージュ 軽井沢ピッツェリア」さん、ありがとうございました。

井上岳久(カレー大學学長/株式会社カレー総合研究所代表)

カレー業界を牽引する、業界の第一人者。横濱カレーミュージアム責任者を経て現職に至る。カレーの文化や歴史、栄養学、地域的特色、レトルトカレーなど、カレー全般に精通。レトルトカレーは全国から2,000種類を収集し試食している。著書に『一億人の大好物 カレーの作り方』『国民食カレーに学ぶもっともわかりやすいマーケティング入門』など多数。


井上こん

井上こん

1986年生まれのフリーライター。「Yahoo!スポーツナビDo」「SPA!」「nomooo」「ウートピ」などのWEBメディアや雑誌「散歩の達人」などで執筆。

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