食べるエメラルド!? つるんと美味しい秋田の食材「じゅんさい」の謎に迫る

2018.06.23 更新

鮮やかな緑色の楕円(だえん)形の葉と、それを包み込むゼリー状の「ぬめり」。秋田の特産「じゅんさい」はその不思議なビジュアルとは裏腹に、つるっとした喉越しやぷるぷるした食感がたまらない食材です。その正体を確かめるべく、生産量日本一を誇るじゅんさいの里・三種町(みたねちょう)に行ってきました!摘み採り体験から絶品グルメまで、じゅんさいの魅力を余すところなくご紹介します。

▲不思議なビジュアルの「じゅんさい」

そもそも「じゅんさい」とは?

「じゅんさい」とは、スイレン科の植物で根が水中を横に這い、水面に葉を浮かべる水草のこと。沼に縄のように細長く生えていることから、かつては「沼縄(ぬなわ)」とも呼ばれていました。中国では古くから薬膳料理の食材として重宝され、日本でも「万葉集」に記述が残っているほど歴史のある食材です。
▲じゅんさいの摘み採りをしている農家さん

じゅんさいは水面に浮かぶ葉っぱが食用になるのではなく、水中にある新芽のみを摘み採って食材にします。最大の特徴は葉を包み込んだゼリー状の「ぬめり」。外敵の食害や病原菌などから守る役割があり、太陽の光にぬめりを持った緑の葉がキラキラ輝く様子から「食べるエメラルド」とも呼ばれています。
▲じゅんさいの収穫期は5〜8月頃で、特に6月が最盛期となる

そんなじゅんさいの産地として有名なのが、秋田県北西部に位置する三種町。JR秋田駅から車で約1時間ほどのところにある自然豊かな町です。年間数百トンもの収穫量を上げているとのことで、「じゅんさい日本一の特産地(※)」として町をあげてPRに取り組んでいます。
※農林水産省「地域特産野菜生産状況調査」より
▲水田と青空が美しい初夏の三種町

その三種町でじゅんさいの摘み採り体験ができると聞きつけて、実際にこの目で宝石に例えられるほどの美しさを確かめるために出かけることにしました。

摘み採り体験へGO!

▲ピンクののぼりが目印の観光情報センター

じゅんさいの摘み採り体験は事前予約(電話 or メール)が必要です。体験当日はJR鹿渡(かど)駅より車で約5分、道の駅「ことおか」敷地内にある観光情報センターで受付をします。
摘み採り体験は大人1人2,000円(税込)でなんと3時間摘み採り放題(もしくは渡されたバケツが一杯になるまで)。事前に用意するものは特になく、基本は手ぶらでOK。ただ沼地に入るので、靴は長靴もしくはスニーカーをおすすめします。また、飲み物の準備や帽子などの日除け、虫除け対策もした方がよいです。
※天候によっては雨具が必要になります
▲氏名や住所、摘み採り経験の有無などを紙に書く

観光情報センターが管理する摘み採り体験場所は全部で8箇所で、三種町にある農園にお邪魔して体験させてもらいます。その時の空き状況などによって体験できる場所が決まるので、スタッフさんに確認しましょう。
▲だんだんと山奥に向かっていく

どの農園も道の駅「ことおか」から車で20分前後ほどだそうですが、今回は一番山奥にある農園に案内してもらいました。これは楽しみ。
※通常は観光情報センターで農園までの道を聞き、自分の車で向かいます(電車の場合はタクシー)
▲里山・志戸田(しとだ)園の「じゅんさい沼」

山道を進むと、今回お世話になる里山・志戸田園さんの体験農場に到着。じゅんさいだけではなく、米やブルーベリーなどその時々の旬な作物を収穫体験させてくれる人気の農園です。笑顔で迎えてくれたのは、じゅんさい生産者の志戸田義友(よしとも)さん。よろしくお願いします!
▲「よぐきてけだなぁ」と志戸田さんの秋田弁に癒される

まずは志戸田さんによる事前レクチャー。じゅんさいは一畳ほどの長方形の木舟に乗り、水深50~60cmほどの沼の上を進みながら摘み採りを行います。長い木の棒を前方の水底に軽く挿し、手前に寄せると前進。左右に進みたい場合は、棒を進みたい方向に挿して角度を調整しながら操縦するとのこと。
▲小舟に乗って手摘みする昔ながらの収穫方法

慣れてきたら、水上を移動しながら沼に眠る新芽を探します。ぬめりが反射して水中が見にくい場合は、太陽を背にして影を作るとよいのだとか。
▲新芽発見、のようですがここからだとよくわからない…

お目当の新芽を見つけたら、親指の爪でぷちっと切って摘み採り完了。この時、「赤ちゃんじゅんさい」と呼ばれる新芽にくっついた小さな茎も一緒に摘み採るのがコツと志戸田さん。
▲ぬめりが多くついている「赤ちゃんじゅんさい」

一通り摘み採り方法を聞いたところでやってみます!
▲木舟で水上散策するだけですでに楽しい

木の棒を頼りに、沼をゆるりと進みながらじゅんさいを見つけます。取材で訪れた5月の秋田は気温も過ごしやすく、のどかな風景の中に木舟を浮かべるのがなんとも情緒深い。農家さんが身を乗り出して黙々とじゅんさいを摘み採る姿は、三種町の初夏の風物詩になっているそうです。
▲水中に眠る新芽をひたすら探す

じっと水中を見ながら新芽を探しますが、これがなかなか見つからない…。あちこちに生えているようですが、まだ目が慣れていないせいか最初は予想外に苦戦しました。
▲小舟からの視点

ようやく新芽を発見!まだ葉が開く前の状態で、くるくると包まれた楕円形が目印です。教わった通り、親指の爪で摘み採ろうとしますが、じゅんさい特有の「ぬめり」で指が滑ってしまい、なかなか難しい。
▲水中の新芽。「ぬめり」が葉だけではなく茎全体にもあることがわかる

プチっと摘み採り、念願のじゅんさいをゲット!指で少し触れるとツルっ、プルっとしており、たっぷりのぬめりが付いていることがわかります。
▲「赤ちゃん」付きのじゅんさい
▲糸を引くほどのぬめり

一度コツを掴んでしまえば、あとは効率を追求するのみ。だいたい新芽がどこらへんに潜んでいるかと、親指の腹あたりでじゅんさいを摘む感覚に慣れるとスピードがぐんと上がってきます。さぁ、大量収穫を目指してひたすら摘み採っていきますよ~。
▲じゅんさいの摘み採りに全国から人が集まる

この日の摘み採り体験は一番乗りでしたが、少し経つと続々とお客さんがやってきました。志戸田さん曰く、約7割が女性やカップルの申し込みらしく、県外からのリピーターも多いのだとか。

また、毎年7月1日には「世界じゅんさい摘み採り選手権大会」というユニークなイベントも開催。1時間の制限時間内にどれだけ多くのじゅんさいを摘み採れるかを競うシンプルな大会です。本当は6月31日(ジュンサイ→ジューンサイ)にしたかったが存在しないため翌日の7月1日になったという面白エピソードつき。みなさんの底知れぬじゅんさい愛が伝わってきますね。
▲優しく見守ってくれる志戸田さん

じゅんさいの成分は98%が水分と言われています。「綺麗な水が流れる自然環境でないと良質なじゅんさいは育たない」と志戸田さん。ここ三種町は古くからじゅんさいの自生する沼地が多かったそうですが、その背景には豊かな水資源と美しい自然環境が関係していたのですね。
▲途中、師匠のチェックが入るも「合格!」とセーフ

沼の上を小さな舟でゆっくり進み、たまに水の中に手を入れてじゅんさいを摘む。まだ虫の音も聞こえない初夏の森はとにかく静かで、水のパシャパシャとした音だけを聞いていると心が洗われるようです。
▲ちょっとセンチな気分にさせてくれる木船の旅

と感傷に浸っていたせいか、自分で摘み採ったじゅんさいはややボリュームが物足りなく終了しました。「採り子」と呼ばれるじゅんさいの摘み手にかかれば、1日でバケツ5杯も採ってしまうほどのスピードだそうで、まだまだ修行が足りないと痛感しました。
▲摘み採ったじゅんさいは水の入った袋に入れてお持ち帰り

ちなみに同じ姿勢で長時間作業をしていたので、体の固すぎる私は小舟から降りた後、しばらくまともに歩けませんでした…。一見のどかで風情ある風景に憧れてしまいますが、一日中作業をしている農家さんのすごさがわかる貴重な体験。とても楽しかったです!
▲足がバキバキで動けない私

じゅんさいグルメを堪能できる「さくら亭」

摘み採り体験の次は、そのじゅんさいを使った料理を食べに行きます!じゅんさいグルメでまずおすすめしたいのが、秋田自動車道 八竜(はちりゅう)I.Cより車で約1分のところにあるお食事処「さくら亭」。普段は馬肉料理をメインにふるまうこちらのお店では、6~8月いっぱいまで生のじゅんさいを使った料理を味わうことができます。
※事前予約が必要です
▲隣が馬肉・和牛の直営店になっている「さくら亭」

「さくら亭」の一番人気メニューは「じゅんさい鍋」。地鶏ベースのだしにナス、ネギ、ミズ(ウワバミソウ)、シイタケ、地鶏、郷土料理「だまこもち」、そしてじゅんさいを入れた具沢山のお鍋です。
▲じゅんさい鍋(一人前1,800円・税込)

鳥だしのさっぱりして飲みやすいスープと具の相性が抜群で、とても美味しい!特にだまこもちはだしがしっかり染み込んでいて、熱々でいただけます。じゅんさい摘みで冷えた体を癒すために、地元農家さんは真夏でもオーダーするほどの人気ぶりです。
▲ツルツル食感のじゅんさい

じゅんさいは「食べる直前に入れるといい」とのことで、鍋にさっとくぐらせる程度で口にいれると、少しコリコリした食感とツルツルののどごしを楽しむことができます。

地元食材をふんだんに使ったお鍋だけに食べ応えも満点。シャキシャキのネギやミズ、モッチモチのだまこもちに負けず、じゅんさいが良いアクセントになっていました。
▲じゅんさい丼(1,200円・税込)

続いて人気のメニューが「じゅんさい丼」。実は三種町は梅の生産も盛んで、じゅんさいと梅を同時に味わえる趣向を凝らした一品。たまごの黄色と梅の赤とのコントラストが綺麗です。じゅんさいはご飯に散らしているだけかと思いきや…。
たまごを開くとたっぷりのじゅんさいが!「食べるエメラルド=宝物」をイメージして、たまごのベールで大事に包んでいるそうです。たまごの甘みと梅・酢飯の酸味、そしてじゅんさいのぷるんとした食感が合わさってやみつきになります。
▲酸味と甘みと食感が絶妙なじゅんさい丼。わさび醤油をたらすと◎

そして、まさかのじゅんさいスイーツの登場!器に盛り付けられた新鮮な生じゅんさいに、お店のスタッフさんが黒蜜をドバーっとかけてしまいました。最後にきな粉を添えて完成です。
▲じゅんさいに黒蜜を豪快にトッピング
▲じゅんさいの黒蜜がけ(600円・税込)

これは食べるのにちょっと勇気がいりましたが、甘~いプルプル食感のスイーツになりました!じゅんさいならではのコラボですね。
▲生じゅんさいの鮮やかな緑

というのも、じゅんさいは実は無味無臭で「のどごしを楽しむ食材」だそうです。中でもシーズン中に摘み採った「生じゅんさい」は通年販売している「加工じゅんさい」と比べ、ぬめりが多い傾向にあり、のどごしも良く、色も鮮やかと店主の桜田さんに教えてもらいました。
▲「さくら亭」店主であり、じゅんさい料理推進協議会の桜田澄子(すみこ)さん

栄養が豊富なじゅんさいは、食物繊維も多いためお通じにも良いそう。おまけに、緑茶を凌ぐほど多くのポリフェノールが含まれていることが確認されており、健康や美容効果にも期待できるなど万能っぷりが人気。摘み採り体験で女性が多いのも頷けますね!
▲座敷のほかにテーブル席もある広々とした店内

じゅんさいを使った美味しい料理で、三種町のPRにも奮闘するさくら亭さん。優しい店主とじゅんさい話に花を咲かせながら、絶品料理を堪能してください。

じゅんさいのお土産もある「じゅんさいの館」

帰りに立ち寄りたいのが、JR森岳(もりたけ)駅から車で約7分の「じゅんさいの館」。農家直送の新鮮な野菜を中心に、ここだけでしか買えない手作りの加工食品や物産品を取り扱っています。
▲収穫したての野菜がそのまま店内に並ぶ「じゅんさいの館」

施設内のお食事処「花河童(はなかっぱ)」では、じゅんさいを使った料理が人気。気になるメニューをいくつかオーダーしてみました。
一般的なじゅんさいの食べ方といえばわさび醤油ですが、おすすめなのが酢和え。ツルツルのどごしとお酢がさっぱりしてて美味しいです。
▲じゅんさい酢和え(250円・税込)

一番人気の「じゅんさい入り天ぷらそば」も、食感とのどごしを楽しむメニュー。サクサク天ぷらと平打ちそば、じゅんさいのコラボは新しい食感です。
▲じゅんさい入り天ぷらそば(600円・税込)

「家でもじゅんさい料理が食べたい!」という方は、ぜひ生じゅんさいを買ってみてください。摘みたて「ぬめり」のつるんとした喉越しとぷるぷる食感を堪能できます。じゅんさい生産者が直接店頭に陳列するのですが、早い日には開店すぐになくなってしまうほどの人気ぶり。
▲生じゅんさい(価格変動)

じゅんさいのシーズンオフに立ち寄る方には水煮の袋詰がおすすめ。価格も安価で、通年販売しているので生じゅんさいと食べ比べてもいいかもしれません。
▲じゅんさいLL 水煮 袋詰(210円・税込)
▲樹齢120年の秋田杉など、木材を使った広々とした店内
秋田が誇る初夏の味覚「じゅんさい」、いかがでしたか?不思議な見た目とは裏腹に、お鍋からスイーツまで楽しめて、体にも良い万能食材。ぜひ摘み採り体験とセットで、三種町に訪れてみてくださいね!
下田翼

下田翼

東京生まれ、東京育ち。観光で青森県に初上陸し、人の暖かさに感動し2015年に移住。地域おこし協力隊を経て、青森の魅力を伝えるフリーランスのプランナー・ライターとして活動中。

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