カレーの隠し味にみそ!甘辛あいがけが旨い長野「カレーの大原屋」の「どっちもカレー」

2018.08.15 更新

長野県飯田市にある「カレーの大原屋」は、信州みそを隠し味に使ったカレー専門店。みそのコクを活かし、みその香りがほんのりとするカレーは、食べた人に心地よさを与えてくれる。みその味を主張するのではなく、あくまで具材とスパイスをつなぐ調和役に徹しているところに、店主のテクニックが表れている。朝7時からオープンしているので、朝カレーや長野観光のスタートにもおすすめだ!(by カレー調査隊隊長・井上岳久)

どうも、こんにちは!
カレーの第一人者である井上岳久先生と、一番弟子りかです。私たち2人は「カレー調査隊」として、ぐるたび編集部に届いた耳寄りカレー情報をもとに全国津々浦々を旅しています。

今回は、長野県の名産品・信州みそを使ったカレーのうわさを調査してきました。

信州みそでカレーのコクを出す!長野県飯田市「カレーの大原屋」

りか「ぐるたび編集部宛てに、こんな調査依頼のメールが届きました」

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長野県飯田市にあるカレー専門店「カレーの大原屋」では、信州みそを使ったカレーが食べられるそうです。ただ、車がないと行きづらい場所であるため、なかなか行くことができません。代わりに調査してきてもらえないでしょうか?
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井上先生「お、このお店は知っているよ。私が主宰している『カレー大學』というカレーを学べる講座に、長野県飯田市在住の方が参加してくれてね。その時に『カレーの大原屋』がおすすめだと教えてくれたんだ」

りか「そうなんですね。でも信州みそってどんなみそなんでしょう?」

井上先生「一般的には、米麹と大豆と塩を原材料とした辛口の米みそと言われているよね。色も淡い山吹色をしているよ」

りか「先生、みそにも詳しいんですか!それでは、ぜひ調査に行ってみましょう」
ということで、やってきたのは中央自動車道・飯田ICから車で約8分、またはJR飯田線・飯田駅から車で約7分の「カレーの大原屋」。飯田市のシンボルとして親しまれる風越山(かざこしやま)のふもとにあるカレー専門店です。お店の周辺は畑や住宅街で、他の飲食店やショッピングモールなどはありません。
▲内装は和テイストで、カレー屋というよりそば屋のような雰囲気
「いらっしゃいませ!」
そう声をかけてくれたのは店主の尾沢あきらさん。

りか「あれ?『大原屋』という店名なのに、苗字は尾沢なんですね」

尾沢さん「はい、よく聞かれます(笑)。その話はまた後ほどするとして、まずはカレーを食べてみてください!」

「チキンカレー」と「ハンバーグカレー」をあいがけした「どっちもカレー」

信州みそを使ったカレーとは、一体どんなカレーなのでしょうか。さっそくいただきましょう!

「カレーの大原屋」には「チキンカレー」や「ミニハンバーグ」「彩食健美カレー」など全部で6つのカレーメニューがあります。今回は、人気のピリ辛「チキンカレー」とやさしい甘口「ミニハンバーグ」の2種類のカレーソースを楽しめる「どっちもカレー」を注文しました。
▲2種類のカレーソースが味わえる「どっちもカレー」(税込1,165円)。セットでミニサラダとドリンクもついてくる

真ん中にご飯の山が2つ。そこに左へ「チキンカレー」、右へ「ミニハンバーグ」のカレーソースをあいがけ。1つのご飯の上には枝豆がトッピングされています。ミニサラダは、キャベツのマリネサラダとポテトサラダの盛り合わせ。ドリンクは8種類の中から選べ、今回はオレンジジュースをチョイスしました。
りか「お皿の形や盛り付けに、店主の独特な感性を感じられますね」

井上先生「そうだね。それにカレーソースの色の対比もきれいだね」
井上先生&りか「いっただきまーす!」
▲まずは「チキンカレー」から!サラっとしたカレーソースの中に、ひと口サイズの鶏もも肉が入っている
りか「おいしい~!トマトの風味が残ったマイルドなカレーです。でも意外にも、みその主張は強くないですね」

井上先生「ほぉ、どれどれ…」
▲パクっ

井上先生「…なるほど、みそはほのかに香る程度だね。みそを使ったカレーは他の店でもあるけど、味が濃くてしょっぱいことも多いんだ。だけど、このチキンカレーは、みそのコクを生かしてマイルドにし、その中にピリっとスパイス感を立たせている。信州みそが食材とスパイスの調和役になっているね。味のバランスがいいよ」
りか「ところで、カレーソースの中に薄茶色の粒があるのですが、これは何でしょうか…?」
尾沢さん「それは鶏肉の皮です!鶏肉の皮が苦手なお客様が結構いらっしゃいまして。それでチキンは皮をとって使い、とった皮は細かく刻んで、カレーソースの中に溶け込ませているんです。こうすることで、カレーにコクが出るんですよ」

りか「そんなテクニック初めて聞きました!鶏肉の皮が苦手な人も、まさか細かく刻んで使っているとは思わないでしょうね。言われなければ気が付かないですよ」
▲「ミニハンバーグ」の手作りハンバーグ

井上先生「もう一つのカレーソース『ミニハンバーグ』は、野菜の甘みが煮溶け、そこにみそのまろやかさも加わって、まるでポタージュのよう。初めて食べたのに、甘口のせいか懐かしさを感じるよ。それにハンバーグは口どけがいいね」

尾沢さん「ハンバーグは、長野県産の合い挽き肉を使用していて、粗い挽き肉と細かい挽き肉を合わせて作っています。こうすることで、やわらかいけど粗挽き感もあるハンバーグになるんです。あと味付けには、五香粉(ごこうふん※)など中華系香辛料も使っています」

※五香粉とは…中国の代表的なミックススパイスのこと
▲「ミニハンバーグ」に掛けられた赤いソース

りか「へぇ、中華系香辛料も使いこなしているんですか!ちなみに、『ミニハンバーグ』のカレーソースの上に掛けられた、この赤色のものは何ですか?」

尾沢さん「それはチャツネ(※)のようなもので、トマトピューレとオリーブオイルを混ぜ、そこにスパイス数種類を加えた酸味のあるソースです。彩りを考えてトッピングしました。最初からカレーソースと混ぜてもいいですし、途中からでもかまいません。お客様のお好みのタイミングで混ぜていただければ」

※チャツネとは…インド料理における薬味やソースのこと
▲テーブルに置かれたらっきょう。お好みでどうぞ!

井上先生「お!らっきょうも酸味が効いていて、なかなかおいしいよ」

尾沢さん「らっきょうは、化学調味料無添加の物を買ってきて、地元産の酢で漬けなおしているんです」

りか「らっきょうにも、アレンジを加えているんですか!」
井上先生「信州みそをうまく使いこなしているだけでなく、色々と計算されて作られたカレーだね。あっぱれ」

りか「はい!店主のカレーに対する情熱が感じられますよね」
▲両方のカレーソースをちょっとずつ食べて、色々な味を楽しめる。枝豆の緑色が、色彩のアクセントに!

地元産の食材を使用!「どっちもカレー」は、地元愛が溢れたカレー

すっかり「どっちもカレー」に魅了されてしまった私たち。このカレーは、どうやって作っているのでしょうか?尾沢さんは「詳しい作り方はヒミツですが(笑)」と言いながら教えてくれました。
尾沢さん「『チキンカレー』は、トマトピューレと信州みそ、細かく刻んだ鶏肉の皮、それと約20種類のスパイスで煮込んでいます。その他、みりんや醤油、鶏のダシなども使っていますよ。またコクを出すために、油はオリーブオイルを使うのがポイント!チキンは硬くならないよう、オーダーが入ってから軽く煮込んでいます」

井上先生「なるほど。みりんや醤油など和風の調味料を使うことで、信州みそがほのかに香る程度になり、食材とスパイスの調和役になっているのか」

尾沢さん「そうなんです。『ミニハンバーグ』は、トマトと玉ねぎのピューレ、信州みそ、スパイスを数種類使って煮込んでいます。こちらはお子さんからご年配の方まで幅広い方に食べてもらえるよう、あえてスパイス感は際立ていません」
尾沢さん「ちなみに使っている信州みそは、地元のみそ屋の物です。お米も地元の農家から直接仕入れていますし、食材はなるべく地元産の物を使うようにしています」

井上先生「なぜ、そこまで地元産の食材にこだわるのですか?」

尾沢さん「飲食店という形で、飯田市の街づくりに貢献したいからですね。カレーに信州みそを入れたのも、そういう思いが込められています」

「地元の街づくりに貢献したい」というカレーに込められた思い

街づくりに貢献したいとは、どういうことでしょうか?その思いを聞いてみました。
尾沢さん「元々この土地には、父が代表を務める建設会社の事務所がありました。私は東京で就職していたのですが、父の会社を手伝うために地元に戻ってきて。だけど、私は建設業に向いていないなと…。そこで2007年に、建設会社の新規事業としてカレー店をオープンすることにしたんです」

というのも、尾沢さんの趣味はカレー作り!10歳頃からカレーを作っていたそうです。また東京で勤めていた会社がレストランビルを持っていたことから、飲食業のノウハウも知っていたのだとか。そこで建物を改装し、道路手前側をカレー店に、奥側を建設会社の事務所にしました。
尾沢さん「父はインフラなどハード面の街づくりに貢献したので、僕はソフト面、つまり飲食店という形で街づくりに貢献したいという思いがあるんです。遠方から飯田市に足を運んでもらうためにどうすればいいのか考えて、一般的なレストランではなく、特色のあるカレー店にしました」

それが功を奏し、休日になれば、関東や東海地方などの遠方からでも車でやってくるお客さんがいると言います。
▲店頭に掲げられたお店の看板

りか「車で来るとはいえ、お世辞にも立地が良いとは言えないですよね…?」

尾沢さん「はい、立地が悪いのが当店のウリです(笑)。だから朝7時から営業しています。朝早くから営業している個人飲食店が少ないこともあって、わざわざ朝食を食べに来てくれたり、たとえば長野旅行の出発地点に選んでもらったりすることが多いですね」

井上先生「なるほど。『カレーの大原屋』で朝食を済ませてから、近隣の目的地に向かうというわけか。地元の食材を使った特色あるカレー店が早朝から営業しているなら、たしかに多少立地が悪くても、来たくなるかもしれないな」
▲店内では、オリジナル商品のカレーペースト「カレーな小瓶」(税込864円)なども販売している

井上先生「ところで店名の『大原屋』には、どういう意味が込められているんですか?」

尾沢さん「飯田市の観光スポットに、大平宿(おおだいらじゅく)という古い街並みが保存された廃村があるんです。その中に 『大原屋』という屋号の古民家がありまして。この物件の所有者さんがご高齢なこともあって、古民家の維持管理のお手伝いをしているんです。そういったご縁から、大平宿の観光案内もできる店でありたいという思いを込めて『カレーの大原屋』にしました」
▲飯田市の観光スポットである大平宿の風景写真

りか「店名にも、地域貢献への思いが込められているんですね!」

では井上先生、カレーの評価をお願いします。
井上先生「『カレーの大原屋』のカレーチャートはこちら!」
井上先生「長野県の名産品である信州みそをうまく使いこなしていたから、コクは5。鶏肉の皮を細かく刻んだり、ハンバーグの合い挽き肉の粗さにもこだわりがあったりしたので、オリジナリティも5。地元産の食材を使い、バランスのよい味わいに仕上げたカレーだったね」

りか「はい!きっと街づくりに貢献したいという熱意が、カレーに表現されているのだと思います!カレーをきっかけに、地域が盛り上がってほしいですね」
▲最後は尾沢さんとパシャリ!

長野県飯田市でカレーを食べるなら、朝7時からオープンしている「カレーの大原屋」がおすすめ!
ご協力ありがとうございました!

井上岳久(カレー大學学長/株式会社カレー総合研究所代表)

カレー業界を牽引する、業界の第一人者。横濱カレーミュージアム責任者を経て現職に至る。カレーの文化や歴史、栄養学、地域的特色、レトルトカレーなど、カレー全般に精通。レトルトカレーは全国から2,000種類を収集し試食している。著書に『一億人の大好物 カレーの作り方』『国民食カレーに学ぶもっともわかりやすいマーケティング入門』など多数。

名久井梨香

名久井梨香

フリーライター。毎日カレーを食べるカレー愛好家で、現在はカレーパンも研究している。カレー大學、カレー大学院卒。趣味はカレーとJリーグ。

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